購入価格: ¥9,458 (税込) ※EVANS CYCLES
標準価格: ¥11,062 (税込)
『憧れのパーツを遂に取り付け。期待を裏切らない性能。多様なシフト操作はクロスバイクの楽しさを大きく引き上げる』
■ 遂にDEORE XTのシフトレバーを入手
私のクロスバイクGIANT SEEK R3は、トレッキングバイクコンポーネントDEORE XT T610シリーズで10速化したものだったが、早い段階から使っていたペダル、手組みホイールのハブ、VブレーキはDEORE XT T780シリーズになった。同シリーズのリアディレイラーRD-T780を衝動買いして取り付けた時、チェーンの滑らかで静かな動きに大変驚かされた。
こうなってくるとシフトレバーやフロントディレイラーもDEORE XTにしたくなるのは自然な流れ。早速、シフトレバーSL-T780、フロントディレイラーFD-T780を購入することにした。尚、トレッキング用のパーツはショップでほとんど見かける機会がない。だから、私は確実に入手するため、在庫があるEVANS CYCLESで購入することにした。
写真: SHIMANO DEORE XT SL-T780
■ フロントトリプル専用、リアはMTB10速に対応
SL-T780の仕様は以下のとおり。SL-T610やSL-T670と基本的な仕様は同じだが、SL-T780の方がシフト操作が多機能なのが特長だ。リアはMTB10速用も動作可能だが、フロントの互換性はシマノのテクニカルインフォメーションでは読み取れない。
DEORE XT M780シリーズのシフトレバーSL-M780とは互換性があるが異なる点が多い。他のトレッキングバイクコンポーネント同様、DYNA-SYSのDのロゴがない。フロントトリプル専用で、フロントの変速をダブルとトリプルに変更できるモードコンバーターは搭載されていない。インジケーターユニットは取り外せるようだが、代わりに取り付けるフタは付属していない。
図(左) : SL-T780のスペック ※シマノのカタログより抜粋
図(中央): SEEKのリア駆動系の組み合わせ ※全て互換性あり
図(右) : SEEKのフロント駆動系の組み合わせ ※全て互換性あり
■ 塗装の質感は高くない
SL-T780を箱から取り出してまず感じたことは、SL-T610に形状が酷似しているということだ。よく見ると細部で異なる点が多いが、SL-T610やSL-T670はSL-T780を踏襲したデザインであるといっていいだろう。SL-T780のボディはGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を塗装で仕上げたもので、リリースレバーはスチールをGFRPで覆った作りになっている。下位グレードとの大きな違いはメインレバーの材質で、SL-T780のみアルミ製になっているのが特徴だ。
ただ、表面仕上げはSL-T610とほぼ同様。グレードがDEOREなら悪くない質感だが、DEORE XTだと物足りなさを感じてしまう。アルマイト加工は無理でも、もうちょっと塗装に深みが欲しかった。特に残念なのがメインレバーの塗装の粗さ。せっかくのアルミ製レバーでもこれでは気分が高まらない。個人的にはメインレバーのカラーもブラックにして欲しかった。同一パーツ内でシルバーとブラックの2色が混在するのが、DEORE XTのデザインで気に入らない点だ。
写真(左) : SL-T780の塗装の質感はあまり高くない
写真(中央): メインレバーの色は好みではないが、自転車の正面から見ても目立たないのが救い
写真(右) : 質感が高くないいからDEOREのブレーキレバーにも合うという考え方もあるか…
■ アルミ製レバーのカッチリした操作感、ベアリングによる滑らかな動き
SL-T780はメインレバーもリリースレバーもSL-T610とほぼ同じ形状をしており、SL-T610と同じ取り付け角度でも全く違和感なく使うことができた。長めのメインレバーは力を入れやすく、エルゴノミックな形状のリリースレバーは指の腹を乗せやすい。指とレバーの一体感は快適なシフト操作に大きく影響すると改めて感じた。だが、レバー形状はほぼ同一でもシフトのフィーリングはかなり異なる。
アルミ製のメインレバーは剛性感があって、操作時にロスなく力が伝わる感じ。レバー基部にベアリングが入っているのも大きなポイントだ。フロントのアウターギアへのシフトアップは、ハンドルバーを握ったままでも親指1本で無理なく行える。リア側はディレイラーのスプリングテンションの低さと相まって、ますます軽くてスムーズなものになった。つまり、SL-T610の軽快なクリック感に滑らかさと軽さを加えたのがSL-T780だ。リリースレバーの操作感については後述したい。
写真(左): レバーの形状はほぼ同じだが、SL-T780の方が上質な操作感
写真(右): レバーの裏側はSL-T610とかなり形状が異なる
■ 多様なシフト操作が最大の魅力
SL-T780の最大の魅力は多様なシフト操作だ。中でもインスタントリリースやマルチリリースは、トレッキングバイクコンポーネントの中ではSL-T780にしか搭載されておらず、下位グレードのシフトレバーと明確な差を付けている。特にリアのシフトレバーは頻繁に動かす分アップグレードの恩恵は大きい。スプリング力の低いトレッキング用のリアディレイラーと組み合わせると、軽いレバー操作に多様なシフト操作が加わり、クロスバイクの走行がますます楽しいものになる。
