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[ROAD] LOOK 586 UD


 
momochi_gyugund  2013-4-27 22:00
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[ROAD] LOOK 586 UD

購入価格 ¥フレームセット210000+ULTEGRA約100000+ハンドル・ステム約20000
それ以外のパーツはRNC7から移植

馬鹿野郎!
どいつもこいつも「アガリの一台」とか「究極の素材」とか安易に決めつけやがって!
それくらいしか言うことがない奴らは一輪車でも三角木馬でも好きなものに乗っていればいいんだ!
どうやらここは俺が、素材や重量や剛性だけが自転車の決定的性能ではないことを語らなければならないようだな・・・

あれは桜も見納めかというある春の日の夜のことだった。
待ちに待った愛車が組み上がったとの一報を受けた俺は、5時の退勤時刻になると帰心矢の如しの勢いでショップに向かった。
初乗りが夜、というシチュエーションは避けたかったので自動車で赴き、車載して帰ってくる運びであった。
ショップに入ると、LOOK 586 UD はもう俺を待っていた。

 

俺「ガハハハハハ!思った通りの美しさだ!店長、重さをはかってくれ!」

店長「わかりました」

ギュイィィィーーーン!電子ばかりの目盛りが勢いよく上がっていき、「7.7kg」を指すとおもむろに止まった。

店長「サドルバッグ外したら7.5kg切りそうですね!外しましょうか?」

その時だった。
期待を裏切らない愛車の軽量さに下がっていた俺の目じりが怒髪天を突くように瞬時につり上がり、鋭い眼光一閃、店長に剛腕パンチが炸裂した。

俺「馬鹿野郎!いつも付けて走る物を、計量のためだけに外すとは何事だ!!」

店長はその一言で俺の言わんとすることのすべてを悟り、覚醒した。
ふたりは熱く抱擁を交わし、居合わせた客たちは感動の涙にむせぶのだった。

そして翌朝。
俺は納車されたばかりのLOOK 586 UDを駆って、白糸のふもとにいた。

俺は地元ではつとに知られた存在になっており、とくにこの峠では通り名で呼ばれるようになっていた。
ひとつめのカーブで先行を許したら、ふたつめのカーブの先にはもういない。
あたかも魔法のように消えてしまう様を、人はおそれをこめて「白糸のイリュージョン」と呼ぶのだった。

しかし1.9kgも軽いLOOK586UDにまたがったからにはイリュージョンもまだぬるい。
追おうという気持ちすら砕いてしまうような、圧倒的のぼりをするようでなければ―――!

デヤァァァー!

俺の気合が南からの吹き下ろしを切り裂いて山間にこだまする。
まだ乗り慣れていないせいか、ダンシングでは力を路面に伝えきっていない違和感がある。
また、前荷重になり大きくバイクを振ってダンシング加速をしようとすると、リアブレーキのワイヤーに右ひざが当たってしまう。
技をひとつ封印されてしまうのはつらい。
この点はいずれ店員さんと相談して解決したいところだ。

しかし、シッティングがいい。向かい風にもかかわらず、いつもと同じギアで足が回る!
俺が抜いた奴は誰も追ってはこない。

俺「ガハハハハハ!!どうやら俺が速すぎて、うしろにはりつくことさえかなわぬようだな!!」

山頂につくと、俺はストップウォッチに目をやった。
24分15。
ベストタイムには約1分届かなかったが、今日の向かい風を考えたら仕方がないだろう。
それより、さっきから気になっていることがあった。
走っている自転車が、どれもこれもやけに重装備だし、多くの人が反射材付きのベストを着ている。
チームジャージにしては妙だな・・・
俺は、今しがた山頂にたどり着いたひとりの初老の男に声をかけた。

俺「こんにちは。今日は何かのイベントですか?」

謎の初老の男「ブルベですよ。今から熊本に向かうんです」

ブルベ、だと・・・?

俺はこの白糸を、ヒルクライムを戦場にしてきた。
しかしこの男は違う。通過点、そう、まさに通過点に過ぎないのだ。
さっきから誰も俺を追ってこないのも合点がいった。
そもそも俺を見ていない―――いや、彼らの目線はこの山頂ですらなく、その向こうの果てしなく遠くにあったのだから。
俺は、急に今までの自分がちっぽけなものに感じられる激しい感覚に揺さぶられた。
あまりの衝撃に俺の意識は朦朧となり、いつしか遠ざかってゆく記憶が俺に封印された過去の幻影を見せていた。

あれは学生時代、俺がまだ自転車と出会う前のことだ。
当時俺は野球部に所属し、美人マネージャーのゆきえさんに片思いをしていた。
そこに、ゆきえさんを狙っていると噂されるもうひとりの男が現れた。
自他共に認めるチャラ男・きよひこ。
俺は彼に決闘を申し込むのだった。

俺「馬鹿野郎!そんなに言うのならどっちがゆきえさんにふさわしいか勝負しろ!
  ゆきえさんにライトスタンドに立ってもらい、ホームベースから思いをしたためたボールを投げ込む。
  そして、ゆきえさんがボールを拾った方が告白する権利を得る、というのはどうだ!」

