Bromptonの魅力は今やインターネット上の様々なところで語り尽くされていると言っても過言ではないので、ここでは選んだ理由や所有して分かったこと、簡単なカスタムについて紹介したい。
・なぜBromptonか
実は、元々小径にはさほど興味はなかったのだが、カメラを買い替えた際に写真を撮る足としても使える折りたたみがあると便利なのでは、と思い小径折りたたみを探し始めたのが発端。折りたたみで小径となると、メジャーなところではBrompton、R&M BD-1、Dahon (Tern)、Bikefriday、加えて分割式でMoulton (便宜上BSM含む)辺りが挙げられる。この中で、まず予算と入手性の面でBikefridayとMoultonが脱落。Dahonは価格の面では良い選択肢だったが、以前借りた際ヘッド周りやハンドルポストの剛性が低く、ハンドルが前後にcm単位で撓るためここで脱落。走行性能とコンパクトさを両立させようと思うと、やはりBromptonとBD-1の一騎打ちとなった。
BromptonとBD-1の特徴や比較はインターネット上で十分な情報があったため、事前情報を得るのは比較的簡単だったが、決め手となったのは折りたたみ時の寸法とBD-1の走行安定性に関するネガティブなレビューだった。前者については、Bromptonは説明するまでもないが、たたんだ際のコンパクトさについては世界一と言っても過言ではない。走りを犠牲にした折りたたみ自転車の中にはより小さくなるものもあるが、コンパクトさと走行性能のバランスをいい塩梅で実現しているBromptonには敵わない。また、後者についてはあくまでBD-1に乗ったことがない時点での意見となるが、フォークのオフセットが非常に小さい上サスペンションが付いている関係で、ふとした拍子に前輪が切れ込んでしまうというレビューが見られた。
以上より、当初の購入動機の通り、できるだけコンパクトで走りも十分と言えるBromptonを購入することになった。なお、モデルはスタンダードなM3L。種類はHPを見れば一目瞭然だが、後々ステムを替えるのはコスト(3万弱)も手間も掛かるので、S,M,Pの選択は慎重に。
・実際に使ってみて
使い勝手や乗り味については沢山の先人達のレビューがあるのであまり語る事もないのだが、思ったよりはよく走るといった印象。ただ、いくら走るとはいってもあくまで“小径の折りたたみにしては”であり、ロードやスポーツよりのクロスバイクには全く敵わない。私の場合は巡航速度でロードから-5km/h程度といったところだ。また、フロントはサスペンションがないため突き上げが結構来る。純正Mハンドルは撓って衝撃を和らげるが、ハンドルを交換するとダイレクトに伝わるため、フロントはあまり空気圧を上げないようにしている。ただ、フレームは捩れるため、ドライブトレイン含め踏み込んだ際のパワーロスは少々大きいように思う。
輪行は予定通りではあるが、劇的に楽になった。自転車から降りて10秒で自転車が最小サイズになり、袋に入れたら終わりである。今はJRの場合規定上駅構内を転がすことはできないため持ち運ぶ必要があるが、それでも準備が楽というのは素晴らしい。ただ、車重はノーマルで12kg前後あるため、移動距離の長い駅では少々疲れる。また、車内では足の間に置いておけば、立っていてもほとんどスペースを取らないため、余程混んでなければわざわざ端の車両まで行く必要はなく、少しの隙間を見つけるだけで良い。これは車重が軽く運ぶのは楽なロードにもないメリットだ。
輪行が楽、という事は思いの外大きなメリットであり、行き先を決めずにとりあえず乗って、何となく気になる所で降りてみたり、時間があるからと途中下車してみたり、という事も可能。これは折りたたみに強い小径ならではだろう。
ほぼノーマルの頃
ただ、私の買ったM3Lの場合、ライズ150mmのハンドルの関係で純正ポストを最大まで上げた状態でやっとハンドルとサドルが同じ高さになるため、ノーマルの状態ではあまりスピードは出せない。Mハンドルにハンドルポジションチェンジャーを噛ませてフラットバー化する改造が一般化していることを考えると、165cm以上の身長なら要求するポジションをよく考えることをお勧めする。
・カスタムについて
Bromptonは専用パーツが多いため、カスタムするにも専用パーツを使うことになる。よって他の自転車に比べて改造費用も高くなる。この点では汎用パーツが非常に多いBD-1の圧勝である。サスペンション周りなど、専用の改造パーツも充実しているため、改造ベースとしてならBD-1の方が向いているように思う。さながらiPhoneとAndroidのようだ。
以下カスタム箇所と簡単な解説。
1. Charge Spoonに変更。純正サドルは重く、セットバックを取りにくいため変更。ただ、純正サドルはノーズの裏側に持ち手があるたえ、サドルを持って運ぶ際には使いやすい。
2. Rideaのアルミに変更。純正は160g近くあるため、60gほど軽量化できる。また、Rideaはカートリッジベアリングなので耐候性も高い。元はママチャリ並なので、Tangeなどにでも交換した方が良い。サイズは1-1/8のスレッドと特殊。
3. ブレーキにステーを噛ませてVolt100をマウント。振動が凄いため純正反射板のアルミステーなどはすぐ折れるので注意。流用には幼児車用カゴステーがベスト。
