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自宅でやるチタン陽極酸化処理


 
numero_nero  2014-6-15 4:11
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自宅でやるチタン陽極酸化処理

購入金額 数千円〜2万円程度


このレビューでは具体的な方法のご紹介をしますが、くれぐれも以下のポイントだけはご了承頂いて下さるようお願いいたします。

・まずその①。私は金属の表面改質どころか高校の化学の記憶すら一生懸命思い出さないと出てこないような、ドが付く素人です。内容については書いた私だけでなくCBN管理人のマスターも含め一切免責、ということをどうかご了承下さい。なにぶん危険を伴うお遊びなので・・・

・その②。低圧とはいえ電気を扱います。しかも電極を繋いだ金属を液体に漬けるなどという行為が絡むので、ご自分で再現される場合はくれぐれも漏電・ショートに気をつけて下さい。家庭用電源でもヘタすると感電死しかねませんし・・・

レビューを書くあたって私なりには全力だったつもりなのですが、なにせ至らない素人ですので玄人の方から見るととんでもないことをどこかでやらかしちゃっているかもしれません。ご自宅で再現するのも内容を余所へ転載されるのもSNSなどで広めるのも、マスターが決められたCBN運営上の規則に従う範囲内でならばご自由にしていただいて私としては一向に構わないですが、結果についてはいかなる場合も全て自己責任、非は負いかねますのでひとつ宜しくお願いいたします。もし、この部分は間違っている、危険だ、というような箇所を発見された詳しい方がいらっしゃいましたら、Forumの方でお知らせいただくと助かりますm(_ _)m。

さて。
かつてCBN本館にBar Tapeという登録ユーザー専用掲示板があった頃のことです。
weightweeniesという巨大自転車フォーラムで拾った、とある情報をご紹介したことがありました。

"コーラと電源があれば、簡単にチタンのアノダイズ(陽極酸化処理)ができる"。

は? 何言ってやがる、こいつ???

となるのがまあ普通の反応でしょう。
私の化学知識が高校2年生の段階でほぼストップしているのをまずご了承頂いて、そのweightweeniesで見たスレッドやらあちこち検索で得た情報やらを整理してご説明しますと、概ね以下のような理屈で可能な事のようです。

・まず皆さんご存知の通り、チタンは非常に腐食しにくい金属です。その理由は強力な酸化被膜を形成する(不動態被膜)ことで表面を保護するという、肉を切らせて云々的な特性を持っている為。実は酸化が異様に早くすすんでしまうので、一定以上進行しないんですね。アルミも似たような特性を持っています。

・で、チタンは酸化すると表面がボンヤリと曇ったような膜を形成するんですが、リン酸溶液中で電圧をかけるとさらに面白い現象が起こります。なんと膜の厚さを電圧に比例して上げることができるのです。この膜は厚さに応じた光の屈折を発生させ、玉虫のような美しい光沢を放ちます、プリズムや虹と同じ現象ですね。ついでにもうちょっと突っ込むと、虹に含まれるような色しか出せない、つまり黒や鮮やかな赤などは得られない、といことでもあります。

この人為的な酸化を起こすには、酸化させる金属つまりチタンを陽極(アノード)に繋ぎ、陰極(カソード)側にはアルミを繋ぎます。酸化被膜が形成されるのは陽極側のみ(水酸化ナトリウム水溶液の電気分解で習いましたよね?陽極に酸素、陰極に水素が集まるアレです)なので、この特徴をもって陽極酸化処理=アノダイズ、と呼ぶそうです。陰と陽を逆に繋ぐとチタンの酸化は起こらず、ただブクブク泡が出るだけで終わりです(どうもこの時アルミ側に酸化が起こっているようなのですが、アルミは色が変わらないので何も起こっていないように見えるだけらしい)。

これを発案したのは話題の渦中、かの理研だそうで。そしてこの手法は、実用にあたってはチタンよりもアルミの方で重宝されました。チタンはもともと酸化や薬品などに強い金属ですが、どちらかというと弱いアルミはこの手法で膜を作り保護するといろいろ性能が上がる、ということであっという間に広まりました、これが私たちの知っているアルマイトです。

すでに書いたようにアルミはただ陽極酸化処理をしただけでは表面に濁った膜が出来るだけで、今回このレビューでご紹介する方法では色を付けることは出来ません。クリスキングとかフィルウッドのような美しい発色を放つ強い膜を得るには、染料を初めとする薬品と厳密な条件のコントロールが必要で、つまりDIYでやるのは困難というか実質不可能なんですね。

そこいくとチタンの方はなんともいい加減なもので、染料を入れずともリン酸を含む液体、つまりコーラなんかに突っ込んで陽極を繋ぎ電圧をかけるだけで、レインボーカラー(の一部)が手軽に出せてしまうのです!

--------------以上、長かったですがここまでが前口上。


さて、ここからは具体的な方法のご紹介に移ります。
・用意するもの

・陽極酸化処理する対象のチタンパーツ。
・陰極に繋ぐアルミ。台所にあるアルミホイルが最適です。
・リン酸水溶液。コーラの出番です。なお、リン酸が含まれているなら、普通のレッドラベルでもZeroでもDietでも、Nexでも特保のMet'sでも多分OK。あと、たしか酸化は温度が高い方が進むので冷やさず常温か生温いくらいにしておいたほうが、仕上がりが安定しそう。
・コーラを張ってパーツが漬けられる出来る樹脂容器。タッパーでOK。
・電源。仕上がりにアンペア数は関係ないようで、色味はボルトでほぼ決定します。家庭用コンセントに繋いで使う直流安定電源装置の他、海外などで見かける紹介には直列に繋いだ9V乾電池、車などのバッテリーを使った例があり、どれもちゃんと出来るようです。
・電源装置と電極を繋ぐコード。ワニ口コードを使うとボルトなどは簡単にクリップでき、確実に通電できます。
・念のため、気休めですがニトリル手袋で絶縁を図りました。
・処理後、洗浄用の水を張った容器と拭き取り用のペーパータオルもしくはウエス。


