2010 ハンドメイドバイシクルフェアが1月15日から17日まで、3日間にわたって開催されました。
mascagniさんが、素晴らしいレビューをフェア直後に投稿されています。まだご覧になっていないかたは、是非どうぞ。
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=6020&forum=49#forumpost10105私は17日(日)の11時から16時過ぎまで現場にいましたが、来場者数は、4、5年前と比べると、明らかに増えていると感じました。これも自転車ブームのおかげでしょうか。ごく普通の女性だけのグループなんていう、以前では見かけなかったようなタイプの方々もおられました。
でも、20年ちょっと前に初めて開催された時には確か、10日間ほどにわたるイベントだったように記憶しています。2台めのロードはハンドメイド・・・というのが珍しくなかったあの頃。ZUNOW、CHERUBIM、3Rensho、RAVANELLO、TOEI、HOLKS、VOGUEなど等・・・。当時は多くのスポーツ自転車の小売店が、これらの工房ブランドを扱っていたので、ハンドメイド車を購入するのが比較的簡単でした。当時の10日間というのは、そんな時代を象徴する長さではないでしょうか。
それにしても今さらレビューとは、私も時機を逸したものです。
いえいえ、SURLYとかBromptonがパーツメーカーの都合や時流に流されない着実な商売をやっているのと似て、ハンドメイド自転車は、一年ごとに訪れるモデルイヤー狂想曲(狂争曲かも)とは無縁。
ハンドメイド自転車とは、例えば何かの縁で辿りついてしまった者がそれを使って愉しみ、もがき、例えば厳しい鍛錬を経た者がNJSマシンライダーとして戦う。そんな豊饒な、しかし時に、驚くほど廉価な世界です。あっという間に陳腐化してしまう現代的なロードバイクとは違って、時機を逸するなんていう時間感覚は、ここには、ほとんど存在しません。
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さて、17日の午後、懇談会というイベントが会場内の会議室のような場所で行われ、ビルダーたちの生の声を聞くことができました。その様子を以下に再録します。ただし、出席者がマイクを使ったり使わなかったりとか、私が空調の真下にいたので、空調雑音のおかげで聞き取れていない部分があったりなどで、多少、怪しげな部分があります。また、冗長と判断した部分は、大胆にカットしています。ご了承ください。
出席者は以下のビルダーの方々と、司会の方です。
Emme Akka (ビチスポーツ モリアイ、盛合 博美氏)
http://www.geocities.jp/gessatejp/index.htmlCHERUBIM (今野製作所 今野真一氏)
http://www.cs-cherubim.com/dobbat’s (ドバッツ・ライノ・ハウス、斉場 孝由氏)
http://www.dobbats.com/nagasawa (ナガサワレーシングサイクル、長澤 義明氏)
http://www3.ocn.ne.jp/~nagasawa/Nakagawa (ナカガワサイクルワークス、中川 茂氏)
http://www.nakagawa-cw.co.jp/FTB QUARK (細山製作所、細山 正一氏)
http://www10.plala.or.jp/s-hosoyama55/index.html (復旧中)
AUTO CRAFT IZU (オートクラフト・IZU 高田 克伸氏)
http://www.auto-craft-izu.com/Soceadth (ソシード技研 阪上博行氏)
http://www.soceadth.co.jp/index2.htmlWatanabe Sw (渡辺捷治製作所、渡辺 捷治氏)
http://www.e-shops.jp/local/lsh/an/11/1627822.html (参考)
SANOMAGIC (SANOMAGIC 佐野 末四郎氏)
http://sanomagic.world.coocan.jp/以下敬称略。
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司会 : それではビチスポーツの盛合さんから、ハンドメイドを志したきっかけをお話しいただけますか。
盛合 : 30年ほど前になりますか、レベルの松田さんのところで作っていただいたフレームがすごくきれいで、私もこういうのを作りたいな、と思いまして、松田さんにお願いして入社し、勉強させていただきました。
