購入価格 ¥8万円ちょっと(確か)
~ランドナーとしてのミニベロの限界を切り拓く、漢の超絶積載マシン~
その加速性の良さと小回りの良さ、またロードやクロスほどガチっぽさのない可愛らしいルックスで、軽快街乗りマシンとしてのユーザーが多い印象のミニベロ。
(ときどきレースでもミニベロで出場されている猛者の方もお見かけしますが、それは置いといて…)
このRSP(先のbun-bunさんの投稿はたぶんRSC?)も、そんな街乗り・たまにちょっと隣町のカフェまでサイクリング、、、といった使い方を基本コンセプトにした、どちらかというと見た目重視なマシンじゃないかなぁと思います。
そして十二分にそのコンセプトを満たし得る良機でありました。
だがしかし、RSPの限界はこんなものではないのです…!
ちょうどジロがクライマックスへ向けてヒートアップしているいま、ふと懐かしさを覚えたので、おそらく日本で最もエクストリームにRSPを使い倒したレビュー(というか半分回顧録)、そしてミニベロについての考察を投稿いたします。
1.購入前 篇
RSPと私の出会いはちょうどいまから5年ほど前。
そして初めて購入したスポーツサイクルがこのRSPでした。
大学時代、暇さえあればバイク(自動二輪)に乗って峠で膝をスリスリしていた私は、卒業旅行を計画するにあたり、無性にヨーロッパアルプスを走りまわりたい衝動に駆られ、なんとか愛車(もちろん自動二輪)をヨーロッパに持ち込んでツーリングできないかと検討していました。
ですが、輸送コストや保険、手続きの煩雑さ、故障時のリスクを考えると、一大学生の卒業旅行としてはとても現実的とはいえません。
そこで思い立ったのが、「いっそバイクを自転車に換えちまえ!」という案でした。
キャンプ好きでもあったので、自転車にテント積んで、山を登って、下りをかっ飛ばせばええやん、と…
そして断腸の思いでバイクを売り払い、その資金を元にして自転車の購入に踏み切ったわけですが、全くの素人目線で当時の私がマシン選定した際の条件は以下のとおりです。
①積載時の重心がなるべく低くなること
②1か月分の生活用品を十分に積載可能であること
③ハードユースに耐えうる頑丈なフレームであること
④帰国後も日常の移動手段として使い易いこと
⑤ヨーロッパの歴史的な街並みに馴染む外観
①
セオリー通りであれば、700Cないし650Cのランドナーを選ぶところなのでしょうが、
アルプスの素晴らしい景色を眺めながらダウンヒルを堪能するには、高速安定性を考慮して可能な限りキャリアの位置は下にしたいところ。
②
そしてタイヤ径の小さいミニベロであれば、重心位置を下げられるだけでなく、車体そのものの「余白」が圧倒的に多く、積載の拡張性にも優れている。
気がしませんか?笑
↑
ミニベロには「余白」が多い、の図
③~⑤は割愛しますが、こうして旅の相棒としてクロモリミニベロに白羽の矢を立てるに至りました。
しかしミニベロといっても、同価格帯ではビアンキ、BRUNO、MASI、GIOSほか多数のメーカー(商社)から発売されています。
その中で特にRSPを選んだ決め手、同価格帯の他社ミニベロよりも良い点はこんなところでしょうか。
【決め手】
・コンポーネント(特にブレーキ)をケチっていない。
→変速はクラリス、ハブもメンテ性に優れたクラリスのカップ&コーン。シマノのブレーキレバーにティアグラ相当のカンチブレーキ、スギノクランク。
・ホイールが451規格で、406よりも(やや)走破性に優れる
・フェンダーが標準装備で、前後キャリアも装着可能な豊富なダボ穴
・BB後ろにセンタースタンド取付のネジ穴がある
・フロントディレイラーの取付用のサブフレームが設けられ、後々のギア比変更にも柔軟に対応可能。
・クロモリにしてはごついパイプで、ちょっとやそっとではヘタらなさそうなフレーム
・ブラックカラーにゴールドロゴと渋いカラーリングで、可愛らしさに寄りすぎないバランスの良さ。
2.欧州(実走)篇
RSPを日本で購入後、乗鞍や暗峠も含め1か月ほど日本で試験走行を行い、ヨーロッパ遠征に旅立ちました。
