購入価格 $250
以前アメリカに渡った際、GPS式サイクルコンピュータが欲しくなったのですが、
GARMINやLEZYNEなどは パソコンでのセットアップが必要になるので好ましくありません
(ノートPCを持ち込んでいなかったので)。
WahooのELEMNTシリーズなら、スマートフォン上で全てのセットアップが行えるという事を事前に知っていて、
PC要らずで非常に手軽なので 買うことにしました。
KICKR、TICKR、ELEMNT、RFLKTなど、Wahooは「E」を省略したネーミングを多用しますが、
さすがに頭文字を略すのは無理があったようですね。
「ELMNT」と表記するのも不自然なので、3つある「E」のうち2つは そのままになっています。
○ラインナップ
ELEMNTシリーズには、ベーシックモデルのELEMNT、一回り小さいELEMNT BOLT、
GPS機能を省いたELEMNT MINIがあります。
ELEMNT BOLT(以下 BOLT)ですが、ベーシックのELEMNT(以下 無印)に比べて
端末サイズ、画面、バッテリー容量が小さくなり、価格も¥7,800安くなります。
バッテリーも小さくなりますが、そもそもディスプレイの消費電力も若干減ると思われるので
有意な差は無いかもしれません。
ELEMNT無印は DHバー用の台座が標準で付属するので、TTバイクで使いたい人は
BOLTより無印のほうが良いでしょう。
僕としては、バイクに取り付けるサイクルコンピュータは なるべく小さいほうがありがたいので
BOLTを選んだ次第です。
BOLTがウリにしている特徴の1つが これです。BOLT専用のアウトフロントマウントに取り付けると、
本体と台座の曲面がツライチになり おしゃれに見えます。
別に これが為にBOLTを選んだ訳ではないのですが、空気抵抗が低減される形状を追求した、らしいです。
(至極くだらない事ですが、たまたまDEDAのバーテープを巻いていたので
"ELEMNT" BOLTの奥に DEDA "ELEMENTI"のロゴが写る、という偶然が起きました。)
この台座の曲面ですが、
パカッと外れます。壊したのではなく仕様です。
面白い事に、このパーツは 無くても問題無いレベルのものなので、はっきり言うと「飾り」です。
軽さにこだわる人は、外して使うのも良いでしょう。
台座をよく見ると、3時と9時の位置に 皿ねじが収まるかのようなザグリが設けてあります。
下部カバーが取り外せる事とあわせて考えると、もしかするとこれは
電動コンポのジャンクションを装着できる純正アダプターを作る布石なのかもしれません。
台座はプラスチック製なので、大型ライトやビデオカメラの重みに耐えられるようには見えません。
それをするには レックマウントのように金属で作る必要があるので、
やはり これはDi2/EPSのジャンクション台座を見越しているのでしょう。
○セットアップ
先述しましたが、ELEMNTの各種設定にPCは不要、スマートフォンの専用アプリケーションで行います。
GARMINやPOLAR、LEZYNEなどに触り慣れた人には違和感があるかもしれませんが、
これは「何でもかんでもスマホで操作しようとする」現代アメリカ人のスタイルに合わせた結果なのでしょう。
Wahoo自体、アメリカのメーカーですので。
スマホとのペアリングを済ませると、このような画面になります。
ELEMNTに限らず、Wahooのサイクルコンピュータは基本的にスマホありきの設計なので
ペアリングができないと 何も出来ません。
僕の場合、iPhone SEで問題なくペアリングができました。
スマートフォン側の条件として、Bluetooth Smartに対応している事が挙げられます。
ちょっと昔のBluetooth対応サイクルコンピュータでは、「Bluetooth4.0でもOK!」というものもありましたが、
おそらく そのようなスマホではペアリングが出来ないものと思われます。
海外のフォーラムで「ペアリングできねぇんだけど!?」というクレーム気味のレビューもあったらしいですが、
購入前に まずはスマホ側の条件をクリアしているか確認する事をオススメします。
ペアリングが無事に完了すると、スマホ側のアプリの「設定」タブが こうなります。
「ページをカスタマイズする」で 表示項目の変更、「センサー設定」で 各種センサーを直接スマホとペアリングできます。
たとえばケイデンスセンサーや心拍計は、スマホと直接 結びつける事も
ELEMNT側で ペアリング作業をする事も可能です。
ELEMNTとセンサー類をペアリングしたからといって、その状態のELEMNTをスマホと接続しても
センサーの接続が切断または変更される心配はありません。
「LEDとサウンド」については、BOLT本体上部にある7連LEDを どうやって光らせるか決めます(光らせないようにも出来ます)。
この7連LEDが、ELEMNTのナビゲーション機能において非常に役立つのですが、それは後ほど。
標準では、「速度」「パワー」「心拍数」に連動して点灯させられます。
