購入価格 ¥6,480(ジャイアントストア二子玉川店)
カタログ重量440g/実測重量468g
言わずと知れた自転車業界の巨人、ジャイアントが投入した大型サドルバッグです。その圧倒的な安さで発表と同時に一部のロングライド界隈を賑わせました。バイクパッキング系サドルバッグに興味を持ちつつも値段で二の足を踏んでいたのですが、6,480円なら失敗しても許容出来る、ということで早速予約。年内に手に入れば良いかな、と思っていたのですが数日後には入荷の連絡がありました。
あまりにも早く入手できたので、予定していたオルトリーブから変更して、250kmほどのロングライドに投入。それから、一度の最高距離は300kmに届かないワンデイサイクリングばかりですが、合計で800kmほど走りました。
【第一印象】
とにかく安い。まずはその一言です。
他のバイクパッキング系サドルバッグの半額以下、最も高価なsuew Rera Lightと比べたら1/4以下。価格破壊としかいえない安価で手に入ります。
# 台湾本国だと4000円くらいで買えるようです。
この値段であれば多少の粗は気になりません。しかし、恐るべきことに、粗がほとんど見受けられないのです。「あえていうなら」や「RNC7で使うには」というレベルの粗は勿論ありますが、それ止まりです。
【外見】
一言で表現してしまうと「黒一色」です。本体もストラップもGIANTロゴも黒。部分部分の素材感がはっきりしているので、間延びした印象はありません。プラモデル的な表現を借りると「表面の情報量が多い」というやつです。
部分的に反射素材が使われていますが、申し訳程度です。
あえていうなら、ストラップやコネクタが別の明るい色だったら、暗くても使いやすくなりそうです。
【全体の構造】
単純な袋です。形を保つ為のシェルなどは使われていません。そのため、荷物が少ないと皺が寄ります。
輪行などで手で運ぼうとすると収まりが悪いので、大きな巾着袋などがあると便利です。
【容量】
最大で9リットル。最小は記載がありません。何も入れずに装着すると見栄えは非常に悪いのですが、走行に問題はありません。
普段オルトリーブに入れているのと同じ、輪行袋(オーストリッチのSL-100)と雨具(モンベルのストームクルーザー)くらいの量だと、まだ少なくて窪みが出来てしまいます。
限界まで荷物を入れると、いかにもバイクパッキングといった雰囲気になります。
モンベルのスタッフバッグ(1L、1.5L、2L、4L)に衣類や輪行袋を詰めただけのテスト用の荷物ですが、左上のジップ式ツールボックスでだいたいの容量は把握できるかと思います。
スタッフバッグの中身は冬用ジャージ、ウインドブレークタイツ、夏用ジャージ、レーパン、ストームクルーザー、SL-100、エンド金具。
これだけ入れた状態で、バッグ込みの重さは3030gでした。
【防水性能】
シェイクダウンのロングライドで早速ゲリラ豪雨に遭遇したのですが、雨は染み込まず、球になって弾かれていました。
荷物が少ないと、上部にできた窪みに水が溜まるので、ぴんと張るように上手く固定した方が良いでしょう。そのまま走ったら右の太腿に水が伝ってきて濡れてしまいました。それまでは気にしていなかったのですが、右太腿裏だけがバッグと接触していました(理由は後述)。
後日、いわゆる「泥除け代わり」での汚れを落とす為、強めのシャワーを浴びせながらブラシで擦っても、浸水はありませんでした。さすがに水没させたら縫い目から浸水しそうですが「非常に強い雨」程度なら問題なさそうです。防水性のおかげか汚れも落としやすく、泥染みもありません。黒という色もあって、汚れはかなり目立たないのではないかと。
【取付】
マニュアルは付属していないため、ウェブに載っている取付後の写真と、他のバイクパッキング系サドルバッグの情報をもとに取付けました。不親切といえば不親切です。タグには10カ国語で製品の説明が載っているので、マニュアルを作ったら同じだけの言葉で説明しなければならないのでしょう。あえていうなら、簡単な図だけでも欲しいところです。
シートポストに巻き付けるバンド(幅5cm)の内側と本体側は、滑りにくいゴムのような生地になっています。外径が13cmまでなら、巻き付くのは滑り止め部分だけになります。バンドの長さと面ファスナーの位置から考えて、16cmまでならぎりぎりで装着できるのではないかと。
【開口部と内側】
開口部の幅は31cm。かなり大きく開くので、荷物の出し入れはやりやすくなっています。
開口部には面ファスナーが備えられています。これで仮止めしておけば、放置していても取り落とす可能性がだいぶ少なくなります。一時的な作業でいちいち折り込んで閉じる必要がないのは手間が省けますし、ロールアップも非常に楽です。
面ファスナーはアームカバーやタオルなどへの攻撃性が高いので一長一短ではありますが、これも工夫です。
面ファスナーは開口部の中央付近だけで、両端にはありません。仮止めだけで安心していると、端から小さくて固くて重ための物(CO2ボンベや電池など)が落ちてしまうかもしれません。スタッフバッグなどで嵩増しておけば防止できます。
外側と同様に、内側も黒一色です。大きくて奥行きがあるため、奥の方は暗くて良く見えません。室内で、かなりうまく光を入れた写真ですがイメージは掴めるでしょうか。
