購入価格 ¥ 570
特集【最高級ロード試乗part2】56ページは、ピナレッロのDOGMA FPXを俎上にのせている。うねるオンダフォークが目を惹く。旧来のベントフォーク、ストレートフォークとは異なり、4回ベントする造形だ。ライターの菊地氏、元全日本チャンプの大石氏もこのフォークの話題を導入部として、どうやら褒め称えているようである。
このフォークの造形からはデザイン的な主張、力強さ、執拗な集中力といったものを私は感じる。デザイン的に魅力的な造形だ。だがしかし、純粋に走行性能という視点で見たときには勿論、この造形はギミックであろう。この造形からは構造強度的、振動緩和的な主張は全く感じられない。無論、この形状だから走行性能に云々などという議論など、する気にもなれない。仮に、このマシンで、自分にジャストフィットするサイズを準備して、ステムサイズ、ハンドル角度、サドルポジションまで自分に合わせたもので試乗できたとしても、である。フォークを4度もベントする必要など、設計者でも意匠的な意味以外に、論理的に説明など出来ないだろう。「意匠的な意図以外、最初から無いんだけどなあ」と回答されるかもしれない。
次のページにフレームジオメトリ表がある。10サイズが準備されている。3サイズのみで何とかするしかないGIANTと比較すれば極めて良心的である。ところがフォークオフセットである。カーボンフォークでもないのに、同じ43.5mmで統一されている。なるほどこんな造形のフォークではフレームサイズに合わせてオフセットを最適化するのはコストがかるのだろう。
最小サイズのフレームのヘッドアングル70度に対して、最大サイズの値が73.4度まで変化させている。同じくトップチューブサイズが大きく変化するが、小さいフレームでヘッドアングルを小さくするのは、フロントセンターを確保する常套手段である。ちなみに、フォークコラム側から見た路面垂直方向のフォーク剛性は、70度から73.4度へのヘッドアングル差で1.4倍程度変化すると思われる。同じピナレッロDOGMAでも、フォークの垂直剛性がこれだけで違えば完成車としては十分、”別人”であるが、操縦性に大きな差を与えるほどではないと言えるかもしれない。
問題は、操舵系を特徴付ける役割を大きく担うトレイル量が激変することである。こんな当たり前のことに対して、スチールフレームの世界では当たり前のように適切な対応がなされ、適切なハンドリングに近づける努力がなされる。デ・ローザのプリマート然り、コルナゴのマスターX然り、である。
カーボンフレームが主流の今、驚くほどの高値で取引されるフレームであっても、フレームサイズに関係なく、フォークは同じジオメトリの物が使われる。素材や製造プロセスの革新、有限要素解析の導入など、大きく進化した超高額フレームに、用意されるフォークはジオメトリがひとつだけとは・・・。これは驚くべき事態である。どうやらホリゾンタルサイズで560~580mm辺りのフレームで適正なハンドリングが得られるようなものが取り付けられている場合が多いようである。そしてMgフレームのピナレッロDOGMAでも同じことになっている。他のユーザはどうかわからないが、私から見れば、これだけで購入対象から除外である。
今に始まったことではないが、インプレ担当者はこの辺りの議論を意図的に外しているのか、それとも、そもそも考えたことすらないのか。いずれにしても菊地氏と元全日本チャンプの大石氏のインプレは、多彩な形容詞句、多彩な名詞句、多彩な副詞句を巧みに使いながら、進んでいく。時に非常にテクニカルに響く事柄を語ることもあるが、残念ながら説得力は、無い。
菊地氏が言う。
【ドクマの加速感って、独特の爆発力がある。バネのように力をためてから、一気に吐き出す。あれはプリンス以降、ピナレロの大きな魅力になっていますからね。】
バネのように力をためてから、一気に吐き出す、とは一体どういう意味、どういう現象なのか。バネのような役割を担うのはどのような構造、機構なのか?一気に吐き出す、という出力変化は如何なるパワーの流れによってもたらされているのか?
まるでわからない。
このインプレ記事は気分で語り気分で流せばよい、という了解の上に成り立っているのかもしれない。読者もオトナということか、それともナメられているのか。いずれにしても、正面突破の真っ当なインプレ記事も同時に存在してもらいたいものである。
価格評価→★★☆☆☆
評 価→★☆☆☆☆