購入価格 失念
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それはそれは昔のことじゃった。
わしは自転車屋に。ばあさんは街に男漁りに出かけておった。
あの頃は自転車屋には「びあんき」とか「とれっく」とか「じゃいあんと」とか「るいがの」くらいしか無くての。
今みたいに「びーえむしー」やら「おるべあ」やら「こらてっく」やらはほとんど見なんだ。
「くらいん」と「れもん」と「げいりーふぃっしゃー」が「とれっく」の傘下におってな。同じ関係会社のよしみで「ぼんとれがー」っちゅう会社の部品を使っておっての~
その「ぼんとれがー」が買収した会社の中に「ろるふ」っていう会社があってそれはもう。面白いほいーるを作っていたんじゃ。
当時はまだまだ「とれっく」にも勢いがあっての。「でぃすかばりー」仕様のまどんとかがあったんじゃ。
「とれっく」にらんすあーむすとろんぐっちゅうむきむきなヘンタイなおっさんがおってのー。それはもう。気持ち悪さでは悪魔おじさんとタメを張るくらいじゃった。
筋肉むきむきじゃったのは、どーぴんぐのせいじゃってわかったのは後のことじゃったけどな。
どーぴんぐしたらいかん。どーぴんぐしたらまるこぱんたーにみたいになってしまうからの。悪魔おじさんになりたいかの?
気がついてみれば今は昔じゃのーほっほっほっ
わしはあの自転車屋の中でそんな「とれっく」やら「れもん」の自転車を横目にあるものを見つけおった。
これがその「つーる缶」ってやつじゃ。
見てみい。長年使ってるから汚れに汚れとるじゃろう。これが歴戦の勇士ってやつじゃ。
それまでぼとるけーじっちゅうんはぼとるを入れる為のもの以外の何物でもなかった。
このつーる缶ってのが出てきた初めの頃じゃったんじゃ。これはもうびっくりしたの。ぼとるけーじに携帯工具やらちゅーぶやらが入るんじゃから。
今でこそ「れざいん」やら「しまのぷろ」やら「おーじーけー」やら「えりーと」やらが出しとるけどの。あの頃はそんなもんは無かったからのー
つーる缶なんてのは本当に選べるほど種類もなかったんじゃ。
この「ぷろふぁいるでざいん」ってところは今でもとらいあすろん用のあたっちめんとばーを作ってるので有名じゃが、あの頃はふぉーくも作っとってなぁ・
「えすしー」「びーえすしー」とか。それはもう安くて品質のいいふぉーくじゃった。こらむはちっちゃかったけどの。ほっほっほっ
そんでの。このつーる缶。安かったんじゃ。
さて。。。そうじゃのー…
今おみゃーががりがり食べとる。がりがりくんそーだって奴が6個買えるくらいじゃった。
このつーる缶を見つけて。しかもこんなに安かったんじゃ。
ほりゃ買ってくるわの。
そんで家に帰って。ばあさんに見せたら。
「わしゃ、そんなもんよりがりがりくんそーだ6個のがええ」
と言われてしもーた。
ばあさんにはそう言われたけど。とりあえずさどるばっくに入れてたちゅーぶとたいやればー。それとふつえー式変換ばるぶっちゅうやつを入れてみたら具合が良くてなぁ。
流石。つーる缶じゃ。と思ったんじゃ。それだけ入れてもまだ余裕があるしの。
この「ぷろふぁいるでざいん」のつーる缶とはそれからは、ばあさんは置いていっても一緒じゃった。
それはもう長いこと一緒じゃった。
そうこうしてたらのー
気がついたんじゃ。白いからちぇーんおいるがついた手で触ると汚れが目立つ。ぼとるけーじとも擦れて黒くなる。
そうこうしてたら「おーじーけー」からも「えりーと」からも「しまのぷろ」からも出てきた。
それものー…黒いんじゃ。正直に言って黒いつーる缶が羨ましかった。なんでわしのはこんなに白くて汚れが目立つんじゃろうかと何度も思った。
