購入価格: $300 (@ ebay、送料別)
ENVEのロード用カーボンドロップハンドルのコンパクトシャローバージョン。
サイズ表記はブラケット部芯-芯で、40・42・44cmの3サイズが用意されています。コンパクトバーのご多分にもれず、これもドロップセクションがブラケットからエンドにかけハの字型に1cm近くフレアしているので、エンド部での幅が表記より一回り広くなります。このようにフレアしているバーのサイズ表記はメーカーによってマチマチで、たとえば同じコンパクトシャローの3T Ergonovaではサイズ表記がエンド部分での芯-芯の幅になっています。ENVEのバーと比較すれば同じ40cm表記であってもたっぷり2cmは差が生じますので、注意が必要。リーチ・ドロップの表記は幅と同じく芯-芯で、全サイズ共通でそれぞれ79mm、127mmとなっています。
・コンパクトシャローとしてもアールがやや緩やか?
まずはドロップセクションの使用感から。下ハンはコンパクトシャローの定石通り緩やかな弧を描いています。ブラケット付近ではアールがキツく、下に近づくほど緩やかに水平に近くなる形状なのも同様で、基本的にはエンド~手前5cmあたりまでの中心線と路面が水平に近くなるようセッティングして使うバーでしょう。極端に送ったりしゃくったりするとブレーキレバーとバーの距離が不自然に広がったり狭まったするので、実際の使用に当たって私はドロップの底部ラインが概ね0~3°位になる位置で使っています。この位置で固定して下ハンを握ると、Ergonovaよりもリーチが僅かに近くなる箇所があります(3~5mm以内)。メーカー公表の数値同士を比較すると両者の差はリーチ・ドロップとも2mm程度なのですが、ドロップ部分のアールがENVEのほうが緩やかなようで、中間部分(大体下ハンに掌をかけてブレーキレバーの先端近くに指2本掛けるあたり)は少し浅くなっているのが原因ではないかと思います。このおかげで掌がかなり小さい私でも、手の小さい人には構造的に向かないカンパエルゴパワーのリア側リリーススイッチに、ドロップ部分を掴んだままでなんとか親指をかけてシフトアップ可能な位置が存在します。反面ブレーキレバー先端は少し遠くなってしまったようで、Ergonova+SRAMダブルタップならば冬用のゴツいグラブ着用でも余裕で届いていた人指し指が、同じグラブをしているとなんとかギリギリでかけられるけれど余裕がほとんどない距離感となってしまいました。レバーのリーチアジャストがあるSRAMやShimanoのデュアルコントロールレバーならさほど問題にはならないでしょうが、指が短い自覚のある方がエルゴパワーと組み合わせて使おうとする場合、ブレーキレバーとの距離感がやや遠めになるのは考慮しておいたほうがいいでしょう。
ドロップのアールが若干緩やかだというのは下ハンを掴んだときの手首の角度にも影響しますが、垂直により近いErgonovaと比べるとENVEはやや寝かせ気味になります。併せて肘もやや開き気味となるので、上体を支えるのはENVEのほうが少しだけ楽なようですが、手前に引きつけて足を踏み込む動作はErgonovaの方がちょっとだけやりやすいと感じます。ショルダー部分のカーブとフレアで下ハン握ってダンシングした際、前腕部にショルダーが引っかかりにくいようになっているのは同様で、ドロップセクションに関して形状由来の優劣差は特に感じませんでした。
・やっぱりモノをクランプできるスペースは少ない、ケーブル処理は優秀
中央のステムクランプ部分は通常の丸断面ですが、ブラケットに近づくにつれて扁平に潰れた形状になります(下側にはケーブルハウジングを納めるための溝が前後に1本ずつ切られているので、正確にはT字型断面)。
○断面部分の長さは約150mm、標準的なステムフェースプレートなら35~40mm位は幅があるので、ライトやGPS類などを装着できるのは左右5cm程度となります(全サイズこの部分の幅は共通)。、クリップオンバーが使用可能な肉厚も確保されているのですが、いかんせん○断面セクションが短いのであまりアレコレ装着できるバーではありません。小さめのベル、Garmin Edgeなどの少しかさばるGPSデバイス、ちょっとマトモなのフロントライトを1個つけたらもう一杯一杯で、最小の40cmではそこまで詰め込むとハンドルトップ左右には掌をようやく乗せられる10cm程度のスペースしか残りません。頻繁にトップを掴む人はKCNCなどのアウトフロントタイプのマウントでスペースを稼ぎ出すのがいいでしょう。
フラット部分の潰し加工の度合いはErgonovaとほぼ同じ程度ですが、ケーブルハウジングを収める溝は2本、前後の縁に近い部分に独立して刻まれているので、実際に使える状態にするとErgonovaよりも僅かに太く感じられます。反面ブレーキとシフトハウジングで溝が独立してあるので収まりはよく、シフト用ハウジング1.5本分の溝が1本だけのErgonovaよりもだいぶケーブル類の取り回しは良好です。例のホッケースティック用テープで保定して上からバーテープを巻いてしまえば、握り心地も外観もケーブルを中通しするタイプとほとんど変わらない位スッキリ仕上げられますし、ハウジングに無理なカーブをさせずに済むので操作系統へのタッチの悪影響も少なくて済みます。
・カーボンハンドルとしては標準的な硬さ。振動吸収性能とのバランスが秀逸
