購入価格: ¥29,724 (税込)
標準価格: ¥33,283 (税込)
『軽い動作、洗練されたデザイン、高いコスパ。クロスバイクの10速化に最適なコンポーネント』
■リア10速化に憧れて
私はGIANT SEEK R3というクロスバイクでサイクリングを楽しんでいる。1年間そのまま楽しんだ後、DEORE M590シリーズ(クロスバイク/トレッキングバイク用)に換装し、リア8速から9速にした。DEOREはへたりもなくシャキッとした動作をしていたし、9速でも十分満足なのだが、心のどこかで10速に憧れていた。
今年、DEORE T610シリーズが発表され、トレッキングバイク用のDEOREもリアが10速になった。しかも今回はリアディレイラーだけでなく、シフトレバーやクランクもトレッキングバイク専用だ。10速化への気持ちはどんどん強くなって、結局注文してしまった。今回のレビューは以下のパーツのまとめになる。
①クランクセット : FC-T611 (48-36-26T、チェーンガードあり)
②フロントディレイラー : FD-T610-6 (66-69°、トップスイングタイプ)
③シフトレバー : SL-T610
④リアディレイラー : RD-T610-SGS
⑤チェーン : CN-HG54 (HG-X、10速専用)
⑥カセットスプロケット : CS-4600 12-28T ※製品ラインアップチャート通りの組み合わせ
⑦Vブレーキ : BR-T610 (前後)
⑧ブレーキレバー : BL-T610 (2フィンガー)
(参考) 2013-2014年 製品ラインアップチャート:
http://productinfo.shimano.com/lineupchart.html#series=deore_trekking&speed=3x10・トレッキングバイクコンポーネント DEORE T610シリーズ ※パーツを撮影して画像を加工
■クロスバイクに合うデザイン
DEORE T610はDEORE LXを踏襲したようなデザインだ。特徴的なのがクランクセットの形状で、MTB用が穴の空いたクランクになっているのに対し、DEORE T610はキャップレスデザインになっていて、かなりかっこいい。キャップレスデザインが合うか不安だったが、滑らかですっきりした形状を見てとても気に入った。
リアディレイラーもMTB用とは異なるデザインで、どちらかと言えばロード用のデザインに近いと思う。MTBのリアディレイラーがシャープな造形なのに対し、凹凸が少ない流れるような形状になっている。
DEORE T610を購入するにあたって、シマノのお客様相談窓口に電話していくつか質問をした。その中で出た話が、DEORE T610はクランクセット、リアディレラー等にクロスバイクに合うようなデザインを採用しているということだった。
・左: 4アームのキャップレスデザインはロードのクランクとは違った印象
右: スッキリとした外観のリアディレイラーはMTB用とは異なる形状
■パーツごとに異なる質感
DEORE M590が全てのパーツがギャラクシーブラックなのに対し、DEORE T610はパーツごとに表面処理が異なる。もしかしたら、パーツの単価が反映されているのかもしれない。
クランクセットとリアディレイラーのブラックは光沢感があり、グレードの割にはかなり質感が高い。105 BR-5700-Lと同じような質感だ。クランクセットとリアディレイラーは目立つパーツなので、きれいな表面処理なのは嬉しい仕様だ。
だが、それ以外のパーツは値段相応といった感じ。シフトレバーやVブレーキは悪くないが、フロントディレイラーのクランプとブレーキレバーのレバー以外の部分がくすんだつや消しのような色で残念だ。質感の違うブラックを組み合わせることで、全体としてみた時には単調さがないのは良い。また、ブレーキレバーやVブレーキのシューホルダーまでブラックにして統一感を出しているのにはシマノのこだわりを感じる。
・全て同じブラックではなく、パーツごとに質感が異なる
■ブレーキ性能はDEORE M590と同等だが信頼性は高い
DEORE M590同様、3フィンガーのブレーキレバーの予定だっただが、メーカー欠品で次回入荷も未定だったため、2フィンガーにした。3フィンガーはレバーにテーパーが付いていたが、2フィンガーは薄く幅広な形状になっている。2フィンガーもエルゴノミックな形状で指にかかりやすくて使いやすい。
