Type J と Type Y
紀元前3万年頃 - 地質学で言うところの更新世後期 - 、マンモスとヘラジカがシベリアから樺太を経由し、北海道へとやってきた。一方、オオツノジカとナウマンゾウは、朝鮮半島から九州地方に上陸した後、日本列島各地で生息していたとされている。そして、これらの大型動物を追って、アジア大陸の南部から「古モンゴロイド」と呼ばれる南方アジア人が日本にやってきたのだった。沿海州から、朝鮮半島から、そして琉球から - 主に三つのルートから、彼らは日本にやってきたのである。
この「古モンゴロイド」は低身長で、顔が幅広く高さが低く(低顔)、凹凸に富んでいたとされる。骨や歯の形態を研究する形質人類学からは、日本人の基層はこの「古モンゴロイド」なのだという。俗にいう「縄文人」がこれに当たる。
さて、アジア大陸南部の「古モンゴロイド」の中には、紀元前2万年頃、なぜか寒いシベリア方面に移動した者たちがあったらしい。彼らは、アジア大陸北部で極端な寒冷に適応を遂げた。一般に高身長で面長な彼らは、体温を保持するために胴長になり、かつ、体温を逃さないよう、手足が短くなっていった(そうなることで皮膚面積が小さくなる)。寒冷地で水分の多い眼球が凍ってしまわないように、まぶたは厚く一重になった。顔面の凹凸は少ない。彼らは「新モンゴロイド」と呼ばれている。
そして紀元前500年頃、この「新モンゴロイド」がアジア大陸を南下し、朝鮮半島を経由して九州地方に上陸した。彼らは稲作をはじめとした技術革新を日本列島にもたらした。俗にいう「弥生人」である。
「弥生人」と「縄文人」はその後、混血を重ねてゆき、現代の「日本人」になったとされる。遺伝学的な調査によると、「日本人」は「アイヌ・沖縄の人」と「それ以外の人」から成立しているらしいのだが、それも納得が行く。本州では「弥生人」と「縄文人」の混血が進み、北海道や沖縄は地理的に周縁であったので、彼らは「縄文人」の特徴を比較的多く保持することになったわけである。
つまり、非常におおざっぱに言うと、「日本人」とは「縄文人」と「弥生人」というかなり特徴の異なる二つの人種集団が混血してできているのである。例えていうと、「日本人」には「小沢一郎みたいな感じの人」と「布袋寅泰っぽい人」の二種類がいるということだ(ここで突っ込みたい人は多数いると思うが、話が面倒になるので、そういうことにしておく)。
では本題に入ろう。
ヘルメットのサイズに、S / M / Lというのがある。この「小中大」という単純なシステムが日本市場で通用しないことは、もう火を見るより明らかであろう。大きいとか、中くらいとか、小さいとか、そういう問題ではないのである。そもそも「縄文人(=縄文人系弥生人=古モンゴロイド)と、「弥生人(=渡来人系弥生人=新モンゴロイド)」とでは、頭蓋骨の形状が違うのである。縄文人の頭蓋のほうが横にせり出しており、縦に短いのだ。
つまり、SとかMとかLという同一象限での相対的な大小以前に、日本ではまず「縄文フィット」なのか、「弥生フィット」なのかをはっきりさせる必要があるのだ。「Giro Atmos 51-55cm(Medium)」では、日本人には選びにくいのである。そこで、日本向け商品には「縄文フィット」を意味する「TYPE J」と「弥生フィット」を意味する「TYPE Y」の導入を、ヘルメットメーカー各社には切望したい。カタログにも、「Giro Atmos Type J 51-55cm(Medium)」とか「Catlike Whisper Plus Type Y Large (59-61cm)」などという記述があると、我々もヘルメットをぐっと選びやすくなる。
小沢一郎と布袋寅泰が同じ形状のヘルメットを被れるわけがなかろう。
サングラスにしても同様である。Oakleyには「Asian Fit」なる親切なモデルが、一応存在はする。しかし、もうお気づきのことと思うが、我々日本人は「アジア人」という言葉で一括りに出来るほど単純な民族ではないのである。単一民族ではないのである。最低でも「古モンゴロイド」と「新モンゴロイド」の混成なのである。「新モンゴロイド」の特徴を色濃く有する日本人は眼窩が丸く、顔面の凹凸が少ないのでサングラスは否応なくずり落ちてくる傾向がある。四角い眼窩と突出した眉間を持つ「古モンゴロイド」系の人にぴったりくるサングラスは、必ずしも「新モンゴロイド」系日本人にフィットするとは限らない。
よって、やはり「Oakley Jawbone Type J」や「Oakley Juliet Type Y」といったふうに二つのフィットを各モデルで出してほしいところである。
ウェアも同様である。S / M / L / XL で片付けると非常に困ったことになる。「新モンゴロイド」の特徴を色濃く有する人々向けには、やはり「弥生フィット」が必要になるはずである。つまり、Mサイズであっても腕の部分だけSくらい短いジャージとか、胴長で手足の短い日本人を考慮したサイジングを用意すべきである。そして先祖が寒冷地適応をしなかったせいで、体温を放散しやすい体質になっている(寒さに弱い)「古モンゴロイド」系日本人向けには、寒い冬やダウンヒル走行で身体を冷やして風邪などひいてしまわぬよう、あたたかい「縄文レイヤー」をジャージ前面に縫い付けておくべきである(同様に、「新モンゴロイド」向けの夏用ジャージにはより放熱効率に優れた「弥生メッシュ」を導入してほしい)。
フレームも同様である。まずトップチューブ長でフレームを選ぶのが基本であるとは言え、シートチューブ長は脚の長いヨーロッパ人向けになってはいないか。まずこの点からやりなおさずに、我々は適切なポジションやフォームについて語ることができるのか。
メーカー各社には是非とも様々な分野で「TYPE J」と「TYPE Y」の導入を検討してもらいたい。勿論、実際には縄文型と弥生型の両方の特徴を兼ね備えたハイブリッドな人々のための「TYPE J/Yコンパチブルモデル」の設定も必要になるだろう。ウェアを例にとると、J / Y / JY の三つのフィットに、それぞれ XS / S / M / L / XL という四つのサイズが、最低でも必要だろうから、一製品につき15種類のバリエーションが必要になる。
一見、かなりコストがかかりそうに思えるかもしれないが、一度設定してしまえば今後一万年くらいは通用する新しいサイジングシステムになると思うので、いずれペイするだろう。メーカー各社はぜひ挑戦してほしい。
評 価→★★★☆☆ 形状に貴賤なし <オプション> 年 式→B.C 30000〜(縄文タイプ)B.C 20000〜(弥生タイプ)
参考文献: 「改訂版 詳説 日本史研究」山川出版社 「詳説 日本史図録 第3版」山川出版社 「〜縄文伝説〜 ツールを制した初のアジア人 ユキヤ・アラシロ」CBN出版(2013年刊)
|