購入価格: ¥37,737 (税込) ※PAXCYCLEに注文
『クロスバイク用の手組ホイール。耐久性を重視しつつ、見た目と走りを楽しむ仕様』
■遂にホイールの買い替えを決意
GIANT SEEK R3を手に入れて3年近く経ち、純正ホイールの劣化が気になってきた。気になる部分は、リムのブレーキ面の摩耗、途切れ途切れのラチェット音、スポークやリムの色のくすみ等だ。リムのブレーキ面の清掃やハブのグリスアップ等でまめにメンテナンスしてきたが、このままでは快適な走行を楽しむのは難しいと思い、ホイールの交換を決意した。
現在クロスバイク用の完組ホイールは、破損した時のためのリプレース用のものくらいしか販売されていない。良いホイールを体験するには手組ホイールをどこかに依頼することになる。幸いなことに、シマノからトレッキングバイク用のO.L.D 135mm、リムブレーキ対応のハブが出ている。このハブと700Cのリムを使って手組ホイールを作り、SEEKをアップグレードすることにした。
リムを研磨したり、マメにメンテナンスして延命したSEEK純正ホイール。
■耐久性を重視しつつも走行を楽しめるホイールを希望
私がホイール組を依頼したのは、PAXCYCLEという福島県のショップだ。PAXCYCLEは相談時に具体的なパーツの構成を指定しなくても、イメージ、予算、用途、走行距離、機材の不満点、使用期間を伝えれば、理想的な構成を提案してくれる。
伝えたホイールのイメージは以下の通り。
・リムハイトは30mmくらい(見た目と性能野バランスを重視)。
・リム、ハブ、スポーク、ニップルは全てブラック。
・軽さよりも耐久性を重視。
・ 一回の走行距離が短いので乗り心地はあまり重視しない。
・乗り心地の良さよりも、進みや反応の良さを楽しみたい。
数回のメールのやり取りで、最終的に以下のような構成になった。
リム : DT Swiss RR585 32H
フロントハブ: DEORE XT HB-T780 32H
リアハブ : DEORE XT FH-T780 32H
スポーク : DT Swiss Competition 2.0/1.8
ニップル : ブラスニップル 2.0
※色は全てブラック
■新しいホイールは若干軽量化
届いたホイールを計量してみると、SEEK純正ホイールよりも若干軽くなっていた。前後で96gの軽量化である。強度を重視したリムのDT Swiss RR585やブラスニップルは軽くはないが、ハブやバテッドスポークが軽量化に貢献しているようだ。この構成では軽くはならないかなと思っていたので嬉しかった。
フロント: SEEK純正ホイール: 984g → 注文したホイール: 973g (-13g)
リア : SEEK純正ホイール: 1246g → 注文したホイール: 1163g (-83g)
※QR、リムテープを除いた重量
■SEEKの足元を引き締める高品質なホイール
新しいホイールの質感の高さは、箱から取り出した瞬間から感じることができた。リムのRR585とDEORE XTのハブの半光沢のブラックが落ち着いた印象だ。実際に取り付けてみると、SEEKのブラックで統一されたコンポーネントとも相性が良く、SEEKの足元が一気に引き締まる。
H PLUS SON SL42のようなディープリムに憧れたこともあったが、重すぎて走りの軽快さが失われるような気がした。30.3mmmのリムハイトでもSEEK純正ホイールよりは高さがあり、SEEKのルックスにかなり貢献している。
ただ、SEEKのマルチカラーはフレームが派手なので、ホイールまで派手にすると目立つ部分があちこちに分散してしまう。ホイールコンポーネントを全てブラックにしたのは、フレームの発色を際立たせるためだ。そういう意味ではDT SWISSの赤いステッカーは似合わなかったので、RR585の文字を残して赤い部分をハサミで切り取った。
ステッカーを剥がす前。
ステッカーの赤い部分を剥がした後。
■シャープな乗り味と高い巡航性能
【高い剛性感と反応の良さ】
このホイールで走り出すとすぐに違いを感じた。低速でも硬い円盤が転がるような感覚が伝わってくる。良い意味で硬く、カッチリした剛性感がとても楽しい。脚力がロスなく伝わるおかげで高い加速力が得られる。そのおかげで都内の交差点でのストップ&ゴーがしやすい。
ペダルを踏むと即座に車体がグンと前に出る反応の良さは期待以上。SEEKのホイールはワンテンポ遅れていたことが良く分かる。SEEKのもっさり感が消えて挙動がシャープになった。私が求めていたのはこういう感覚だ。
上り坂でダンシングしてもホイールが横にぶれて力が逃げるのを感じない。フロントホイールに荷重がかかる下り坂は、坂の上から鉄球を転がすような感じがとても面白い。