注意したいのは電源でしょうか。ご存知の通り日本の家庭用電源は100V15A。でもそれをぶち込むなんていうのは、間違ってもやっちゃいけない危険極まりない行為です。液体も同時に扱いますからヘタすれば感電死だってありえます。車のバッテリーなんかも、液が漏れると危ないですから使う場合はどうかご注意を。乾電池は一見手軽そうですが、直列に何個も繋いでショート・発火させないようご注意下さい。

私は、電圧と電流を独立してコントロールできる直流安定電源を手配しました。15,000円程しましたが、他にも使い道はありそうだったので。エーアンドディーというメーカーの最大出力30Vのモデルですが、現実的に新品で買えそうなのはこれぐらいだったので・・・入力と同じ電圧を出力できるようなモデルになると、それこそSRMのフルセットが新品で買えるような値段で、とても正当化できるような出費ではありませんでした。まあ、30Vでも綺麗なブルーが出せることがわかったので、私としては十分でした。ちなみにこの電源装置、直列で繋ぐと電圧をアップできるそうなので、60Vを出力したい人は2つ買って繋げるといいでしょう。乾電池を何個も繋ぐより安全で安定しているはずです。

ここまでで膜厚は電圧に比例して厚くなることを述べましたが、あちこちで収集した情報を総合してみると、どうも電圧と色にははっきり相関関係があるんですが、リン酸の濃度とか水溶液の温度とかチタン表面の状態などで若干の前後はするらしく、これからご紹介する手法をなぞってもお手元で同じ色を出すことは難しいかもしれません。もしかしたら気温とか湿度とかも絡んでいるかも知れないですし・・・

さらにDIYでやる以上用意できる電圧には残念ながら限界があります。今回の私の用意した環境では、出せる色は黄土色→ブラウン→茶色っぽい紫→フレンチブルーとネイビーの中間のような色、とかなり狭い範囲に留まってしまったようです。高い電圧を必要とする明るい色、例えばスカイブルーや黄色、緑、マジョーラのような紫を出したければ同じ電源装置を複数個繋いでパワーアップするか、乾電池直列で出すしかないでしょう。

おっと、もう一つ注意が。
中学生の時にやった水酸化ナトリウム水溶液の電気分解は有毒なガスの発生はなかったですが、コーラってどうなんでしょうね・・・アルミ通して30V程度の電圧かかったらヤバいガスが出た、なんていうと冷蔵庫や自販機の缶入りコーラはマズいんじゃないの、ってことになりそうなので多分大丈夫だろうとは思うんですが。念のため換気の良いところでやるがいいでしょう。一応、変なにおいがしたとか気分悪くなった、などは全く無かったですが…

電源装置使う場合は30分程度ウォームアップが必要な場合が多いと思うので、予め電源を投入しておきます。
このうちに、ボルトやパーツはできるだけ洗浄・脱脂して綺麗にしておきましょう。私は徹底を期して、前の晩にポリマールでゴシゴシ磨き、アセトンで脱脂しておきました。ここでどれだけ頑張るか、は色ムラの少なさや処理のスピードに直結しているような気がします。磨ききれていなかった部分は、酸化が遅れたり、膜ができなかったりしているようです。



とりあえず写真のような配置で並べてみました。この容器は200mlのタッパー。
これが浴槽になります。

陰極を繋ぐためのアルミホイルを適当な長さ切り出して(今回は25cmx25cm程度)折り畳み、容器の縁から底の方まで届くよう折り畳んで馴染ませます。縁より外に露出するようにしておかないと、電極が取り付けられませんので注意。そのままコーラ注ぐとアルミホイルが浮き上がってくるので、何カ所かテープで固定しておきました。



このアルミホイルの縁に陰極を繋ぎます。今回はコカコーラZero使用で、150ml位注いだでしょうか。ちなみに今回ボルトや細々したもの10個程を処理しましたが、浴槽のコーラはこのまま最後まで入れ替えませんでした。最初と最後で仕上がりの色やスピードが違うということも無かったです。さすがに気分的にアレなので、処理後のコーラは飲まずにそのまま捨てました。もしかしたら、流しに捨てるのもまずいのでしょうか・・・ちょっと不安です。



さて処理対象のパーツに陽極を繋いで電圧を上げ、浴槽へ浸します。"titanium, anodizing"あたりをキーワードにGoogle検索すると、電圧毎の酸化具合がスペクトラムになって表示されている画像がゴロゴロ出てきます。これらを参考に、出したい色の目星をつけて下さい。但し、この酸化処理の特徴として一度酸化すると研磨でもしないかぎり元に戻せないというものがあり、例えば20V近辺で一回引き上げたら紫っぽい色が出たけれど、なんとなく物足りないから30Vまで上げてまた漬けたら今度はネイビーっぽい色になった、でもやっぱ紫に戻したいな、と思ってももう戻せないので、低い電圧から小刻みに・段階的に色を確認しながら行うのが良いでしょう。

また酸化処理中にワニ口クリップがコーラに浸ったり、対象物と陰極側のアルミホイルが触れないよう、細心の注意を払って下さい。軽く触れてもバチッと火花が飛ぶし、あたったところは傷になって色ムラになります。なによりショートや感電はしたくないですよね。



陰極と陽極のつなぎ方を間違えていなければ、陰・陽極側ともに泡がブツブツ出てきます。浴槽に入れた瞬間かすかに対象が茶色っぽく変わりますが、みるみる色がかわるようなことはありません。でもそのままホールドします。大きなパーツや長いボルトは一回漬けるだけでは処理しきれないので、何回かに分けて酸化処理を行います。電圧設定を変えなければ、境目は判別できないくらいに仕上がります。安定電源ならずっと変わりませんが、バッテリーだと徐々に出力が落ちていくはずです。手早さが必要になりそうですね。

ちゃんと脱脂が出来ていれば、20〜30秒で泡が止まるようです。引き上げると、あれこれ酸化しきってないんか?と思うほど色は付いていません。引き上げる前に安定装置の電源を切らないようにしましょう。切る瞬間に電圧が変動することがあるそうなので、色味に影響しかねません。引き上げて、対象物を外してから切るようにしましょう。


(浴槽から引き上げ直後の状態)

コレを水で洗浄してウエスで拭き上げると・・・



でましたよ、ほとんど茶色のパープルですね。
この時の電圧は21Vでした。

もっと深いブルーが欲しいので、次は25Vに。



まだ少し茶色がかってます。

では一気にMAX 31.5Vへ-----



出ました、綺麗なネイビーブルー!!
あまりにあっけなく、しかも仕上がりが感動的に美しかったので声を上げて喜んでしまいました。
これ、むちゃくちゃ楽しいですよ!!