補給地点のない山岳地帯の走行を想定し、写真のとおりフロント:サイドパニア×2(衣類、食料品)、リア:登山用ザック×1(テント等のインフラ類)という装備です。
色々な積載パターンを試しましたが、山岳走行においては絶対重量もさることながら、車体の前後重量バランスの方が走行性能に与える影響が大きいと考えており、フロント/リアがイーブンないし、フロントヘビーな方が、圧倒的に登坂が楽だと感じます。
(ミニベロ用のキャリアの選択肢はかなり少ないのですが、このときのキャリアに関しては別途レビューできればと思います…。)
なお現地では、コースはジロ・デ・イタリアの山岳コースを中心に、ミラノ→湖水地方→スイス→ドロミテ山塊→ロマンチック街道というルートを辿っています。
結論から申し上げると劇坂、超級山岳、ゴリゴリのオフロード、ド平坦と、ありとあらゆる環境を写真の装備でほぼノートラブルで走破することができ、このRSPのランドナーとしての性能は正直期待以上でした。
もっとも、このバイクにそんな性能を期待する人がいるのか不明ですが…、以下いちおうのレビューです。(誰得)
↑
この程度のグラベルは超余裕
①乗り心地★★★★☆
初めてのスポーツバイクだったので、当時はまぁこんなものかという感じで特に乗り心地が悪いとは感じませんでした。タイヤ径が太くて空気圧も低いため、乗り心地は「多少カッチリしたママチャリ」といった感じです。
ただハンドルが丸ハンゆえ、ブラケットポジションでのスイートスポットが狭く、必然的に下ハンを握る時間が増えてきます。スレッドステムなので高さ変更自体はし易いのですが、フレームサイズが2択ということもあり、吊るしでベストポジションが決まらない人の方が多いのではないでしょうか。
ただ意外と良かったのがサドルです。廉価品なのは間違いないのですが、レーパンなど履かずとも違和感なく、毎日100~150kmを走り続けることができました。
少なくとも私のお尻との相性はばっちりでした。
②登坂★★★☆☆
フロント52-39、リア11-28(確か現行は11-32?)の8速なので結構ワイドですが、まぁシビアに走るわけでもないので必要十分という範囲でしょう。フル積載の状態でも超級山岳を7、8km/hでチンタラ登りきることはできるので及第点です。斜度20%前後の急坂やオフロードの登りになると、さすがにギア不足は否めませんが、それも根性でカバーできる範囲でした。
ちなみに積載なしの状態でひーこら頑張った場合は、カーボンロード比で峠のタイムが1.3-1.5倍程度に収まることが多いです。やはりミニベロとはいえ絶対重量が重いため、出足の軽さ=登坂の軽さとはなりません。笑
③巡航★★★★☆
小径車なので期待していませんでしたが、意外にもロード比▲5km/h程度(当方で30㎞/hちょい程度)であれば快適に維持できます。フル積載状態でも27~30km/h程度で走行できましたので、ファストランでもない限りは、フルサイズのランドナーと遜色ない性能といえるでしょう。
ホイールそのものの空気抵抗が小さいこともあるのかもしれませんが、長めのホイールベースや車体重量の重さが、良い意味でミニベロらしからぬ巡航性の高さに寄与しているように思われます。
とはいってもミニベロなので、獲得標高2,000m~3,000mともなると、一日150km程度が気持ちよく乗れる限界ですね。
④ハンドリング★★☆☆☆
ハンドリングがクイックなのは良くも悪くも、小径車の宿命でしょう。
ホイールベースが長めなので普通に走る分には全体としてバランスは取れているものの、激しく車体を振る(たぶんそんな乗り方はメーカー想定外)とフロントのクイックさとリアの重ったるさがちぐはぐな印象です。
また、フロントにサイドパニアを装着するとこの傾向は一層顕著になり、当初はかなりフラつきました。
とはいえ、自転車の速度域であればこれらは慣れの範囲で、2、3日もすればフル積載の状態でもオフロードやグラベルのダウンヒルをこなせる程度でした(たぶんそんな乗り方はメーカー想定外)。