【ツーウェイリリース】
ツーウェイリリースはALIVIOより上位のシフトレバーに搭載されている機能で、リリースレバーを手前に引いても、前方に押しても解除できる。ツーウェイリリース搭載のシフトレバーを使うのは、SL-M590、SL-T610に続いて3つめだ。私は前方に押して解除しやすいように、シフトレバーの角度をセッティングしている。
手前に引く動作は、ブレーキレバーから人差し指を離してリリースレバーの下に潜り込ませる分、変速がワンテンポ遅れてしまうのが欠点だ。前方に押す動作ならブレーキレバーに指をかけたままでも親指で操作でき、メインレバーからリリースレバーへの親指の載せ替えも即座に行える。快適にシフト操作したいなら、この機能を搭載したシフトレバーを選ぶのがおすすめだ。
写真: リリースレバーを手前に引いても、前方に押しても解除できる
【インスタントリリース】
インスタントリリースはレバー操作と同時にワイヤーが解除され、素早い変速を実現する機能だ。今まで使ってきたシフトレバーはカチッと音がするまで引き切らないと解除されないものだったが、SL-T780はパスッ!!という独特の音と共に解除される。このフィーリングは実に爽快で、いかにも解除されたという感じが伝わってきて気持ちが良い。
SL-T780の変速は今まで使ったシフトレバーよりワンテンポ以上早い。大げさにいえば「変速したいと思った時には、既に変速が終わっている」という感じだ。特に高いスピードでは、高揚した気分にシフトの素早さが同調するようでとても楽しい。ただし、インスタントリリースは変速終了ではなく、変速開始が早くなる機能だ。極端にケイデンスが低いような場合は、解除が早くてもチェーンがギアに乗り上げるのが遅いこともある。素早く変速したいのは高速時なので、この点は問題でも何でもない。
【マルチリリース】
私が今まで使ってきたシフトレバーは、一度のリリースレバーの操作で1段しか解除できなかった。SL-T780のマルチリリースは一度の操作で2段一気に変速できる機能だ。右レバーのみに搭載される。ツーウェイリリースにも対応し、好みの向きに2段リリースできる。頻繁に使う機能ではないが、あれば便利で変速操作が楽しくなる。
1段目は普通のクリック感だが、2段目は1段目よりもやや硬めのクリック感になっている。2段目を硬くすることでシフトミスを防いでいるようだ。1段シフトしたい場合は軽く押し、2段シフトしたい場合は強く押し込めば、直感的にマルチリリースできる。当たりが出て2段目のクリックが軽くなった今でも、特にシフトミスはしていない。また、クロスバイクで舗装路を走るくらいならば、身体のバランスを崩してリリースレバーを押してしまうようなこともない。だから、私はマルチリリースのデメリットを全くといっていいほど感じない。
写真: 一度の操作で2段一気に解除できる
【リアの最大マルチシフト】
今まで使ってきたリアのシフトレバーは、メインレバーなら3段一気に操作することができた。SL-T780なら4段一気に操作することが可能だ。SL-T780の隠れた機能といってもいいかもしれないが、クロスバイクで平地を走る分にはほとんど使う機会がない。
写真: リアのメインレバーは4段一気に変速可能
■ ギアの位置が確実に分かるオプティカルギアディスプレイ
SL-T780のオプティカルギアディスプレイには目盛と数字が入っており、一目でシフトの段数がわかるようになっている。SL-T610やSL-T670とほぼ同じ形状だ。奥から手前にかけてディスプレイが広がっており、コンパクトな割にはかなり見やすい。今でもギアの位置を確認することが多い私にはとても便利な仕様だ。
写真(左): クロスバイクによく似合うSL-T780のオプティカルギアディスプレイ
写真(右): SL-T610とほぼ同様の形状だが、SL-T780の方がインジケーターのバーが蛍光色なので視認性が良い
■ SL-T780はずっと憧れていたパーツ
SL-T780は私の期待を裏切らない素晴らしいパーツだった。特にインスタントリリースの素早い変速の楽しさを味わうと、正直SL-T610には戻りたくない感じだ。マルチリリースは使用頻度こそ低いがあればとても便利な機能で、気がつけばいつの間にか直感的に2段シフトしている。また、単にシフト操作が多機能になっただけじゃないのはさすがXT。アルミレバーの剛性感やベアリングによる滑らかなレバーの動きなど、基本的な部分にも抜かりはない。それだけに塗装が残念だが、シフト操作が楽しさに比べれば些細なことである。
SL-T780はクロスバイクのパーツを交換した時に初めて知り、以来ずっと憧れていたパーツだった。そのパーツを実際に取り付けて走っているのだから感無量である。何度かシフトレバーを変えたが回り道ではない。Sl-T780の素晴らしさをより実感できるようになったと思う。SL-T780は私のクロスバイクの最高のアップグレードの一つになった。もうすぐ使い始めて半年になるが、今でも楽しさは変わらない。SL-T780は私のようにクロスバイクに愛着があるならきっと良い選択になるはずだ。
図: SL-T780の良い点と悪い点
写真: SL-T780を取り付けたGIANT SEEK R3
価格評価→★★★★☆ (値段に見合った大満足の性能)
評 価→★★★★★ (特にリアの変速、インスタントリリースが楽しい)
<オプション>
年 式→2012年
カタログ重量→247g (実測では246g)