購入価格 £66.67(約11,500円)+送料£5(約870円)
イギリスの新興メーカー、APIDURAの製品をレビューします。
現時点では100km程度の使用です。
■使用目的・検討製品
今年初めて1000kmのブルベに出るのですが、ドロップバッグ無しで走れないかと思い、大容量(10リットル程度)のサドルバッグを探していました。
最初はsuewを検討していたのですが、年初に発注したところどうも9月には間に合わない()ということらしく、キャンセルして何にしようかなと思っていました。
検討したバッグは
・Oveja Negra Gearjammer Large
・Reverate Designs PikaまたはErmine
・APIDURA SADDLE BAG(Compact)
の3つ。オベハネグラ、リベレイトともに設置がほぼ水平となっており、荷物が重くなったら、また、パッキングを適当にやると後ろが下がるのが嫌だなということでなにか良いのないかなと探していたところ、この記事
http://geared.jp/editors/2014/05/apidura.html を見て良さそうだなと思い、某baruさんともかぶらないので(!?)こちらにすることにしました。
■到着まで
○発注
HP(
https://www.apidura.com/product/saddle-pack-compact/ )からの発注です。
使用できるカードは2014年7月現在、VISA、MASTER、AMEXのみ。
価格は£80(約13900円)と書かれていますが、国外の場合はイギリスの消費税20%がかかりませんので実際には£66.67(約11,500円)となります(レートは2014年7月現在)。
いずれにしても安い。
○配送
3-4 Days Express(送料£5、約870円)のみの対応です。
まあ、3~4日で届くとかないだろう、と思っていましたが・・・
7月5日 20:30に発注し、7月10日の日中には届いていましたので5日で届きました。これには驚き。
Royale Internationalを使っているようでした。
○梱包
配送用の外袋の他には、透明のポリ袋のみ。
付属品:なし
説明書:なし
潔い、潔すぎる!!!
潔すぎて、説明書があっても的確なパッキングができるか、若干の心配を覚えました。
結果的には杞憂でしたが。
■容量・作り
○最小・最大容量
カタログスペックは最大11リットル。最小容量は書いていません。
大容量サドルバッグによくある「底を支えるストラップ」+「口を閉じるストラップ」方式で荷物を支えます。
口を閉じるストラップの長さは一定程度調整することができ、一番小さい状態ではこのくらい。
(感覚値ですが)ORTLIEB サドルバッグLくらいの大きさです。
最大限に大きくするとこのくらい(ロールアップの折り返しは2回)。中にはフェイスタオルが20枚入っています。
また、この手のサドルバッグにありがちな、荷物を詰めないと全く安定しない、ということは一切ありませんでした。もちろん、空間がある状態では荷物が中で暴れますが、全く使えないということもありません。一番小さい状態での設置はTOPEAKのMondoPackシリーズに似ています。
最も大きな状態で自転車にセットするとこんなかんじです。サドルはfizikアリオネです。
容量(11リットル)の割に全長が短く見えるのは、シートポストに沿っている部分が長いからでしょう。
○プラスチックシェルの範囲
底面のかなり広い範囲と側面前方に入っています。
側面に入っていて形状を保つことで、かなり後ろ乗りでも足にバッグが触れることはありませんでした(ただし、もともと僕は結構前乗りです)。
黄色で囲んであるところにプラスチックシェルが入っています。注目は先端部分にも入っていること。変形を抑えることが期待できます。
また、底面のプラスチック板は肉抜きがされていて、軽量化が図られています。ちょっと感動しましたw
○使用されている生地
総じて、軽量である、ということよりも機能のバランスや劣化に強いという素材選びをされているようです。
グレーの部分は「Dimension-Polyant VX21」という生地で、割とメジャーな生地。もともとヨットの帆のために開発されたようです。4層にラミネートされていて、軽く、伸びが少なく、高い耐久性(摩擦、引き裂き)、防水性、耐UV性、を持つようです。さすが帆に使われるだけありますね。コーティングが剥がれてしまうので使用しない時は長い間日光に晒さないこと、という注意が生地の販売元HPに書かれていました。
黒い部分は対スリップ加工がされたDuPont社の「hypalon」というポリエチレン系の人工ゴム。
触った感じはゴムと人工皮革のゴムよりという感じで、ゴムだったら切れたり劣化したりというのが若干不安になる手触りではありますが、ゴムシートで覆ってあるようなものなので黒い部分からの浸水はなさそうです。Wikipediaによると、耐薬品性、耐高低温性、耐UV性、耐摩擦性に優れているとのこと。ネオプレンゴムに比べて軽くて強いということで、スノーシューズやトレッキング分野でシェアを伸ばしているようです。
耐摩擦性が高いということで、タイヤと擦れる部分、サドルと擦れる部分に使用されています。
底面
サドル取付部
バックルはWoojin Krossという専門メーカーのものを使っているということだったのですが、私のところに届いたのはWoojinのバックルではあったものの、Kross Buckleではなかったみたいです。比較してみると形状が異なり、どうやらSingle Adjustable Lionというバックルのようです。
Kross Buckle
http://www.woojinplastic.com/products/index/category:kross-buckleSingle Adjustable Lion
http://www.woojinplastic.com/products/detail/341/category:lion固定用のベルトは一般的な高密度ポリエチレン製のベルトです。何の変哲もありません。
■防水性
コンセプト的には、
Constructed from high quality, waterproof materials and optimized for durability and weight.