写真のボルト、途中でこっそり入れ替わってますけれど写真がピンぼけでこっちに差し替えなきゃならなかったんです。サーセンw データの改竄じゃありませんよw コーラでアノダイズはちゃんと実在するんです!!



というわけで、ロックリングやステムキャップ(虎の子のCKチタン製・・・! でも後悔なんかしていない)も投入してブクブク酸化処理。どうやらレーザーエッチングされた部分には酸化膜は出来ないようです。Sotto Voceみたいになると思って期待したんですが、ちょっと残念でした。

 

こんな調子で気付けば1時間半位遊んでたでしょうか。

やってみた感想として、ボルトやナット、ワッシャなどは比較的簡単に綺麗に仕上げられる一方、ステムキャップのように面積が大きくなると斑のような模様も出来やすく、前処理が甘いところでムラが出来る可能性もありそうだな、ってことでした。酸化処理自体は、電気の取り扱いさえ間違えなければどうということはありませんでしたが、特定の色を狙って出すのはやはり経験を積まないと難しそうです。しかも30V位の低電圧では膜自体があまり厚くないので、耐久性も多分それなりなんだろうなという点もちょっと気になるポイント。まあ簡単なので薄くなったらまた処理し直せばいいのですが。そのうち、乾電池を使ったもっと高い電圧での処理や他のコーラなどでの発色の差など試してみたいことはいろいろあります。アルミホイルとスポンジで筆を作り、コーラに浸して通電させるという方法もあるようなので、ビニール系のテープなどでマスキングすれば単純なラインは描けそうです。

今回はここでひとまず実験成功として打ち切りますが、皆さんもいかがですか!?

価格評価→★☆☆☆☆ (ボルト購入時にやってもらうと、100円程度のアップチャージですみますしねぇ)
評   価→★★★★★ (でもオリジナルカスタムが出来るし、すごく楽しかったので)
 
numero_nero  2014-6-16 9:58
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自宅でやるチタン陽極酸化処理

:さっそくエキスパートからのご意見を頂きましたので、追記します。

便利な直流安定化電源ですが、その取り扱いについてフォーラムで皆さんご存知GlennGouldさんから重要なアドバイスを頂きました。

(以下引用)
-----------------------------------
(直流安定化電源に陰・陽両方の電極をつなぐ直前に) 電流を零にして電圧設定してから通電ONすると、電圧が零になりますが、その後、電圧が所定値になるまで電流を大きくしていく、といった手順を踏まな​いと、もしかしたら痛い目に遭うかも、です。

numero_neroさんの画像の電源の場合は、上の数字が電圧、下の数字が電流ですが、その隣にCVつまみとCCつまみが​あるはずで、最初はCVとCCを必ず零にしておき、電源を入れたらCVを少し上げて、次にCCを少し上げて電圧がポン!と上がったら(CVパイロットランプが点灯したら)​、今度はCVをさらに上げて次にCCを上げて、という手順で電圧を所定値に持っていきます。ちゃんと接続していれば、設定した電圧とチタン試験片の大きさに応じた電流しか​流れないはずですが、念には念を入れて。。。
-------------------------------------
(引用以上)
(引用元 http://forums.cbnanashi.net/showthread.php?pid=8433#pid8433 )

これは、本体の電源を入れた後電圧を高く設定したままで電極をつないで通電させてしまうと場合によっては過電流が起こってしまうかもしれないので電圧・電流をゼロに設定してから徐々に通電させ、目標の出力を得なければならないという大切な手順についてのご指摘でした。仮にボルトやワニ口クリップが濡れていて、抵抗値が下がっている状態で通電させた場合、ショートを起こしてしまう可能性があります。一応私もそれを踏まえて作業していたのですが、ご説明が漏れていました。

また、本文中の写真では待機中の電源装置を電圧を上げたままの状態で撮影していたので、このまま通電しても大丈夫なのだという誤解を生じてしまうかもしれません。このままの状態で通電を開始してはいけませんので、ここに改めて注意喚起として記しておきたいと思います。電源装置にはちゃんと設定の方法について手順が記されていますので、きちんと遵守して安全に作業を行って下さい。

また、レビュー中では薄手のニトリル手袋を使って作業していますが、天然ゴム(ラテックス系)や洗い場で使うゴム手袋なども含め、絶縁効果などほとんどありません。万全を期すなら、低電圧用でいいので絶縁手袋を用意して作業するべきところです。幸い、最近は高圧バッテリーやモーターをどっさり積んだハイブリッド車が増えて市中のモータースなどでも感電対策が求められている関係で、少し大きなホームセンターへ行けば200~300V程度なら扱える絶縁手袋が割と安価(2~3,000円程度)で買えます。1,000V対応などとなると10,000円を超えてしまいますが、この作業に限ればそういった安いもので大丈夫です。

感電や発火事故防止のため、厳重な注意の下でお楽しみ下さい。
よくわからない事はそのままにせず、電気関係に詳しい人に意見を求めましょう。大昔アマチュア無線の免許を取得した際基礎は学びましたが、GlennGouldさんにご指摘を受けるまで重要なことがすっかり頭から抜け落ちていました。

価格評価→ -----
評   価→ -----
 
numero_nero  2014-6-27 11:01
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自宅でやるチタン陽極酸化処理

