購入価格 ¥ 6500(エントリ費用)
長野県栄村とその深奥部、新潟との県境の秋山郷を貫く起伏の厳しい道を走るイベント。
http://yahoo.jp/r1PckU苗場山の高層湿原に思いを馳せ、原生林の素晴らしさをじっくり味わいつつ、各地から集うサイクリストと先を急ぐことなく会話しながら登坂すれば、苦しさなどいつの間にか忘れます。
サイクリングの登坂は楽しいですね。
まず、スピードが出ない。だから周囲をじっくり見ることができるし、サイクリストと話すこともできる。サイクリングの本当の楽しみの一端を感じとることができます。そう、サイクリングなんですよね、コレ。
栄村もそうですが、甲信越にはこうした原生林を大規模に抱える山間部が比較的多く、実にうらやましいサイクリングフィールドが広がります。
私の住む栃木県ではこうはいきません。徒歩で登山可能な山は150座ほどありますが、その多くが山麓を中心に杉の植林に覆われており、そういったところを縫う林道などは、ワタシ的感覚ではもう、うす暗くて気味なく、まったく気持ちよくありません。原生林をオンロードで存分に堪能できるのは奥日光からの峠や、那須高原の山間部など、いくつかの地域に限られます。
年に一度の栄村。今年も素晴らしい原生林と村の風景を存分に味わうことができました。ちなみにエントリークラスは100kmクラスが最長で3つあり、私が参加したのは100kmクラスです。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
当日朝、会場で自転車をセットしていると、40前後の方に声をかけられました。私の小径車の写真を撮りたいとのこと。設計コンセプトから前変速機の後傾、フロント・トレイルに至るまで話が盛り上がりました。お好きな方っていらっしゃるんですねぇ。走る前から楽しいひと時です。そういえば一昨年も全く同じタイミングで同じような会話をどなたかとしています。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
登坂中に声をかけられました。
「あのぉ~、栃木から来られてる方ですか?」
「そうですけど、あれっ、なんでわかるわけ?」
「その自転車で。私、自転車を始めて、初めて参加したイベントが何年か前のこれだったんですけど、その時に、走りをすごくほめてもらって、それで自信ついちゃって、そのあともいろいろなイベントで走るようになったんです。だからすごく感謝してますっ」
いきなり感謝されてしまいました。
あー、そういえばそういうことがあったな。というか、へぇ~、オレはどんだけエラそうなこと言ってたのか ? それにしてもこんな風に感謝されるとは、うれしいなぁ。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
小ぢんまりとしたイベントです。主催者としては人数を増やす気はないそうなのですが、100kmクラスは400名もいないのでは? 出走前に散歩ついでにいろんな自転車を眺めて回ります。今年はVOGUE、ROMANといった初めて拝見するスチール・ロードの前で足が止まりました。どちらも歴史のあるブランドですが、所有者がいらっしゃらないようだったのでお話を伺うことはできませんでした。
スチール・ロードの復権が最近云われますが、そんなことはないでしょう。Technicsの往年のアナログ・ターンテーブルSL-1200は40年を越えるロングランを経てつい数年前、生産終了しましたが、アナログ・レコードの復権に応え、駆動系やサーボ制御を一新して再登場するそうです。一方でスチール・ロード。爆発的に増えた全体マスの中で、数の上では持ち直してきているでしょうが、シェアはむしろ続落しているという印象があります。絶えはしないでしょうが、続落。他方、女子の進出は堅調に推移しているようです。こんな言い方は不謹慎なのですが、かわいらしい方が多かったです。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
今年は猛烈に暑かった。朝から不整脈があり、片頭痛にも見舞われ、持病がしっかり表に出てきて、モヤッとしてしまいました。しかし、登坂は結構いけてしまい、ちょっと驚きました。実は今年、いつもより2歯ほど重いギヤを選択して登坂練習してきたのですが、これが効いたようです。重いギヤを選択するなんて、今の時代、逆転の発想というか、禁手と言ってもいいかもしれませんが、私など所詮、凡脚。多少重いギヤを回したところで膝をおかしくするほどのパワーは出ていないので、そういう意味では何も問題はないでしょう。私には合っていたようです。20インチ小径車ですが、38×23Tがローエンド。25Tスプロケは来年も投入は見送ることになりそうです。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
風が感じられない酷暑の登坂。初老の男性と並走します。な、なんと67歳とか。岡山からクルマで来られたのだそうな。15年ほど前から自転車に乗り始めたといいます。つまり今の私の歳あたりからということになります。15年後にこのコースを走っている自分を想像できません。スゴイ。脱帽です。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
