購入価格: ¥35,800 (税込)
標準価格: ¥39,900 (税込)
『普段使いには軽快車より遥かに軽く快適だが、機敏な動きが苦手で拡張性が低いので最初の1台には不向き』
■軽快車が壊れたのでクロスバイクを購入
GIANT SUITTO 2は、通勤・通学や普段使いに対応したクロスバイクだ。ドロヨケやスタンド、コンフォートサドル、チェーンガード、幅広のタイヤ等、日常での走行を快適にするパーツが多く使われている。クロスバイクの中でも軽快車(ママチャリ)に近い使い方が想定された構成だ。
私の家では2台の軽快車があったが、そのうち1台は安物ですぐに壊れてしまった。一方、もう1台のブリヂストンの軽快車は、何年もトラブルなく快適に走行できている。同じような軽快車を購入する予定だったが、あと少し費用を追加して、普段使いに良さそうなSUITTO 2を購入することになった。軽快車のように複数人で乗ることを考え、私の家族の中で一番身長の低い者に合わせてサイズはXSになった。
GIANT SUITTO 2 2011 ピンク 380(XS)
■見た目の割に軽量
この手のクロスバイクはママチャリに毛が生えたようなものと揶揄されることがあるが、実際に乗ってみると軽快車とは比較にならないほど軽い走りをする。スチール製の軽快車が平均で20kg前後であるのに対し、SUITTO 2は12.8kgしかない。同じ距離ならSUITTO 2の方がずっと楽に走れる。軽快車から乗り換えれば、通勤・通学や日常での走りがかなり快適になるはずだ。
■乗り心地が良い反面、軽快な動きは苦手
フレームの特徴はもちろん快適性に割り振ったものだ。SUITO 2のXSサイズをSEEKのMサイズと並べると、SUITTO 2のホイールベースとヘッドチューブの長さが目を引く。太めのタイヤやクロモリフォークと相まって、走りには安定感があって乗り心地が柔らかい。アジャスタブルステムの角度を上向きにすれば、更にアップライトな姿勢をとることができる。
その反面、キビキビした軽快な動きは苦手。ハンドリング、加速、反応などどこかダルさを感じてしまう。乗り心地を重視したジオメトリとパーツ構成の重量は、機敏な動きとは真逆に位置するものだと実感した。
だが、これは同じGIANTのSEEKやFIXERと比較した場合の話。軽快車と比べると運動性能の差は歴然だ。軽快車と決定的に違うのがフレーム等の剛性の高さで、時速30km/hくらいの高い速度でも安定した挙動で安心感がある。やはりSUITTO 2はスポーツバイクなのだ。
■確実に止まれる十分なブレーキ性能
SUITTO 2に使われているVブレーキ、ブレーキレバーはテクトロのものだ。ブレーキとレバーの両方がテクトロ製だと、かなりグニャッとした感触のブレーキフィーリングになる。細かいスピードコントロールは苦手だが、元々制動力の高いVブレーキということもあって、高いスピードからでもしっかり止まることはできる。
また、純正ホイールとの相性は良好で、擦る音も少なくリムへの攻撃性も低い。これは強度を重視したリムの材質やアルマイト処理されていないこと等が影響しているかもしれない。ブレーキシューは全天候用のものが採用されているようで、雨天でもしっかり止まることができる。ただ、リムが濡れると鳴きが発生しやすい。
軽快車でスピードを出すのはブレーキ性能の点でも怖い。その点、SUITTO 2は十分なブレーキ性能を備えている。グニャっとしたフィーリングの割には悪くないブレーキ性能だと思う。
■普段使いには十分な性能だが、高いスピードでは限界を感じる
レボシフトシフターによる変速は思ったよりも快適だ。手首を捻っただけ多段変速できるので、高いスピードを出すとスポーツ走行の片鱗を味わえる。12-32Tのワイドレシオのカセットは、7速でのんびり使う分にはちょうど良い。クロスレシオの方が使いやすいと思っていたので、これは意外だった。これならスピードや坂などの様々な局面に対応させやすい。