購入価格 ¥5,000~15,000程度



前回に引き続きご紹介するのは、電解槽と直流安定化電源を使わない方法です。
どうやるかといいますと、直列に繋いだ乾電池(6P型9V)を電源に使い、電解質を満たしたタッパーにパーツを浸すかわりに、陽極を繋いだパーツを電解液を浸したスポンジでブラシのようになぞって通電させる、という方法です。電源に関しては前回同様安定化電源を使っても構わないのですが、乾電池を使えば安定化電源よりも安価に、しかも簡単に高い電圧を得ることが出来る点がメリット。

と、ここで本題に入る前に…


簡単とは書きましたが、安全という意味は含みません。
作業としての危険度はさらに一段階上がることを強調しておきます。精々100V程度とはいえ、安定化電源と違い接地も絶縁もされていない電源を使うことになりますから、前回以上に感電には厳重な注意を要します。改めて感電の恐ろしさは頭の隅に置いておいてください。どのくらい怖いのか。それはwikipediaのエントリーを読むとご理解いただけると思います。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9F%E9%9B%BB

この作業で怖いのは、電圧よりも電流の方です。たかが電池の200mAh程度と侮るなかれ。0.1mAに満たない電流でも心臓に流れれば、心室細動を起こすリスクがあります。濡れた電極を扱いますので、誤った扱いをすれば冗談ではなく本当に電気椅子の極刑と同じ現象が起こりかねません。

電池や配線関係はコストを削減しても構いませんが、最低限の安全対策にはちゃんと予算を割きましょう。

https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12271&forum=59&post_id=21209#forumpost21209

覚悟は決まりましたか?
それでは、始めます!!

まず材料を用意します。



ワニ口クリップ (金メッキ加工) x4 1,200円
リード線 赤・黒 各2m 200円
中継用ヒューズホルダー・ガラス管ヒューズ 各200円程度
東芝インパルス Ni-MH充電電池x5、専用充電器 7,900円
りん酸三ナトリウム12水 2,000円
魚焼きグリル研磨スポンジ 375円
絶縁グローブ 3,800円
*その他、家にあったものからの流用
はんだごて・はんだ・フラックス、絶縁テープ、タッパー、マスキングテープ、アセトン

ここに挙げた金額は、あくまで例です。例えば、何度か使ううちに腐蝕しても構わないというのであれば、金メッキ加工したワニ口クリップを使わずとも通常のもので作業可能です。クリップがカバーで絶縁されているものを選びましょう。

リード線はホームセンターの電材売り場で買えます。今回は250Vまで使えるVSFコード(たしか1.25だった)を切り売りで買いました。電極を確実に視認できるよう、赤と黒で色分けしておきましょう。1本のリード線の両側にワニ口クリップをはんだ付けします。クリップをカバーから露出させ線の被覆を剥がしてはんだ付けする作業が必要になりますが、ワイヤーストリッパーとかフラックスなど適切な道具さえあれば難しいことではありません。気休めですが、私は陽極側に中継用ヒューズホルダーを挟んでみました。中のガラス管ヒューズの容量は250V0.5Aですが、6P電池は大抵200mA(=0.2A)ですのでこれで十分。直列回路ですから、1本あたりの電池が放つ電流を大幅に超えるような容量は必要ありません(ここらへんよくわからない方は、作業をやる前に詳しい方とよく相談しておきましょう)。容量の小さなヒューズは抵抗になってしまいますが、僅かなものですから…はんだを使ったことがある方なら、10分もあれば作れるごくごく簡単な回路です。

さて、電池同士の繋ぎ方ですが、6P型電池は電極にスナップがついていますのでこれを利用しました。+と-が互いにスナップで繋がるので、直列で繋ぐのと同じことになります。これを対抗させて配置させると、




電源のいっちょ出来上がり!!

本当はちゃんと絶縁したほうが安全なのですが…面倒なのでこのままです。ただし漏電・感電には対策をしておきます。理屈の上では何個でも好きなだけ繋いで巨大電圧を誇る電池が作れます(単三のオキシライド電池で飛行機飛ばした、とか100km/h出せる車作ったというのはこれの応用)が、電圧が高くなると放電の危険性が出てきます。陽極酸化処理に使うのは100V程度までなので、精々15本位あれば十分、命が惜しければ程ほどにしておきましょう。それに、あまり高い電圧で処理を行おうとしてもどうも結果は安定しないし失敗もしやすいようです。いろんな意味でリスクを避けるなら低い電圧で行ったほうがいいでしょう。3~5本位で(ネイビーブルー~マジョーラブルー~アクアブルーの範囲)行うのが一番安定しているように思われます。まだボルトでしか試してないのですが、ピンク・イエロー位までは電池でもちゃんと出せても一番高い電圧を要するグリーンはどうもうまくいきませんでした。電池は百均でも買えますが、質が悪いもの掴まされるリスクも…買ったそばから切れかかってるようなものですとか。アルカリのものだと1本500eneloopと同じようなNi-MH電池や500mA位出る高出力のLi-Ion電池もあります。高電流は別に必要ないので、私が買ったのは東芝の充電池Impulse、



1本1,250円程でした。一番コストを下げられる部分ではありますが、何度も繰り返しやりたければ充電地のご利用をお勧めします。ちなみに1回使ったからといってあっさり放電してしまうような事はないので、ボルトを何本かやってみたいだけなんだけど…という方は電器店へ行ってパック入りで安売りされている(6本入りで1,000円位?)のを買ってくるのがいいでしょう。こんな用途に電池の使い捨てはあまり褒められたもんじゃありませんが…

さて、お次は電解液の素材。
前回同様コーラでも出来ますが、電解質がふんだんにあるわけではないので時間がかかったり、処理が不完全だったりすることもありえます。特に比較的高い電圧で膜圧を増やさなくちゃならないピンクやイエローは難しいかもしれません。そこで用意したのがりん酸三ナトリウム(Trisodium Phosphate=TSP)。



