菊地武洋 ロード極めるなら業界一の自転車バカに訊け
購入価格 ¥1300
「どこまで機材で速くなれるのか、快適になれるのか」をテーマに(中略) 初めての購入を考える入門者から、レベルアップを図る中級者、二台目を検討する人などなど、 全てのロードバイクファン必携のガイドブックです。(内容紹介)
自転車本体や、パーツに関してのレビューやエッセイで構成された本です。 全八章のうち、二章から八章までの部分が機材関係に割かれています。
シリーズ4冊目にもなったからなのか、改良されてきている印象を受けます。 8Pには「自転車の名称をおさらいしておこう」として、各部名称図 七章152Pでは歯数一覧表…といった具合に、色々と情報が加えられています。 (25台に及ぶ自転車レビューのほとんどにサイズ展開、パーツ構成、問合せ先電話番号が掲載されています。)
本文に関しても同様で、1冊目で見られたような「伝授」とか「業界タブー」が用いられなくなり、 マイルドになってきているなと。
7Pまえがきには「この本はバリバリ練習してレースで上位を目指す人向けではない。」とはっきり書かれていますし 続く一章ではそれに沿ったかのように「自転車店の選び方」「メンテナンスの重要性」「上手に乗るために必要なこと」が並んでいます。
レビューでは過去のモデルや同一メーカーの別モデルと加えてどういう利点があるか 「ここを交換すればさらに向上する」といった、「足し算」の視点で書かれている気がします。 (43P「1972に創業したメリダ・インダストリーは…」といった具合に、メーカーによってはルーツにまで言及されています。) 他メーカーのモデルと比較するようなこともなく、対象を持ち上げるために何かを貶している…という印象は抱かなかったです。
個人的にはあとがき222Pの「自転車の方の完成度も平均して高く、当たり年だった。その一方で、 最高級モデルの乗り味が異様に似ているものがあり、高剛性だけを目標にフレームを作っているメーカーの 行き詰まり感みたいなものも感じた」という箇所がとても印象に残りました。
20台以上の自転車レビューを掲載する点でそもそも凄いと思いますが… レビュー以外にも他では見られないような記述が稀にあり、これに関しては興味深く読むことができました。
内容紹介に「全てのロードバイクファン」とありますが、ごく初心者に向けられた部分や、 数十万~百万オーバーの自転車レビュー、今年のトレンド、昔はどうだったか、などとバラエティに富んだ内容になっています。 書き方も(外食や高級時計、服など)比喩や言い直しが多く、親切であると同時に (ネガティブな記述がちっとも無いにも関わらず)快適に読み進められるかは人を選ぶかもしれません。
各章に書かれていることを噛み砕いたり、比較したり、例えば日常会話や自転車本体/パーツ購入に取り入れようとしたら… とても大きなエネルギーが必要なのではないかと思います。
また「※実際と写真は異なる場合があります」「※仕様は予告無く変更される場合があります」 「※価格は2013年6月現在」といった注意書きがやたらと目に付きました。 (極めつけは巻末の「いかなる特定メーカー・ブランド・商品への商業的勧奨、あるいは誹謗を意図したものではありません。」という部分。)
「カリスマによるノウハウ伝授」をイメージして読み始めたら恐らくギャップを感じるのではと。
今は車種やパーツ、サイズ、素材などの正確な情報が引き出せるメーカー公式HPや、それを含めた 速報性に勝り、すぐに修正できるインターネット、カラー写真をふんだんに用いた自転車雑誌などがあり いずれの質も向上してきている一方で、それぞれ重なる部分もあるかと思いますが 「この本ならでは」「らしさ」の要素をあまり感じることができなかったかもしれません。
著者がこれからも新製品に付いていき、今と同様に「得られる知識の量」で勝負を続けていくのかどうかと この路線が読者や編集から求められているのかどうか…とても気になるところです。
価格評価→★☆☆☆☆ 評 価→★★★☆☆(読む前と後でギャップを感じたかどうかが、評価に作用しそうな気はします。)
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