DEORE T610のブレーキレバーとVブレーキの組み合わせはさすがDEOREといったところで、制動力が高く確実に止まれる。カッチリしたブレーキフィーリングで、握った分だけ効き、微妙なブレーキのコントロールができる。
ブレーキレバーはi-Specに対応するようになり、Vブレーキはアーチの形状とワイヤーの取り付け方法も変更されている。制動力やフィーリングに全くと言っていいほど差はないが、Tektoroのブレーキとはかなり差があるはずだ。ブレーキシューはDEORE M590と同じく静音性に優れたS70Cで変わらず、レバーの形状もDEORE M590と同じように見える。
・変更点は多いが、制動力はDEORE M590と全くと言っていいほど変わらない
DEOREのVブレーキへの変更はクロスバイクのオススメカスタム
■高剛性は2ピースクランクセット
DEORE T610にもクランクアームとボトムブラケットを一体化した2ピースクランクセットが採用されている。DEORE T590にも採用されていたので特に新しさは感じないが、元々付いていたSR SUNTOURの四角軸のクランクとBBと比べると、明らかに剛性が高くて力のロスが少ない。個人的にはクランクは交換すると楽しくなるパーツだと思う。
・ホローテック2ではなく、クランクの裏側が肉抜きされた2ピースクランクセット
BBはDEORE M590と同じSM-BB51
■より滑らかで軽くなったフロントの変速
フロントの変速はとても静かで滑らかだ。特にミドルギアからアウターギアへのスムーズなシフトアップが気持ちいい。DEORE M590も快適な変速だったが、DEORE T610に比べるとやや強引にチェーンをかけているような感じがした。右側がフロントの変速に最適化されたHG-Xチェーンのおかげで、歯先がチェーンに収まりやすくなり、変速の滑らかさにつながっているのだと思う。
・HG-Xチェーンと専用のクランクセットのおかげで変速はスムーズ
■トレッキングバイク用に最適化されたリアディレイラー
MTB用のリアディレイラーよりスプリングのテンションが高くないこともあり、リアの変速やシフターのクリック感が軽くてとても快適だ。DEORE M590よりも軽い。リアディレイラーの動きにDEORE M590ほどの力強さは感じないが、その分スムーズで静かに変速するような気がする。変速の素早さ確実さは体感的にはあまり変わらない。変速ショックも小さいが、これはスプロケの隣り合うギアの歯数差が小さいことも影響しているかもしれない。
・軽い動作のリアディレイラー
■様々な歯数構成のスプロケットを選択可能
リアディレイラーはローギアが28〜34Tの10速のカセットスプロケットに対応する。DEORE T610の追加歯数構成はCS-HG62-10 11-32Tのみで、ローギアが28T、30Tのものはロードカセットスプロケットを使う。2013-2014年の製品ラインアップチャートでは、Tiagra CS-4600 12-28T、12-30Tとなっている。
私は最もクロスしている12-28Tを選んだ。使えるギアが増えた分、ギアのつながりがスムーズになり、ケイデンスの変化が少なくなって走るのがとても楽になった。やはり8速より9速、9速より10速の方が使いやすい。また急な坂を登る機会はほとんどないが、インナーギアや28Tがあれば大丈夫だろう。
・CS-4600 12-28。重量増よりも10速になった恩恵の方が大きい
■操作しやすいシフトレバーの形状
ブレーキレバーは上述した通り前のモデルと変わらない形状だが、シフトレバーの形状は大幅に変わり、上位モデルを踏襲したデザインになった。素材はプラスチック製だが、リリースレバーには肉抜き穴が設けられ、エルゴノミックかつ小振りなレバー形状のおかげで操作しやすくなった。ツーウェイリリースで指で押しても引いても使いやすい。クリック感は明確で、カチカチと小気味良く変速できる。
・レバーの形状変更により格段に操作しやすくなった
■実にクロスバイクらしいオプティカルギアディスプレイ
シフトレバーのオプティカルギアディスプレイには目盛りと数字が付けられている。シフトの段数が分かりやすい上、クロスバイクらしさが出ているので私は好きだ。このオプティカルギアディスプレイは奥から手前にかけて広がっていて、小さい割にとても見やすい。