コーラ酸味料の親戚で、ご大層な名前ですが別に劇薬ではありません(無害というわけでもありませんが)。植木バサミの消毒・殺菌に使われるもので、わりと簡単に手に入ります。12水と付け加えられているものもありますが、同じもの。この他、目の洗浄などに使うホウ砂を薬局で手に入れるのも手ですが、ちょっと単価が上がります(50g 500円程度)。まあ50gもあれば20回位は電解液が作れるので普通は十分でしょうか。バッテリー液(希硫酸)も電解液として使えるのですが、使用後の処分が厄介ですし趣味のためにそんな環境負荷の高いものを持ち出すのは自粛しておきましょう…薬品に関してはMSDSを熟読しておいて下さい。適切に扱えば危険な薬品ではないですが、トラブルを起こさない為にも…

TSPのMSDSはこちらで見られます。
http://www.jaish.gr.jp/anzen/gmsds/7601-54-9.html

ホウ砂のMSDSはこちらに。
http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1330-43-4.html

どちらを使う場合も量は水1Lに対し薬品5g程で十分です。あまり入れすぎると強アルカリ性になるようなので注意しましょう。水を使うよりもお湯を使ったほうが薬品も溶けやすく、酸化反応も手早く行えます。作った水溶液は捨てずにタッパーで密閉してそのまま保管してありますが、廃棄する段になったら適切な方法を自治体に問い合わせてみようと思います。多分希釈して捨てればいいのだと思いますが…この辺面倒臭い方は、引き続きコーラを使うのがいいでしょう。

さて今回は電解槽を使わないと冒頭で書きましたが、どうやるのかといいいますとかわりに電極を繋いだブラシを作ります(電解液を作るための容器は必要です)。別に複雑なものではありません。布やスポンジを小さく切って割り箸などに挿んで固定するのもいいですが、木は水を吸うので絶縁が不安です。そこで用意したのが、



ホームセンターで見つけた魚焼きグリルのこげ落しに使うスポンジ。プラスチックの柄の先に適当な大きさのスポンジも付いている品です(研磨剤入りですが特に結果に影響はしません)。これも自作する場合は、この形を参考にしてみてください。 このスポンジに電解液を吸わせ、スポンジにダイレクトに陰極を繋いで出来上がり。こいつで絵筆のごとくチタンをなぞります。念のため柄の部分は絶縁テープでグルグル巻きにしておいたほうがいいでしょう。フレームなどの大物も同様の手法で可能なはずですが、その場合はトイレブラシが適任でしょうかw

トリは一番大事なモノ、絶縁グローブです。
冒頭にもリンクを張りましたが、レビューにしておきましたので参考になさって下さい。
今回の作業は電解液がボタボタ垂れるので、気を抜いているとあっという間に手元が水浸しです。繰り返しますが危険が伴いますので、絶縁グローブは必ず着用しましょう!! 3,000円程度で600V位まで扱えるちゃんとしたもの(きちんと認証を受けている品)が手に入ります。これと、必要以上に作業環境を水浸しにしない工夫を組み合わせて、安全に楽しんでください!!



さあ、道具と下準備が揃ったらいざ実行に移します!!

まずは作業環境から整えます。ごちゃごちゃした机の上は綺麗に片付けて、気休めかもしれませんが少しでも絶縁性のありそうなものを敷いておきました。ゴムシートが最適なのでしょうが、無かったのでカッターマットを敷きました。うっかりひっくり返してしまってもコンタクトしないよう、電源と電解液の容器は出来るだけ離しておいたほうがいいでしょう。一枚の写真に収めるため近づけてまとめてありますが、実際にはこの位置関係では危険です。バッテリーが濡れないよう、高低差を設けるなど配慮して下さい。それと初歩的なことですが、バッテリーの電極とリード線の色分けを混同しないよう、しっかり確認して下さい。

電気分解ですので酸素と水素が発生します。フレームやシートポストを水槽に突っ込むような大掛かりなことをしなければ爆発するほど大量の水素は発生しないはずですが、一応火気厳禁で十分な換気を確保して臨みましょう。



酸化処理するチタンは前回同様に研磨や脱脂を行い下地処理しておきます。次にマスキングですが、



塗装用のものは大抵手で千切りやすいように紙ベースになっているので、曲面に貼るとシワが出来てしまうことがあり、あまり向いていません。隙間から電解液が染み込んで通電してしまうとそこも酸化してしまうので、染み込まないように手早く慎重に処理するか、水が染み込まない塩化ビニールベースのテープを使うといいでしょう。ビニールベースのマスキングテープはちょっと入手性が悪いですがお勧めです。ウチには昔プラモにハマっていた時の遺産がちょっとあって、特殊なビニールのマスキングテープも残ってました。粘着力が強すぎる、幅のバリエーションが少ないなど作業性でちょっと劣りますが、絶縁テープでも問題ありません。複数の色を重ねる場合、マスキングをする前に順番をよく考えておきましょう。例えば、パープルとアクアブルーのストライプを隣り合わせて並べたい場合は、まず双方合わせた幅を残して周囲をマスキングします。電解液が触れて通電する可能性がある範囲だけで大丈夫です。生じさせる電圧域が異なりますから、先に低いほうの色を全体に出して残したい部分だけマスキングし、電圧を上げて次の色を出す、という具合に工夫すると綺麗に塗り分けられます。塗装だと結構難しいですが、陽極酸化ならチョチョイのチョイです。この場合はパープルの膜を出す→残したい範囲をマスキング→電圧を上げてアクアブルーを出す、という順番がいいでしょう。もし、わずかな隙間から電解液が染み出して酸化した部分が出てしまっても、コンパウンドで擦れば落せます。塗装と違いベースコートもクリアも無い数ミクロンの酸化皮膜ですから、結構簡単に落せてしまいます。

作業イメージはこんな感じになります。



一見電解槽を作ったときとは電極が逆のように見えるかもしれませんが、これが正しい配置です。皮膜を作るチタン側(つまり酸素を発生させる方)に陽極を繋がなければなりません。素手で通電中の濡れたチタンパーツに触れるのは危険ですので、絶対に止めましょう! 触るときは、必ず絶縁グローブを介して下さい。下には垂れた電解液が広がって床や机を濡らさないよう、ペーパータオルかウエスを敷いておきましょう。

