購入価格 $125/本 JensonUSA (送料別)
国内ではあまり見かけないHEDのアルミクリンチャーリム(チューブラーもあり)。
Zipp FireCrestやSmart ENVE Systemなどと同じく、広いリム幅・丸みを帯びたプロファイル(幅23mm、ハイト24mm)を持つリムです。このC2にはいくつか種類があって、リムキャリパーブレーキ向けにトラックをCNCマシニングで削りだしたバージョン、全面アノダイズ仕上げ(ブラック)のバージョン、他にも25mmまで幅を広げたPlusというバージョンも最近出たようです。用意されている穴数は24/28/32Hで(Plusは28/32Hのみ?)、体重制限はありません。今回レビューするのは23mmのリムキャリパー、クリンチャー仕様です。
最大の特徴はなんと言ってもその横幅。
左がC2。右はカンパNeutron Ultra。
Neutronも若干ワイド(21mm)なのですが、それと比べてもさらに両側に1mmずつ広いです。
24mmハイトで1本450g、あまり軽くはありませんが頑丈に仕上がっているリムで、実売は$100~125。以前カンパNeutron Ultraクリンチャーを全バラししてリビルドしたことがあり、その際に非対称リムの重量も測ったのですが、大体同じ位だと考えていいと思います。この価格帯だともっと軽いリム、たとえばStan's ZTR ALPHA340などもありますが、Belgiumの名の通り、クラシックレースでの使用を想定したような頑丈さ・快適性・反応性を最大限追求するというのがこのリムの売り。形状はそのままにスカンジウム合金を用いて軽量化を追及したバージョンも購入できると聞きましたが、通常版に比べ1本当たり30g程軽くなる代わりに1本あたり$50程のアップチャージがつくとのこと、普通のアルミ合金と比べると割れやすいとのことで、見送って通常版を購入しました。
・スペックと組みやすさ
とても組みやすいリムでした。加工精度は極めて優秀、縦にも横にも全くといっていいほど歪みがなく、重量・ERDともにほぼ公称値通り(それぞれ460g・592mm。実測446/452g・ERDも完璧)。ショットピーニングとアノダイズで仕上げられたサイドウォールも非常に綺麗でした。マシニング削出しで刃物のようにギラッと輝くブレーキトラック上のバルブ穴付近には、消耗インジケーターの役割を果たす小さなドリル穴があります。スポーク穴にアイレットはありませんが造りが頑強なので、120kgf程度なら何の不安もなくスポークを張れます。あちこちのホイールビルダー評を見ても概ね同様なので、HEDの品質管理レベルの高さがうかがえます。こんなにいいリムなのに、いまひとつマイナーな存在。流通が弱いからなのでしょうか、品質についてケチをつけられるような部分はどこにもありませんでした。また、現在はStan's Notubesのキット(Cyclocross Kit使用、リムテープのみMTB用21mm幅を別途手配して使用)とを用いてTL化して使っていますが、気密性なども全く問題なく快適に使えています。コンバージョン作業自体はMAXレベルの面倒臭さですが…詳細はフォーラムのスレッド(
http://forums.cbnanashi.net/showthread.php?tid=246)やStan'sのコンバージョンキットのレビュー(
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=11624&forum=43&post_id=20142#forumpost20142)でも読めますので、ご興味がある方は覗いてみて下さい。
・強度について
テンションはリアDS側3クロスで最大120kgfまで張っていますが、タイアを8barまで膨らませてもテンションの落ちはほとんどなかったことから、乗る前から相当に強いリムであるのが伝わってきます。23mmでこれですから、25mmは剛性に関しては恐らくアルミリム最強クラスではないでしょうか。もう1年半近く使っていますが振れはほとんど出ていません。雨の中に自分から乗り出しては行かないのでほとんどドライでしか乗っていませんが、3,000km程度では目立つ消耗は見られません。
・ライドフィール