司会 : 続きまして今野製作所の今野さんですが、ハンドメイド車の今後の発展性という面では、いかがでしょうか。
今野 : 今、自転車部ブームとも言われていますが、そんな中で、ますます、僕たちが作る、それぞれのスタイルに合わせたオーダー自転車というのは、より一層、皆に理解されていくと思っています。こういう仕事は、良い仕事なのではないかな、と思っています。
司会 : では、ドバッツの斉場さんですが、これから作りたいもの、ということでは、どうでしょうか。
斉場 : 僕は昔から自転車少年、というか変速小僧だったんですが、そのまま大人になってしまいまして。これからやっていきたい方向、としましては、競技志向というよりは、むしろ、いや、従来からあるようなフランス指向、というものでもなく、あまり、今まで言われていないような、ちょっと、遊びっぽい自転車が、自分は、楽しいかなと思っておりまして、そんな方向に進めていきたいと思っております。
司会 : ナガサワレーシングの長澤さん、いままでやってしまった最大の失敗を、ご紹介いただければと思います。
長澤 : 失敗があったからこそ、技術の進歩ってのが、あるんですよね。失敗ってのは、それで打ち切って、ダメにしちゃえば失敗、なんです。例えば今回こちらに、ピストロードという形で自転車を4台持ってきました。ヘッドパイプとダウンチューブの工程、ここで接合を半度間違えたとか、5mm短く切りすぎちゃったとかいう場合に、そういうのを保存してあるんですよね。で、その置いてあるパイプを活用して、今回のピストロードを作ったんですけど、失敗があったからこそ、今回のが出来ているっていうことがあるもんですから。まあ、失敗があったからこそ、今のナガサワがある、って思っていただけるとうれしいんですけれどもね。数えきれないんです。でもそれが、土台になっているんです。
司会 : ナカガワサイクルワークスの中川さん、これから作ってみたいもの、何かございますか。
中川 : カーボンとクロモリをミックスさせて、とか、アルミでも何でも、色々な材料を合わせて使って作ることが出来ればいいな、と思っています。
司会 : 次は細山製作所の細山さん、ビルダーを志したきっかけをお話いただけますか。
細山 : 僕はオーディオ関係のサラリーマンをやっていました。自転車は中学のころから好きで、何とか、自分の自転車は自分で作りたい、と思っていました。で、こちらの今野さんのお父さんの仁さんとは、私が競技をやっていたころから結構、仲がよくて、ある日、電話して、「材料を分けてください」と。すると、ある日、「うちに来て手伝って」と言われて、渡りに船という感じで。
司会 : オートクラフトIZUの高田さん、今後のハンドメイドの発展性、ということで一言お願いします。
高田 : 私のところのハンドメイド車は、遊園地とか公園で使われているものなんですが、より、子供たちが安全に楽しく乗ってくれる自転車を作っていきたいと思っています。
司会 : ソシード技研の阪上さん、苦労の連続だと思いますが、もっともご苦労された点をお願いします。
阪上 : 私のところも高田さんのように、今までにないような色々な自転車を作っているんですが、一番心配なのは、実用新案とか、特許に抵触しないかどうか、というところです。特許を調べると言うのが凄く大変な作業です。新しいことを考えると、まずは調べなければいけないので大変です。それと今後はPL法、製造物責任のことをよく考えて作らなければならないと思っています。
司会 : 渡辺捷治製作所の渡辺さん、ビルダーを志したきっかけをお願いします。
渡辺 : 自転車が好きで乗っていて、自分が乗りやすい自転車をつくりたい、というのがきっかけです。それで、ビルダーを目指している人に言いたいのは、お客さんに喜んでもらえる自転車を作る、作る本人が、何が乗りやすい自転車なのか、わからないようでは、お客さんにとって乗りやすい自転車は作れないと思いますので、ビルダーを目指す人は、乗りやすい、いい自転車にいっぱい乗って、これは、と感じたものをお客さんに合わせて作って、お客さんに提供してください、ということです。
司会 : ではSANOMAGICの佐野さん、違う分野から自転車を作るようになったきっかけは何でしょうか。