スポンジブラシは電解液に浸して使います。



次に、電解液を染み込ませたスポンジブラシに陰極を繋ぎます。ズボラして電極を繋いだままのブラシを電解液に突っ込むのは危険なので止めましょう。しつこいですが、両手に絶縁グローブを装着して作業してください。

ボタボタ垂れるような状態にしなくても大丈夫です。軽く余分を切って、陰極をスポンジに直接繋ぎます。



そのまま作業イメージのとおりに陽極を繋いだチタンパーツの、酸化させたい部分をブラシでなぞります。作業中電解液が垂れてパーツのあちこちを濡らすこともありますが、通電さえしていなければ酸化しませんから心配要りません。厚い皮膜を必要とするイエローなどでは若干時間がかかるかもしれませんが、アクアブルー位なら数秒で終わります。絶縁対策がちょっと面倒ですが、乾燥時間を取る必要もなく作業そのものは塗装よりもずっと簡単です。

色を重ねていく場合は、色をそのまま残しておきたい範囲を再度マスキングして、電池を増やして新しい色を出していきます。コツは、スペクトラムで出したい色を決めたらそのレンジよりも電池一本分以上電圧の低いところからはじめることです。塗り重ねる箇所の電圧差が大きくなるときは一気に変えず徐々に色を確かめながら上げていくといいでしょう。


はみ出してしまった分や、やり直すときの研磨にはグラノールが一番向いているように思います。ピカールやセラミック砥粒系のコンパウンド数種も試したんですが、落せなくはないものの余計に時間がかかりました。日本ではちょっとマイナーな金属磨きですが、東急ハンズなどで1,000円以内で買えるはずです。



ピカールと同じく石油ベースなので、磨いた後はしっかり脱脂をして下さい。仕上がりに直結します。

実はトップの写真を撮る前に、一度別のパターンで皮膜を作りました。



手間がかかったわりにそれほど気に入らなかったので、磨き落してやり直した、という次第。
落せることは落とせるのですが、高い電圧をかけた後は若干表面が変質してしまうことがあるようで、一見酸化皮膜は完全に落とせたように見えても再び処理をかけると消したはずの膜がゴーストのように浮かび上がってくるという現象がありました。一発目で成功させるほうがやはり綺麗な発色を得られますし、失敗した痕は入念に研磨し直さないとダメなようなので、一筆入魂したいところ。色を重ねるときは下地処理とマスキングを特に入念に行うよう心がけましょう。ブラッシュ仕上げなら割と簡単に下に戻せますから好きなだけリセットしてやり直すことが出来るんですが、サンドブラストやポリッシュは素人には再現が事実上不可能なので、失敗した時のことを考えると極端に複雑な塗りわけへのチャレンジはお勧めしません(不可能ではありませんが)。

前回よりもコストは下がっていますし、仕上がりにも文句なしです。これを製品に採用したfireflyやKualisは本当に賢いと思いますねぇ。だって手軽で効果抜群なんですから!! 想像力を働かせれば、簡単に自分だけのアクセントが加えられます!!

価格評価→★★★★☆ (塗装よりも低コストかもしれない)
評   価→★★★★★ (こっちもやっぱり面白かった)
 
numero_nero  2014-7-4 23:07
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自宅でやるチタン陽極酸化処理

大体やりつくしたので、本レビューをもってひとまずこのシリーズをしめたいと思います。今回は何度か繰り返しているうちに新たに分かったこと、把握しておくべき情報を追記しておくとともに、まとめとして重要なポイントを振り返っておきます。


・補足その1、廃液の保管と処分方法について

一度作った電解液は何度も使えますし、作りたてでないと結果が思わしくないわけでもないので、すぐ処分したりせず使いまわししましょう。薬品そのものはチタンに働きかけて酸化皮膜を作っているわけではなく、水にある程度導電性を持たせる役割を果たしているだけです。レビュー中で指定した0.5%という濃度も大分低いのですが、ここでの目的には十分な濃度ですし、濃くすれば導電性が上がるようですが発色が飛躍的に上がるわけでもないらしく、場合によっては電源装置を損傷してしまう場合もあるので、無茶は禁物です。

使用後の薬品・水溶液の保管についてもやはり注意が必要になります。TSPもホウ砂も目や傷口に入ると刺激を感じる場合があるようなので、ペットや小さなお子さんの手の届く場所に置かない、自分以外の誰かが開けて負傷しないよう、きちんと配慮して保管することが必要です。

薬品や水溶液を処分することになったら、お住まいの市区町村ではどういった処分方法が適切なのか、調べておかなくてはいけません。最低限必要な社会的良識ってやつです、身勝手な処分は絶対にダメですぜ。

TSPやホウ砂を使って陽極酸化処理をする場合、使用後の電解液には金属やリン、ナトリウムなどの析出物が入っているでしょうが、特に毒性の強いものはないはずです。一番の問題は多分pH値で、0.5%水溶液でもそこそこに強いアルカリ性をもっています(手元の試験紙で確認したところ11~12の間を示しました。最大は14)。



forumの方で化学全般にお詳しいLimeyさんに頂いた情報では、中和・希釈を行い下水へ流すかそのまま市区町村の指定を受けた廃棄物処理業者へ渡すのが適切なのではないかとのことでしたが、確認の為住んでいる自治体の関係部署に問い合わせてみることにしました。以下にそこで得られた回答を記しておきます:

まずは県の担当部署(環境課)から。
・家庭で発生するものは一般廃棄物になるとのことで、都道府県ではなく市区町村毎の決まりに従うように、との指示でした。これはおそらく全都道府県で同じ回答が帰ってくるものと思われます。問い合わせは、県ではなく市区町村の環境課にしないと時間の無駄になってしまうようですね。

というわけで次は役場環境対策課からの回答。
・希釈して下水に流す処分方法は認められていないので、購入店か薬局に相談して下さいとのことでした。有償か無償かは聞きそびれてしまいましたが近くの薬局で引き受けてもらえる(もしくは処理業者に引き継いでもらえる)との情報をくださいました。