通常19mmタイアで使用する空気圧から、少なくとも11%は低くして運用すべし、というのがメーカーHED. Cyclingの推奨。いわく幅広リムはタイアを横方向に押し広げて扁平化するので、高圧で運用するとタイアの柔軟性を極端に損なってしまうのだとか。一応、この推奨値に従って、クリンチャータイア(Vittoria Open Pave CG 24mm + Michelinラテックスチューブ)では通常7barで使っているところを6.5barで、チューブレス(Hutchinson Atom Tubeless 23mm、シーラントはNotubes)も7bar推奨を5.5~6barへ落として使いました。どちらも、重量があるせいで漕ぎ出しの軽さや鋭い加速までは得られなかったのですが、チューブラータイアに迫るレベルのコーナリング性能と乗り心地の良さを感じることが出来ました。Pave CGとの組み合わせでは乗り出しですこし重さを感じましたが、とにかく素晴らしい乗り心地を発揮し、それまで使っていたカンパNeutron Ultraよりも明らかに良かったので唸らされました。Atomのほうは最初6.5barで使い始めたのですが、Pave CGより大分ゴツゴツした乗り心地が悪印象でした。走行感もMichelin ProシリーズやSchwalbe Ultremoといった軽量クリンチャーのような軽さはありませんでしたが、コーナリング安定性とブレーキ性能はContinental GP4000Sに比するかなり高いレベルを保てることが分かりました。軽量クリンチャー+軽量チューブを組み合わせれば、ちょっとしたチューブラータイア並の走行性能が得られるのではないかと思います。
一方回転重量バランスはハイトの割にあまり良くありませんでした。バルブホールの反対側にジョイントがあり、明らかにそこがバランスを崩しています。バルブエクステンダーである程度バランスが取れるのでそのまま使用していますが、60km/hまでなら今のところジャダーや共振等は出ていません。ただ、これは他の要素の影響も受けるので絶対に出ないとは言い切れません、不安な方はウェイトを貼るなどしてバランス取りしておくといいでしょう。
・突出したブレーキ性能
CX-Ray・3クロス組(イタリアン、ハブはDT Swiss 190)で組んだのですが、コーナリング・ブレーキ性能は掛け値なしで素晴しく、特にブレーキはウェット・ドライ共にいままで使ってきたホイールの中でもベストだと思いました。特にSwissStop GHPと組み合わせると最高。ガツンと初期制動が立ち上がってスピードを殺しますが、そこからホイールロックに至るまでよく粘る上に非常にコントローラブルで、指でリムをなぞるように感触が鮮明に伝わってきます。レバータッチに程よい柔らかさがあり、人差指と中指に込める力を調節するだけでスピードコントロールは意のまま。ワイドリムがタイアを押し拡げているのが剛性を高めているのでしょう。リムブレーキでこの性能が得られるなら、少なくともストッピングパワーとモジュレーション目当てで700Cにディスクブレーキを採用する必要なんかどこにもない、と本気で思います。Belgiumの名は伊達じゃなく安定感抜群で、他のホイールだと天候や路面状況次第で緊張を強いられるような荒れたセクションもサラッとクリアできてしてしまいます。チューブラーリムのNemesisと較べると縦方向に若干硬いと感じますが、総合的な走行性能はBelgiumの勝利。GHPを使えば雨でも制動力の落ちは少ないので、通勤・ツーリング・ロングライドなど用途を選ばず最高のブレーキ性能が得られるでしょう。反面やはりというか重量が足枷になるので目の覚めるような加速感はありません。登坂性能もそれなりでしたが、空力は割と良好で40km/h以内の巡航能力はなかなかのものです。NeutronやNemesisと比べるとやや横風を拾いやすいように感じますが、暴風の中でない限り特に注意が必要になるほどではありません。
・総評
アルミとしてはちょっと高いですが、とても良いリムです。トライアスロンや個人TT等空力性能最優先の用途、ヒルクライムレース等加速が重要となる用途を除けばオールラウンドで使えるでしょう。特に走行安定性・ブレーキ性能・強度は最高レベルなので、少々贅沢な普段使い・トレーニング用・ロングライド用ホイールとして最適だと思います。Stan's NoTubes等を用いたTL化もわりと容易なので、さらなる乗り心地向上と耐久性を求めたホイールに仕立てることも可能。
価格評価→★★★★☆(安くはないが、性能を考えると納得できる)
評 価→★★★★★(ブレーキとコーナリング最高!)
年式→2012
カタログ重量→460g (実測 446g / 452g)