【巡航性能の向上と直進性の高さ】
巡航性能は明らかに向上した。入手直後は気持ちが高ぶっているからスピードが出ているのだと思った。しかし、しばらく経って気持ちが落ち着いた状態でもいつもよりスピードが出ている。いつの間にかスピードが出ているといった感じで、いつもより2〜3km/hは確実に速い。まったり走っているつもりでも27km/hくらいは簡単に出るので、都内を快適に駆け回ることができた。
速度が20km/h台後半を越した時の走りやすさはこのホイールの真骨頂といったところだ。高いリムハイトのエアロ効果が影響しているのか、スピードを楽に維持することができる。今までのホイールでは、30km/h台中盤のスピードを持続しにくい上、高いスピードではバランスが取りづらくてちょっと怖かった。このホイールはとても速く走ることができ、今まで簡単には出なかったような速度を出すことができるようになった。
DT Swiss RR585のリムハイトは30.3mm。
【乗り心地も全く損なわれていない】
ホイール剛性の高さは進みや反応の良さに繋がっているが、快適性や乗り心地までは損なわれていない味付けが見事だ。道路に少々の凹凸があっても、地面からの突き上げ感は最小限で不快感は感じないし、タイヤが跳ねずに真っすぐ走ってくれる。もちろん、タイヤが28Cということもあるけど、これなら空気圧を低めに設定しなくても全然平気だ。ロングライドも100kmくらいなら全く問題なかった。
【スムーズで軽い動作と回転のフリーボディ】
DEORE XTのハブは、無負荷でホイールを回すと静かで滑らかだ。だが、実際の走行ではハブの回転の良さをなかなか感じにくい。良いと思ったのはリアハブのフリーボディだ。SEEKのフリーは16ノッチで遊びが大きかった。DEORE XTは36ノッチで遊びが少なく、足を止めた状態から力がかかるのが早い。しかも、動作はスムーズで軽い。足を止めても減速しにくく、軽快なラチェット音も私の好みだ。
クイックエンゲージメントを採用したFH-T780のフリーは実質36ノッチ。
【気持ちよいブレーキタッチ】
ドライコンディション用のブレーキシューS70CとCNC加工されたブレーキ面との組み合わせは良好。ますます繊細なスピードコントロールができる上、静かにピタッと止まってくれる。今までと制動力自体は大きく変わらないが、ブレーキタッチはリムで変わると思った。ただし、マルチコンディション用のブレーキシューM70CT4とは相性が悪い。硬いシューがリムを削り、ガサガサを大きな音を立てる。ドライコンディション用の柔らかいシューなら、リムの耐摩耗性に問題はなさそうだ。
ドライコンディション用のVブレーキシューとの相性は抜群。
■オーダー通りの高い耐久性に期待
SEEK純正ホイールのように、使用開始後にスポークからパキパキと音が出るようなことはないし、振れ等も一切出ていない。一番期待した長期的な耐久性の評価はまだまだ先になるが、できるだけ長くこのホイールが楽しめれば嬉しく思う。また、シマノ製のハブはスモールパーツの入手・交換が容易なのが安心だ。
SEEK純正ホイールのFormula製のハブは、フリーボディーの入手・交換が難しい。
■クロスバイク愛好家に手組ホイールのススメ
使い始めてもうすぐ4ヶ月になるが、最も走行性能の向上を感じられるパーツはホイールだということを実感した。その変化は自分が想像していた以上のものだった。自転車の性格を一変させると言っても良いかもしれない。特別軽いホイールというわけではないが、軽さ意外の部分で走行性能の大幅な向上を体感できた。しかも、この走りの楽しさで耐久性重視の仕様なのが嬉しい。
もちろん、このホイールの良さは、PAXCYCLEのホイール組の技術の高さとパーツのチョイスがあってこそだ。私の要望をかなえつつも、トータルで見るとバランスの良いホイールになっている。これは様々な用途に使用するクロスバイクにも合っている。また、走るのが楽になったので、結果的に今までよりも遠くに出かけられるようになった。
最後になるが、クロスバイクもスポーツバイクの端くれだ。愛着があるからこそ良いパーツを付けたくなる。クロスバイク用の完組ホイールにはあまり選択肢がないが、自分の要望を細かく伝えられる手組ホイールは満足度が高くておすすめだ。自分の好みのホイールが出来上がれば、クロスバイクは今まで以上に楽しくなるはずだ。
左: ホイール換装後 右: ホイール換装前
価格評価→★★★★☆ (他のショップに比べてもパーツも工賃もお手頃)
評 価→★★★★★ (要望以上の素晴らしいホイール)
<オプション>
カタログ重量→フロント973g、リア1163g ※QR、リムテープを除いた重量