購入価格: ¥12,900 (@バイクプラスさいたま大宮店)
Bontragerから出ていたフロント専用LEDライトです。出ていた、と過去形になっているのは現在は800ルーメンが出せる800Rにモデルチェンジして700Rはもうディスコンになっているからなのですが、無線コントロール機能がついた700TRは残っているし、800RもLEDの出力が微増したこととカラーがホワイトからブラックへ変わったこと以外には大きく変わっていないらしい、ということで今更ですが700Rのレビューも何かの参考になるかと思います。
さて、諭吉さんが漱石さん3人をお供に旅立ってしまうライトというのは心理的にくるものがありますが、このクラスになると300や400ルーメン級よりも格段に時間や路面の制約を受けなくなり、おっかなびっくり使う間に合わせではなく昼間とさほど変わらないペースで巡航できる性能を秘めています。特に真っ暗な山道や河川敷を走ってみると新渡戸さんで買ったライト1灯だけでは全然足りないというのは身に沁みてわかることで、日暮れ以降に走る機会が多い人はこのクラスを1本くらい持っているといいんじゃないかな、と思います。
ion700Rの基本的なスペックは以下のとおりです。
・100mm x 30mm x 25mmのコンパクトなボディ。ホワイトのパウダーコーティングで質感はなかなか。
・バッテリーは内蔵リチウムイオンで、充電はUSB端子経由(ライト側端子はmicroUSB)。満充電までにかかる時間は5h。
・CREEの最大700ルーメン出るLEDを備えている。出力モードは700/450/200/50ルーメンとストロボの5つ。
・700ルーメン時連続1h45min点灯、以下3h→6h45min→22h→40hと伸びていきます。
・ブラケットは樹脂とシリコンゴムバンドのハイブリッドで、φ22.2〜35mmに固定可能。左右へ首振り機構が備わります。インデックス付きで32ノッチ。
・重量はまあパワーなりに。本体116g、ブラケットは悪あがきでチタンボルトとアルミナット入れて軽量化を試みるも22gどまり、の計138g。ちなみに何もしなければ142g。ヘルメットへのマウントは重さによる帽体への負荷を考えると避けた方が良さそう。
・Trek乗りでない人には重要なポイントとなる例の丸bマーク。入ってますが手にとってじっくり観察でもしない限り気づかない位目立ちません。
…とこんなところです。バッテリーが別体となった1,000ルーメンクラス以上のライトから比べると色々見劣りしてしまいますが、コンパクトでバカ重くないボディに真っ暗な夜のサイクリングロードや峠道でも肝を冷やさず走行できる程度の性能を1時間半程度確保できるパワーが収まっている、というのは他ではなかなか得難い特徴だと思います。
では、実際の使用感を。
配光パターンは手前が広く先へ向かって細る樅の木のような感じで、20〜30m位先に光軸を合わせ街灯のないところを30km/h以上のペースで流しても不安を感じない明るさで路面状況を捉えることができます。横方向へはアピールのために小さいながらもオレンジのクリアドットが備わっていますが…これはまあないよりゃマシ程度のもの。正面からの被視認性については1.5km先から見えるとTrekは言っておりますが、普通の交通環境だとそんなに離れてたら車のHIDやLEDヘッドライトに完全に幻惑されて判別できないことでしょうからほとんど意味はないのですが、実用上は困ることなどはまずない程強力な光を放ちます。100m以内なら確実に目に入るはずなので、一般道上での対向車からの被視認性は十分以上でしょう。逆にここまで明るいライトは必要以上に光軸を上げてしまうのを避けないとドライバーの目潰し兵器になってしまい、結果的に自分の身を危険にさらすことにもなりかねません。
トップの写真に写っているグリーンの光は残量インジケーターを兼ねた電源スイッチで、減るごとにグリーン(残量25%以上)→レッド点灯(10〜25%)→レッド点滅(10%未満)と変わっていきます。
このライトのランタイム、ヒートシンクが備わっていないからだと思うのですが気温が高かったりペースが遅く空冷が追いつかないと如実に影響が出てしまいます。なのであくまで参考なのですが、条件の比較的良い時を例にとると700ルーメン連続点灯時は概ね1時間20分前後でレッドが点灯します。ここまで明るさはほぼ保たれているのですが、レッド点灯から10分程でライトの出力が絞られます。700ルーメンモードだと大体300ルーメン程度まで落ちるでしょうか。そのまま使用を続けるとインジケーターの点滅が始まって残量10%を割ったことを知らせてくるので、そういう設計になっているのでしょう。450ルーメンモードでもやはり同様段階を経て出力が絞られます。バッテリー保護のため完全放電はしたことがありませんが、公称ランタイムの80%位はコンスタントにパワーが持続し、残りは省力モードにという動作パターンで、自動車で時々ある燃料計の1/4位を過ぎると加速度的に減りが早くなるようなタンクがじょうご型なのか!?とツッコミたくなるインチキな仕様にはなっていません。