7つのうち中央のLEDの点灯を「平均値」とし、平均を越えれば 光が右へ移動していき、
逆に平均を下回ると 左へ移動します。
速度の場合は あまりありがたみはありませんが、心拍計とリンクさせておけば
トレーニングの強度管理が容易になるでしょう。
下のほうに「マップ管理」というタブがあります。
これは、ELEMNT本体に保存されているマップデータを消したり 新たに取り込んだりする際に使用します。
デフォルトでは 世界中のマップが取り込まれた状態になっていますが、
容量を圧迫して ログを採れなくなってはいけないので 僕は日本とアメリカ以外は全て消してあります。
また、重要な事ですが、ファームウェアのアップデートも この画面で行います。
上のスクリーンショットは、まさにアップデート中の様子を撮ったものです。
マップとは別の、各種情報を表示する画面の設定です。僕は このような構成にしています。
バッテリー残量と時計が比較的 重要度が高く、気温は参考値として表示させています。
GPS精度ですが、普通に走っているあいだは1~2くらいで推移しますが
ビルやマンションに囲まれたり 屋内に入ったりすると4~5くらいにまで跳ね上がります。
こちらも参考値なので そこまで当てにはしませんが、画面表示の都合上 4項目だとバランスが悪い気がするので
5項目目として 割と有用そうなのを選びました。
この設定を反映した状態が、2つ上の画像の状態です。
部屋で撮ったので GPSの精度は最悪ですね。
GPSが測位できないと、表示は こうなります。
この状態でログを採り始めると、標高などのデータがバグってしまう事があるので
位置情報が正確に割り出されてからスタートしましょう。
端末の左側面には上下ボタンが備わっていて、これを押すと
↓
↓
↓
というように、表示項目数を減らせます。
この操作は、スマホとペアリングしていなくても出来ます。
正直、いちばん下の1項目表示モードは要らないと思うのですが・・・。
2項目表示と字の大きさ ほぼ同じですし・・・。
まぁ、レース中の見間違いを防ぐためだと思っておきましょう。
また、この情報表示画面ですが
ヒルクライム時、周回トレーニング時、KICKRでのワークアウト時など、
シチュエーションに応じた表示内容を複数用意しておくことも可能です。
ここでは「NORMAL」以外全てOFFにしてありますが、ONにしたページは
ELEMNTの「ページ」ボタンを押すと 順番に切り替わっていきます。
○ナビゲーション
目的地までのルートを設定し、ナビゲーションを行う際の画面は こうなります。
黒い くさびの点線が、これから走るべきルートです。
上から2段目の左側が曲がる方向と交差点までの距離、右には道路の名前が表示されます。
この状態で 道路標識を見てみると、
確かに合っています。ブルーミントンというのは町の名前ですが、
ブルーミントンとはあまり関係ない町を通る道の名前でもあるようです。
「BLOOMINGTON」の文字数が多すぎて見切れていますが、名前がついている道路は
その名前も きっちり表示してくれるという訳ですね。
アメリカでは、都会の大通りから住宅街の(比較的)細い道まで、たいていの道路には名前がついています。
何故かというと、アメリカの建物の住所表記には必ず「面している道路の名前」が併記され、
名前の無い道路には郵便物が届けられないからです。
ニューヨーク・マンハッタンの「5番街」というのも、正確には「Fifth Avenue」という道路の名前です。
玄関から最寄りの道路まで それなりに距離がある家の場合、
道路に面した所にポストだけを設置し、「ポストの前の道路の名前」を住所に書く、というのは よくある話です。
とはいえ、このように 車道から分けられた自転車/歩行者専用道には名前がついていない事が多いので
単に「TURN LEFT」とだけ表示されます。
京都の上京から下京にかけても、アメリカと同様に どんなに細い路地であっても
名前がついている事が多いので、道路の名前つきで指示してくれる・・・と思うのですが未検証です。
先ほど少し触れた7連LEDの話ですが、交差点が近付くと
←←←←←スイーーーッ←←←←←
と LEDの光が流れていくように点滅します。
これが非常にありがたい。これを撮った時は真っ昼間だったので そうでもなかったものの、
夜間走行時など あまり画面を見てばかりいられないシチュエーションでは大助かりです。
1か所、ナビゲーションの道路名と実際の名前に相違がありました。
CEDAR Ave.と表示されていますが、実際は どちらの名前も異なります。
ここ以外で このような誤表示を見た事はないので、
これはELEMNT側の不具合ではなく、ELEMNTに取り込んだマップデータの誤植が原因だと思われます。
なので、マップデータそのものの更新も 定期的に行ったほうが良いのかもしれません。
今度は、わざと指示されたルートから外れてみました。
すると、7つのLED全てを真っ赤に光らせ、けたたましい音とともに「そっちじゃない!!」と訴えかけてきます。
