購入価格: £36 (@ Ribble Cycles、ボトル1本付属)
一度ディスコンになったものの最近復活したカンパのカーボンボトルケージ。以前はフルカーボンのRecordとアルミパイプとカーボンのハイブリッドなChorusの2種類ありましたが、現在はフルカーボンモノコックのみ、名称もSuper Recordになりました。価格もスーパーで、ケージ1個+ボトル1本が化粧箱に入って€60台前半…国内では軽く1万を超えていた気がします。まあ当然売れていないわけですがしまいにあちこちで投売り価格をつけられてしまう始末で、今回購入したRibbleでも値引きクーポン併用で一個£36とほぼ半額、他所でも似たり寄ったりの状況になっています。付属ボトルのElite Jossanovaは£10少し切る実売価ですから、ケージ単体での実質価格はさらに下がって£25程度。現在£40するArundel Mandibleに比べると大分お求めやすくなっており、少しレトロなホリゾンタルフレームにあわせてみるべく一度お試しで…という次第で購入してみました。
ケージ自体前モデルからそれほど大きな変更はなさそうです。
Super Recordを名乗ってはいますが入っているロゴは現行のサンセリフでデジタルっぽいフォントの”CAMPAGNOLO”とホワイトのラインだけなので、特にコンポとの整合性を気にする必要はありません。現行と一代前のコンポとはグラフィックのイメージが統一でき流のでこれはこれで良いと思うのですが、どうせこのケージを使うのはレトロなフレームのオーナーばかりだとも思うので、例の地球儀と筆記体のロゴや盾の中に羽根突きQRロゴの方がいいなと思ったりもします。
カーボンの貼り付けは他社のカーボンケージではまず見られないほど丁寧です。あちこち歪で、すが入っていることだってあるArundelとは大違い。表側は3K、内側はUDと切り替えてあるなんて手の込んだことまでしています。重量は実測29g・28g(マウントボルト含まず)で、公称18gはサバ読み過ぎながらも32gはあるMandibleよりは軽くなっています。ボトルをホールドするループ部分の剛性はかなり高く、手で握ってグニグニしてもほとんど変形しません。一方フレーム側のボスと固定した状態だとマウント部分がやや頼りない印象で、ボトル抜き差しの際無造作に左右方向にひっぱる力を加えると上側の固定ボルト付近を起点にしてかなりしなるので、取り扱いには注意が必要そう。ここで注意しなければならないのがボトルの径。
新しくなったボトルにはカンパのロゴが入っているだけでEliteとはどこにも書いていないのですが、あからさまにJossanovaです。飲み口に特殊な膜とCAMELBAK Podiumと同じバルブ開閉スイッチの付いた550mlモデルです。ボトル自体はまだ使い込んでいないので別途レビューしたいと思っていますが、わざわざボトルが付属しているのには意味があります。
そう、一言で言うとEliteのJossanovaは一般的な径よりも僅かながら細くなっていて、ケージの設計もこれに合わせてあるのです。他社のボトルをこのケージに突っ込むと使えなくはないですがかなり出し入れしづらくなってしまいます。
ボトルの径には決まった規格があるわけではないですがSpecializedやOGKは周長235mm(手元ボトルでの実測)を採用しており、多くのケージメーカーはこれを基準に製作しているフシがあります。しかし中にはTacxやEliteのようにこれと異なる径のボトルを採用しているメーカーもあって、自社製以外のケージと組み合わせるとキツすぎたり、緩すぎたりするというミスマッチが生じてしまいます。Eliteのボトルはどうかと言うと、Corsa・Jossanovaを持っているので実測してみたところどちらも232mmで、たった3mmとはいえども明確に細くなっていました。
私にも使い慣れたボトル(Specialized Purist)があるので、真っ先にいつものようにこのケージに突っ込んで抜き差しのしやすさを確かめてみたところ、使えないほどではないにせよ抵抗感がかなり強く"出し入れしづらいな"という感想を持ったのでした。この時"あれっ!?"と思ってボトルの径を測ってみたので上記のようにボトルに差があることが確認できたのですが、Eliteのボトルに戻してみると十分滑らかに出し入れできるので、やはりこのケージは付属ボトルに合わせて若干スリムに作られていることも確認できたというわけです。
