購入価格: $250 (個人売買)
・フルカーボンステム自体、微妙な位置づけ
アルミの芯材にカーボンをラップしたものは多くとも、フルカーボンのステムというのはあまり選択肢がありません。
ステムは形状的にカーボンで作ると鍛造アルミ製より重量が嵩むだけでなく、異なるサイズを揃えるために金型にかかるコストも跳ね上がる、出来上がったステムの重量剛性比はハイエンドのアルミと比べると明確なアドバンテージがない、などデメリットばかりで製造側からしてみるとうまみがまったくないからというのが実情らしく、市販化されていてそれなりに実績のあるものといえばこのENVEのものと3TのArx LTD、過去に販売されていたZippのSL145とSL Sprint位でしょうか。これらはメーカーが違えども全部中国にある同一工場で作られているというのを聞いたことがありますが、その正否はともかくとしてもなるほどと思えてくる位に似通った形をしています。すなわち、大径化・スクオーバル化されたカーボン製の胴にアルミの雌ネジがモールドインされているものばかり。そこそこのコストで性能を確保しようと思ったら、こういう造形にするほかないんでしょうね。AX LightnessやMcfkといった小規模のハンドメイド品には○断面の胴を持ちアルミ製のステムに近い形をしているものもありますが、どれもキワモノ臭漂うものばかりですし…
・まあいずれも似たようなもの、一応振動吸収はしてくれるしそこそこ硬い。
このうちArx LTDとENVEのものは所有して使ったことがありますが、正直見た目の違いの他あまり言及できるようなことがありません。ENVEの方は100mmで実測118g、冷間鍛造のアルミフェースプレートはボルトピッチも通常のアルミステムより若干広くてクランプ部分の剛性向上に一役買っている、という点はArxとほぼ同一。違うところはというと、ステアリングコラムクランプに用いている雌ねじはArxがチェーンリングナット状のアルミパーツで本体とは別になっており交換可能な構造である一方、ENVEのほうは完全にモールドインされていて交換不可となっている点、くらいでしょう。本体部分ではArxのほうが若干コストが余計にかかっている印象ですね。逆にボルトはENVEのほうがこだわっている感じで、Mettecというアメリカの合金ボルト専業メーカーから仕入れたらしい総鍛造のボルトが使われています。このボルトはCiamilloの軽量キャリパーでも使っていましたが、耐久性も信頼性もしっかりしているなかなかのものです。
・ハンドルやシートポストと揃いなら、それ以外だとほとんど意味のない投資。
ステアリングコラム部でのスタックは40mmと標準的なサイズ。100mm程度のステム単体で剛性がどうこうという比較はかなり無理があると思いますが、フルカーボンなだけあって少なからず微振動は消してくれる効果があります。同じバイクに同じハンドルでも、チタン製ステムと入れ替えるとはっきり違いが体感できるくらいに路面からのノイズを均してくれます。横から見ると四角くてずんぐりしているので細身の金属バイクには不釣合いな外観ですが、乗り心地向上とENVE製ハンドルやシートポストとのマッチングを優先するなら、これもアリかなぁと思えるくらいには満足しています。とはいえ、ハイエンドのアルミステムと比べ特別軽いわけでもなく、びっくりするくらいハンドリング性能が向上したりもしないので、軽さや剛性向上だけを期待して買うと、きっととても損した気分になってしまうでしょう。
ハンドルバーのレビューでも触れましたが、こちらもブラックオンブラックのカラーが標準となるようです。
価格評価→★★☆☆☆ (アルミステムの倍ですし…)
評 価→★★★☆☆ (性能は否定しませんが、ハンドルとペアでなければ買う意味はほとんどないかと)
年 式→2014
カタログ重量→ 115g (実測重量 118g @ 100mm)