ただ、このクラスのパーツでは不満が多いのも事実。シフトアップではガッチャーンと大きな音を立てることがあるし、レボシフとシフトレバーは動きが硬い。もっとスポーティーな走行をするなら、ラピッドファイアーシフトレバーで、リアは8速以上、フロントも変速できた方がいいと思った。SUITTO2は比較的短い距離で、ごく短時間の間だけスピードを出すときに十分な構成だと思う。
■快適パーツの中には安っぽく、すぐに劣化するものも
SUITTO2には快適性を高めるためのパーツが多数取り付けられている。ただ、耐久性や使い勝手の点でやや不満なものもある。フェンダー以外は値段なりのものなので、使い勝手が悪かったり劣化したりしたら交換した方が良いだろう。
コンフォート系のグリップやサドルは、通勤・通学程度の距離なら快適に走行できるだろう。ただ、Velo製のグリップは経年劣化でべたつくようになるし、サドルは雨天や洗車で水を吸うと尻が濡れる。
チェーンガードは裾の巻き込みを防止する便利なものだが、チェーンガードとチェーンリングに取り付けるためのスペーサーが錆びやすい。購入後数ヶ月で赤錆が生じてしまった。SUITTOを購入したら、この部分を防錆した方が良いと思う。
標準のキックスタンドは特に問題なく使える。長さを変えることはできないが、その分、伸縮機構のトラブル等が少ない。クイックリリース式のシートクランプの固定力は確実で、私の家のように複数人で使うにはとても便利だ。
また、フェンダーはクロスシリーズ専用品なので、クリアランスがちょうど良い。固定式のフルフェンダーにもかかわらず、軽量なポリカーボネート製なのはポイントが高い。もちろん、突然の雨天でも尻や背中が汚れない。
■拡張性が低く、アップグレードしにくい
SUITTO 2は拡張性が低く、性能向上のためにカスタムしにくいクロスバイクだ。例えば、純正ホイールの7速のフリーハブには、8速や9速のカセットスプロケットを取り付けることができない。また、フロントを3段変速にしたいと思ってもアウター受けがない。リム幅の太いホイールでは、細いタイヤに対応しづらい。つまり、自転車弄りの点では面白みに欠けてしまうのだ。
SUITTO2のカスタマイズをするなら、見た目や快適性のパーツを取り付けるということになる。私は前カゴを取り付け、ペダルを交換した。前カゴは実用性を重視して、ペダルは見た目を重視した。グリップやサドルを変えたり、おしゃれなドロヨケをつけたりするのもいいかもしれない。SUITTO2の特徴を生かしたカスタムをすれば、価値が高まって愛着が増すはずだ。
■満足できるかどうかは目的・用途による
GIANT SUITTO 2は、普段使いや通勤・通学において、軽快車よりも遥かに高い性能を発揮する。通学程度の距離なら、かなり快適に走れるのは間違いない。だが、快適性に性能を割り振っている反面、機敏な動きは苦手だ。スポーティーな走行の楽しさに目覚めたら、いずれSUITTO 2では物足りなくなってくるだろう。また、弄ろうにも性能向上のためのカスタムがしにくいのも残念な点だ。だから、スポーツバイクの最初の1台としてはおおすすめできない。
SUITTO 2で満足できるかどうかは、自転車に何を求めているかにもよる。私のように長年運動してきた人間には物足りないが、スピードや性能を求めない人、つまり軽快車と比較する人にはとても満足できる自転車だと思う。私はSEEKとFIXERがあるので、この2台にない魅力をSUITTO 2に感じるし、私の家族は軽快車より軽くてとても喜んでいる。軽快車と同じような用途・目的で快適に走りたい人にはおすすめだ。
価格評価→★★★★★ (普段使いの快適さを考えるとコスパは高い)
評 価→★★★★☆ (機敏さはないが快適。劣化しやすいパーツがあるのは残念)
<オプション>
年 式→2011年
カタログ重量→12.7kg (1ペア)