購入価格: ¥0 (税込) ※完成車付属品
標準価格: ¥3,032 (税込)
『シフトアップが軽く、好きなタイミングで迷わず直感的に変速可能』
■ 105 5800シリーズのフロントディレイラー
私のロードバイク「GIANT DEFY1 DISC」は、メインコンポーネントに「SHIMANO 105 5800シリーズ」が採用されている。クランクセットはグループ外コンポのFC-RS500、チェーンはKMX X11Lだが、フロントディレイラーには「FD-5800-F」が使われている。
105 5800シリーズは、フロントの変速が劇的に軽くなったと好評だが、ロードバイクが初めての私が使っても確かに軽い。FD-5800は、フロント変速の直感的な変速操作を実現し、ロードバイクのストレスのない操作に貢献すると感じた。
SHIMANO 105 FD-5800-F
■ 直付けタイプの「FD-5800-F-L」
FD-5800はバンドタイプと直付けタイプの2種類が存在し、カラーはブラックとシルバーが用意されている。私のDEFY1 DISCには「FD-5800-F-L」という直付けタイプのブラックが取り付けられている。2×11速専用。トップギアは46-53Tと幅広く対応する。シマノのサイトを参考にすると、主な特徴は以下のとおりになる。
・長くなったプルアーム
・スプリングテンションの最適化
・ロートリム位置でのチェーン落ちの軽減
・直付タイプに採用の新しいサポートボルトによる安定した取り付けと剛性
・音鳴りを軽減するスキッドプレート
・コンバーターによるケーブルルーティング
なるほど、プルアームを長くすることでテコ比を大きくし、さらにスプリングテンションを低めにすることによって、軽い変速動作を実現しているということのようだ。シートチューブに貼り付けられたバックアッププレートに対し、サポートボルトは突っ張り棒のように支えることで剛性を実現。音鳴りの低減やフレーム形状によるケーブルルートの最適化など、FD-5800にはDURA-ACEやULTEGRAから引き継いだ、数々の新機軸が導入されている。
直付けタイプのFD-5800-F
■ 直感的な操作を可能にする軽く正確な変速
【軽いシフトアップ】
ロードのフロントの変速は重いという先入観がなんとなくあったのだが、想像以上に軽い動作。グリッとレバーを倒すと、スパッ!!とチェーンがアウターギアに乗り上がる。ガチャっという大きな接触音ではなく、カチャリとわずかに小さな音を立てる程度。タイミングや周りの音次第では、ディレイラーが動いたことすら気づかないほど静かだ。
トレッキングバイク用のDEORE XT「FD-T780」にも迫るシフトアップの軽さで、変速の直前にタイミングを計ったり、心の準備をしたりする必要はなく、変速したいと思ったタイミングで直感的に操作できる。シフトアップでレバーを倒す量も思ったほど多くはなく、押し込みが足りなくてガチャガチャ音を立てることはほとんどない。私はフロントの変速を割と頻繁に使うので、この軽さは走行の助けになる。
長くなったプルアームによる軽い変速
【まあまあ速いシフトダウン】
シフトアップの軽さを重視したのか、FD-5800はスプリングテンションが低めに設定されているようで、シフトダウンの速さには特別なものを感じない。歯数差の大きさも影響しているかもしれない。インナーギには静かに落ちるといった印象。
スプリングテンションの軽さは、これはトレッキングバイクコンポーネント「FD-T780」と比べると顕著だ。インスタントリリースによる素早いシフトダウンを狙ったためか、FD-T780はスプリングテンションが高めで、バチン!と力強く解除される。そのせいか、FD-5800を使った後では、歯数差の小ささの割にはシフトアップは軽くないと感じる。両者とも軽くスムーズな操作感だが、印象はずいぶん違う。
FD-T780の方がバチン!と強めにシフトダウンする
【高い剛性感と正確な変速】
サポートボルトやガイドプレート自体の剛性感のおかげもあり、正確かつ爽快感のある変速を味わえる。トップスイングタイプよりもリンクが長くなるが、このことによる剛性不足は特に感じない。チェーンが歯に乗り上げる感覚はFD-T780と同様だが、大きな歯数差を乗り上げる分爽快。レバーの操作をきっかけに、ギアやチェーンがまるで自動的に乗り上げている感覚が伝わってくる。ちなみに、変速のスムーズさや正確さは、クランクをFC-5800に、チェーンをCN-HG600-11にすればますます良くなる。
フロントディレイラー自体のよさに加えて、FC-5800、CN-HG600-11でますます変速は好調
【音鳴りも気にならず快適】
音鳴りもほとんど気にならず、走行中は快適そのもの。アウター×ローの位置では、フロントディレイラーとチェーンが干渉して音鳴りが生じたが、トリム操作で回避できた。スキッドプレートは音鳴りの軽減に役立つが、スキッドプレートがどの程度強く当たっているかにもよる。わずかに擦れるような場合なら、音鳴り軽減効果は高いと思う。
スキッドプレートは樹脂製の黒い板
■ 変速調整の難易度は高め
チェーンウォッチャーを取り付ける際に、フロントディレイラーの取り付けと調整をやり直すことになった。クロスバイクでは3回もフロントディレイラーを交換したので、取り付けと調整にはそれなりに慣れているが、ダウンスイングタイプが初めてということもあり、納得するまで何度もやり直すことになった。最終的には、アウター×ロー、インナー×トップの位置以外では音鳴りしないように追い込むことができた。
方法はマニュアルのとおりだが、最初につまずくのがケーブルの固定。ケーブルを引っ張って強めに張らないと、アジャスターをチェーンの張りで回し切ってしまう。調整ボルトでディレイラーの左右の移動量を決めたら、ほぼアジャスターによるケーブルの張りで調整することになるが、張りすぎるとレバーが重くなるし、緩いとチェーンが落ちにくくなる。結局、アジャスターだけでなく、トップ側調整ボルトを反時計回りに回して対応した。これもマニュアルどおりだ。これで軽快でスムーズなシフトアップが決まるようになった。
また、FD-5800は「コンバーター」という突起の向きを変えると、フレーム形状によってケーブルルートを二通りにすることができる。コンバーターは2mmアーレンキーを突っ込んで向きを変えるのだが、固定ボルトを緩めたままだと、コンバーターがポロリと落ちてしまう。結局、コンバーターの向きがわからなくなってしまい、「TL-FD68」というコンバーター判定ツールを手に入れた。
(参考) SHIMANO ケーブル固定位置判別工具 TL-FD68のレビュー:
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=13680&forum=82&post_id=23741#forumpost23741 TL-FD68でケーブルルートを最適化できる (左)
アウターギアに変速しにくい場合は、ケーブルを張るかトップ側調整ボルトを反時計回りに回す (右)
■ 105 5800シリーズを選ぶ決め手
SHIMANO 105 5800シリーズは、フロントの変速の軽さが際立っており、好きなタイミングで直感的な変速動作を可能にする。軽い変速を実現するための数々のテクノロジーは、DURA-ACEやULTEGRAを踏襲しているだけのことはある。FD-5800によるフロントの軽い変速動作は、105 5800シリーズを選ぶ決め手になるはずだ。
価格評価→★★★★★ (完成車付属品としての評価。単体購入なら星4つ)
評 価→★★★★★ (軽い変速とそれを支える技術の数々が素晴らしい)
<オプション>
年 式→2015年
カタログ重量→89g