購入価格 ¥250'000くらい(メーカー直販)
Hand Made In Japanを貫く東洋フレームのシクロクロスフレームです。
以前は台湾に東洋フレームの支社工場があり、そこではアルミフレームなどの生産をしていたようですが、現在は閉鎖されていて、国内の工場のみとのこと。
……東京サンエスのカタログには、台湾東洋のモデルが2017年現在、まだ掲載されていますが、これはサンエスの「在庫限り」とのこと
大阪の柏原市にある工場で、一本一本ハンドメイドで生産されており、ジオメトリこそは吊しでありますが、オーダー時にフレームカラーや、DI2のオプション、レターの色などをチョイスして仕上げられる、いわゆるセミオーダーフレームと言えるものです。
■直接ショールームや工場へ足を運び注文した顛末はこちら
(
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=15477&forum=125&post_id=26830#forumpost26830) 自分のチョイスしたCX-Sは、東洋のシクロクロス車の中ではセカンドグレードになるもので、カイセイのUltimaベースのオールスチールフレーム。
ブレーキはリムブレーキ仕様。
とはいえ、ヘッド周りは1.5&1-1/8のテーパードコラムに、IS規格のヘッドパーツ、グラファイトデザイン製のフルカーボンフォークがインストールされており、かなり近代的な作りのピュアレーサーです。
実際、2012年だったか……ほぼ同じスペックのフレームで、竹之内悠選手は全日本選手権を勝っていたりと、実力は折り紙つき。
それまで自分は、クロスバイクを改造したものでレースに参戦していたわけですが、あまりにひどいアンダーステアと、当たり前ですが担ぎを全く考慮されてなフレーム設計に、BBハイトが低くバニーホップ時や、キャンバーでチェンリングをぶつけてしまうなど、走り、取り回しに不満が強く、ちゃんとレースに取り組むなら、ちゃんとしたバイクが欲しい!
今までBianchi以外の自転車に乗ってこなかった、根っからのBianchiファンの自分でしたが、ホイールやパーツの流用が利き、なおかつ軽量であるカンチブレーキモデルが欲しかったのと、Bianchi以外を買うなら、マスプロメーカーのものではなく、ビルダーのハンドメイドのものがいい!という理由がありました。
■組み立てについて
フレームからの組み立ては自前でやりました。
フロントシングルの1x11の構成で、変速機周りはGenenalleCXを使用。
BB周りはBSAの68mmととりわけ特筆する規格ではなく、ワイヤーも基本的には外出しです、普通に組めます。
少し変わっているところといえば、後ろのブレーキワイヤーのルーティングがやや凝っていて、トップチューブに半透明のビニールチューブが通っており、そこの中にインナーワイヤーを通します。
実質上の「フルアウター」みたいな感じなので、重たくなっちゃうんじゃないの?という感じもしますが、実際ベルギーで1シーズン通して使って無問題、って東洋フレームが言うんだから、多分そうなんでしょう。
実際ここまで数ヶ月使ってきて、全く問題はありません。
▲透明のチューブはフレームに組み付けた状態で納品された
カンチブレーキなので、ブレーキのチドリのセッティングをしないといけないのですが、前後とも、アウター受けはフレームの中央に配置しなくてもOKとのこと。
なので、チドリ自体も、左右対称の中央の位置に必ずしもセッティングする必要があるわけではないようで、チドリが左右どちらかに寄ってしまっていても、きちんとブレーキを引いた時に、片効きしなければOKだそうです。
■実際使ってみた感想
いざ、組み立てて乗ってみます。
当方は体重はだいたい60~65kgくらい、組んだCX-Sのホイールはマビックのアクシウム、タイヤはパナレーサーのCG-CXです。
まず、乗り始めてびっくりしたのが、凄まじいトラクションの良さです。
ペダルを踏みつけ、回した時の爆発的な加速力……今まで、いろんな自転車を所有したり、試乗したり、借りたりして乗りましたが、ここまで感動したのは初めてですね。
重量なんかは、フロントシングルとはいえ、クロモリフレームで9kg前後あるわけですし、ホイールもエントリーグレードの使い潰せるアクシウムです。
しかし、どういうわけか、その重さを全く感じない……ペダルを踏んだその力すべてを、余すこと無く推進力に伝えてる感じといいますか、とにかく「悪魔のような速さ」です。