佐野 : 本業は木造船の設計です。木の船というのは、プラスチックとかカーボンファイバなどに押されて、軽量化が出来ない、性能が劣る、というところがネックだと言われていましたが、2002年にドイツで我々が発表したモーターボートが世界で最も軽い木造船で、カーボンファイバでも出来ないレベルだったんです。強度がないんじゃないかとの見方もありましたが、その後、欧州のデザイナーたちが色々試して、強度が非常にあることが知られるようになった。ところが日本に帰ってきたら、ただ見た目がきれいだ、というだけで終わってしまいました。この素晴らしい木工技術を一般の人にもわかってもらえるような表現をしないといけない、と思いましたね。で、とりあえず通勤用に自転車を作ってみよう、ということで、自分も好きだった自転車を作ってみた、ということです。
司会 : なるほど。どうもありがとうございました。
司会 : それでは、会場の皆さんから質問をしていただき、ビルダーの皆さんにお答えいただくことにします。どなたか、何かございますでしょうか。
男性A : 渡辺さんのフォークブレイズが大好きなんです。ところで、オーダーのシャツ屋の話なんですが、彼らがあまりシャツを着ないので、私がオーダーする時に、私の言っていることが理解できない、っていうことがあります。そのことが先ほどの渡辺さんのお話に通じるのかな、と。そして、自転車の楽しみっていうのは乗っているときの楽しみなんですね・・・。
渡辺 : 20年くらい前までは、こだわりってあったんですよね。でも今あるのは、悪いものを作っちゃいけない、ということなんです。私は200年も自転車を作ってはいません。だから、わからないオーダーが来たら、「半年勉強させてください」と言って、受けます。で、それでも出来なかったら、「すみません、出来る人のところに行ってください」と謝ります。そうやってこだわる必要もあると思うんです。教わることがまだまだたくさんあるんです。競輪場に行けば、NAGASAWAに乗っている選手たちからも学ぶことが出来るんです。まだまだ学ぶことがたくさんありますね。
男性B : 皆さんにお聞きしたのですが、今、世の中に出回っている5、60万円もするカーボンフレームと比べて、みなさんのハンドメイドには一体、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
中川 : じゃ言いますか。スチールの方はねえ、カーボンフレームよりも、慣性がかかっていますよね。カーボンよりもスチールの方が遥かに走っていきますよ。それからカーボンでオーダーは難しいですが、スチールなら簡単にできる。自分に合った自転車を作ろうと思えば、日本人の特徴を理解しているし、生活習慣も違いますから、我々の方が有利です。椅子の文化と畳の文化は違いますからね。
今野 : 自分のパワーを引き出すための道具と考えたときに、靴とかスキーのように体に密接なものだと言えると思います。そういう意味で、私たちにしか出来ない仕事があるし、それはマスプロメーカーとはちょっと違うところだと思います。
司会 : 佐野さんはどうですか。
佐野 : 私のところは木ですからね。まるで違いますよ。木は水を吸った導管が残って空気層になっているのですが、振動吸収性がとてもいいんです。木のハンドルも同様ですね。木製は量産車とは比較になりません。ただし値段もですが。まあ、そこが一番の欠点ではあります。
長澤 : うちらはオーダーメイド。日本人、つまり短足胴長向けだよね。ヨーロッパのフレームを、縦パイプに合わせて選んじゃうと、横パイプが短すぎたりする。これじゃ、しっくりこないねえ。デローザが日本人向けに考えて作ってくれりゃ、いいもの出来るんだろうけど。オレがデローザにいたときには、これはマジーだ、コルナゴだ、って、すぐにわかる特徴が、塗装前のヤツでもあったんだよね。ところが今のカーボンはやれ台湾で作ってます、どこで作ってます、型にはめて作ってます、で、何だか特徴が感じられないのが残念だね。まるでカラーリングだけで形を出しているみたいだ。
技術というものに対する考え方が、最近のヨーロッパでは変わってきたように感じられる。私らは100人いたら100通りのサイズ。でもカーボンは大中小だ。何かねぇ、不可解っていうのか。だから逆に日本のハンドメイドが世界から注目され始めたりしているのかなあ。
それから、デローザのスチールのラグ形状もね、好きじゃないんだよね。おれがいい形のヤツを置いてくればよかったのかな(笑)。(筆者注:長澤氏は1970年代前半、デローザで修業している)
男性C : 今ブームですけど、そうなるとニーズが多岐にわたると思うのですが。それで、実は私もフレームとか小物を作ってみたいなと思ったので、情報を得られると思って、来てみました。どうやったら具体的に進められるのかな、というヒントをいただきたいと思います。
細山 : ビルダーになりたいの?
