購入価格: £41.66 (@ alwaysriding.co.uk、送料別途)
fabricが作るフロント・リア兼用のLEDミニライト。価格はイギリス本国で£49.99(VAT込)、正規輸入での国内価格は¥7,500+消費税なので内外差は大きくありません。絶対的には300ルーメン/2hrという性能の割にちょっと割高な印象ですが、素材も外装・インターフェイスのデザインセンスもいいし、まあこんなもんかな?というところでしょうか。ボディは総削り出しアルミサンドブラスト仕上げ、突起などはなく部品類もスイッチをカバーしているシリコンゴムとマウント以外全て金属製でプラスチックは排除されていて、かなり洗練されたデザインです。当初は見た目のスマートさとそこそこ軽量であること、マウントがスペースを取らない点を見込んで購入しましたが、実際使用してみると見た目よりもむしろ使い方のバリエーションが広い点を評価したくなる、そんなライトでした。
・まずはライトとしてのスペックから。
サイズは長さ90mm、円筒の直径23mmで手のひらに収まるサイズ。実測重量は本体61g+マウント16g=77gで、公称75gでしたからかなり正確です。
メインの白色LEDの出力は最大300ルーメン、サブで上面に4つ並ぶ小型LEDの出力は各最大30ルーメン。どちらもフルパワーと光量を落したエコノミーモード、点滅間隔の短いフラッシュと長めのストロボモードが備わっています。サブのLEDはさらに赤と白の切り替えが可能。メインとサブ同時に点灯する事はできません。実使用でテストしたわけではありませんがIPX5防水らしいので、ボチャンと水の中に落したりしない限り多少の雨や路面からの水撥ね程度は大丈夫だと思われます。
・デザイン同様に秀逸なインターフェイス
各モードや照度の切り替えは後ろのツマミと押しボタンで行います。
こういうマルチファンクションのライトでは、スイッチを長押ししたり数回押したりしてモードを切り替えるのが当たり前になっているのですが、使いたいモードに瞬間的にたどり着けないのがストレスに感じられたりします。このライトのインターフェイスはなかなか良く出来ていて、後端にあるスイッチを長押しすると点灯/消灯切り替え、点灯状態で短くスイッチを押すとメイン→サブ(赤)→サブ(白)→以降ループと点灯箇所が切り替わります。フル常時→ミディアム常時→フラッシュ→ストロボの点灯モード切り替えはダイアルスイッチ(インデックスなし無段階)を回して切り替える仕様になっています。一旦組み合わせが頭に入ってしまえば欲しいモードにすぐたどり着ける上、押しにくい小さな防水ボタンと格闘してイライラする必要がないのは非常に快適です。ツマミの感触はオーディオ機器のボリュームよりも若干抵抗が強い感じで、不意に意図せず触ってもすぐにモードが切り替わったりしないよう配慮されています。ボリュームスイッチみたいに点灯/消灯もこのツマミでプチンと出来たらいいのに…と思わなくはないですが。
・軽さの代償、あまり長くはないランタイム
電源は内蔵のリチウムバッテリーで満充電時連続点灯した場合の公称ランタイムはメイン2~6hr、サブが6~58hr。充電はMicro USB端子経由で行い(ケーブル付属)、放電状態から満充電までかかる時間は5hr。給電しながらの点灯はできません。軽いのはやはりバッテリー容量が小さいからなのでしょう、フルパワーで点灯すると2時間で燃え尽きてしまうようです。
・柔軟でコンパクトなブラケット
固定には専用ブラケットとベルトタイプのシリコンラバーバンドを使います。
フロントライトとしてハンドルバー上に固定する他、ブラケット底面上でライトが円周方向に360°回転する機構が備わっているので、シートポストやヘルメットのベンチレーションの梁などに縦あるいは横に寝かせて固定することも可能です。
また本体に彫られた溝の上をブラケットがスライドするようになっているので、前後方向の固定位置にも自由度が確保されています。
これらを使いこなせば光軸調整だけでなく、縦・横に固定方向を変えつつ様々な場所にライトを設置することが可能。Garminの純正ブラケット同様裏面に波型カットされた滑り止めラバーパッドが貼ってあるので、ラバーバンドの長さが足りる場所ならばハンドルバーだけでなくヘルメットや各部ステーなど様々なところへ固定できます。タンと穴を使って調節する時計バンドやベルトと同じ構造ですから長ささえ足りるなら真円断面でなくとも大丈夫。
太さの上限は、目安としてはOSハンドルバーが丁度いいサイズですが、700Cフォークレッグのような翼断面状の形なら幅40mmX厚さ20mm位まで取り付け可能だと思われます。モノにもよるでしょうがアヘッドステムの胴は無理があるでしょう。逆に細いパイプはφ27.2mmシートポストやモノステータイプのシートステーにも固定できます。ただ、何かがが当たったり大き目の振動が加わったりすると簡単にずり落ちる・グリンと回ってしまうことが考えられるので、巻き込みのおそれがあるホイール付近に使ったり、ブラケット底面に貼られたラバーパッドとの接触面積がしっかりとれない細いパイプなどに固定するのは注意が必要です。それほど重くないのでヘルメットなどにもイケるでしょう。
