購入価格: ¥7,400くらい
標準価格: ¥8,261 (税込)
『3年以上快適に使用。ユーザー自身でグリスアップでき、メンテナンス性も高い』
■ 今回は耐久性やメンテナンスをメインに投稿
私はGIANT FIXER Rというシングルスピードに乗っている。FIXERはトゥークリップ&ストラップという仕様だが、私には瞬時に着脱できるSPDペダルの方が使いやすいと感じた。私がFIXERのためにに選んだペダルは、SHIMANO PD-A600というものだ。グレードはULTEGRA相当で、片面のみをSPDシステムにすることで軽量化し、しかも歴代最軽量のSPDペダルになっている。レビューは以前も投稿したが、今回の投稿は耐久性やメンテナンスをメインにし、その他の部分はもう少し深く掘り下げて書くことにした。
SHIMANO PD-A600。ULTEGRAグレードの歴代最軽量ペダルだ
■ 流線型のデザインとアイスグレーが高級感を醸し出す
私はデザインに惹かれてPD-A600を購入した。流線型のデザインはロードバイクと相性が良さそうだが、GIANT FIXER Rのようなドロップハンドルのシングルスピードにもぴったりだ。コンパクトなサイズも見た目の良さに貢献している。取り付けは8mmアーレンキーを用いるタイプで、軸がスマートに見えるもの好印象だ。
また、表面処理のアイスグレーは高級感を醸し出し、ブラックのクランクにも意外によく似合う。ただ、ブラックで統一したFIXERのコンポーネントの中ではこのペダルが浮いているように感じるのも正直なところだ。SPDペダルはブラックの方が選択肢が多いが、私はカラーよりも形状を優先してこのペダルを選んでいる。
PD-A600を取り付けたGIANT FIXER R (左)
アイスグレーは青みがかったシルバーといった感じ。シマノのサイトではブラックとなっているが… (右)
■ スプリングテンションは高め
PD-A600はビンディングが後ろを向き、ケージの広さも相まって、ペダルを見ないでもスムーズにステップインできる。だが、スプリングテンションがPD-A530、PD-T780などの他のSPDペダルよりも高い。最弱のスプリングテンションでもステップイン・アウトに割と大きな力が必要だ。開始直後は特にスプリングテンションが高く、長距離・長時間の走行では体力的・精神的な負担になりやすい。
ショップでCLICK’Rを試した限りでは、CLICK’RからPD-A600に取り替えた場合は、スプリングテンションの高さに戸惑うかもしれない。私は3つ目のSPDペダルだったのであまり問題なく使えたが、あまり初心者向けのスプリングテンションではないと思う。シマノはもう少し使いやすくするために、最弱のスプリングテンションをもう少し下げるべきだった。
3年以上使用した今でもスプリングテンションは高め
■ 非常に軽い回転
PD-A600の回転は購入当初から軽く滑らかで、流石ULTEGRAグレードであると感じさせる。滑らかだがグリスの粘度が効いているPD-T780とは対照的だ。ベアリングなどの摩耗が進んで当たりが出ると、回転はますます軽いものになる。回転の軽さ、回転抵抗の少なさを求めるなら、このペダルは良い選択になると思う。
■ 広い踏面がパワーロスを防ぐ
PD-A600は踏面が広くて安定感がある。踏面はPD-T780より広く、PD-A530よりもずっと広い。特にPD-A530と比べると、面で踏んでいるような感覚が強い。広い踏面のおかげで、加重の際に足が前後左右にブレにくくなり、脚力がロスなく伝わりやすい。これはPD-A530と比べると顕著だ。展開図を見る限り、軸(Pedal Axle Assembly)はPD-T780と同一だが、踏面の広さや形状によってフィーリングは随分違ってくる。
広い踏面が特長。ダンシングでもブレにくく、脚力をロスなく伝える
■ 3年以上快適に使用
PD-A600を3年以上使用し、ペダル本体は傷だらけになってしまったが、動作は今でも良好だ。前述した通り、や回転は軽くなっyrますます使いやすくなったようにも感じる。ゴムシールからグリスが漏れることもないし、定期的に注油していればパーツに錆も生じない。私は1回の走行距離が短いが、それでも3年以上問題なく使えたので、耐久性はそれなりに高いと言えそうだ。
3年以上使うとさすがに傷だらけだ
■ PD-A600のグリスアップに挑戦
私はPD-A600を一度もグリスアップしたことがない。快適に使えているので先延ばしにしてきたが、これ以上このまま使うのは気分が悪いので、グリスアップにチャレンジすることにした。方法は既にインターネットのブログ記事などで多く紹介されている。以下の方法もそれらを参考にしたものだが、私なりに作業中に気づいたことやスムーズに作業するためのコツを付け加えて書いてみた。
①軸の取り外し
まず、Pedal Axle Assembly(軸)を引き抜く。ペダル本体を手で持ち、軸のロックボルトにモンキースパナや17mmのスパナをかけて回す。左ペダルは正ネジ、右ペダルは逆ネジになっているので注意。
モンキースパナや17mmのレンチで簡単に外すことができる (左)
取り外した軸のグリスが黒く汚れている (右)
②軸の分解