純正同士の組み合わせで使う限りは快適そのものです。目一杯ボトルをケージの奥へ押し込む直前にケージ先端の返し部分がボトルのくびれ部分にかかって微かなクリック感を伝えてくるので、慣れれば視線を落とさずとも差し込み完了がわかるようになってもいます。ただ、すでに述べたようにマウント部分のしなりが少し大きいのでMandibleのように何も考えずガンガン抜き差ししても平気、と言うわけにはいかなさそうな感触はあります。恐らくMandibleには及ばないでしょうが、それでも実使用に支障ないレベルに達していればノープロブレムなので、耐久性と強度については継続して使いながらおいおい確認していきます。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=11215&forum=81こちらでレビューされているのがディスコン直前のRecordですが、やはり"使い辛い""脱着がしづらい"と評価されています。カンパもこんなアクセサリーにそうそう金型新調はしないと思うので、以前からずっと少し細身のボトルを基準に設計してた可能性が高いでしょう。
ボトルとケージの相性を別にしてもフレームとの相性というものがもちろんあります。
このケージ、取り付け位置の柔軟性という意味ではまったく融通が利きません。まず、ループ部分の位置がやや高めの位置にありボスに接する穴の位置も目一杯下まで下げてあることから、ボトルがボスに対してほぼ目一杯高い位置で固定されることになります。取り付け穴は長さ10mmちょっとの楕円になっているので少々穴位置がイレギュラーなフレームでも問題なく付きますが、高さ方向の調整幅はほとんどないも同然なので、小サイズでトップチューブのスローピングがきつい・シートチューブが短いフレームでは絶望的に使いにくくなります。ボスの位置にもよりますが、少なくともシートチューブ側はC-C 50cm程度は欲しいところ。下の写真はシートチューブC-C 510mm、トップチューブC-C 530mmのホリゾンタルフレームですが、これくらいスペースがあればダウンチューブ側もシートチューブ側も問題なく抜き差し出来ます。
試しにスローピングがきつい・チューブがやたらと太いBMC SLR01(ST450mm、ヘンな梁が通してあるので実際にはもっとスペースがない。TTは水平換算520mm、だが雨樋みたいに太いのでやはりスペースがない)にも装着してみましたが、シートチューブ側はまったく使い物にならず、ダウンチューブ側ですらギリギリ出し入れ可能、という有様でした。現在SLR01にはMandibleを使っていますが、500mlそこそこのボトルなら快適に使えるのでカンパのケージはフレーム形状とサイズを選ぶと言わざるを得ません。加えてボトルもElite専用に近いような感じなので、そういった意味では"使いにくい"という評価も妥当でしょう。
まあ、売れ行きが全てを物語っていると言える感じですが、条件さえ整えば決して使い物にならないようなケージではなく、むしろ快適と評してやってもいいと感じます。特にホリゾンタルフレームに付属ボトルとの組み合わせで使用する限りは良好で、デザインがクラシックで仕上げもとても良いので00年代以前のフレームが持つ雰囲気を崩さず軽量化するには都合の良いケージだと思います。しかし現代のフレームと組み合わせて使うにはちょっと不便な面があるのも事実です。Mandibleの堅牢性と出し入れのしやすさには及ばないですし、デザインと若干の仕上げの雑さ(それと価格)を受け入れられるならMandibleを購入した方がシアワセになれるのでは、と思います。
価格評価→★★★★☆ (実売価で判断するなら。品質はトップレベル)
評 価→★★★☆☆ (純正ボトルと適正なフレームサイズで使うなら★x4近くあげたい気がしますが...フレームとの相性、マウント部分の若干の頼りなさ、実質Eliteボトル用の3つは欠点として減点せざるを得ないでしょう)
年 式→ 2016
カタログ重量→ 18g (実測重量 29/28g、ボルト・ワッシャ含まず。付属ボトル実測102g)