the Bicycle Wheel 3rd ed. Jobst Brandt著
購入価格 $24.99
自転車ホイールの専門書です。 何故かホイールメーカーではなくAvocetから出版されているのですが、この書の内容を簡潔にまとめると以前レビューしたRoger MussonのProfessional Guide to Wheel Buildingと内容的に対を成すような、ホイールデザインの理論的側面に特化した書だと思いました。
Roger Mussonの書は理論より実践に重きを置いた内容で、写真や図解をふんだんに用い道具の使い方にまで突っ込んだいわばプラモデル組み立て説明図のような構成でした。百戦錬磨のホイールビルダーに直接組み方のコツを伝授してもらったような読後感といいましょうか。対してこちらは、走行に際して受ける荷重やストレスについて力学などを基に、ホイールの構造について解明していくテキストのような内容です。ホイールを手組みする場合、まずコンセプトを明確に持ちそれを実現する為にひとつずつパーツを選択していく作業が欠かせませんが、どんな視点でパーツを吟味したらよいのか、この書を読めば基礎が養えるでしょう。理論といっても特に構える必要はありません。巻末のglossaryには異なるホイールデザイン毎でスポーク1本あたりにかかる負荷をFEM解析した結果が掲載されていたりかなり突っ込んだ資料もありますが、本文中では読みやすさが重視されていて、門外漢には分かりにくい表現が多用されたりやたらとギリシア文字が飛び交うようなことはなく、数学や物理が高校初歩でストップしている私のような典型的文系人間でもさほど苦痛にならず読み進められます。そういった意味では、某自動車メーカーエンジニアふじいのりあき氏が著した「ロードバイクの科学」と本書の方向性が一緒だと思います。この書の著者もやはり某自動車メーカーでエンジニアとして勤務していたことがある人らしいのですが、ロードバイクの科学からふじい氏独特のユーモアを削ぎ落としさらに深く突っ込んだ参考書仕立ての書だと感じました。図解はふんだんにありますが手書き風のものが多く、割と地味な構成なのでなんだか受験勉強していたころのことがフラッシュバックしますw ちょっと殺伐とした印象で読み物としての面白みには幾分欠けるかもしれませんが、ホイールの構造と動作の原理について包括的に学ぶための資料としてとても良い書です。
読みやすくなっているとはいえ、全く手組みの経験がない方やこれから学ぼうとしている方には少しとっつきにくいかもしれません。ゼロからスタートするなら、まずはロードバイクの科学を手にするといいでしょう。そして何度か中古のホイールをばらしたり組みなおしたりすればホイールを自分で組むための初歩的なスキルが身につくはずです。スキル研鑽に特化して効率アップを図るならProfessional Guide to Wheel Buildingがお勧めです。あれはPDF書類なのでインデックスをクリックするだけで目当てのページにたどりつけるので、PCを傍らに実際にホイールを組みながらトレーニングもできます。ある程度スキルが身につくと今度は使用目的に適った自分だけの理想のホイールが作ってみたくなるものですが、それにはホイールの特性を自分でデザインするための基礎的な理論が必要になります。この書は、そんなタイミングで読むとちょうどいいんじゃないでしょうか。
価格評価→★★☆☆☆(Professional Guide to Wheel Buildingやロードバイクの科学と比べると割高。ハードカバーなので仕方ないですが) 評 価→★★★★☆(ぱっと見は地味ですが内容は充実しています)
初出1983年、最新版は2003年改訂。 ハードカバー150ページ
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