男性C : そうです。金属で色々作りたいです。
細山 : 好きならば出来ますよ。一番大切なのは、眼だね。イイものをイイと感じる眼。どれがイイものなのか。
ところで、話が変わるけど僕は今でも年間15000km位乗って、レースも20位走るんです。現場では多くの人がカーボンの自転車です。クロモリが最近目立つようになったけど。で、僕は実は、カーボンがまだ、嫌いなんです。何故かっていうと、事故をいっぱい見ているので。ブレーキかけたらフォークが真っ二つに・・・とか。見てみたらどういうわけかエポキシが浸透していないとかね。見る眼が大切ですよ。まあ、いずれにしても速い人は何に乗っても、速いんです。クラブに物凄く速い人がいるんだけど、彼なんかパーツが105ですから。それ以上のものは必要ないって言うんですよね。
斉場 : ビルダーになるとすると、まずは溶接に至るまでのプロセスが第一。それから感性が必要。どうしたら自分がうれしいか、ということを心がけて形にしていけばよい。KEIRINならスピード勝負、でも自分なら結果ではなくて感性に訴えるもの、ということでやってきたけど、そんな風にもやっていけると思います。
司会 : 坂上さんは、違うタイプのものを作っていらっしゃいますが、
坂上 : 公園の自転車の場合、公園っていうのは、同じものを二度と買ってくれないんですよね。だから、面白自転車をリードして、常に新しいものを作っていかなければならないです。特許とPLに気をつけて。
司会 : 今野さん、いかがですか。
今野 : 私は自転車環境としては恵まれた環境で育ったので、あまり言えませんが、好きであれば出来ると思います。お客さんからお金をいただくとなるとまた、大変ではありますが。
男性D : オーダーする時に、どこに行けばよいのでしょうか。それから、選び方はどうすればよいのでしょうか。
盛合 : 気に行ったビルダーさんが近くにいればよいのですが、関東や関西でしたらビルダーも多いので、その中で気になるところがあったら、是非そこに行って、頼む時はフレームだけじゃなくてすべてお任せの方がいいものが出来ると思いますね。
渡辺 : 乗りたい人が、どういう自転車を作りたいか、というのがわかれば、選べるんですがね。まあ、手当たり次第に聞いてみればいいんじゃないかな。その中で、これだ、と思うのがあったら、それがいいんじゃないですかね。それで来ていただければ、選んでいただいた、ということで、オーダーをお受けします。
男性E : オーダーで困ったことは無かったですか?
渡辺 : 私はMTBが出来ないんでね、そんな時は細山さんがいますから、細山さんを紹介しますね。
中川 : 作ろうと思えば、まあ~出来るんですけどね。作ってしまいたいな、と思うと出来ますね。リカンベントとかね。
高田 : 関西サイクルセンターさんがアイデア募集っていうのをやっていて、この間は、「カニの自転車」を具現化するということになったんですが、さて、前に向かってペダルを踏むのに横に走る・・・そういうのをどうやって実現しようか、とか、そういうのを考えるのが好きですね。
男性A : 会場に乗ってきている自転車に固定車が多かったんですが、全部、チェンが張りすぎ、なんですね。明らかにテンションを上げ過ぎです。ああいうの、長澤さんは何かご指摘なさらないんですか?
長澤 : ん、まあーねぇ。知らねえんだろうな。
男性A : ですから知らせてあげた方が・・・
長澤 : 競輪選手みたいに教育されているなんてのは、一般ではないですし、また、公道でピストに乗るってのもね・・・
渡辺 : チェンをパンパンに張っている人は、バックを踏んだ時のコントロールしやすさ重視なんだろうなあ、と推測ですけど、思いました。
男性A : バックを踏みたい、ということでね。それから天を見上げてリカンベントに乗って商店街の狭いところを得意げに乗って・・・コントロールできないような狭いハンドルに乗ったり、やたらと幅広のハンドルに乗ったり・・・やはり理論的には・・・(※理屈話が延々・・・大幅省略)
渡辺 : あのね、そういうのに関係なく、楽しんでいるお客さまもいらっしゃるわけ、ですよ。
男性A : でも幅広600mmは迷惑ですよね。教則でも全面投影面積とか、何も触れていないんですよね。その辺を科学的に整備してもらいたいですよね。ペダルだと、プラスチック底だったりすると、延々坂を上って脚をついたときに衝撃が凄いですよね・・・(※ペダルの理屈話から延々・・・省略)
長澤 : 何だっていいんじゃね?(会場に笑)
男性F : ツーリング車の方向性はどうなんでしょうか。
盛合 : 今あるパーツを使わなければならないので、ある程度制約はあるとは思いますが、今は大体舗装路なのでツーリング車の形も、それに合わせて変わっていくのではないでしょうか。