もちろんタイヤはブロックタイヤですし、ギア比的にも舗装路を巡航するようなバイクではないので、ロードレーサーとは比べるものではないのですが、減速した後の加速、いわゆるインターバルのピックアップの良さは「凄まじい」の一言です。
手持ちのカーボンバイクなんかよりも、0-30km/hの加速は遥かに良い。
それから前に進む、減速する、カーブを曲がる、すべての動作において雑味がないんですね。
これはフレームの精度の良さが出てると思います。
ライダー側が、こういう操作をしたいという入力に対して、非常にシュアといいますか……とても素直な動きなので、自信を持ってコーナーに入っていけるし、自転車も倒していける。
フレームは良く剛性感で語られることも多いのですが、少なくとも「柔らかい」フレームではないですね、かと言って「硬い」のかと言われると、そういう感じでもない。
クロモリフレーム特有の「しなり」だったり「バネ感」と言われると、そういう感じもしなくもないのですが、なんというか、そういう言葉では言い表せないですね。
乗っていて、リズム感の良さは感じますが、バネ感やしなりを感じるほど「タメ」がある感じではないです。
ただ、シクロクロスに特化したジオメトリというのもあって、フロントセンターが非常に短く、トゥクリアランスがほとんどありません。
ハンドルを深く切ると、タイヤがつま先にあたります。
なので、ステアしてぐいっと曲げるよりも、バイクを倒しこんでグライダーのようなイメージで曲がって行くと良いですね。
それから、後三角の素晴らしい出来に比べると、ややフロントフォークの作りに物足りなさを感じます。
キャンバーの下りなどで、ハードブレーキをかけた時にもうちょっと剛性感ほしいなという、そういう感じも……
■総括して
レーシングバイクです、本当の意味でレーシングマシンです。
もちろん日常的に通勤なんかでも使うこと出来ますが、ジオメトリや、フレームの特性的にあまりそういう使い方する感じではないですね。
スリックタイヤつければアスファルトも結構走りますが、太いタイヤを入れるために広げられたホイールアーチや、フロントフォークなんかを見ると、やはり30C以上のタイヤが似合います。
やはり、このバイクは、シクロクロスのレースで走らせてこそポテンシャルを発揮するような設計になっています。
先に書いたように、トラクションが凄まじく、それはグラベルの上でもかっ飛ぶように加速します、コーナーの立ち上がりや、ゴール前のスプリントでは自信を持って仕掛けていけます。
アルミやカーボンの凝ったような造形や、フォトジェニックさはあまりない、質実剛健なフレームですが、走りは間違いないです。
大手マスプロメーカーしか乗ってこなかった自分には、本当に衝撃的なフレームでしたね。
■余談ですが……
――「クロモリ」という先入観のせいで、ややトラッドなシルエットもあって、クラシックな印象を持ってしまう東洋フレームですが、実態としては、近代的なジオメトリや仕様を盛り込んで、トップレベルで現在進行形でインプルーブされているわけです。
なおかつ、ハンドメイドの利点として、どんどん新しいアイデアをワンオフで試していて、日進月歩でハイエンドモデルは進化しています。
実際、昨年の全日本選手権で、東洋フレームの竹之内悠選手はヒートごとに3種類の異なるスペックのフロントフォークを試していて、今シーズンも、シーズン後半戦は、前半戦とはパイプやジオメトリの異なるバイクをベルギーに持ち込んでいます。
そう、彼は東洋フレームの「走る実験室」なんですよね。
もうね、本当にカーボンがどうとか、アルミがどうとか、そういうマテリアルありきでフレームや自転車を語るのって、やっぱちょっとズレてる思うんですよね。
カーボンだって、安価なものは重たいし、ハイエンドだからといって、スペック上は軽くて良くても、金型が傷んでいて質の悪い年式のものだってある。
クロモリも、必ずしも重たいわけじゃないし、Speedvagenなんて、その辺のカーボンよりも全然軽いクロモリフレームだったりするわけですよね。
だから、とにかくなんでも興味を持って、とりあえずどんどん見て、触れたりして評価するのが、やっぱり一番幸せなライドに近づくんじゃないかなと、そう感じるんですよね。
価格評価→★★★★☆(高いとは思わないけど、ハンドメイドでもうちょっと安いところも結構ある)
評 価→★★★★★(This Is The Bike)
<オプション>
年 式→2017
カタログ重量→フレーム単体1640g (フォーク・ヘッドセット込みフレームセット重量2140g)