「フロントタイヤで跳ね上げた異物をリアタイヤが踏みつける。だからリアタイヤの方がパンク頻度が高いのさ」
などという、尤もらしい話を聞いたことはありませんか?真偽のほどは、どうなのでしょう。世の中、胡散臭い伝説が意外と信じられていたり、ありもしない効能を謳う製品も散見されたりするのですが、パンクの真相は如何に?
それじゃ、自分の自転車はどうなのか?ということでちょっと調べてみました。
現在、シーラントを使っているためか、幸いにもパンク頻度がずいぶん減ったような気がしますが、シーラント使用開始以前のパンクのデータを眺めてみます。
■■■ 基礎データ ■■■
以下の通りです。
車両 ・ ・ ・ スチールロード2台
タイヤ ・ ・ ・ 21C廉価チューブラ(ヴィットリアのラリー、ストラーダ、F1などなど)
空気圧 ・ ・ ・ 6~8気圧
用途 ・ ・ ・ 主に通勤
乗り方 ・ ・ ・ 雨風全般お構いなし/凡脚
道路 ・ ・ ・ 地方の県道で交通量多
道路管理状況 ・ ・ ・結構異物が転がっており、良好とは言い難い
路肩清掃車の出動頻度は、数年前ですと年4回だったのですが、財政難のおり、減っているかもしれません。いずれにしても、都心の主要道路のように、頻繁に路肩清掃車が出動するということはないので、事故で飛散したガラスなどは、長期滞留し、路肩側に集まっていると思われます。私の非常に大雑把で根拠希薄な感想では、都心の幹線道路の2倍程度、田舎の農道の3倍程度のパンク頻度ではないか?という印象です。
■■■ 前後タイヤのパンク比率 ■■■
前後タイヤのパンク比率ですが、Fig.1に示す通り、ロードバイク2台の合計で、フロントが19.7%、リアが80.3%となりました。母数は61+15=76です。あ、そうです。たった76回しかパンクしていないのですから、3桁の数字なんて贅沢です。せいぜい、フロントが2割、リアが8割、という言い方が適切です。
FIG.1 前後タイヤそれぞれのパンク回数
というわけで、ごく大雑把に言うと、パンク頻度の前後比は2対8程度である、と言ってもよさそうです。10回のパンクでリアが8回ということになると、2対8程度、と言ってしまうことには躊躇しますが。1000回位パンクすれば、もう少し確かなことが言えることでしょう(笑)。
フロントで跳ねた異物をリアで踏みつけてしまうのか、それともリア荷重が大きく、しかもトラクションホイールだからなのか?何だかよくわかりませんが、両方が関与しているような気がします。
■■■ パンク間隔 ■■■
パンクしてから次にパンクするまでに走る距離がどんな分布になるのか、見てみます。2台のロードバイクそれぞれのフロントとリヤに分けて考えます。つまり、フロントがパンクしてから次にフロントがパンクするまでの距離と、同じくリアがパンクしてから次にリアがパンクするまでの距離というのを、ロードAとロードBに関して整理し、その後、フロントとリアをまとめてみます。Fig.2がフロント、Fig.3がリアです。
FIG.2 前タイヤのパンクのヒストグラム
FIG.3 後タイヤのパンクのヒストグラム
フロントは12000㎞以上パンクしないという事例もありますが、もちろん、途中でタイヤがすり減って、交換しています。なお、フロントは16回のパンク回数なので4000㎞毎、リアは61回なので細かく区切って400㎞毎のヒストグラムにしています。
統計に強い方なら、母数が十分あるリアのヒストグラム見て、これがχ(カイ)2乗分布のような形をしていることに気付くかと思いますが、製品が故障するときの確率密度曲線としてよく見られる典型的な形をしています。パンクは故障ではなく、異物を踏んだ、などの事故がほとんどですが、偶々、故障に見られる確率曲線に似た形になりました。(ただし、摩耗したタイヤはパンクしなくても新品に交換しているので、そこも、一般の故障とは事情が異なります)
ことのついでに、このリアタイヤのヒストグラムを積分してみます。ヒストグラムではわかりやすくするために刻みが400㎞でしたが、今度は50㎞にして積分してみます。パンクの数を数え上げるだけなので、最終値はもちろん、リアタイヤがパンクした回数である61になるのですが、このときの距離は6000㎞弱。ここまで走れば99%はパンクしているだろう、と勝手に仮定して、積分の最終値をパンク確率99%に規格化したものをFig.4に示します。
FIG4 後タイヤのパンクの累積分布
800㎞までに50%のタイヤがパンクして、1000㎞以上で傾きが緩くなって多少パンクしにくくなる、という、まさに初期故障と劣化故障という、製品故障と同じような風景が垣間見えてしまいました。
あ゙あ゙っ、余計なことを言ってしまいそうだ。
ま、いいか。
というわけで、如何でしたか?(エッ??)
■■■ まとめ ■■■
① ロードバイクの場合、リアタイヤはフロントよりも明らかにパンクしやすいようで、統計的にも有意と言えそうだ
② パンクの確率密度曲線は、典型的な製品故障のそれに似ているようだ
以上です。
評 価→★★★★★ 予想以上に面白かった
(※これをネタに論文を書きたいというマサカ!の方には、生データをお渡しします)