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『月刊事業構想』2015年8月号、事業構想大学院大学出版部、定価1,300円
大特集「スポーツ起点の新戦略」
ツール関連イベントがさいたま市で開催され、非常ににぎわったというのはニュースその他で見聞して知っていた。だから次回は見学に行く計画をたてているかというとそんなことはなく、「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し(さいたまもけっこう遠し)」で、すごいなあと思うだけだった。
職場に転がっていた雑誌を眺めていて、関連記事が掲載されていたので(今さらかもしれないが)紹介する。内容はツール・ド・フランスをはじめ多くの国際大会の誘致に成功したさいたま市の事例紹介。トップダウンの戦略的行動による誘致成功であったことが理解できた。
特集の前言。
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2020年東京オリンピック・パラリンピックが迫る中で、スポーツ産業の市場拡大が期待されている。それは、地域活性の取り組みともつながり、地域に人を呼び込み、産業振興につなげるツールとしてスポーツの価値が見直されている。…今後、企業や地域には、どのような取り組みが求められるのか。スポーツの可能性、ビジネスチャンスを探る。
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以下、記事内容をまとめて補足(※)を追加した。
スポーツコミッションの展開で先行 さいたま市はスポーツの「聖地」※同誌28-29頁掲載。
(1)さいたま市の動き
1993年(Jリーグスタート)「サッカーのまちづくり推進協議会」発足。
2009年、スポーツ政策を重視する清水市長が就任。
2010年、全国で初めて「スポーツ振興まちづくり条例」を制定。
2011年、本格的スポーツコミッションとしては国内初となる「さいたまスポーツコミッション」(SSC)を設立。
2013年、さいたま市成長戦略を策定。同戦略ではスポーツ観光・産業都市戦略をプロジェクトの一つに掲げている。
http://www.city.saitama.jp/006/007/002/019/p035890.html※同年、SSCの取組が評価され、スポーツツーリズム分野において「観光庁長官賞」を受賞。
※スポーツコミッションとは:スポーツイベントの誘致と開催支援を行う組織。行政領域を超えて機動的に活動を展開し、地域スポーツ振興と地域経済活性化を図る。映画ロケ誘致のために設置された「フィルムコミッション」のスポーツ版。アメリカでは1980年代からスタートした組織で、現在では500以上の組織が全米各地に存在する。日本でもSSCのほか、市レベル(新潟市、松本市)、県レベル(佐賀県、愛知県)、広域連携(関西、静岡、鳥取)、NPOなどにより設置されている。
※SSCの活動は以下のとおり、多岐にわたる。(HPより引用
http://saitamasc.jp/)
会場の確保・調整、財政支援、行政機関への調整・関連企業へのあっせん、写真貸与・提供、広報・PR活動
(2)SSCが誘致に成功した大会
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム、FIFA U-20女子サッカーワールドカップなどの女子サッカー大会、日本女子プロ野球リーグ公式戦、バトミントン日本リーグ、大相撲さいたま場所、総合格闘技UFCなど。
・実績
2011年17件(設立)
2012年37件
2013年42件
背景には特定協議の誘致に力を入れることで協議の聖地(メッカ)になることを目指す戦略がある。
(3)ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
・誘致の成功要因;日本スポーツツーリズム推進機構と連携し、情報収集から誘致活動を展開したこと。
http://sporttourism.or.jp/・2014年第2回大会の経済効果;10万人以上の動員、28億5600万円の経済効果との見積もり。
http://cyclist.sanspo.com/172162※ちなみに2013年さいたまクリテに関しては早稲田大学スポーツビジネスマネジメント研究室によるレポートが公表されている。
http://saitama-criterium.jp/2013website/pdf/2013_report_chosa.pdf(4)さいたま市の優位性
・立地;東京から30分圏内で、新幹線5路線をはじめとするJR各線や私鉄が乗り入れる結節点。北陸や北海道などからもアクセス良好。
・気候;冬は晴天が続き降水量も比較的少ない。
・大型スポーツ施設が充実;サッカースタジアム3、野球場、アリーナ、大型体育館など(施設利用はsccに優先予約権あり)
(5)課題
・市内スポーツ施設の市民利用とのバランス
→施設がイベント誘致のボトルネックにならないよう、屋外競技(マラソン、サイクリング、ウォーキングなど)増加を戦略的に取り組み。
(6)今後
・スポーツ観戦来訪者の滞在時間を延長し、周辺観光や市内消費額を促す
・スポーツ都市としてのブランド確立、地域活性化やまちづくりへ
価格評価→評価なし
評 価→★★★★★
観光といえば近年は外国人受け入れ(インバウンド)がもっぱら注目されていますが、国内市場もまだまだ向上の余地ありということで、東京マラソンに代表されるシティマラソンに代表されるスポーツツーリズムが熱いと、こういうことですね。