ケチをつけるとしたら、質感の高いライト本体やシリコンラバーバンドとは対照的に、ブラケットの樹脂の質感がちょっとチープな点…性能は悪くないのですが。少しくらい高くなったって構わないから、どうせならブラケットの仕上げまで徹底的にこだわって欲しかった。
・メイン前照灯としての使い勝手は…
悪く言うと…帯に短し襷に長しの中途ハンパ。良く言えば競合の隙間をうまく突いたナイスなニッチ商品、という感じです。メインLEDとサブLEDで切り替え可能で前照・尾灯兼用のコンパクトライトというとLezyne Zecto Pro Drive(最大でも200ルーメン未満)あたりが思い当たりますが、それよりはパワフルなものの、夜間走行を想定して600ルーメン以上で設計されているライト、たとえばBontragerのion700RやExposureのJoystickには及びません。そのかわり軽量でコンパクト、スマートなデザインと諸々の切替機能が備わっている、というありそうでなかなかないニッチな仕様です。フルパワー300ルーメンモードで公称2h、パワーを落としたミディアムモードで3hなのでとっぷり日が暮れた後に明かりの少ないサイクリングロードなどをこれ1灯のみで快適に走るにはちょっと不足気味な感があるのですが、街灯のある道路を流しながら1〜2時間かけて帰宅する程度ならまあ足りるかな、といったところです。一度、完全に日が暮れた後の峠道をこれ一本でダウンヒルせざるを得なくなったことがあるのですが、よく知っている道だったからなんとかなったものの路面状況が把握できるのはせいぜい10mといったところだったので、さすがに肝が冷えました。これ一灯だけで真っ暗闇に挑むのはさすがに無理があります。
Road.ccに詳細なレビューがあり、他のライトと配光や見え方のクロスレビューもできるので詳しく知りたい方はどうぞ。
http://road.cc/content/review/214965-fabric-fl300-light以上を踏まえると、日没までに帰宅するつもりだけれどもしかしたら間に合わないかもしれないような日とか、明かりのある幹線道路や街中などを通勤通学で短時間走行する、といった用途が適切かと思います。端からライトを使うつもりはないけれど保安部品だしとりあえず格好だけつけば良いやと言うなら、性能うんぬんの事はバッサリ切り捨ててLezyneのFemtoやKnogの小さなライトを持っておくほうがずっと軽いし安上がりで理に叶っているんですが、いざ暗闇が迫ってくるとそんなものでは全然足りませんから、使う可能性が少しでもあるならせめて150ルーメン程度のライトは持っておきたいものです、自分の為にも他人のためにも。これなら素材の質感も仕上げも良いので、ハンドルバーに付けた瞬間“うわぁ……”っとなって即外したくなったりしないのも大事な美点かと思います。
・有能なサブライトとしてのポテンシャル
いざ夜間に使ってみると、Magliteなどと比べて気持ち配光を広くしたような感じなので、前照灯として路面をきちんと照らすことに重きを置いて専用設計されたものと比べるとどうにも見づらい印象は否めません。フルパワーで300ルーメンあるのである程度街灯などで光のある道路ならば行動不能に陥るほど暗いという印象はありませんが、やっぱりもう少しパワーが…となるのが正直なところ。むしろ、固定場所の自由度が高い点・各種切り替えモードが多い点を活かして~1,000ルーメン程度のメインライトの補助としてシチュエーションに応じて使い分けるというのが合理的な使い方かなと思います。白/赤で切り替え可能なサブLEDドットはランタイムが結構長いので、交通の多いところで尾灯やデイタイムライトとして常時点けっぱなしにして使うのもいいかもしれません。
・・・総評
耐久性については不具合があれば追記していきますが、滅多に夜間走らないけれどKnogやLezyneの極小ライトではさすがにちょっと…と思っていた自分には丁度良いスペックで、使い勝手の第一印象もとても良いライトでした。夜間峠に分け入ったり、彼誰時以降サイクリングロードを30km/h以上で走る夜練にいそしんだりするのでなければ、これだけでもひとまず大丈夫と言えるスペックを持っていて、しかもスタイリッシュで軽量。今まではLezyne FemtoとZecto Pro Driveを使い分け、ごくたまに暗いうちから走る時はBontrager ion700Rを使っていました。ion700Rはハンドルバーにつけっぱなしにしておくには嵩張るし重いので必要な時だけ引っ張り出す感じでしたが、そこそこ軽いFL300ならつけっぱなしでも然程気にならないし邪魔にもならないので、買って良かったなと思っています。
価格評価→★★★☆☆(パワーの割に少々割高…)
評 価→★★★★☆(機能の多才ぶりと取り回しの良さが◎)
年 式→2016
カタログ重量→ 77g (実測重量 75g、ブラケット込み)