軸先端のロックナット、玉押しナットを外したら、残りのパーツを軸から順番に引き抜いていく。このときベアリングを失くさないように注意する。尚、ロックナットにはねじ緩み止め剤が塗布されているので、ロックナットの角を舐めないように注意。ここは柄の長いモンキースパナと軸の六角穴に8mmアーレンキーを挿入して取り外した方が力をかけやすい。
ロックナットはねじ緩み止め剤が付いているので注意 (左)
軸からパーツを順番に引き抜いていく。ゴムシールと樹脂パーツの向きを覚えておくこと (右) ※グリス拭き取り後の写真
③各パーツのクリーニング
各パーツの汚れたグリスを拭き取り、パーツクリーナーなどで洗浄する。グリスの拭き取りには、マイクロファイバークロスが便利。ペダル本体の汚れたグリスは綿棒などで掻き出す。ベアリングの洗浄には、空き瓶と茶漉しがあれば作業しやすい。また、ロックナットに付いたねじ緩め止め剤は除去しておいた方が、玉当たり調整がスムーズに行える。ネジ緩み止め剤は、溶剤に浸しておけば簡単に剥がれる。
汚れたグリスを拭き取り、パーツクリーナーなどで洗浄する (左・中央)
ロックナットにねじ緩み止め剤が付いたままでは、薄型スパナで回しにくい(右)
④軸の組み立て、及び、グリスアップ
軸にグリスを塗り、ゴムカバー、ロックボルト、樹脂パーツの順に挿入する。ロックボルト内側にもグリスを塗った方が良いと思うが、多く塗ると軸を取り付けたときにゴムカバーからグリスが溢れたり、カバーが外れたりするので注意。また、ゴムカバーと樹脂パーツには向きがあるので、これも注意が必要だ。
次に軸先端の筒状のパーツにグリスを塗り、ピンセットでベアリングを乗せ、その上に玉押しナットを乗せる。この状態のまま筒状のパーツを軸に取り付けるが、ベアリングがポロポロ落ちやすいので面倒な作業だ。このとき、筒状のパーツと玉押しナットを指で挟んで押さえたまま、玉押しナットを締め付ければベアリングが落ちにくい。残りのベアリングは、軸を下に向けた状態で筒状のパーツに挿入すれば簡単だ。
グリスガンとピンセットがあれば便利 (左)
玉押しナットと筒状のパーツを指で押さえながら取り付ければスムーズ (中央)
残りのベアリングは軸を下に向けると入れやすい。筒状のパーツが動いて先に挿入したベアリングが落ちないように注意 (右)
⑤玉当たり調整
軸先端はダブルナットになっているので、7mmと10mmの薄型スパナで玉当たり調整ができる。玉当たり調整の方法はカップ&コーン式のハブと同様だが、ロックナットを締める際に軸が共回りして調整しにくい。そこで私は机に8mmアーレンキーをガムテープで取り付け、軸の六角穴に差し込んで作業した。バイス(万力)やアクスルバイスがあれば尚良い。
軸が共回りしなくなると作業効率は格段に上がり、素早く狙い通りの回転にすることができるようになる。私はガタが出ないように、軽く回りつつややゴリゴリした感じが残るように調整した。ハブよりもピンポイントな調整を強いられるが、ペダルの軸を固定すれば難しくはない。
軸が回転しないように固定すれば作業効率が大幅にアップする
⑥軸の取り付けとチェック
ペダル本体を手で持ち、軸をモンキースパナや17mmのスパナをかけて締め付ける。その後、ペダルの空転後に向きが毎回同じになるか、ガタや異音はないかをチェックする。手で確認するだけでなく、実際にペダルに取り付けるとチェックしやすい。気になる点があれば、⑤玉当たり調整をやり直す。
グリスアップ後はしっかりチェックする
グリスアップ後のPD-A600は快適そのもの。グリスの粘度が効いた滑らかさがとても気持ちが良い。作業直後はグリスの抵抗を感じるが、しばらくすれば以前のような回転の軽さが出てくる。初めての作業なので間違っている部分もあるかもしれないが、無事グリスアップが終わってひと安心。PD-A600は今後も活躍してくれることだろう。
■ ビンディングも分解可能
私はペダルの塗装を検討するために、PD-A600のビンディングも分解したことがある。ビンディングの分解は容易だが、組み立て方は難解だった。先にビンディング後部を取り付け、金属の棒でビンディング後部をバネ力に逆らって起こしながら、ビンディング前部を取り付けなければならない。この組み立て方に気づくまでに1時間半くらいかかった。ビンディングはオイルを挿しておけばメンテナンスできるので、分解するメリットはあまり感じられない。スムーズに稼働するように注油しておけば十分だと思う。
他のSPDペダルも同様に分解可能なはずだが、異常がなければここまでする必要はない
■ そろそろ後継モデルが欲しいところ
滑らかで非常に軽い回転、広い踏面によるパワー伝達の良さ、耐久性、メンテナンス性など、PD-A600はかなり満足感の高いペダルだった。ただ、もうそろそろシマノは後継のSPDペダルを販売する時期なのではないだろうか。ビンディングのスプリングテンションは高めだし、アイスグレーも現行のシマノのコンポーネントに合わせやすいとは言い難い。現在、私は使い勝手とデザインを両立するペダルを探しているが、未だに見つかっていない。しばらくは引き続きPD-A600を楽しむつもりだ。
価格評価→★★★★☆ (値段に見合った性能。長期使えることを考えればコスパは高いと言える)
評 価→★★★★☆ (スプリングテンションの高さと現行のコンポ似合わないカラーが残念)
<オプション>
年 式→ ー
カタログ重量→290g (1ペア)