BB30という秘教的なオープン規格
サイクルスポーツ2016年9月号、p.91に「BB30の真実」という記事があります。CBNでも非常に人気の高い自転車ライター・安井行生氏がキャノンデール・ジャパンの技術担当者にBB30関連の異音について質問する、という内容。
大体以下のようなことが書かれていると思います。
・キャノンデールプロサイクリングチームのメカニックからBB30の異音報告は一切ない ・国内チームのバイクでもBB30の異音は一切発生していない ・同社のカスタマーサービス部門で受ける全報告数のうちBB30の音鳴りは1%以下 ・キャノンデールのBB30関連製品(BBシェル内径、ベアリングサイズ、スピンドル直径)の精度を高めたため、現在最新モデルのCAAD12の異音クレームはゼロ ・BB30とは関係のない異音を「BB30の異音だ」と認識するユーザーがいる ・原因を正しく見極め、正しい工具を使い、正しい方法で、正しいモノを組み付ければBB30の音鳴りは消える
等々。
どうも読んでいると、BB30という規格はオープン規格ではあるものの、製品自体にも組み付け作業にも想像を絶するような精度が要求されるものであり、キャノンデールの場合は製品自体にも作業にも絶対の自信を持っている、ということのようです。
また、現在のCAAD12では各パーツの精度を高めたため異音はないと書かれていますが、これは裏を返せばやはりCAAD10以前の製品では精度が甘かったのだろうと受け取られても仕方ないでしょう。
周知のようにBB30はキャノンデールが提唱した規格で、他のメーカーからもBB30対応フレームはたくさん出ていますが、少なくともキャノンデールの製品に関してはまず異音が出ないはず、万一フレームの製造公差に問題があったら交換する、ということも書かれています。
この記事を読んで素直に思ったのは、BB30という規格は「愛好家」が手を出してはいけないものだ、ということです。「愛好家」というのは、私を含め、自分でフレームやパーツや専用工具を買って自転車を組み上げるような人達のこと。
BB30規格のフレーム、特にキャノンデールのそれを組み上げる場合は、全てキャノンデールが指定する最新のパーツの組み合わせで、一式5万円程度の専用工具を使用し、キャノンデール・ジャパンがショップ向けに定期的に開催しているテクニカルセミナーをあらかじめ受講していないといけない。
扱いのデリケートなBB30ベアリングやスピンドルを自作の工具で荒っぽく扱うような人は論外だとしても、BB30の扱いは本当にハードルが高いと思いました。もう一般人は絶対に無理。フレーム単体販売はメーカー側が自粛すべきレベル。
経験豊かな人がパークツールの工具を使ったとしてもダメ。キャノンデールのセミナーを受けた人がキャノンデールの工具を使って指定された最新パーツを使って作業しないといけない(キャノンデールのフレームの場合は)。
サイスポの記事については、読んでいて何故かあまり良い気分はしなかったのですが、メーカーの方の主張をそのまま好意的に、正しいものとして受け入れるなら、BB30という規格はやはり「一般の愛好家」には手出しが出来ないものだと思いました。
欲しいキャノンデールの自転車がBB30規格だったら、それは完成車として、キャノンデールのテクニカルセミナーを受講したメカニックがいるショップで買うしかない。またキャノンデール以外のメーカーのBB30フレームなど許容製造公差・精度面で信頼できるわけがない。と思いました(キャノンデール製品でさえ、CAAD12以前は精度が十分でなかったと考えているらしいので)。
価格評価→★☆☆☆☆ 非常にお金のかかる規格 評 価→★☆☆☆☆ ユーザーにとってはデメリットのほうが多く、冗談のような精度を要求する規格。オープン規格だが中身は秘教的
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