4. Schwalbe Kojakに変更。純正から交換するだけでギアが半段近く軽くなる。ロンドン仕様で重いことで有名だが、ギア比を見直す前にタイヤを替えた方が良い。16インチのWO(349)なので選択肢は少ないが、ワイヤービードのKojakが入手性や転がりも良くお勧め。
5. MKS Esprit Ezy Superiorに変更。純正より重く嵩張るが、左右の踏み心地を合わせるためこちらに。折りたたみペダルでも良いが、市場に欲しい物がないため暫定。
6. シールドベアリングのアルミプーリーに交換。純正はブッシュで回転が悪い。サイズは10Tなので注意が必要。11Tは下側なら付けられるが、クリアランスが厳しくなるので両方10Tの方が良い。
7. Bikefunのコイルサスに交換。重量増で乗り心地も悪化した。余程のことがない限り純正のエラストマーで十分だと思う。なお国内の物は試していない。
8. ハンドルはAki World Color Alloy City Barでライズ100mm。3色展開で安価なのでお勧め。ただバックスウィープの関係でわずかにハンドルは近くなる。グリップはErgon。ハンドル荷重で乗るわけではないが、エルゴタイプの方が個人的には楽に乗れる。
9. Bikefunのボトルケージ台座。ワンタッチで取り外し出来る。ボトルケージ台座が無く取り付けに困るのだが、これがあれば解決出来る。ただし約8000円と高価。
10. ブレーキレバーはBL-R780に交換。2013モデル以降はアルミの専用レバーが付くため必要ないが、2012モデル以前ならレバーを交換することで見た目は良くなる。効きはキャリパー自体がさほど高剛性ではないためほとんど変わらず。ちなみにケーブルはブレーキのみNokonに交換したが、フルアウターの関係でアッセンブルが異常に面倒な上、大きな変化は見られなかった。普通のもので十分。
他にもホイール交換など色々あるのだが、あまり突っ込まない範囲での改造はこの辺りまでだろう。やり過ぎると膨大なコストが掛かるため、深追いしない事にした。
・ここが気になる
以上は概ね良い所・便利な所だが、割高なのも事実。ここでは少し気になった所を挙げる。
ヒンジのボルトは稀に緩むらしく、私の個体は緩んでしまった。元々後輪の固定をロックした状態でも多少の遊びがあるため、ヒンジの遊びに気付きにくい。かくいう私も緩んでいることに気付かず何度か乗ってしまった。このヒンジボルトは厄介で、ドライブ側は六角穴がチェーンリング(50T)と重なっているため、締め直しする度にクランクを外す必要がある。また、写真の通りシャフトは貫通しておらず、ボルト2本のみで体重を支えている。MTBのリンクではこれは有り得ないのだが、街乗りだからこれで良いという事なのだろうか。あまり無茶はしない方が良いだろう。
ハブのロゴとバルブの位置は揃っていない。匠はそのような事は気にしないのだ。ちなみに、ホイールバランスもかなり悪いので暫定でバランスを取るためバルブナットを積んである。
ヒンジクランプのネジ穴には塗料が詰まっているので、渋い場合はタップを立て直した方が良いが、この辺りは納車するショップによっては事前に下処理されているだろう。
・まとめ
長々と書き綴ってしまったが、Bromptonには満足している。今では街乗りから写真を撮りに行く足としても活躍しており、以前にも増してロードの出番が減ってしまった。改造は余計に費用が掛かる上、ベースも決して安い自転車ではないのだが、BromptonにはBromptonにしかない良さが沢山ある。半額以下で手に入るDahonでもほとんど主要な機能は変わらないので、価格に納得出来ないなら無理して買う必要は無いと思うが、Bromptonのある生活に慣れると、手放す気は起きなくなってしまった。Super Recordもカーボンホイールも付いていないが、これはこれで不思議な魅力のある自転車だ。
・おまけ - BD-1と乗り比べ
その後、友人がBD-1を購入したことで、双方をじっくり乗り比べ出来る環境が出来たが、先に述べたレビューで見られる安定性の低さはあまり気にならなかった。確かに癖があるハンドリングであり、独特の切れ込み方をするのだが、余程無茶な操作をしない限りはバランスを崩すことは無かった。正しい乗り方をしている限りは、BromptonはもちろんBD-1でも安定性は問題ないだろう。
BD-1にはFサスがあるが、ノーマル状態でも街乗りの小さな段差を程良く吸収してくれるため、非常に快適。Bromptonは先述の通り突き上げは結構激しいため、単純な乗り心地の比較であればBD-1の圧勝であると感じた。
なお、ポジションはBD-1 Standard(ハンドル一番下)と私の改造BromptonでハンドルとサドルとBBの位置が同じぐらいなのは意外だった。ぱっと見はBromptonの方がハンドルは近く見えるが、これはフロントセンターが遥かに長いための錯覚だった。言い換えればその分BD-1のフロントセンターは短いので、直進安定性は若干劣る。
ただ、どちらも乗って改めて選んでもやはり僅差でBrompton。折りたたみの完成度は捨てられない。
しかし、こういう改造ができるのはBD-1の魅力。願わくば両方所有したい。小径折りたたみはスペースの問題が出にくい以上、非常に危険である。
価格評価→★★★☆☆(パーツだけで見れば6万ぐらいか。ただしブランド維持を考えると10万は切って欲しくない)
評 価→★★★★☆(乗って便利、弄って不便。そこも含めて楽しむ必要がある)