とあるので、特別に防水性を高めたり、頑丈だったり、とてつもなく軽かったりということを狙うのではなく、バランスの良い作りを目指しているようです。
○水をぶっかけてみた
中にバスタオルを入れ、シャワーを3分間、上下からかけてみました。ざっと、1000mm/hくらいの降水量だと思います。実際にはこんな雨はありません(当たり前だ)。
水をぶっかけます。
水をぶっかけたあとはやはり生地の色が変わっています。
外部の生地は濡れてしまい、生地自体からの浸水もあることが見て取れます。
結果としては、「完全な防水性は望めないが、小雨程度では問題ないだろう」というレベルかと思います。
一つだけ注意しなければならないのは、先端部にプラスチックシェルが入っていること、また、先端部には防水性の高いhypalonを使用しているがために、一度浸水を許してしまうと内部に水がたまりやすい構造になっているという点。実際、今回の試験の後には水がたまってしまっていました。
これは防水性の高さとのトレードオフであるとも言えるので、評価は難しいですね。
長距離サイクリングなど、強い雨が予測できる/降らないとはいえないような運用では、中に防水スタッフバッグを使って収納する必要があるかと思います。私はmont-bellのアクアペル3リットルを複数使って収納しています。
■重さ
カタログスペック:350g
実測:310g
実測の方が40gも軽い結果に。
底のプラスチックシェルに穴あき軽量化を施してある結果でしょうか。
■使いやすさ
○購入前の注意点
HPでは「requiring a minimum of only 5 cm of seatpost clearance from the top tube to the saddle.」とあるので、シートポストが少なくとも5cm出ている必要があります。身長に比べて大きなフレームに乗っている方や女性はシートポスト突き出し量に注意してください。
○重量を支える方式
他の大容量サドルバッグと最も異なるのがこの点で、他のサドルバッグがシートポストの中ほど~上部にベルトで固定し、サドルとシートポストで重量を支えるのに対し、APIDURAはシートポストの最下部にベルトで固定し、バッグの先端の重量がシートステイにかかるような形で固定します。したがって、サドル、シートポスト、シートステイの3点で重量を支えるのが大きな特徴です。もっと言うと、シートポストはポジション固定だけで、主な重量を受け持っている構造ではありません。先端部にはプラスチックシェルが入っており、潰れないようになっていますが、シートポストに触れる部分は柔らかくなっています。
もちろん、シートポストとサドルだけで重量を支えることもできますのでシートステイにかからない状態でも使うことができますが、シートステイが低い位置にある自転車では真価を発揮しきれないかもしれません。このへんは自分の自転車では検証できないので、他のユーザのレポートを待ちたいところです。
○開口部
開口部の直径は約20cmあります。
これはORTLIEBサドルバッグよりも2cm小さいくらい。お持ちの方は参考まで。
直径15cmのモンベル・アクアペル3Lに目一杯タオルを詰めたものを入れるときにはこんな感じ。十分入ることがわかります。
■安定性
高いです。大容量な割に重心がバイクの中心に寄っているので、よほど重いものを入れなければ、ダンシングしても振り回される感覚は少ないです。感覚的にはORTLIEBのサドルバッグと大して変わりませんでした。
一度、このようにPCも含む3.5kgの荷物を入れてダンシングをしてみましたが、さすがに回転する感じが強く出ていました。が、シッティングではほぼ気にならない状態でした。
■拡張性
○バンジーコード
上部にバンジーコードがセットされており、簡単なものならここに固定できるようになっています。
○ライトマウント
おそらくhypalonで作られた、ベルト状のライトマウントポイントが2つついていて、容量が大きい時にも小さい時にもライトを付けることができます。
ただし、小さくした場合には1つ目のマウントポイントは完全にロールされてしまい、隠れてしまいます。
○反射材
反射材は
・両側面のAPIDURA文字
・蜂のロゴ
・蜂の巣モチーフ
・シートポストに固定するベルトの先端
・両側のロールアップのベルト先端(固定するとサイドに回りこむ)
に配置されています。実際にフラッシュを焚いて撮影してみるとこんな感じ。シートポストに取り付けるベルトの先端は向こう側に回りこんで見えませんが。
お分かりのとおり、側面への反射だけです。後方への反射は考慮されていません。
まあ、ライトマウントポイントをつけているということはそちらでカバーしろということか。個人的には側面投影面積が増えるサドルバッグは側面への反射に特化するというのは賛成です。
■まとめ
後発のメーカーだけあって、先発メーカーが苦労している
・バッグ自体の回転モーメント
・パッキングの自由度の低さ
・フレームとの接触部分の変形
について、それぞれ高いレベルでしっかり対応されているなと感じました。
防水性は若干見劣りしますが、それも完全防水を謳うORTLIEBに比べてという話なので、決して低くはないかと思います。
2014年9月の広島1000にこれで参加するつもりですので、超長距離での使用レポートは別途上げたいと思います。
価格評価→★★★★★(大容量サドルバッグとしては破格)
評 価→★★★★☆(防水性が低いが、それ以外は満足)
<オプション>
年 式→ 2014
カタログ重量→ 350g(実測重量 310g)