じゃけどな。「おーじーけー」のはこの倍。「えりーと」の馬香具師ってつーる缶はこれの3倍もするんじゃ。
黒いからって3倍の値段を出したからって3倍の速度で走れるわけじゃないんじゃ。赤かってもそんなうまい話なんてのはないわの。
単なるつーる缶じゃからのー
というわけでずっとこの「ぷろふぁいるでざいん」のつーる缶が相棒じゃった。それはもうばあさん以上じゃ。ばあさんには言っちゃあいかんぞ?怒るからの。
でものー。あの時は何を思ったんか知らんけど。
「おーじーけー」のつーる缶に浮気したことがあるんじゃ。
それがの。「おーじーけー」のつーる缶は黒いのはいいんじゃが。走ってたら蓋が勝手に外れたりした。
それはもう。あれじゃ。あれじゃよ。。。
「おお!蓋よ!外れてしまうとはなにごとじゃ!」
ってやつじゃよ。
それがこの「ぷろふぁいるでざいん」のつーる缶は何年も使っとるのに蓋なんて一度も外れたことがないんじゃ。
じゃけえ、わしは夢の中でこの「おーじーけー」のつーる缶を諏訪湖に「蓋が外れるとはなにごとじゃ~~~!!」と叫びながら投げ捨ててやった。それはもう泣きながら。
何を言っても「ぷろふぁいるでざいん」の倍もするんじゃからの。
ほしたら諏訪湖に投げ捨ててしばらくしたらの。諏訪湖からばあさんがあがってきたんじゃ。
両手にはしっかりと「ぷろふぁいるでざいん」のつーる缶が握られとってな。聞いてくるんじゃ。
「あなたが諏訪湖に投げ捨てたのはこの「ぷろふぁいるでざいん」の黒いつーる缶ですか?それともこの白いつーる缶ですか?それともこの「おーじーけー」の黒いつーる缶ですか?・・・それともこの私ですか?」
っての。
わし。それはもう怖くて怖くての。そういえばここ何ヶ月かばあさんに会ってなかったんじゃけど。それはもう怖くての。がくがく震えて何も答えれんかったんじゃ。
それでもそのばあさんは般若の形相で何度も同じ問いを繰り返しての。。それはもう。悪夢じゃった。
なんて答えたのかは覚えがない。ないんしゃが、起きた時にはお日さまが真上におって、汗だくじゃった。
ほんで、なんでかこの白かったのに汚れた「ぷろふぁいるでざいん」のつーる缶を握り締めとった。
ほんでなんとなく。よくこの「ぷろふぁいるでざいん」のつーる缶を見てみたんじゃ。ほしたらなんで蓋が外れなかったんか。「おーじーけー」のが蓋が勝手に外れるんか。よーわかった。
見てみい。「ぷろふぁいるでざいん」のはねじがしっかり切ってあるんじゃ。で。しっかり蓋がしまる。
「おーじーけー」のは「ぷろふぁいるでざいん」のつーる缶の倍もするのにの。蓋を引っ張ったら外れるくらいねじががばがばじゃった。
ほりゃ「おお!蓋よ!外れてしまうとはなにごとじゃ!」
とも言いたくなるわの。
での。わし。思ったんじゃ。
『この「ぷろふぁいるでざいん」のと同じように作ったつーる缶で。黒いのが無いんかのー・・・出来れば安いのがいいのー』
との。
ほんで先日、自転車屋を覗きに行ったら見つけてしもうた・・・
これはどこからどう見ても色違いなだけで同じものじゃろ。
ほれはもう昔びっくりした以上にびっくりしたんじゃ。値段も全く一緒での。ぜいきんの関係でちょっと高くなっとるけど。それでも「おーじーけー」のやつの半額じゃ。
それはもう矢も盾もたまらず買ってきた。
ほんで、ばあさんに見せたら。
「わしゃ、そんなもんよりがりがりくんそーだのほうがええ。」
と言っとった。ほっほっほっ
ん?
諏訪湖からばあさんとはどうしたって?
起きてからすぐに電報を入れたんじゃ。
ほしたらの。ばあさん。わしのことなんて忘れてほかの男と付き合っとったわ。
あの時に流石わしのばあさんじゃ!。。。と思ったんじゃ。
それから?
内緒じゃよ。ほっほっほっ
価格評価 ★★★★★
評 価 ★★★★☆