なるしまフレンドのジャージを着た人に訊かれました。
「そのマドガードは見かけないタイプですけど、どこのですか?」
「あ、これは自分で作ったやつです。市販品を買ってきて金切りバサミで幅を狭くして自前で塗装しているんです」
「へぇ~~。あ、ケルビムさんの自転車ですか」
この方とはゴール後に再会し、いろいろな話を伺うことができました。かつて小ぢんまりした店だったなるしまフレンドも大きくなり、昔のような雰囲気がなくなってしまったことも。これは経営規模の拡大とともに必ず遭遇する事態でしょう。良いとか悪いという話ではなく、仕方のないこと。大型店舗の現場で、仲間内的な雰囲気が強い接客をするような店は、初めて来店する初心者には良い雰囲気とは映らないものです。サービスとは、常連さんにも一見さんにも分け隔てなく臨機応変に行ってこそ本物ですが、小さい店舗であればそれが比較的容易です。しかし、大型店舗では至難となります。私は、なるしまフレンドの神宮前店のオープン後2、3年でマンションの一階で小ぢんまりと家族経営していた時代の客なので、当時の親切極まりない接客が懐かしいのですが、この方もどうやら同じようです。大きくなった今ではそれはノスタルジーでしかないのかもしれません。
「お金はこの次でいいよ」
とか、
「えっ、2度パンクしたらそりゃスペアないわなぁ。これ使いなよ」
と社長の鳴嶋勇さんに中古のチューブラタイヤを貰ってしまったり、とか。
そうはいっても、顧客愛顧にしっかり応え、臨機応変性と専門性に優れた、現在のなるしまフレンドの接客レベルは群を抜いていると思います。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
過去にも一緒に登坂したことのあるDAHONの黄色い小径車の若者とあいさつ。
「小径車いないですねぇ~」
かつては小径車のグループが参加していたのですが、100kmクラスではすっかり小径車を見なくなってしまいました。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
80kmあたりのエイドステーションにて。ミヤタのかつての主力車種LeMANSで走る、毎年お見かけする方がいらっしゃったので、自転車について訊いてみました。50kmコースを走る、すこし脚が不自由な方。この年季の入ったLeMANSに関する数年来の謎を解くことができました。訊くと、16歳の時の自転車だそうで、現在44歳なので28年くらい前の自転車だと。塗装はそれなりに傷んでおり、この人とともに28年間歩んできた自転車なんだなあと思いながら眺めてみます。独特のオーラを穏やかに放っているかのようでした。屈託のない聡明な語りの彼に私は元気をいただき、凄みのある自転車と彼の28年間を勝手にあれこれ想像するのでした。
「じゃ、また来年!!」
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
無事走り終え、自転車をクルマに収めようとしていると、かつて実業団で森幸春や高橋松吉らと走ったという凄い人のクルマの隣だったことが判明。私のケルビム小径車を見て、
「あー、ケルビムって、僕が競技を始めた時の最初のロードだったんだよね」と。
1976年、高1の時から登録選手として競技参加していたそう。となると当時はまだ、エディ・メルクスの時代。私は当時中3の田舎者で、小さな書店でサイスポを立ち読みしては、不思議な世界があるもんだ、と思いを馳せていたころです。この方、若いうちからとんでもない経験をされていたようです。
あの当時の競技環境の話、森選手の話などなど、延々面白い話を教えていただき、じっくり聴き入ってしまいました。暫し作業は中断。あのころ競技をされていた方々というのは、エディ・メルクスの時代を明確に意識した最後の世代かも知れません。その話っぷりに、
「もしかして当時のサイスポに出たりしてませんか?」
「んー、1976年の9月号あたりだったかなぁ」
「あとは1980年の何月号だったか・・・」
まだまだ面白い話がありそうです。来年に期待します。
*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*─・‥…─*
年に一度の栄村。
当局が把握していない私設エイドステーションもあり、地元の方々の心のこもったおもてなしがうれしい。
ネクタリン、ズッキーニ、トマト、スイカ、バナナなどなど、ありがたくいただき(というかひたすら食い続け)、
しっかり上ってしっかり下ってしっかり曲がり、
いろんな方と楽しい会話が弾みました。
合併特例債で箱物増えて宴の後
そんなつまらない利権的前時代的趨勢とは無縁の栄村。広くて深い栄村。
一年を平穏無事に過ごして、来年もまた参加したいと思いました。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★★
年 式→2015