きよひこ「ふっ、キミがそれでいいならいいだろう。」

しかし、あとで冷静になって、俺は後悔した。
きよひこはライトのレギュラーで、遠投の最高記録は120m。
高校3年生で肩を故障したが、一時はプロも注目した逸材なのだ。
それに対して俺の遠投は80mていど。
たとえ追い風に乗ったとしても、今のままではゆきえさんに思いを届ける前に、
干隈グラウンド名物「グリーンモンスター」の高い壁に跳ね返されるのがオチだろう。
その日から俺の遠投猛特訓が始まったがなかなか思うようにはいかず、窮地に立たされた俺はしんいちろう先生の門をたたいた。

俺「しんいちろう先生!俺はなんとしても遠投90mを突破しなければならないんです!どうしたらいいですか!?」

しんいちろう先生「ガハハハハハ!簡単だつよし。100m投げればいいいんだよ!」

俺「!?」

しんいちろう先生が言うには、人間の脳には目標が近付くと「これくらいでいいや」と考える部分があるらしい。
多くの凡人があと一歩のところで目標を達成できなかったり、いつも最後に時間が足りなくなったりするのはこれが原因なのだ。
それを克服するためには、実際のゴールよりも少し先に目標を設定するといいのだそうだ。
事実、あの水泳の北島選手も、この脳科学の見地に立ったトレーニングで見事金メダルを射止めたのだという。

俺は
「いつかはカーボンに乗りたい」「アルミ、スチール、ときたら次はカーボン」「カーボンに乗ったら俺はもっと速くなるはず」
と考えていた。
しかしそれは安易、いや、的外れであった。
カーボンだろうがチタンだろうが終着点というものはなく、最強も最高もない。
それは手段、いわば「通過点」なのであって、目標にするものではないのだ。
10を目標にするものは8か9までしか到達できない。
自転車乗りたるもの、目に見えているものだけを目標にしているようではまだまだだ。
さもなくば、俺は分不相応に高級なものを手にしてただ堕落してしまうであろうことを深く肝に銘じたのである。

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【要点をまとめます】
4月12日納車、その後走行距離500kmほど、ホームコースにしている「白糸TT」は6回。
レビューはもっと乗りこんでから、という思いもありますが、
これまでの経験年数や走行距離などを考えると、今後私の走りのスタイルが大きく変わることは考えにくいことと、
RNC7のときも第一印象がその後大きくは変わらなかったことを鑑み、感覚が熱いうちのファーストインプレッションを述べることにします。

最初のインプレは「車載がしやすい」でした。
走行中に、立てておいたハンドルが切れて「ゴトン」となることがありません。
車重が軽いと、このような積み方をしたときにハンドルが切れにくいのでしょうか。
後部座席でゴトゴト愛車が動くのはあまり精神衛生上よろしくないので、これはうれしい点です。

さて肝心の走行性能。
比較対象は主にRNC7。
サドル、シートポスト、ホイール、タイヤ、チューブは全く同じものを使っています。
ハンドル・ステムはデダのZERO100。
numero_neroさんのCannondale CAAD10 レビューがとてもわかりやすかったので、形式をまねさせていただきましたm(_ _)m
左の数字が586UD、右の数字がRNC7です。
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【乗り心地】9/10
衝撃吸収はいいです。ロングライドもいけます。
RNC7比でしなる感じ、踏み込んだ時に足を優しく受け止めてくれる感じが希薄なことから9としました。
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【ハンドリング】10/10
素直だと思います。
コーナーリング、下ハンダンシング、手放しなど、初乗りでも違和感なく行うことができました。
あと、
「LOOKはのぼりのモガきなど、いかなる状況でも前輪が前を向こうとする」といったインプレを読んだことがありますが、確かにそれは感じます。
フォークに「LOOK」の文字があり、そのためフォークが走行中にウネウネとたえず微調整をしているのが見てわかるだけに、特に感じやすいのかも。
この感覚はRNC7にも同じレベルであり、CAAD8はややそれが薄く、AIRONEが最も悪く感覚と実際の前輪の向きにギャップがあり思わぬ抵抗を感じてしまうことも。
LOOKの専売特許というより優れた剛性バランスとよく調整されたヘッドパーツがもたらす感覚なのかもしれません。
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【平地巡航速度】9/10
平地、無風、単独3時間で28~30km/hていどの足です。
甲乙つけ難し。というか驚くべきRNC7の善戦ぶり。
シッティングのみならLOOK 586 UD の僅差勝ち、
ダンシングを含めると、RNC7に軍配。といったところ。
サイコン速度で比較すると、誤差の範囲程度ですがやや遅くなりました。
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【平地スプリント】12/10
平地、無風、単独、さら足で最高速度45km/hくらいの足。
スプリントと言えない速度で申し訳ない。
LOOK 586 UD の勝ち。
最高速度自体はほぼ同じなのですが、そこへの到達が速い。
しなっている感覚はなく、ロスなく踏力を受け止めてくれる感じです。
まだまだフレームの限界は見えません。
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【直線の下り】13/10
LOOK 586 UD の圧勝。
フォークブルブル事件以来、下りの横風や路面のギャップには非常に神経質になっているのですが、安定感が段違いです。
フォーク、ヘッドまわりがガッシリと速度や荷重を受け止めてくれている感じがします。
私は「RNC7の下りは▼に乗っている感じで、CAAD8の下りは▲に乗っている感じ」と表現するのですが、
CAAD8の▲の安定感はそのままに軽くなった、という不思議な感覚を味わいました。
しかし高速自体が怖いので、フォークがブルブルしなくてもブレーキで減速してしまいます。これはただの怖がりですね。
まぁ、実際に速度を出すかどうかは別として、安全マージンが増えたということで喜んでいます。
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【淡々とのぼる】12/10
いいです。
今まで、必死で維持していたペースを、少し余力を残してこなしていける感じです。
ただ、その余力を、即「ギアもう一枚上げろ」「ケイデンスをあと30上げろ」につなげられるか、というと―――できるとは限らないな、と思いました。
スプリントで「最高速度自体はほぼ同じなのですが、そこへの到達が速い」と書いたのですが、それと似た感覚があります。
すなわち、最高速度は乗り手に依存していて、自転車を変えることでそれを比較的ラクに出したり、素早く出したりできるようにはなっても、必ずしも最高速度自体が上がるわけではない、と。
フレームの、自転車の違いって、そういうものなのかもしれないな、と思います。

