購入価格 ¥中古
ライトスピードがかつて製造していたチタン製タイムトライアルバイク。
知る人ぞ知るマニアックなフレームで、中古価格も全然つかなかったのだが、漫画「のりりん」で登場(こちらは2003年モデル)し、注目を浴びた感がある。
盆栽状態だったものを知り合いから譲ってもらったので詳細は分からないが、2002年モデルでほぼ間違い無い。
何度かTTレースに出たものの、後述する理由もあって普段は部屋のインテリアになっている。
ペイントモデルは高価だったこともあり、なお珍しいが塗装は剥がれやすい。
フレームを見てまず目を引くのは翼断面…というか楕円断面の前三角。6-4チタンの板を丸めて溶接したパイプが使用されている。
そこまで薄くないのでアスペクト比は大したことがないものの、幅があるのでビジュアル的なインパクトは大きい。
このフレームの無茶な造りを象徴するのがBB周りからシートチューブ。
一般的なフレームは、BBシェルにダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステーが接続される構造になっているが、
ブレイドはシートチューブに開けた横穴にBBシェルが貫通し、そこにチェーンステーが溶接されている。
精度を出すのが難しいようで、実際ちょっとBBが傾いている。
また、カーボンフレームでは当たり前になったシートチューブのカットアウトも、切削と溶接で作られている。
前三角についてはシフト・ブレーキワイヤー内装で、長円形の穴からアウターワイヤーごと挿入する。
ガイドが無いため、初回作業時はかなり苦労する。
樹脂製のグロメットが付属するが、外れやすいので使っていない。
フロントディレイラーのワイヤー取り回しはなかなかにアバンギャルド。
その他、シートポストは27.2mmの丸断面。翼断面チューブに無理やり溶接されているせいで歪んでおり、ピラーがとても渋い。
ヘッドチューブは微妙に潰されて楕円断面になっているのだが、この時代のライスピに採用されていたインテグラルヘッドは割れると悪評で、乗り続けているとクラックが入る。
フレーム自体の希少性もあり、普段使いにはなるべく使いたくないのが正直なところ。
気合の入ったフロントセクションに比べるとリヤ三角はオーソドックスな形状で、バイク全体の過激な見た目に比べるとずっと自然な乗り味になっている。
TTバイクのポジションは、サドルを前進させハンドルを低く。
エアロ効果よりも、TTポジションを設定できることがTTバイクをTTバイクたらしめている。
具体的には、前乗りするための立ったシートチューブと短いヘッドチューブ、
過度の前輪荷重でも直進安定性を確保するための寝たヘッドと長いフロントセンター、そし伸びたホイールベースを補償する短いチェーンステー。
ブレイドのジオメトリはどちらかというとロードに近い印象で、ヘッドチューブが長く、ポジション出しは多少苦戦。
35度ライズのステムを使ってハンドルを下げている。
TTバイク自体ロクに乗ったことがないので、ロードバイクとの比較になってしまうが、乗り心地は普通のロードとあまり変わらない。
硬そうな見た目に反して、フレームはけっこう柔らかい。BBシェル幅が狭いのが原因だろうか。
TTポジションはとにかく平地の高速巡航に特化しており、登りはもちろん、コーナーもブレーキも苦手。
ペダルに荷重が乗ってないと辛いので、流して走るのは余計にキツい直線番長。
アップダウンがある道や長距離では、ロードバイクのほうがずっと速いし快適。
今後こういったキワモノが製品化されることは無いのではなかろうか。
10余年前、チタンでカーボンに挑み、散っていったライトスピード。ヘッドチューブ割れの持病を抱え、感傷に浸りながらサイクリングするにはあまりにも乗りにくい1台。
価格評価→★★★☆☆ コスト面で優れたチタンフレームなど存在しない
評 価→★★★★☆ 決して優れた製品ではないが魅力を感じる。
年 式→2002
実測重量 1800g(トップ57(Lサイズ)フレームのみ。フォーク428g)
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・ブレイドの系譜
ライトスピード ブレイドは毎年モデルチェンジし、同年度の製品についても仕様が異なるものがあるため非常に多くのバリエーションが存在する。
興味があって調べてみたので、これから中古購入を考える人、既に持っているが詳細が分からない人は参考にして頂ければ幸い。
過去のカタログ、インターネットで調べたが、不正確な点もありうるのはご承知願いたい。
・~1994
TT/トライアスロンフレームとして650cのタキオン(TACHYON)が存在。
・1995
TT/TRIバイク「ブレイド」が登場。650cホイール。
スレッドヘッドで外装ワイヤーだが、6-4チタンの翼断面チューブは既に採用されている。
・1996
目立つ変更点は見当たらない。
・1997
「ヘッドチューブノーズコーン」という三角柱が溶接される。正直ダサいがこれはこれでアリ。
何を血迷ったかグラビティ系のMTBにも採用され、殺人ヘッドと恐れられていた…らしい。
・1998
シートステーがベンドし、前三角が少し大人しくなる
・1999
シフトアウター受けがWレバー台座位置からヘッドチューブ寄りに変更されている。
Wレバーがスタンダードの時代から、手元変速がスタンダードとなる時代の転換点を感じる。
・2000
ついに1-1/8アヘッドになったが、トップチューブとシートチューブが3-2.5チタンに。
リヤエンドが「L」ロゴ入りのものになった。
・2001
再びトップチューブ・ダウンチューブが幅広いブレード形状に戻った。
中古で比較的良く見かける年式。
・2002
前三角ともに6-4チタンのブレード形状に。
インテグラルヘッド化され、ついに殺人ヘッドことヘッドチューブノーズコーン撤去。
私が所有しているのは700cだが、650cモデルも存在する模様。
・2003
基本的に2002と同仕様だが、シートステーがカーブしている。
参考画像は650cで、ホイールが小さいためシートチューブのカットアウトが無い。
・2004
またチューブが細くなる。定期的に太くなったり細くなったりしている。
リヤエンドがホリゾンタル(トラックエンド)に。チェーンステー長を詰められるがホイールの交換がやりにくくなった。
・2005
やっとエアロシートピラーになった。
・2006
写真を見る限りは2005と同一仕様?
この後、一旦廃盤になったのか、07~08モデルは見かけない。2004頃からセカンドグレードとしてラインナップされていたSaberに統合された模様。
・2009
数年あけて大規模なモデルチェンジ。
細いトップチューブと低いシートステーを持つ今風のフォルムながら、翼断面のチタンシートピラーを採用する超弩級のキワモノ。
国内価格税込み120万円(フレームセット)というお値段も恐ろしいが、そもそも売っているのを見たことがないし走っている写真すら見ない。
2009年モデルを最後に、2015年現在に至るまでブレイドの新モデルは発表されていない。
レースするならカーボンフレームがスタンダードだし、ここ数年ではエントリーモデルもカーボンフレームが当たり前になった。
2000年台前半、異型のチタンフレームを世に出し続けていたライトスピードが販売の軸をカーボンにシフトした2010年、チタンの時代が終わったのを感じた。
そんなライスピ最後の大花火、2009ブレイドを探しています…