沿道の声援
これは少し前のロードレースの大会でのこと。あれは土砂降りの中を走る100km越えのレースでした…。 スタート直後から有力選手が逃げ集団を形成して、メイン集団との差をどんどんと広げていきます。 差が1分以上開いてしまったため追走は諦めて、メイン集団内で手堅い位置をキープしながら走ります。 登り、平地、下り…前に誰も出なければ、場所を問わずに積極的に前に出て集団を牽引します。
しかし、大雨であること…初めての100km越えのレース…普段よりも先頭でガンガン引くなど…今まで経験したことのないような状況下で走っていたため、身体のほうにかかる負担も小さなものではありませんでした。 残り3周の登りから脚がだんだん回らなくなり、ふくらはぎが攣りそうになります。 このときに既に身体の方からの危険信号は出ていましたが、時間制限の問題でここでペースを落としたら完走さえも危ぶまれます。 とにかく自分の身体に鞭を打って集団からこぼれないように突っ走ります。
なんとか集団内の手堅い位置をキープしたまま残り2周の最終コーナーを曲がります。 ここを曲がってホームストレートを通過すれば、少なくとも完走はできる─そう思って油断したのでしょう。 次の瞬間、思いもよらずに自転車がコントロールを失います。 「落車する!」そう思って立て直そうと思いましたが、既にコントロール不能の領域に陥っており、結局落車をしました。 登りのヘアピンだったためスピードは出ていませんでしたが、雨で路面が濡れていたことと、それによって流れ出た油に乗って滑ったのでしょう…。 怪我の程度は大きくなかったので再び自転車に跨ったものの、雨による寒さで脚はガクガクと震え、周りからは集団の姿が消えて完全に孤立してしまい、モチベーションはほぼ完全に消えてしまいました…。
けれど、朦朧とした意識の中、耳に神経を張り巡らすと
「頑張れー!」 「諦めるなー!」
大多数の人からの声援が聞こえてくるではありませんか。 その耳に飛び込んでくる声援が、まだ少し残っていたモチベーションに火をつけてくれました。 その声援を聞いて感極まってしまい、サングラスのレンズが少し曇るとともに、視界が少しぼやけました。
「みんなが応援してくれているのに、ここでその応援に応えなくてどうするんだ!!」
心の中で自分で自分に喝を入れて、沿道の観客の声援に応えるかのように力いっぱいペダルを踏み込んだ─。
ロードレースでもヒルクライムレースでも、種目を問わず沿道の声援というのは非常に力になります。 特に精神的に追い込まれたような状況下で声援が聞こえてくると、気が楽になるとともに、力も湧いてきます。 みなさんも、レースを観戦するときには是非選手へ応援をしてみてください。きっと喜んでくれるはずです。
価格評価→★★★★★(この感動はプライスレス) 評 価→★★★★★(下手に機材を変えるよりも効果が大きい気がします)
|