黒っぽい荷物は明るい色のスタッフバッグに入れれば視認しやすくなりそうです。
【バンジーコード】
標準装備です。きちんと使えば便利だと思われます。私は落下紛失の不安が拭いきれないので使用を躊躇っています。
【ホリゾンタルフレーム(ANCHOR RNC7)との相性】
「シートポストの突き出し」という言葉は知っているのですが、実はどこの長さのことなのかよく分かっていません。とりあえず写真で示します。
突き出しは9cmなのですが、滑り止め部分とシートポストの密着がよくありません。写真で隙間が確認できますが、シートクランプが干渉しています。シートステイとも密着するので盛大に左右に振られはしませんが、シートクランプが滑り止めに負担をかけるようで、450km時点でダメージが確認できました。
また、左側はブレーキワイヤーと干渉するため、バッグが全体的に右側に寄り、右太腿だけが触れる原因となります。ブレーキ性能に影響はありませんでしたが、ワイヤーへの負担も少し心配です。
突き出しを12cmまで伸ばせばシートクランプ、ブレーキワイヤーどちらとも干渉しなくなりました。3cmもサドルを高くしたらまともに乗れなくなるので実走はしていません。参考値としてください。
9cmでもタイヤとのクリアランスは問題ないので、滑り止めとブレーキワイヤーへの負担さえ気にしなければ、問題なく使えます。
【固定力】
オルトリーブに入れていたのと同じ荷物なら、左右に揺れる感覚はほとんどありません。もちろん、故意に左右に振ったらそれ相応の「持っていかれる感」はありますが、あくまでも重さと釣り合った感覚です。サドルバッグの固定の弱さに由来する、振り子のように増幅する「持っていかれる感」は感じませんでした。
車体を振るダンシングをしない(技術を習得していない)のと、左側への揺れがブレーキワイヤーで防がれていたのも原因だとは思いますが、固定力に不安は感じませんでした。
それでもある程度は揺れていたのでしょう。サドルレールの「く」の字に曲がった部分と接触している生地にダメージ(ほつれ)が発生しています。左側はブレーキワイヤーで防がれていたからか、ほつれも少ないようです。
バックの底部というか基部というか、固定する部分の内側にタオルや衣類などの柔らかくて変形するものを入れておけば、シートポスト、シートクランプ、シートステイと密着しやすくなります。
3kgオーバーのテスト用の荷物だと、さすがに振り子のような揺れを感じます。左側はブレーキワイヤーとアジャスターで押さえられているので、右にだけ揺れます。特に低速だと顕著で、倒れ込む動きを無理に持ち上げて走った為か、上半身の右側がやたらと疲れました。
【まとめ】
繰り返しになりますが、とにかく安い。その一言に尽きます。
しかも安かろう悪かろうではなく、求められる機能を実現した上で、圧倒的な安さを実現しています。完全に妄想ですが「台湾一周ツーリングで他社製品が多く使われているのを憂慮したキング・リューが投入させた、ライバル潰しのための戦略的製品」といわれたら納得してしまうプライスパフォーマンスです。
国内での入手性も優れています。海外メーカーと英語でやりとりしたり、オーダーして何年も待つ必要はありません。発表直後という要因もあると思いますが、電話して数日で手に入るとは思っていませんでした。
重量面では明確に劣っています。例えばRevelate Designs Ermineと比べたら倍以上の重さです。値段とのトレードオフと割り切るしかないでしょう。
愛車との、多少の相性の悪さはあります。連続250km/合計800kmくらいなら問題として顕在化しない程度の「悪さ」ですが、滑り止め部分のダメージがどれくらいの早さで進行するのかが気掛かりなので、現時点では星4つです。耐久性次第で、上下どちらかへの訂正が発生するかもしれません。
価格評価→★★★★★
評 価→★★★★☆
【参考】
このレビューでの「バイクパッキング系サドルバッグ」は、以下の製品群を念頭に置いています。使ったことはありません。店頭で触った印象や、レビューで得た情報だけです。勘違いや的外れの可能性があります。
APIDURA SADDLE PACK (COMPACT)
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12343&forum=69Oveja Negra Gearjammer
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12290&forum=69Revelate Designs Ermine
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12599&forum=69suew Rera Light
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=12007&forum=69「オルトリーブ」は以下の製品のことです。こちらは数年使用しているので実体験に基づいています。
ORTLIEB サドルバッグL
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=1838&forum=69比較のため、主な項目を一覧にしました。