購入価格¥803
私は花粉症だ。
寒さに震える冬が終わり、やっと暖かくなったと思ったらスギ花粉のハイシーズンとなる。春の陽気に我慢できずにライドに出掛け、花粉をたっぷり吸いこんで帰宅する。走っている間はアドレナリンだかドーパミンだかの影響でか、症状はあまり出ないが、帰宅後が地獄だ。眼と喉が痒くて、涙と鼻水が止まらない。妻には「自分から花粉を吸いに行ってるんだから自業自得でしょ」と冷ややかな目で見られる。いまはライドの楽しさと帰宅後の苦しみを天秤にかけて、かろうじて楽しさが勝っているが、先のことは分からない。もちろん、トレーニングなどする気にもなれない。極言すれば、トレーニングとは「苦しむこと」に他ならないからだ。川西蘭の「セカンドウインド」には、花粉症がひどくて春は室内でしかトレーニングできないキャラがいたが、あのシリーズの続きは出るのだろうか? 4巻の発売予告が一瞬だけ流れてすぐに消えて、、その後は音沙汰なしで著者のブログも消滅している。どうやら大学で教鞭を執っているようだが、続きを出すのなら早めにしてほしい。ヤマモト・ヨーコシリーズのように10年以上経ってから最終巻が刊行されても、あらかた忘れてしまっているのだ。
……話がずれた。
今回レビューするのはモンベルのポケットティッシュケースだ。水解性原紙で作られたポケットティッシュ10個と、リストバンド状の防水生地製(ハイドロプロ)ポケットティッシュケースがセットになった製品である。



自転車に乗りはじめた頃に読んだ本では、鼻が詰まったときの処理として「手鼻」が挙げられていた。レース中なら仕方がないのかもしれないが、私には真似できないので、ポケットティッシュとゴミ袋を持ち運んでいる。鼻をかみたくなったら停車して、防水ポーチからティッシュを取り出し、鼻をかみ、使用済みのティッシュをゴミ袋にいれ、ティッシュを防水ポーチにしまい、リスタートする。実に面倒だ。四十肩を患ってからは、ジャージのバックポケットに手を回すのが億劫になった。それでもスギ花粉は容赦なく襲ってくる。なんとかしなければと思っていた。だがどうすれば良いのかアイデアがないまま、2016年も花粉のシーズンを迎えた。
業務が落ち着いていたある日。防水手袋への水の浸入を防ぐ方法として、レインウェアの袖を被せた上からさらにリストバンドで絞る、という方法を思いついた。防水リストバンドを探したところモンベルの製品が見つかったので、反射的にレビューを探して手広く検索してみた。
……ん?
防水生地で作られた、リストバンドタイプの、ポケットティッシュケースだと?
探していたのとはまったく違う、だがもっと切実な案件の解決の糸口が見つかった。定時で退勤しモンベルストアに直行。赤、青、オレンジがあったのでオレンジを購入した。
内径は、空の状態で約28cm〜約33cm。サイズの調整は1.5cmほどのゴムバンドでしか行えないので範囲は狭い。だが大方のひとには最小サイズでも「大き過ぎる」であろう。私の手首回りは17cmと成人男子としては平均的と思われる数値だが、素手で空の本製品を付けるとすっぽ抜けてしまう。防水生地がつるつるしているのでなおさらだ。だが、自転車用のグローブを着けると上手く引っ掛かってくれて、ばたつきも感じられなかった。。


ティッシュの取り出しには少しだけコツが要る。腕に巻いたままだと取り出し難い。無理に引っ張りだすと硬い防水生地でティッシュを破いてしまうかもしれないので、掌まで落として開口部を広げるのを勧める。フルフィンガーグローブでティッシュをつまめるほど器用ではないので、右手は素手でないと無理だった。習慣的連鎖的に左手のグローブも外してしまうと、引っ掛かっているだけの本製品を落としてしまう可能性がある。食事やトイレの際にも注意が必要だ。

実験的に、蒸れるであろうウインドブレーカーの内側にも装着したが、水解紙のティッシュに影響は見られなかった。ハイドロプロの「防水性はあるが透湿性はない」という、雨具としては使い道に困る性質が逆に良い方向に働いたのだと考えられる。
間違えていけないのは、本製品はあくまでも「防水生地で作られている」に過ぎないということだ。完全防水ではない。もちろん生活防水でもない。着けたまま手を洗ったり多少の雨に降られる分には大丈夫だったが、ある程度以上の雨に降られ続けたら、開口部からの水の浸入は避けられないだろう。
一般的なポケットティッシュのサイズなら何でも入れられるので、オイル汚れを落とすためのメイク落としや、清拭用のウェットティッシュの携行にも使える。「すっきり爽快 男の洗顔シート」の類は大判が多いので難しいが、おしりセレブは端を折れば入れられる。「落としてもダメージが低くて、なおかつ使用頻度が高いもの」の持ち運びにも便利だろう。

本製品を知った感想は「さすがモンベル」だった。
日本人は世界一ティッシュペーパーを使うらしい。ポケットティッシュを無料で配布しているのも日本だけだそうだ。*1
ネットショップでは色が選べないので、同社のスタッフバッグと同様、他の製品を作った際の余りの端切れを活用したのだと思われる。
ティッシュ大国日本の、端切れを大量に出すほどのメジャーなアウトドアブランドでないと作られない製品。つまり、モンベル以外ではまず作られない製品ではないだろうか。
唯一、注文をつけるとしたら付属のポケットティッシュだ。単品で29円のティッシュが10個。約300円がポケットティッシュ代と考えられる。ローションティッシュがセットで買える値段だ。その割に使用感はごく普通なので、水解紙であることに意義を感じなければ、割高な抱き合わせ感を覚えるかもしれない。
価格評価→★★★★☆
評 価→★★★★★
*1 ただしソースはDPZ
http://portal.nifty.com/kiji/140218163333_1.htm