・未だにシフトの段数がわからなくなる私には使いやすいオプティカルギアディスプレイ
■総重量は増加
クロスバイクにキックスタンドをつけている時点で重量は気にしていないのだが、せっかくなので換装の際に T610、M590の両方の重さを測ってみた。ブレーキレバーは2フィンガーと3フィンガーとの違いがあるし、チェーンのコマ数も違うかもしれないので全く同じように比較はできないが、私の自転車に取り付けた場合には、DEORE T610の方が153g重くなった。
特に見た目を重視してキャップレスデザインになったクランクセット、全てスチール製の10速用スプロケが重い。レースならこの重量増は困るが、私のクロスバイクに使用する分には操作の軽さや快適さ、見た目といったメリットの方が大きい。
・クランクセットとスプロケが重い。それ以外のパーツは軽くなっているもの多い
■取り付けと説明書
DEORE M590の取り付けはショップにお願いしたが、今回は自分で行った。各部の調整ができれば特に問題なく行えると思う。コンポーネントを自分で取り付け、調整し終わった時の達成感は格別だ。
DEORE T610に付属するユーザーマニュアルには、ブレーキのかけ方などの使い方しか載ってない。取り付け方法は、シマノのサイトからディーラーズマニュアル(基本作業書)をダウンロードして入手する。このマニュアルは各グレード共通のマニュアルになっていて、DEORE T610専用のものではない。
今までの紙の取扱説明書は難解な表現もあったが、ディーラーズマニュアルは文章が分かりやすい表現になり、イラストが多くてイメージしやすくなった。だが、フロントディレイラーの調整方法は簡略化された気がする。「レバーが重い場合は…」など、これまでのように細かい調整方法を記載してほしかった。
(参考) SHIMANO ディーラーズマニュアル:
http://si.shimano.com・このサイトのURLはユーザーマニュアルに記載されている
■DEORE M590よりもコストパフォーマンスが高い
DEORE T610の総額は、私の構成では定価で33,283円だ。DEORE M590をブレーキレバーを2フィンガー、スプロケを11-28Tにして、ほぼ同様の構成にした場合の総額は32,680円になる。つまり、9速のDEOREとほとんど変わらない価格で10速を選べる。しかも実売価格は定価の10%引きくらいだ。
シマノのお客様相談窓口にDEORE LXとの違いについて聞いたところ、表面処理と耐久性が異なるが、性能は初期状態においては大きな差がでないとのことだった。それならコストパフォーマンスを優先しようと思ってDEORE T610にした。ホローテック2のクランクセットも試してみたかったけど。
DEORE T610は10速になっただけでなく、様々な点で使い勝手が向上し、更にコストパフォーマンスが高くなった。最低限でもDEORE M590の使い勝手のまま10速化し、ローギアが28Tのスプロケが使えればいいと思っていたので、結果的にこれは当たりだった。
■クロスバイクのカスタマイズにオススメのDEORE T610シリーズ
DEORE T610シリーズは、マウンテンバイクコンポーネントの力強さ、ロードバイクコンポーネントのスムーズな動作、コンフォートバイクコンポーネントのラグジュアリー感を併せ持つ…みたいなことがシマノのヨーロッパ向けのサイトに書いてあった。確かに動作は軽くてスムーズで、買い物、ポタリング、フィットネス、ロングライド等、どの用途でもクロスバイクの使い勝手は良くなり快適になった。また、キャップレスデザインのクランクを中心に洗練されたデザインは、クロスバイクの見た目を高めてくれた。元々ACERA等のパーツで構成されていたGIANT SEEK R3にとっては、使いやすさも見た目も価格以上にラグジュアリーだと思う。愛着のあるSEEKの走行はますます楽しくなり、大変満足している。
・DEORE T610を取り付けたGIANT SEEK R3。10速化して理想通りかな
価格評価→★★★★★ (DEORE M590と同じくらいの値段で10速化。その他も快適でコスパが高い)
評 価→★★★★★ (軽い操作が快適。特にクランクとリアディレイラーがかっこいい)
<オプション>
年 式→2014年モデル
重 量→3046g