購入価格 ¥1,074(たしかワイズロード新宿カスタム館)
FC6800に付属するチェーンリングを固定するボルトです。
DURA-ACEやXTRでも使われているようです。
単品だとY1H598160という品番なのでしょうか。
特に不満もなく、レビューするほど注目されるわけでもない部品ですが…
<折れた人いませんか?>

自分のボルトは折れてしまいました。しかも2本。さらにもう少しで折れそうなのがもう1本。
これは明らかにおかしい(自分or部品が)と思うのでレビューします。
【折れた経緯】
いわゆる激坂を登るときのように体重をかけてペダリングすると、「チッチッ」というか「カチカチ」というような音がする現象が発生。
音以外に不具合は無いのですが、気になるので対策を考えました。
まずは基本の増し締めということで、チェーンリングの固定ボルトから手をつけることに。
シマノのマニュアルでは12-16Nmということなので、まずは10Nmで4本締めたのですがこの段階で手応えが怪しく、
次に目標の12Nmで締めたところあっさり折れました。
新品を買って再トライ、6Nmから2Nmずつ上げて締めたのですが、またしても12Nmで折れました。
他のボルトもよく見ると折れる兆候(後述)があったもののなんとか締め切って作業終了。
【検証】
折れた原因としては
1. 作業ミス
2. 不良品
の2つが考えられます。
1の作業ミスが最も疑われるところですが、締める順番は問題なし、潤滑無しでの締結でok(シマノに確認)、
あとはトルクが適正であったかです。
私が使っているのはwiggleで買った格安トルクレンチなので確かに精度は怪しいのですが、
ばねばかりを使って簡易的に検査したところ誤差はせいぜい5%といったところ。
一方ボルトが折れたということは、その時のトルクは上限の16Nm(以上)となっていたはず。
12Nmを狙って16Nm以上出るということは30%以上狂っていることになり、さすがにこれはありえないと思いますので、
作業は問題なかったと思われます。
2の不良品についてですが、シマノに折れたボルトを送って問い合わせたところ
「折れたという話は聞いたことがないので不良品」
とのことであっさり新品4本が送られて来ました。
ということで結果としては不良品なのですが、2本折れてさらに折れかけているボルトがまだあるのは不良品率が高すぎます。
そこで
3.設計不良
を疑ってみることにします。
【強度計算】
といっても難しいことはできないので、単純に軸力からボルトの引張応力を計算、
降伏応力(耐力)や引張強度と比較してみることにします。
(引張強度は簡単にいえばちぎれる限界、降伏応力は永久変形(塑性変形)が起きるところです。)
ボルトの軸力は
T=kdF (T:トルク、k:トルク係数、d:ボルト呼び径、F:軸力)
から求めます。kは実測が一番ですが、それは無理なので軸力が小さくなるように(強度的に有利になるように)大きめの0.2を使います。
そうすると、
12NmでF=5000[N]、16NmではF=6667N
となります。
ボルトの断面積ですが、M8でT30のヘクサロビュラ穴なので次のとおりです。
A=33mm^2
以上から引張応力は
12Nmで227MPa、16Nmで303MPaとなりました。
このボルトはシマノによるとアルミとのことですが、どのアルミ合金かは不明です。
アルミは合金の種類と熱処理で強度がかなり変わるのですが、
A5052だと引張強度は200~300MPa、耐力は200MPa~250MPa、
超々ジュラルミンと呼ばれるA7075では引張強度550MPaに耐力500MPaといったところでしょうか。
これを先程の引張応力とくらべてみると、A7075なら問題なし、A5052では結構怪しい、
トルク係数を0.15で計算すると応力は12Nmで303MPa、16Nmでは404MPaとなるのでますます怪しい。
とはいえ設計不良とまでは言えないという長々と書いてきた割には結論はよくわからんということになります。
ここまで読まれた方すみません。
この結果をシマノに聞いてみましたが、企業秘密ということで教えてくれませんでした。
それはまあ理解できるのですが、せめて「折れてないから問題ない」ではなく、「設計的に大丈夫」と言い切ってほしかったところです。
もしこれを読んだ方で原因がわかる方、折れたという経験がある方がいらっしゃいましたら教えてください。
折れたボルト

全長は新品が首下10mmのところ、10.9mmまで伸びています。

ボルトの頭も陥没してます。上記の伸びの影響ですが、折れる兆候です。
価格評価→★★★☆☆(ボルト4本で1000円は高いです)
評 価→★★★☆☆(すっきりしないので…)
ちなみにきっかけの音は増し締めしても変わりませんでした(^_^;