なにこいつ かわいい。
しかし、ルートの再構築を行う機能はELEMNT自体には備わっていないので、
ルートを外れる直前の くさび点線の座標まで自力で戻らねばなりません。
ここが ひとつ、GARMINなどのGPS機器に劣る点でしょう。
○脱落防止
GARMIN EDGEや パイオニアのペダリングモニターには、
コンピュータが台座から抜け落ちた際に 落っこちるのを防ぐストラップが付属しています。
ELEMNTの場合、それに相当するアイテムとして
Locking Screwなる小ねじが付属します。
これは、ELEMNT本体と台座の両方に ねじが切ってあり、
これらを ねじで留めてしまう事により、落下防止ではなく
「そもそも台座から抜け落ちない」ようにする為のものです。
台座にヘリコイルを埋め込む理由ですが、ELEMNTを外す際に 1.5mmという極小サイズの六角レンチで緩めたねじを
そのまま落として失くしてしまうのを防ぐ効果があります。
つまり、「ELEMNTからは ねじが抜けているものの、台座のヘリコイルには掛かっている」状態を保っておけば
ねじが振動などで自然に落下する事もありませんし、
ELEMNTを取り付けたら ねじを奥まで締め切るだけでOKです。
1.5mmの六角レンチを財布にでも入れておけば、出先での着脱も自由にできます。
冒頭から5枚目の画像、よく見ると ねじが台座にだけ掛かった状態にしてあります。
このままで既に100kmほど走っていますが、ねじは全く緩んでいません。なかなか優秀です。
○ログ解析
スマホとELEMNTを接続すると、わずか数十秒ほどで 走行記録を全て吸い出してくれます。
また、ELEMNT Appは STRAVAや Ride with GPSのアカウントとの連携も可能で、
吸い出したログを その場でアップロードしていってくれます。
このあたりは、スマホならではの機能と言えますね。
これは、渡米時にBike Trail(サイクリングロード←和製英語)を30kmほど走った時の帰り道のログ13.24kmぶんです。
信じがたいかもしれませんが、この距離のうち 車道に出たのは わずか200m足らずです。
それ以外は 全てサイクリングロードの上でした。
このログですが、道程の大半は 地図上に存在しない道路扱いになっています。
サイクリングロードには、まだ整備されたばかりで 地図に載っていないところも多く、
そうした道を走る場合 事前にルートを引いておく事が出来ません。
まぁ それはWahooに限った事でもないですが。
こちらは Minneapolis市街地に出向いた時のログです。
この時は、全行程69.72kmのうち 車道に出たのは10km強くらいだったでしょうか。
こちらの場合、サイクリングロードのほとんどが 車道沿いを通っていたためか
普通にナビゲーションをしてくれました。
また、ビルの間や高架下などをバンバン走ったのですが
測定誤差は最大でも5m程度におさまっていました。
こちらは帰国後に採ったログです。
友人の家を午前3時に出発し、山科→大津を経て堅田まで北上、橋の上で何故か撮影会が始まり、
途中峠を越えてから国道367号線を一気に下って市内に入ったところで流れ解散し午前8時前に帰宅、
しかも それを月曜日の朝にやるという 鬼畜の朝練だったのですが、それは置いといて。
四条通のビル街・アーケード街での電波の錯乱が なかなか酷かったです(MAX10m以上)、
それ以外のところでは概ね良好でした。
安いGPS機器にありがちな、峠道で軌跡がジグザグに飛びまくる現象も全く観測できません。
もちろん、道の脇が切り立った崖になっているようなところでは 3mほどの誤差が数か所ありましたが。
橋の上に いくつか紺色の印が付いています。
ELEMNT自体の現在位置がGPS的に不動になった時、「ピ↘ロ↘リン♪」という音を鳴らしてログを中断するのですが、
手動で「停止」ボタンを押したあとで 再開し忘れると GPSの軌跡が飛び飛びになり、
測定誤差も非常に大きくなります。
紺色のフラッグは全て、それが為にログが途切れたゾーンを表します。
○まとめ
まだ買ってから日が浅いですが、
際立って悪いところは見当たらない、良いサイクルコンピュータだと思います(今のところは)。
最近、GARMINに対抗しているつもりで あまり勝てていないGPS系コンピュータが沢山出てきていますが、
BOLTは たとえばEDGE520や820と比較しても レースやロングライド用コンピュータとして
じゅうぶん検討に値する存在だと思っています。
レックマウントやK-EDGEからも ELEMNTに対応した台座が続々と出てきているので、
ELEMNTユーザーが もっと増えるといいですね。
まだ100km以上のライドでのテストをしていないので、いずれ そちらも調べてみます。
P.S 琵琶湖行きの朝練は、最初から橋の上で写真を撮るのが目的だったらしいのですが、飽きたので二度とやりません。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★★