⑤耐久性★★★★★
フレームや各パーツの耐久性は全く申し分ありません(後述のBB以外)。オフロードに突撃&山菜採りをした回数も数知れずですが、パンク1回のみでフレーム、ホイール、その他コンポには全くトラブルなくヨーロッパから帰国することができました。
⑥その他の感想 いいところ/よくないところ
【いいところ】
「下りが楽しい」
小径車ゆえ(?)なのか、ロードと比べて下りもそこまでスピードが上がりません。斜度5%程度の下りなら、ノーブレーキでもせいぜい40-50㎞/hぐらいがいいとこです。
ダウンヒル時に周りの景色を楽しむ余裕も生まれるので、このあたりはまさしくランドナーとしての真骨頂といえるでしょう。
また初期装備のカンチブレーキでも制動力は十分で、フル積載で雨の一級山岳を下る際も特に不安は感じませんでした。
「目立つ@ヨーロッパ限定」
あちらでは小径車があまり一般的ではない(?)のか、現地の住人やサイクリストたちにやたら声をかけられ、補給を恵んでもらったり、前を引いてもらったりと美味しい思いをすることができました。
旅のチーマ・コッピであるステルヴィオ峠では、追い抜いていったサイクリストたちが「なんかやたら荷物積んだ変な自転車がくるで」と山頂で吹聴してまわったようで、さながらジロのごとく、道の両脇を埋め尽くす人々の声援を受けながら山頂に飛び込むことができたのは良い思い出です。イタリア最高。
「フェンダーはやっぱり良い!」
小径車全般の宿命として仕方ないのですが、同じスピードではホイールの回転数がフルサイズ車のそれより多くなるので、フェンダーがないとロードの比にならないぐらい激しく泥はねします。
このRSPは初期装備でフルフェンダーとなっているのですが、なぜ他の小径車もそうしないのか不思議なぐらいです。
ヨーロッパの牧畜がさかんな地域では、道路が牛馬の糞にまみれていることも少なくはなく、そんな中を雨天走行すると…、、、あとはご想像にお任せします。笑
もしあちらへの遠征を検討されている方がいらっしゃったら、小径車に限らず、フェンダーはマストアイテムでしょう。
【よくないところ】
「ディレイラーガードが初期装備ではない」
購入後早々にディレイラ―ガードを装着しましたが、旅先での余計なトラブルを防ぐためにもデフォルト装備として欲しいところです。
転倒時にかえってフレームへダメージが、、、というリスクが無いわけではありませんが、少なくとも私がこかしまくった範囲では、RSPの頑丈なフレームなら気にするレベルではないと思います。
「フェンダーを外すのが面倒」
フロントフェンダーを外すにはスパナが必要となり、六角レンチのみでは対応できません。
(蝶ネジに変更することでいちおう解決はできますし、リアフェンダーさえ外してしまえば、フロンとフェンダーはつけたままオーストリッチの縦置き輪行袋にもギリギリ入るので、いいっちゃいいのですが…笑)
リアフェンダーについては六角レンチのみで外せますが、輪行時にはやはり手間なので、ここは分割式だとよかったなぁ…と思います。
「リムの摩耗が早い」
雨天のダウンヒルや積載重量のせいでもあると思うのですが、前述のとおり、小径車はホイールの回転数が多くなるので、リムの摩耗は明らかにフルサイズ車よりも早いです。
ディスクブレーキは小径車にこそ必要と感じます。
「補修部品の入手性が悪い」
先ほどヨーロッパでは小径車が珍しい(?)と書きましたが、451規格のチューブなどはあちらの自転車屋さんで見つけることはできませんでした。
日本でもフォールディング含む小径車では16インチや406規格の方が多いでしょうし、それでも町の自転車屋さんレベルでは消耗品が置いていないこともあります。旅先でのトラブル対応という点で、このRSPに限らず、ミニベロをランドナーとして運用するには、ある程度自己救済できる知識や装備、あと諦めの良さは必要かもしれません。笑
3.カスタム篇
無事に帰国したのち、ちびちびと以下のカスタムを実施しました。
①補助ブレーキレバーの撤去
