購入価格 ¥1575
エイ出版から続々出てくる鉄の本。
簡単ポンという感じではなく、内容がそれなりに充実していますが、このムックも同様です。
内容は、イタリア車、日本車や、カンパ、シュパーブ、シマノのパーツ紹介、イギリス車のレストア、買ってはいけないヴィンテージ・フレーム&パーツの見定め方、そしてこの手のムックでお約束( ? )の絹自転車製作所・荒井正氏の濃い文章「ヴィンテージロードの設計思想と走法」。さらにはレジナの6段ボスタイプフリーの分解メンテなんていう、いまさらこういうものを見るとは思わなかったなぁ!という感じのページまであります。
1980年代の雑誌や都内のショップなどで見たことのあるロードレーサーが次から次へと登場して、飽きません。好みは人によってそれぞれ異なりますが、それらを包摂する、ある種の揺るぎない様式美が、スチールロードには宿っているようです。
ところで、ミヤタのプロミヤタの写真などは、画質が悪くて、どう見ても手抜き。それに、80年代序盤のツールで活躍したミヤタの自転車なら、プロミヤタではなく、チームミヤタの写真を載せるべきだし、というようなツッコミどころは、さすが( ? ) ちゃんと用意してくれています。
それにしても、ロードレーサーの基本形は、恐らく半世紀以上前にすでに完成していたのでしょう。一方で、モダンなマシンに新たな素材が使われるのは自然な流れです。また、近年に至って、電動シフトが搭載されたりしていますが、これは旧来から続く変速機構に付加されたものであり、技術的にはとても見通しがよく、特段の革新とは言えません。やればできる技術として存在してきたと言っても言い過ぎではありません。完成形を揺るがすような類のものではないでしょう。
今に受け継がれるヴィンテージなスチールロードの佇まいには風格が漂います。そんなスチールロードのかつての名車をこの本で確かめてみるのも、一興ではあります。
価格評価→★★★★☆
評 価→★★★★☆
発行 2012年4月30日
しかし、最近自転車に乗り始めた今時の人がこの本を見て、面白いと感じる人が、どれだけいるのかなぁ、という気もします。
それからこの本、ちょっと懐古趣味に走りすぎで、 ”鉄バイクは趣味性に重きを置いているノダ” 風なテイストで、そのへんがちょっとアレだなー、という感じではあります。日本に目をむけると、当たり前の話ですが、リアルレーシングの世界でも、鉄マシンは立派に戦えると考えているビルダーが大半ですし、そういう意味で、スチールロードは懐古趣味のご年配がゆる~りと乗ったり、その手のバイクにウルサイ人の薀蓄のためだけのものではないのです(って、そんなこと当たり前ですけど)。
また、ロード競技の底辺拡大や、若い才能の発掘、という意味でも、クロモリロードレーサーは重要な役割を果たすはずです。落車して壊れても、修理して使い続けられるスチール自転車は、高校生の部活では先輩から後輩へと受け継がれる資産として位置づけられます。そもそも裕福ではない類の家庭の生徒にも、自転車競技部の備品としての自転車を使うことで活躍の機会を用意することが、スチール自転車なら可能でしょう。自転車競技レベルの底上げのためにこれは大変重要です。将来性のあるエンジンを持つ若者なら、最新鋭のカーボンバイクだろうが、廉価な105フルセットのスチールロードレーサーだろうが、同じように強烈な走りで将来性を見せつけてくれるはずです。厳しい環境で強くなる若者を、応援してみたいものですね。
昔のロードレーサーは美しいですし、それはそれで価値があるとは思いますが、今に生きる鉄の自転車に目を向けることも大切です。安くて丈夫なクロモリレーサーで思いっきり走りたい!!という元気な若者にも是非、乗ってほしいですね!
・・・おおーっと、かなり激しく脱線してしまいました。