硬さに関してですが、Ergonova LTDやTeamからの乗り換えで不満を感じることは全くありませんでした。体感上の硬さはErgonova Teamと大体同じかやや硬い位ではないかと思っています。40cmで208g(実測、エンドプラグ込)とErgonova Teamの42cmもほぼ同じ実測重量なので、ENVE付属のエンドプラグ分と3Tの厚めのクリアーコート分を勘案したら大体同じような重量と肉厚なのではないでしょうか(ENVEのほうには切り口がないので確証はないですが)。どちらも扁平断面トップを持つバー特有の、ドロップ部に体重を預けるとリーフスプリングのように撓る現象が生じます。この撓り具合はサイズによって差がかなり大きく、40はやや硬め・42cmで若干マイルドになり、ここまでは私程度の腕力ではで不満になることもなかったのですが、44cmは私にもはっきりと体感出来る程の大きな撓りを感じました。44cmは体格の大きな人や剛性が気になる方も多いと思うので、できれば購入前に乗車して確認しておいたほうがいいでしょう。40と42cmもスプリンター向けにカーボンモリモリで編まれたバーのような硬さでなく、Ergonova ProやDeda Newtonのような典型的なアルミバーより柔らかめという程度のバランスで、剛性一辺倒ではなく程ほどの硬さと振動吸収性の両立を狙ったようなバランスです。相当硬いフロントエンドを持つ私のFireflyと組み合わせでも、ステムが余程硬いものでなければ掌が辛くなる程ではなく、かといって下り坂でのハイスピードコーナリングで応答性の鈍さを意識する程ダルくもない中庸な特性を示し、乗り手やバイクとの相性をそれほど選ばないバーになっているのではないかと思います。
独自に市販品の強度比較テストを実施していることで有名なFairWheelBikesのテスト結果でも、ENVEのバーはErgonova Team同様ちょうど中道を狙ったような数値を出しています。前述の理由で表記に従ってサイズを揃えるとENVEの方が一回り広いバーになるという事はFWBも把握していたようで、実測で可能な限り近いディメンションのものを選んで計測した模様。
https://fairwheelbikes.com/c/reviews-and-testing/road-handlebar-review/折れた割れたという話はとんと聞かないので、強度や製造品質の面での心配はまず必要ないと思われます。最近では写真では判別が難しいほど精巧なパチモンが多く出回っている3TやRitcheyと違ってコピーしにくい造形なのもあって、オークションなどであってもやや手を出しやすいかも。ただ、正規品のQC合格ステッカーにも漢字が書かれているのを見るあたり、生産は台湾か中国で行っているようなので、この先もリスクゼロというわけではないでしょう。実際ENVEのボトルケージやアパレル類のニセモノ(即パチモンとわかる露骨なレベル)はよく見かけるようになっていますし…
・特徴的なバーエンド、そしてとうとうブラックオンブラックが標準に
見た目に関して特徴的なのが、エンド部分の形状。普通は空洞になった筒が口をあけていて、そこに任意のキャップを埋める形になっていますが、ENVEは先端が銃のホローポイント弾よろしく小さな窪みが設けられた砲弾型になっていて、どこにも穴は開けられていません。窪みにはプラグがついたラバー製のアンブレラ様の専用エンドキャップが嵌るようになっており、バーテープの端はテーパー状になったエンドに巻きつけて上からこのラバーキャップを被せるというちょっと特殊な処理方法になっています。プラグとキャップは交換可能ですが、通常のエンドキャップと比べると空洞の中に折り込んだテープの端を押し込む必要がなく、かつ外れたり緩んだりする心配も皆無なのでより安全性は高いと思います。モールディングに関し高い技術とノウハウがなければ真似出来ない造作ですから、これはコピー商品排除にも一役買っていると思われます。
カラーについて。これまではホワイトのデカールが標準で、ブラックオンブラックのペイントロゴにブルーやゴールドのアクセントが入った特別仕様のものはCannondale SuperSix Black inc用にOEM装着されるのみでしたが、これの市販化に対する要望がかなり高かったのかステムやシートポストも含め通常販売分は全てブラックオンブラックのペイントに変更されるようです。もう、私のようにブラックロゴの特別品を求めてebayに張り付く必要はなくなったというわけですね…ホワイトでやたら主張の強いロゴが気になっていた人には朗報でしょうが、逆にホワイトロゴが欲しい方は早めに店頭在庫分を確保しておいたほうがいいかもしれません。
・総評、3T Ergonovaとどっちを選ぶ?
総じて高いレベルでまとめられたバランスのいいバーです。コンパクトシャローとしては最後出組なのもあって、他社バーでは不満になることが多い部分を綺麗に潰してもあります。ただ、モノは良いのですがこのジャンルでは一番成功していると思われる3T Ergonova Teamと比べてしまうと…価格差小さくないだけに最終評価の足を引っ張ってしまいます。値引きのほとんどないENVEの新品実売価格は$300~350、これはErgonovaならTeamよりもLTDに近い価格帯です。重量だけ見ればLTDほど軽くもなく、Teamとは$50~100相当の価格差があるのが現状。(自分含めそういう方は割と多そうですが)TeamからENVEのコンパクトに買い換えるのは実はほとんど意味がなく、見た目の変化以上のものにはならないでしょう。使い勝手でもケーブル処理と下ハン握ったときの微妙なレバーとの位置関係の差と手首の角度位しか違いが見出せないので…特にコンタクトポイントをENVEで揃えたいなどのこだわりがないならErgonova Teamを買うのが賢いのではないでしょうか。
価格評価→★★★☆☆ (やっぱり高いですね)
評 価→★★★★☆ (全般的にとても良く出来たバーですが、価格が足を引張ります。あと38cmもあったらなぁ)
年 式→ 2014
カタログ重量→ 206g(実測重量 208g)