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シークレット・レース
タイラー・ハミルトン、ダニエル・コイル 共著
今までずっと、アームストロングのドーピング疑惑が持ち上がるたび
週刊誌の下世話な記事タイトルの羅列と同程度にしか捉えることができなかった。
「またか」と、うんざりしていた。
疑惑の内容とそれの検証が、
客観的事実を積み重ね、それが真実である、と推認できる程度の合理性も無い、
と思っていたし、
何よりも彼、アームストロングの言い分である
『何百回ともいえるドーピング検査で、一度として陽性反応が出たことは無い』
という事実が、彼がクリーンである、と言う事の、何よりもの担保、証左である、
と疑わなかった。
私自身の『言い訳』を加えるのなら
海外の情報に直接触れ得るための語学力が十分無く
アームストロングの活躍に感嘆し、あこがれた経験もあって
故にその情報にフィルターやバイアスをかけていたのかもしれない。
ただ
国内の自転車情報サイトに至って、(…ingtimeというサイト)
アームストロング擁護を感情的な言葉の発露で満たした記事もあり
それが署名された記事であることには、さすがに、(別の意味で)うんざりされられたが。
しかしながら、アームストロングに対する告発で
元チームメート、ハミルトンの証言については、
私はそれをそのまま受け入れていた。
それは単に、彼に好感を抱いていたから、という理由で。
そんなアンビバレントな状態を半ば放置していました。
本書はハミルトンの回想をメインとし、それを補強するコイルの脚注、
他の人物への聞き取りで構成されたノンフィクションであり、物語です。
物語りであるがゆえ、大変読みやすい。
過去に見た映像が立ち上がり
(私の場合は2001年制作・USPSのドキュメンタリー『road to paris』)
その中へ入り込んで、ある時はチームバスで彼らと「その瞬間」に立ち会っているような、
そんな感覚を何度も、何度も味わうのです。
深く理解することもできたし、だから、例えば
「ドーピングが健康を損ねないのであれば、全員がドーピングする限りは
競技の公正は保てるのだから、いっそ認めてもよいのでは」
という意見に、今なら『明確』に反論することができる。
価格評価→★★★☆☆(文庫で550P)
評 価→★★★★★(TDFをまた見よう、と思えたから)