購入価格:¥800(抹茶小倉スパ)
・食欲の限界標高に挑む、奇食文化の総本山
[概要]
味噌カツや天むすなど、他に見られない独特の食文化を育む町、愛知県名古屋市。
その食文化のもっとも極まった場所とも言えるのが、ここ、「喫茶マウンテン」だ。
おしるこスパ
甘口バナナスパ
小倉丼
文字を見るだけで身の毛もよだ・・・もとい、食欲をそそるメニューを提供する、名物喫茶店だ。
他に類を見ない珍メニューはほぼすべて、一般的な飲食店の2倍近くの量があり、
大皿いっぱいに盛られた奇食料理を完食することは、店名にちなみ、「登頂」と称されるほど。
悲しきかな、困難な”山”ほど登りたくなるのが自転車乗りの性であり、宿命。
この奇食の総本山へのヒルクライムを行ったので、それをレビューとしてここに記させていただきます。
[挑戦者情報、事前準備]
挑戦の前に簡単に筆者の脚力、ではなく食力を紹介する。
身長171cm、体重70kg、
生来の大食いではあったが、自転車の乗り始めてからその才能が開花。
意識的に制限しないと炊き立ての炊飯器が一食で空になるほどの食欲を発揮するようになった。
炭水化物、油もの、甘味、あらゆる分野を得意とするオールラウンダーである。
また今回の挑戦に当たり、以下の事前準備を行っている。
・挑戦前日に関東から名古屋へ360kmの長距離ライド。
・到着した日の夜は最低限の食事のみ摂取。
・当日朝は豆乳200mlのみ摂取。
これらにより体内のエネルギーは完全に枯渇状態、
考えうる万全の状態での挑戦となった。
[店舗紹介]
店舗は名古屋市中心部から10kmほど離れた、閑静な住宅街の一角に位置する。
ホテルをチェックアウトした後移動し、朝の9:00に到着。
モーニング文化が発達した名古屋圏の喫茶店の例にもれず、この店も朝8:00から営業している。
店舗前の駐車場はこの時点ですでに七分入り。
止まっている車の半分は関東、関西など遠方のナンバーを掲げており、はるばるやってきた挑戦者たちのようだ。
店舗外観はモダンな雰囲気であり、強烈すぎる事前情報がなければお洒落な喫茶店としても十分に通用するだろう。
また駐車場には、これも名物の大看板が掲げられており、この前で自身や愛車とともに記念撮影を行うのが良い。
店舗観察はそこそこに入店、窓際の二人掛け席に案内される。
掲示板に書かれた謎のメニュー群に威圧されるものの、それ以外は何ら普通の喫茶店である。
多くの挑戦者を受け付けるためか、店内のテーブル数は非常に多い。
これでもピーク時には店の外にまで行列が伸びるというから驚きである。
席に着いたところで店員が水とメニューを持ってきた。
スパ(甘口)、というわけのわからない組み合わせや、どんな料理が出てくるか想像もつかない料理名が記載されており、
既にここが地獄の一丁目だと実感させられる。
物珍しいメニューをひとしきり眺めたところで、店員を呼びつける。
メニューを見る前から、挑戦する料理はすでに決めていた。
「抹茶小倉スパ」
名古屋圏甘味の代表である小倉餡が、緑色のパスタの上にホイップクリームとともに盛られた、
喫茶マウンテンの代名詞ともいえるメニューだ。
[実食]
待つこと10分ほどで、注文した料理が運ばれてきた。
写真で見ていたのである程度覚悟はできていたものの、改めて実物を見ると流石に躊躇した。
暖かいスパゲティが漂わせる抹茶の香り、
丁寧に、かつ大量に盛り付けられたホイップクリーム、
その重量すら感じられるほどの小倉餡の存在感、
先ほどまでの空腹感がたちどころに消えてしまった。
これを食すのかと思うと非常に気が重くなったが、
出されたものはきちんと食べるのがマナー、フォークを手に取り、大皿の上の超級山岳に改めて向き合う。
よくよく見ると、新緑に覆われた山の頂に雪がかかっているかのような、芸術的風景にも見えるではないか。
見える、きっと見えるはず、ほうら見えてきたと言い聞かせて、その中腹にフォークを差し入れた。
まずは緑色のスパゲティを一口。
・・・。
「暖かい抹茶味の食材を噛んで食べる」という、今までに経験したことのない行為に、身体が拒絶反応。
美味いとか不味いとか、そういう基準とは別のベクトルにある食べ物のようだ。
一口目から、その後の登坂の厳しさを予感せざるを得なかった。
味云々に関しての詳細は省略。
正直に言うと、無心になって遮二無二食べていたのであまり覚えていないというのが実際である。
・複数回の咀嚼を余儀なくされる、太麺のスパゲティ
・スパゲティの熱で徐々に溶けだし、麺に絡み始めるホイップクリーム
・ボリュームのある小倉餡
以上の理由により、食べ進めるのには相当に難儀した。
が、苦戦しつつも、どうにか完食・登頂に成功。
完食の証に空になった皿を撮影したが、
抹茶とホイップの色残りにより、とても見せられる絵ではなかったため、ここでは割愛。
挑戦終了後、満腹感とはまた違った胃の重量感と、登頂できた達成感に浸っていると、
皿を下げにきた店員がこれを差し出した。
・・・。
これだけ登ってもまだ一合目らしい。
喫茶マウンテン、その深淵は見えない。
[感想とまとめ]
一大観光地となった名古屋の名店は噂にたがわぬ、いや、噂以上の難所であった。
山に例えると、
「激坂ヒルクライムだと思って挑んだら、そもそも舗装路ですらなかった」
という状況。食べ物という概念は捨て去ったほうが懸命だ。
自転車乗りは往々にして大食漢であり、
食事するという行為を存分に楽しんでいる人が多い印象である。
・甘いものが大好きな人。
・炭水化物が大好きな人。
・無謀な挑戦が大好きな人。
上記に該当する自転車乗りは、是非ともこの山に挑戦してほしい。
自転車乗りの脚力、もとい食力の限界に挑もう。
なお、今回のような奇食だけでなく、
一般的なパスタ、ピラフ、喫茶店メニューも多数メニューには存在する。
そのどれもが大盛り、かつリーズナブルな値段で提供されているため、満足度は非常に高いだろう。
隣の席の体育会系グループが食していたミートボールスパは、
眼前の緑の物体との比較を抜きにしても、非常に美味しそうに見えた。
次回来店時には普通のメニューを堪能したいと思う。
価格評価→★★★★★(数の出ない奇食メニューも他と同じ価格帯で提供してくれる)
評 価→★★★★★(とにかく一度食ってみるべし)