小さめのレジ袋ならちょうどいい感じにひっかけておけるので、便利といえば便利だったのですが、ブレーキのフィーリングがなんとなく気に入らないので外しました。
ちなみに、補助ブレーキがあることでDHポジションの際に腕が置きやすくなります。
実際にロマンチック街道ではDHポジションをとれたことで、かなりエアロ的に楽ができたのですが、もしかしたらメーカーとしては補助ブレーキではなく、孤高のランドナーとして初めからこのような狙いで取り付けていたのかもしれません。
②BB、クランクの変更(スギノ→FC4600)
ヨーロッパ遠征中、山岳地帯ゆえほぼ毎日のように雨天走行を強いられた結果、BB(スクエアテーパー)からカチカチと異音が発生するようになりました。おそらく初期BBのシールド性能はさほど高くないと思われます。
また、登坂時にクランク周りの剛性不足を感じたこともあり、シマノのアクスル一体型へ交換することにしました。
<交換後>
FC4600のチェーンリングは10速用のため、リングのみ当初からスギノクランクについていた8速用のリングを流用しています。微妙にツラが合わないので不細工ですが、8速での運用は変えたくないのでとりあえず我慢ですね。
一方、剛性に関しては劇的に上がりました。23Cで高圧運用するとまさにガチガチです。明らかに脚が終りやすくなりました。笑
おそらくこのRSP、剛性のポテンシャルは非常に高いものの、太くて重いフレームチューブから推察するに、フレーム自体の快適性はよくありません。
そこをサドル、クランク、タイヤあたりで良い塩梅にバランスをとっているようなので、むやみやたらなカスタムは考え物だと感じました。
ちなみにBBに関してはデュラグレードでも比較的安価だったので、9000系のBBを導入しています。
これに関してはあつらえたようにツライチになり、フレームもブラックなので一体感が非常によろしいです。回転性能も多少良くはなっているのでしょうが、クランク変更によるインパクトが大きすぎて性能面は分かりません。笑
③タイヤ
純性のKENDAタイヤ→ミニッツライト23C(ながらく)→ミニッツタフ28C(最近)という変遷を辿ってきましたが、①でも書いたように、細いタイヤだと快適性が劇的に低下します。その分よく走りはするのですが…。
少なくともこのバイクでレースする人もいないでしょうし、最低でも28Cのタイヤにとどめておくのが無難かなぁと、最近28Cに交換してヒシヒシと実感いたしました。
個人的には純正タイヤのポヨヨンとした感じが一番好きですが、市販されていないのが残念ポイントです。
④フロントフォーク&キャリア
当初はアルミキャリアで運用していたのですが、帰国後、より安心な鉄キャリアをオーダー製作することにしました。(@自転車工房エコー)
このときキャリア装着用も兼ねて、フロントフォークにボトルケージ用のダボ穴も増設しています。
メーカーとしては、間違いなくこんな改造は想定外&保証外なはずですが、元が頑丈なフレームですので特に問題もなく、日常のアシとして絶賛活躍中であります。笑
4.総評
フレームはラグ溶接ではなく、クロモリらしい繊細さもあまりない比較的廉価な車体ですが、その頑丈さから、近所のカフェから遥か異国の地の酷道まで、ありとあらゆる環境であろうと私を前に運んでくれる、小さいながらも頼もしき相棒です。
ちんまりしたそのミニベロらしいルックスも加わって、高級バイクとはまた違った意味で所有欲(とうか愛着)がどんどん湧いてくる、そんな健気な車体かなと思います。
願わくはいずれ我が子にこのマシンを受け継ぎ、RSPとともに色んな景色・世界を見て欲しいと思う…。
そんな気持ちになりながら、かつて走った道を駆け上がっていくグランツールライダーたちを画面越しに眺める初夏の夜長でありました。
価格評価→★★★★★(←・8万円ょっとでたくさんの思い出を手に入れることができた。これからもよろしく。)
評 価→★★★★★(←カスタムしたものの、なんやかんや初期状態がベストバランスだと思う。)
<オプション>
年 式→2014
カタログ重量→ g(実測重量 g)