CYCLE SPORTS 2010年6月号
購入価格 ¥620
結局のところ、近年充実しているサイスポですが、6月号にちょっと気になる記事が。
「オレたちの”走り場”が危うい」
と題するサイスポ編集部による6ページ。
川沿いのサイクリングロードでの自転車にかかわる事故が増えていて、これが問題視されており、速度規制が導入されたりしているが、このままだと自転車が締め出される可能性も・・・、といった内容。
多摩サイが通る府中市役所の担当課長さんによると、
<(前略)この2年でも所轄警察署に歩行者と自転車のトラブルが20件以上届けられました。実際はもっと細かいトラブルがあるはずです。市役所へはたくさんの苦情電話も寄せられています。歩行者側の意見では『どけっ!』と怒鳴られた。(後略)>
とのこと。
昨年は、多摩サイで自転車にはねられて死亡するという事故も起きてしまったようです。
近年のスポーツ自転車の増加ぶりには隔世の感を抱いてしまいますが、そうするとサイクリングロード(というか、自転車歩行者専用道路)がこんな風になってしまう。特に都会では大変だろうな、と思います。中には、「どけこりゃ~」みたいな勢いで走る人がいることも、容易に想像がつきます。30年近く前にもいましたしね。
件の課長さんの言をさらに引用すると、
<是政橋で交通安全週間のときに歩行者や自転車の人にチラシを配ったんです。自転車の人は、ひと声かけるとほとんどの人がスピードを落として受け取ってくれたのですが、『なんでオレをとめるんだ!』と、スポーツタイプの自転車の人に食ってかかられました。あげくのはてに、『バカヤロー、どけ!』ですからね。>
一般公道で、他人に対して「バカやロー、どけ!」などと主張して走ることが出来る場所など無論、皆無のはずですが、自転車の数が増えれば、割合的には少数派の、こんなチンピラそのまんま(ヤクザではない)の連中も相当数となり、時には目立ってしまうでしょう。
この記事の最後は、
「いま、オレたちの自覚が問われている!」
と結んでいます。
マスが増えればこういう状況になる・・・これは容易に想像がついたことだと思います。
30年以上前の道交法改悪で、自転車通行可の歩道が設定され、揚句、車道の左端を走る自転車に向かって、「そこの自転車、危険だから歩道に上がりなさい!」などと、拡声器で注意しながらどこまでもしつこく付きまとうストーカーのような警視庁の白バイ警官が現れるに至り(経験あり)、事実上、「自転車は歩道を走るのがあたりまえ」な状況が30年以上、続いてきました。
こうした自転車状況は一日にして成らず。いい加減な法整備と運用の下での妙なモラトリアム状況が、逆に、一部の自転車の乗り手たちにある種の甘えと傲慢さを植え付けて、チンピラ化を促してしまったのかも知れません。
昔はどうだったのか?
1983年頃と記憶していますが、世田谷区の駒沢公園内のジョギングコースでスポーツ自転車が駒沢大職員に衝突し怪我を負わせた事件があり、そのときも「いま、オレたちの自覚が問われている!」風な記事が、サイスポかニューサイのどちらかに載ったと記憶しています。
同じころですが、東京の大井ふ頭の件がサイスポ読者投稿欄に載りました。概略、以下の通りだったと記憶しています。
日曜日の午前中、東京近郊の、ある私立高校3校のロード対抗練習試合が、道路使用許可を得ずに勝手に行われ、派出所もある(!)中央公園(現在の港が丘ふ頭公園)前の赤信号すら無視しながら周回を重ね、終盤にはついに、指導者である教師が公園前交差点に青信号で入ってくるクルマを制止して、自転車を通過させた、と。それまで状況を見守っていた公園前派出所の警察官も、仕方なく教師に事情を聴くことに・・・
といった内容だったと記憶しています。あのころは私も時々、大井ふ頭で全開インターバル走行していましたので、3校といえば、ああ、あそこか、と思い当たる節はありますが、いやはや、無法行為を教師がやらせるとは、です。
で、その後、編集部宛に反響のはがきが届いたらしく、中には、
「オレは命がけで走っているんだ。信号なんて守っていられる訳がないんだ」
風なものもあり、「さすがにこいういう主張はおかしい」と、翌々月あたりの号で編集部が投稿ページでコメントしていました。
当時の大井ふ頭の日曜日は、クルマが少なく、自転車の数も今と比べたら比較にならないほど疎らでした。間違えて入ってきてしまったクルマの人に「東京ディズニーランドに行きたいんですけど」なんて訊ねられたりしたこともあります。日曜日の朝はそんな風にのどかでしたが、だからこそ、こんな大胆なことを教師連中は思いついてしまったのでしょう。
そして1987年頃でしょうか。現BS監督の藤野さん(当時は若き日の藤野くん?)がなるしまフレンドで走っていたころで、大井ふ頭でよく見かけ、単になるしまさんの客だった私は何度か、一緒に走らせてもらったりしました。神宮前店から綺麗に都心を抜けて大井ふ頭に突入していくなるしまレーシングの数名の集団は、サマになっていました・・・じゃなくて、問題はトライアスロン草創期の第一人者である某。当時、この某のグループが大井ふ頭でバイクのトレーニングをやっていましたが、これがまあ、無法。信号なんて片っ端から無視。せめて、派出所がある公園前の信号だけでも守ったら如何?(というのも変だけど)と激励して差し上げたい気分でしたが、休日で公園に遊びに来る家族連れもある中、何とも見苦しく恥ずかしい連中でした。
そんなわけで、現在の状況の素地は昔からあったわけで、特に一部のロード連中が無法者に見えてしまうのは当時も今もあまり変わりません。十分に整備された立派な自転車も、チンピラの手にかかれば即、凶器に変身してしまいますねぇ。
「いま、オレたちの自覚が問われている!」
言い古された言葉ですが、その通りだな、と思いました。
価格評価→★★★★☆ 評 価→★★★★☆
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