どちらも親切に対応してもらえたという印象です。役場からは回答をもらえるまで3日ほどかかってしまいましたが、担当者さんは引取り可能かどうか最寄の薬局にまでわざわざ問い合わせしておいてくれるという親切ぶり。それが業務といえばそうなのですが、こちらは趣味でやっている身なのでちょっと申し訳ない気も…いずれにしても個人で余計なことをしやがって、みたいな空気はありませんでした。ここまで面倒を見てもらったのですから、もう行けるとこまで行ってみましょう。

・というわけで紹介してもらった薬局へも直接問い合わせ。
有償で引き取りしているという情報に間違いはなかったようですが、実際には処理業者を紹介できるというだけで料金などの具体的な事は薬品の詳細と量を先方に伝えて見積もらせないと分からない、とのことでした。電話口で、なんとなく端々に別にいいけど少量だしなぁ的な空気が漂ってきたので、具体的なところまで話を進めると色々とエネルギーの無駄という気がしてきました。そこで一応お礼を言って、量がまとまってきたらまた改めてお願いします、と切りあげました(チキン)…ひとまずはどこへ持っていけばいいか目星が付いただけでも収穫としておきましょうか。

そういえば廃油とかクーラントも産廃業者引き取りだということを思い出したので、行きつけのガソリンスタンドの顔見知りの店主にも話を聞いてみました。廃油などリサイクルできるものは少額ながら買い取ってもらえるらしいんですが、クーラントなどはドラム缶1本200Lで¥6,000位払い引き取ってもらっているよ、とのこと。しかし価格はドラム1本あたりのものらしくリッター単位になるとどうだろうなぁ?と首をひねっていましたから、もしかすると少量で出すのはまるで割に合わない料金体系なのかも…それこそペール缶などに貯めておいてまとまった頃に出すほうがいいのかもしれません。まあ、少なくとも何万円も請求されることはなさそう。

適切な処分方法は市区町村によって異なってくることと思います。私の体験談はあくまで参考例ですので、実際にご自身で陽極酸化処理を実行される場合はどういった処分方法が適切なのか、お住まいの市区町村役場できちんと調べて従うようにしましょう。


・補足その2、道具のさらなる工夫

最初に電解槽を作った時は手軽さを重視してアルミホイルを用いました。しかし実際にやってみると、軽いアルミホイルは電解液に浸して通電したそばから水素ガスとともに浮かんできてしまいます。そのまま陽極側のチタンに触れると放電が起こり、チタンに傷を残します。アーク溶接と同じような現象ですね。仕上がりが悪くなるだけならともかく、場合によっては電源装置に過大な負荷をかけて破損や事故にもなりかねないので、通電中の電極同士の接触はきちんと防止しておかなければなりません。プラスチックの小さなザルや石鹸おきを流用している人たちもいるようで、なるほど!!と思いました。特に大きなパーツだとクリップからずれたりして厄介なので、適宜使いこなしたいテクニックです。

またアルミホイルで作った電極を都度使い捨てになってしまうのもなんだかイヤですね…そこで余ったステンレス金具やボルト・ナットをかき集め、電極を自作してみました。それがこちら。



陰極の大きさは電気分解をする上で重要な要素ですので、出来るだけ面積の大きいものが向いています。ステンレスなら浮かばず腐食もし難いですし、手頃なサイズのものが都合よく倉庫にころがっていて助かりました。新品を買うとそれなりに値が張りますが、DIYで余ったものがあれば流用してみましょう。他にもアルミ(酸化処理されていると通電しないのでNG)やチタン(陰極側では酸化しません)など、導電性があって腐蝕し難い金属なら大丈夫だと思います。鉄はニッケルめっきされているものでも腐食が激しく、あっというまにボロボロになります。

腐蝕といえば、陽極側のワニ口クリップも激しく腐蝕します。低い電圧ならば金メッキしてあるもので腐蝕をある程度防げるようですが、70~80Vかけると文字通りめっきが剥がれあっという間にボロボロに。1個500円程度のステンレス製シールドクリップもあるようですが…ステンレスは導電性が低いので陰・陽両極に用いてうまく行くのかちょっと不安ですね。海外でのDIY派はアルミやチタン製を薦める人が多いようですが、そんなものどこで買えるんでしょうか…良い代品が見つかりそうもないので、高い電圧を扱う場合はもう使い捨てと割り切るべきかもしれません。


・補足その3、電池を使うのって本当に便利?

難しいポイントですね。確かに6P電池を直列に繋ぐ方法は手軽でコストが安く、とても簡単に高電圧を得られます。最も高い電圧を必要とするグリーンもちゃんと出せることが確認できましたし出力の大きさには問題ないのですが、以下のように若干融通のきかないところがあるのは電池の明確なデメリット。

1. 電池の接続本数で電圧を増減するので、1本ごとの電圧を下回る微妙な調整はできません。具体的にそれで何が困るかというと、出したい色がピンポイントで出せない場合が出てきます。慣れてくると陽極を引き上げるタイミングを見計らうことである程度調整できるんですが、若干膜厚にムラができてしまうのは避けられないようです。6P型は1本8~10V程度の電圧があるので、出したい特定の色がどうしても出せないケースがでてくるでしょう。せめて5V程度で調整できればいいのですが…

2. 出力特性が安定化装置と比べるとやはり不安定で、結果の予測に難しさがつきまといます。直流安定化電源やスイッチング電源を利用する場合はピンポイントで電圧しいつでも再現できるのですが、電池の場合は変動する要素が多いので、実際に直列で繋いで確かめてみるまで何Vが出力されるのか正確な予測は難しく、正確な再現はまず不可能です。いくつかその要素をあげてみると、まずは銘柄ごとのバラつき。同じ銘柄の電池ならば大体揃って安定した出力特性を持っているようなのですが、銘柄が変わると1~2V位は平気で差が生じます。電池の銘柄をAからBに変えて10本繋げば、10~15V位の差が出ることもありえます(この特徴を逆手にとっていろいろミックスすることで合計の出力電圧を細かくコントロールすることは可能かもしれません)。さらに、使用に伴う下降もあります。満充電状態だと9.5V、少し使用すると0.5V、1Vと徐々に下降します(テスターで確認済み)。電池を実際に繋いでマルチテスターで電圧を確認するか回路に電圧計を組み込むかでもしないと結果が読めないので、ほとんどでたとこ勝負ですね。特に高電圧になるといろんな要素が絡んで5V・10Vとズレが生じたりして、余計に難しくなります…ピンクやグリーンはレンジが狭いのも合ってなかなか難しいです。こういった難しい条件でどうしても色味を揃えたい場合は、短時間で一気にやってしまうしかないでしょう。