ランタイムについては全てを確認したわけではないですが、フルパワーと450ルーメン時は15℃前後だと公称を若干下回る程度の持続性があります。2〜3時間以内の舗装路上での使用なら大体どこを走っても不満はありませんが、点灯しながらの充電/給電は不可、分解してバッテリーを簡単に交換できる構造でもないので、2本以上用意しない限りはブルベ的な使い方には役者不足、ということになるかと思います。
ヒートシンクがないのでかなり発熱すると書きましたが、フルパワー時バッテリーを収めたアルミボディは淹れたてコーヒーの入ったカップ位熱くなるので、ざっと70℃位にはなるでしょうか。ブラケットからハンドルバーに熱が伝わる心配はないですが、ライトやGPSユニットなど他のバッテリーを搭載した機器と並べて配置する場合接触は避けておいた方がいいかもしれません。
ライトとしての素性は概ね上々で文句はほとんどないのですが、スイッチの感触はいただけません。やたら固い上に妙に反応が悪く、後述するブラケット固定の甘さもあって走行中にモード切替をするのは非常にやり辛く、場合によっては危険ですらあると思います。ツマミをひねるだけで簡単に切り替えられるfabricはこの点大変優秀でした…ちなみに電源スイッチは充電インジケーターも兼ねていて、充電中はレッド点滅で完了するとグリーンに切り替わります。充電はUSBケーブル経由、ケーブルが1本付属していますがACアダプターはないので別途スマホ用などから流用するか、PCなどにつないで充電することになります。
ブラケットの出来は、まあ及第点というところでしょうか。円筒状にあらかじめシェイプされているので丸断面のバー以外には固定できず、妙に幅が広いわりには少し重めのライト重量(116g)に揺すられて若干グラグラするのですが、グラベルを駆け抜けない限りは突然お辞儀をしてしまうこともないでしょう。実用上は足りますが、軽くフレキシブルなfabricの方が優秀だと思いました。
スイッチとブラケットはもっとブラッシュアップできるはずですが、新型800Rはどうなんでしょう…
・まとめ
早朝や深夜に一時間ほど乗りたい時、あるいは通勤通学にそこそこ高性能でかさばらず取り外し簡単なライトが欲しい、というニーズにはドンピシャじゃないかと思います。価格まで含め近いスペックのものだと前述のL&MのUrbanシリーズの上位機種(こちらも今は850・800が出ている)やCateye VOLT800あたりが直接の競合でしょうか。もっとお金を出せるならExposure Joystick MK11という最大850ルーメンで90g切るものもありますが、価格がほぼ倍になります。700Rは在庫処分で$70位になっていることもあるので、狙い撃ちするのも手かもしれません。
・おまけ
ANT+で接続できるTransmitrというTrek独自のリモートスイッチに対応しているRTというモデルもあります(素の700Rや800Rは非対応、スイッチは別売り)。ライト本体で¥4,000、別売りリモートスイッチが¥8,900するそうですが、対応ライトを最大7個連動できて、パッテリー残量表示やモード切り替え、果てはウインカー的な方向指示点滅が手元で可能になるそう。面白そうな機能ではありますが、Fライト1灯/Rライト2灯以上にTransmitrまで揃えると諭吉さん3人と新渡戸さんが出ていってしまう…これでは残念ですが普及は望めなさそうです。ちなみにTrekのステムにはこのライトを直接固定するBlendRというフェースプレートもオプション販売されているそうです。
・おまけその2
意地の悪い言い方をするとBontragerはTrek、というイメージが強すぎてTrekに乗っていない人や興味がない人にはbontragerブランドのライトなど全くイメージがわかないでしょう。発売された2015年当時、雑誌などの紹介では結構センセーショナルな感じで取り上げられていましたが、何もないところからある日唐突に高性能なライトを発売するなんていくらTrekが大資本でも考えにくい話。Bontragerのライトはそんなに良かったのかと気になって調べてみたら、ion700Rから遡ること約1年ちょっと、Light & MotionからUrban700という700Rにそっくりなライトが出ていました。
http://reviews.mtbr.com/review-light-motion-urban-700スイッチ配置や各種スペックが酷似していますし、もしかしたらOEMだった…? 調べてもそんな情報は出てきませんでしたし全くの偶然なのかもしれませんが、仮にOEMだったとしても悪いなどと言うつもりは全くなく、むしろ逆だというのが正直な感想。なんのバックグラウンドも持たないメーカーが作った高性能な意欲作なんて正直キワモノ臭プンプンですし、中身をL&Mから調達しているとなればそれなりに完成度が高いのも納得が行きます。
いずれにせよ700Rは、完成車メーカーがよくやる汎用品に自社ロゴだけ入れて機材に詳しくないオーナーに買わせたろというようなセコいリバッジではないですし、完全オリジナルのボディが与えられていてUrban 700よりも気持ち値段を下げてあるという意欲作でした(Urban700定価$168、ion700Rは$120)。
価格評価→★★★★☆(スペックの割に安価)
評 価→★★★★☆(スイッチだけでもどうにかしてほしい)
年 式→2015
カタログ重量→ 138g (軽量化後実測重量 116+22=138g)