今野 : 昔のパーツで昔のように作ってしまうと、メンテ性が問題となるので、自転車としてはどうかな、と思います。長い旅行で使われる方には、整備性の良いパーツを私としては勧めます。
斉場 : ツーリングがどんな形態になるのか?という言い方も出来ると思います。昔は、輪行車なんていうカテゴリもあったくらいですが、いまはクルマに載せる人も大変多くなっています。いわゆるランドナーみたいな昔の大学のサイクリング部みたいな方向性は、あまりないのかな、と思います。それから、自転車というのは、消耗部品が多いですから、維持するという意味で、入手性という選択基準は必要かなと思います。
長澤 : ツーリング車は作ったことねえな。ツーリングって言えばTOEIだよね。でも、ツーリングの人がロードに来て、ロードでツーリングを始めました、っていう人もいるよね。いまはコンパクトドライブでロードも融通がきくし、荷物は宅急便だったりするから、一日の距離をツーリング車の倍くらい、ロードで走っちゃった方がいいと考える人もいるよね。
中川 : うちのお客さんはクロスバイク的なものが多いですね。
男性G : デザインとか機能の発想はどんな風に出てくるんでしょうか。
今野 : 自転車は道具であって、飾りものじゃないって思っています。米国のハンドメイドショーだと、こんなものも出来るんだぜ、みたいな感じで、置き物的なところが強調されていて、まあ、それはそれでいいんでしょうが、ロードでもツーリングでも、まずは機能が最優先だと思います。その次に軽量化とか、色々とくふうを加える中で、誰が見ても美しいものに迫るとか、そういうのが必要だと思います。
斉場 : 機能はむしろ、うちの場合は、無くなっていくんじゃないかな、と思います。今回MTBを作ったんですけど、サスもありませんし。自分が自転車に乗っている姿を想像して、うわーっ!バタン、と転ぶのをイメージしていますね。これは面白いなと思っても、5m離れてみたら協調していないようなものは良くないですね。それから、これがあったら面白いぞ、という、まあ機能美とウケ狙い、ですかね。こうでなければならない、というのを外すのもいいのでは、と、そう思います。自分の自転車を量産と比較したことはないです。
長澤 : オレがイタリアで学んできた自転車の考え方は、枠に入った写真と一緒だよ。バランスだよね。短足胴長が乗った時にバランスが出る自転車だね。まあ、みな、自分それぞれだよ、バランスは。ツールとかで走っているプロの自転車、あれはハンドルが低いねぇ。あれを真似したって乗れるわけないよ、大抵の日本人は。
中川 : センスを磨いて、いいと思ったものを形にするための努力をして、それを表現するのが我々の仕事だと思っています。
男性G : 中川さんが美しいと思われているのはどんなものですか。
中川 : 今は、アレ(会場展示作品)がすべてです。今後がまだありますけどね。
細山 : クロモリフレームで考えると、作り方は50年前と今で、ほとんど同じです。そういう中で育ってきた色々な工作とか、お客さんがいいと思うものなら、あまりかっこよくないなと思っても、やります。でもかっこいいとか悪いとかいうのは、時代背景でどんどん変わりますからね。レニヤーノなんて、今見たら変だなって思うけど、当時はかっこよく見えたんです。30年前はホリゾンタルしかなくて、スローピングなんて、あんな恰好悪いもの!って思ってたけど、時代が変わると、それも変わって来ますよ。
高田 : 前後二人乗り自転車で、後ろの子供が脚を外したときに、再び乗せようとするとペダルが回っていて危ない、なんていうのを解決するにはどうすればいいんだろうか、みたいなところで考えることで、私の仕事では発想が出てきます。
坂上 : 何でもよく見て、とにかく構造に興味を持って、よく考えて自分のものにしてしまうことですよね。
渡辺 : 自分が乗りやすい自転車が自分にとって一番だと、それだけですよ。美しいけど乗りにくいなんて、どうしようもないでしょ。それだけです。それがいい自転車かどうか、それは乗っている人がわかる。
佐野 : 安全という機能をまず持たなければならないです。それなので、木フレームはあんな風にシートポストのあたりが曲がっているわけです。
盛合 : 渡辺さんと同じですが、乗ってみてポジションがちゃんと出ているものがいいですね。用途によってポジションも変わります。ロングライド指向の人がレベルアップして競技志向になれば、フレームも変わってきます。お客様の思いとこちらの考えを合わせて、作っていけばいいんです。
司会 : それではかなり時間も経過しておりますので、この辺でひとまずお開きとしたいと思います。個別のご質問がある方は、どうぞ会場でビルダーさんに訊いてみてください。それではみなさん、どうもありがとうございました。
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年 式→2010