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■■■ ≪ヒルクライム計算≫と≪RoadLoadSurveyor≫ ■■■
ヒルクライムや巡航時のパワーを計算することができる≪ヒルクライム計算≫のサイトを紹介した、baruさんの投稿(2014年2月18日)
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=11630&forum=105&post_id=20154#forumpost20154≪ヒルクライム計算≫のインタフェイスは簡素でわかりやすく、よく出来ています。baruさんのように
> 「大会で目標のタイムを出すために必要なパワー」
を算出するなど、いろいろな応用がくふう次第で可能です。お薦めです。
ところで、CBNでは≪RoadLoadSurveyor≫という計算ツールが2013年夏にリリースされています。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/static1/index.php?content_id=32絶望的なまでに長ったらしい取扱説明書と、分かりにくい使い方故、何か事情を抱えている方(?) しか使っていないと思いますが、EXCELの表計算シートに数式がそのまま実装されており、しかも数式の意味は取扱説明書に詳細に説明されているので、これをひととおり読破すれば、自転車の走行抵抗を構成する各種現象の物理的な位置づけ、インパクトについて理解することができ、またEXCELの表計算シートにそのまま実装されているため、改造し放題の仕様となっています。
本稿では、baruさんが投稿された≪ヒルクライム計算≫の内容と同じ条件を使って、CBNの≪RoadLoadSurveyor≫で計算して、結果を比較することで、≪RoadLoadSurveyor≫の一端を覗いてみます。
■■ 入力するパラメータ・・・≪ヒルクライム計算≫の場合 ■■
baruさん御投稿の≪ヒルクライム計算≫で実際に入力されている『ツールド草津』の数値を使います。以下の数値です。
≪ヒルクライム計算≫
・コース全長 : 12km
・標高差 : 760m
・目標タイム : 44.8分
・体重 : 78kg
・自転車+装備 : 9.0kg
とても簡単です。
以上の入力で得られた結果をbaruさんレビューから引用すると、
> 気温15度の時、必要な平均出力は282Wと出ました。
であり、さらにパワータップによる現地実測結果も示されており、
>パワータップによる実測平均出力は280Wでした。
だそうです。実績のあるパワータップの数値にここまで一致していれば、計算機としては十分すぎる精度と言えます。さらに、ふたつの数値の差は0.7%ですが、これは非常に小さい値です。まあ、どちらも真値から同じくらいずれているという可能性も無くはないですが、それはまた別の話になります。
■■ 入力するパラメータ・・・≪RoadLoadSurveyor≫の場合 ■■
マジメに計算ロジックを構築すれば、同じような数式を使うことになるので、入力するパラメータも似たようなもの、と言いたいところですが、≪RoadLoadSurveyor≫の場合は少々くふうが必要です。まず、
https://cbnanashi.net/cycle/modules/static1/index.php?content_id=32から≪RoadLoadSurveyor≫をダウンロードしてEXCELファイルを起動します。
次に、次の図のように5つ並んだシート選択タブから緑色の≪ヒルクライム≫を選びます。
すると次の図のようなシートが現れます。シートのA列目で青く塗りつぶした●印の項目に、ユーザが入力します。
この時点で「メンドクサ~」ですが、そこを堪えて前に進みます。
まず、ダウンロードしたEXCELシートのデフォルト数値からユーザの数値に必ず変更しなければならないのが、
4行目:ライダー身長
5行目:ライダー質量
6行目:自転車質量
11行目:勾配
13行目:距離
15行目:目標速度
の6個です。≪ヒルクライム計算≫では
・自転車+装備 : 9.0kg
という入力項目がありましたが、これは
6行目:自転車質量
で入力すればよいでしょう。
次に
11行目:勾配
です。これは少々面倒ですが、勾配計算の定義にしたがって、標高差760mと走行距離12000mを使って、
で計算します。6.34607%となります。
次に、
15行目;目標速度
です。距離12kmを時間44分45秒で割った速度16.089385km/hを使うと、走りだしの加速時間分だけ余計に時間がかかってしまい、走行時間が5秒だけ余計にかかり、計算結果の27行目には44分50秒が示されてしまいます。走行速度を少しずつ上方修正して何度か計算トライを繰り返し、最終的に16.12km/hを使うに至ります。
さて、分かりにくいのが、
7行目:ホイール慣性モーメント
8行目:タイヤ実効半径
9行目:タイヤ転がり係数
10行目:空力抵抗係数
ですが、分からない数値はとりあえず放置、で大丈夫です。
さらに、何を言っているのかさっぱりわからないのが、
18行目:限界トルク
19行目:限界ケイデンス
ですが、これも放置!で大丈夫です。それぞれちゃんと意味があり、理由があって存在している枠ですが、興味のある方は取扱説明書をどうぞ。
それにしてもこのEXCELシート、いきなり使うのはかなり厳しいデスねぇ。。。
■■ ≪ヒルクライム計算≫と≪RoadLoadSurveyor≫ 何が違うか? ■■
まず、≪RoadLoadSurveyor≫の≪ヒルクライム≫シートには、一定速度走行を行うための速度制御器が仕込んであります。大げさに言えばライダーがサイコンを見ながら速度を一定にキープするという行為を計算上で実現しているということです。走りだしの速度は零で、そこから加速して、目標速度を少しオーバーシュートしてから一定速度走行に至ります。このため、距離12kmを時間44分45秒で割った速度16.089385km/hを目標速度として設定すると、走りだして一定速度走行に至るまでに少し余分に時間を使ってしまい、走行時間が5秒だけ余計にかかり、44分50秒になってしまいます。そこで、走りだしの加速時間を挽回するために、走行速度を僅かに上方修正して、16.12km/hを使うに至ります。まったく器用貧乏です。
≪RoadLoadSurveyor≫の≪ヒルクライム≫シートでは、標高による空気密度変化の影響を考慮していますが、実は、コレを考慮しなければ、16.089385km/hを使ってスッパリと計算することが容易になります。
一方、baruさんご紹介の≪ヒルクライム計算≫では、そういった面倒なところは省略しているようです。それは、スタート地点標高に関わらず、標高差だけを与える、という方式を採っていることからも明らかです。無論、わざと省略しているわけで、こういった使いやすいツールを作成する技量を持つ方であれば、いくらでも複雑なツールを造りこむことが可能です。
■■ 結果比較 ■■
結果の比較です。
ツールド草津を44分45秒で走るために必要な平均パワーは、
≪baruさん実車のパワータップ実測平均≫→280W
≪ヒルクライム計算≫→282W
≪RoadLoadSurveyor≫→280W
です。期せずして三者が似たような数値となりました。
■■■ まとめ ■■■
なるべく簡単に使えて、誰にでも容易に理解できるわかりやすさを狙ったのが
≪ヒルクライム計算≫
よく出来ています。
一方で、標高による空気密度変化と標高変化に伴う気温変化による空気密度変化、この両方による空力影響の変化や、駆動伝達系の効率の影響など、考えられる影響を網羅的に取り入れているものの、とにかく分かりにくいのが
≪RoadLoadSurveyor≫
ということになります。
極端な使い方をしない限り、両者は同じような結果をもたらしますが、≪RoadLoadSurveyor≫は使い倒し甲斐があるとも言えなくもありませんし、まさかの使い方を発見することができるかも知れません。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★☆☆(少々判り難い)
年 式→2013