・・・あれ?その理屈だと、重い自転車でトレーニングが最強、ってことになってしまう?
慣れによって、「ギアもう一枚上げろ」「ケイデンスをあと30上げろ」を引き出せることに期待です。

ただ、いまいちダンシングに好感触が持てません。
ダンシングに限定するとRNC7の方が速度を乗せられます。
慣れの問題でしょうか。今後リズムがつかめることに期待です。

最後に、ホームコースである白糸TTのタイム比較。
距離:7.5km 標高差:454m 平均斜度:6.1%。
コースレコードは2012年10月7日、23分27秒。RNC7で。
586UD・・・今年4月13日からの6回の平均「25分46秒」、最高タイム「24分15秒」
RNC7・・・今年3月の17回の平均「26分59秒」、最高タイム「25分30秒」
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【のぼりのアタック、激坂】13/10

上りで高出力が求められる場面。
このフレームが一番輝くのがここ。
いつもの峠TTの最後の区間は、距離800m、標高差80mほどで、ここを私は限界の近い足に鞭打って4分前後でのぼっていました。
4分が好調のバロメータで、4分を切れるのはコースレコードを狙っている時、といったところだったのですが、6回中2回で4分を切りました。
傾斜がきついところほど、軽量化が生きる。
当然と言えば当然ですね。

今まで好タイムを狙うために「序盤の緩斜面でタイムを稼ぎつつ、それでも足を残し、最後の激坂を駆け抜ける」という相反する2つのことをやってのける必要があったのですが、これで新たな地平が開けるかもしれません。
すなわち
「序盤の緩斜面で足を使っていいから大幅にタイムを稼ぎ、さらに苦しさに耐えて最後の激坂でもタイムを削る(フレーム軽くなったんだからできるよね?)」
です。

さらに激坂。
LOOK586UDで、愛宕山を南から、通称「裏愛宕」にのぼってみました。
この坂は300m、標高差38m、時間にして1分ほどの、短いながらも最も傾斜のキツいところは20%ほどもあるのではないかと思われる激坂です。
時間も短くて済むため、これはまさに「アタック」というか「筋トレ」です。
私も慣れるまでは、ここでモガくとウイリーしそうになったものです。
ここの坂を、明らかにRNC7とは違う速度域でのぼることができます。
俺は強くなった!と気分が高揚する、のですが。

ラスト10秒ほどで、タレるんです。
これはRNC7では味わったことのない感覚でした。
軽量・高剛性フレーム(586 UDは一般的に「高剛性」とは評されていませんが、RNC7と比較するとかなり剛性が増したように感じられます)が
高出力を引き出したが、あくまでエンジン性能は変わっていないので、途中で力を使い果たした、ということでしょう。
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【総評】
好みのルックスと、ヒルクライムのタイム向上とダウンヒルの安定感を求めての新車購入だったことを考えると、期待を裏切らなかったと言える。
今後精進して、もっとこの自転車の性能を引き出したい。
それとともに、RNC7のよさも再認識した次第である。
踏み切ってしまって剛性不足のネガが出る直前の、ギリギリの剛性のフレームのよさと言うべきか。
・・・あれ、それって、4年前、店長さんが私にすすめた「ANCHOR RFX 8」の選択肢はベストだったってこと・・・?

価格評価→★★★☆☆
評   価→★★★★☆

実測重量 7.7kg

   

   
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