このように、バシッと欲しい色を出そうと思うと電池を使う方法ではかなりハードルが高くなります。電源を直列で繋ぐ場合、電圧は単純な総和(厳密には若干の損失があるのですがここでは無視して良いレベル)になりますから、一度実際に使ったことのある電池ならある程度の範囲は予測が可能になるでしょう。しかし初めて使う電池や複数種の銘柄をミックスする場合は要注意です。毎回安定した結果を求めるなら、銘柄を決め打ちしてチャートを作るといいでしょう。私が用意したImpulseの6P型は8.4Vの表記でしたが、満充電後実際に測れば9.5V前後あります。

これが私がImpulseを用いて作ったチャート。



左上から右に向かって9V・18V・27V・36V・45V
同中段、53V・62V・72V・80V・89V
同下段、107V・116V・126V・135V・144V。
電圧は無負荷状態でテスターを使って測った実測値です。
手違いで98Vの写真だけ消去してしまい残すことが出来ませんでした、残念。
室内の撮影で若干暗かったのでiPhotoの自動補正をかけてあります。色は若干強調されていますが、肉眼でみた感じと極端に異なるものはありません。

あなパーのほうにも上げましたが、下は5~135Vまでスイッチング電源を用いて5V刻みで記録したもの。並べて比較してみてください。電池、発色の良さは結構善戦していますよ!!


(高画質版はあなパーにあります→https://cbnanashi.net/cycle/modules/myalbum/photo.php?lid=942)

私が用意したものをそのままそっくり揃えでもしなければ同じ結果を得るのは無理だと思いますが、こういう推移をするんだという参考程度にご覧下さい。処理時の条件を一応記しておきますと、室温25℃、前回レビュー同様TSP水溶液0.5%。今回は水道水ではなく工業用精製水を温めずそのまま用いています(水温20℃前後だったと思います)。電解液は全く同じものの使い回しです。

結果をみてガッカリする前に、水溶液の濃度や使用する電池の銘柄を固定した上で試験用のピースを作り、どんな色に推移するのか観察して自分なりのチャート化をしておくと良いでしょう。

一方の直流安定化電源のほうも、高い電圧を得るため直列に繋ぐ方法もあると前のレビューで書きましたが、この方法に対応できる機種は上位のものに限定されてしまうようです。詳しい事は省きますが、直列接続できる機種ならば方法が説明書に明記されているはずなので、それ以外は電池のように安易に繋いで使うのは危険なので絶対にやめましょう。設定を誤ったり非対応のものを繋いで使用すると逆流したりケースの絶縁が設計上の想定を超えて不完全になったり、と機械の破損だけでなく火災や感電など重大な事故を起こしてしまう可能性もあるようです。ちょっと悔しいですが、ここらへんがDIYの限界ということでしょうか。


・補足その4、陽極酸化から別の現象への移行?
70V程度を境にチタンの皮膜が腐蝕したようになってしまう現象に見舞われたことがありました。通常なら通電して酸化皮膜が成長するとある点を境に通電しなくなり酸素も水素も発生がとまるはずなのですが、何かの拍子で酸化皮膜の溶解(そう見えただけでもしかしたら水の電気分解が続いているだけ?)が始まり止らなくなる現象を目にすることが、一度ならず数回あったのです。下の写真は、その現象が起こったパーツです。



これは電池で処理していた時に起こったものです。ナトリウムかリンの化合物のようなものが析出しチタンの表面が腐蝕したような状態になってしまいました。所々皮膜も損傷しているようです。特に酸化皮膜が出来上がった面と出来上がっていない面の境界辺りから激しく反応が起こっていたような…部分的に皮膜が破壊されたような痕跡もあるので、こうなるともう全体を研磨し直すしかありません。Limeyさんは陽極酸化とは別の現象(定常溶解・リン酸塩皮膜処理etc)が起こっている可能性を指摘されていました。私自身には判別が付かないのですが、兆候はありました。一度通電が弱まるくらいまで形成された皮膜が、急に破れたように激しくガスを発生し始めて止まらなくなるのです。こうなってしまう原因をいくつか考えてみましたが、やはり怪しいのは水道水だろうということで、精製水(蒸留水)に切り替えてみました。結果はバシッと安定するようになりましたので、やはり水道水中の金属イオンや残留物が原因となっていたのではないかとにらんでいます。

精製水はカー用品店などでバッテリー液(希硫酸ではない補液)として購入したり、薬局で医療用のものが入手できます。精製水(蒸留水)は水道水よりも電気を通し難いですが、人為的に電解質を加えるので問題なく酸化処理は行えます。50V以下までなら水道水でも別に大丈夫そうなのですが、高電圧を使うならケチらず精製水を用意しましょう。

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長々と書いてしまいましたが、これで出来る事はほとんどやりつくした感があるので以上で一連の実験をひとまず終わりにしようと思います。もしかしたらTSPよりもホウ砂の方が膜厚が安定している!!などあるかもしれませんが、あとの事はこのレビューを見てチャレンジされる方にお任せしようと思います。拙レビューをご覧になってチャレンジされた方、ぜひあなパーで写真を、もしくはこのレビューにどんどん付け加えていって頂けると、私もここまで頑張った甲斐があるというものですw

価格評価→★☆☆☆☆ (大分散財しましたねぇ…電池とコーラでブルーを出す位なら★x4位でもいいかもしれませんが、こだわり続けるとキリがありません)
評   価→★★★★★ (うまくやれば、塗装よりもコスト・環境負荷の両面で上回れる可能性も)
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