購入価格 ¥4,414~¥6,222
このアダプターに興味と関心を引かれてるということは、おそらく、出たんですよね、異音。
ようこそこちら側へ ― BB30 系ユーザー同士仲良くしましょうや(肩をぽんぽんとたたきながら)
ロードバイクにおける異音ほど切ないものはありません。道路をするする走るはずの、スマートな車体からギッコンバッタンガリガリゴリゴリ、カッチンカッチンキィキィカンカンなどの音が出るだけでも怖気がします。ナンバーテン(と書いて最悪と読む)であります。
異音に対して BB を疑うのは初心者の極みなんて論調もありますが、BB30 系ユーザーに関してはその姿勢で正解だと思っています。
そんな我々のために KCNC が開発してくれたのがこのアダプター。他にも TOKEN や SUGINO 、本家 FSA からも隊作品がいろいろ出ていますが、"異音が出てしまってから"一番手軽に手を出せるのがコイツです。なぜなら。
1) 特殊な工具は必要なし
2) 取り外し・取り付け簡単
3) お値段も「さほど」高くない
特に2番。他のアダプターはやれ圧入せよやれロックタイトを塗れ…と、つまり、フレームに対して不可逆に近いことをする羽目になりますが、このアダプターは違います。980円 くらいの BB 工具さえあればほぼ何回でも脱着することが可能です。
BB30 系の異音の原因は、
あ) 左右のベアリングが何らかの原因で平行ではなくなった
い) ベアリングそのものが逝ってしまった
の2択だと思います。このアダプターは、フレーム内部でネジが閉まる構造にすることで左右の筒を結合させ、平行を担保します。ベアリングそのものが逝ったら、アダプターを交換すればよい話です。1年に1回程度のアダプター入替で快適サイクリングがきちんと楽しめるという寸法です。
ベアリングの耐久性ですが、雨ブルベ多めで 5,000km 程度。私の場合は以下のサイクルで交換しています。
2013年9月
↓ 11ヶ月間
a) 2014年8月
↓ 10ヶ月間
b) 2015年6月
↓
2015年11月: Praxisworks コンバージョン BB へ浮気
a、b ともに交換時の異音原因はベアリングであり、アダプタそのものの緩みやゆがみと言うものではありませんでした。ベアリングを交換できさえすればもっともっと持つでしょう。
ここまでは製品のメリットを論じてきました。さて、デメリットです。2つあります。
1) クランクの回転が重い
2) 高い(Shimano の BB 交換と比して)
KCNC のベアリングは汎用品の 6805ZZ ―つまり、内径は 25mm です。対して、Shimano のホローテック II の直径は24mm であり、1mmの隙間ができてしまいます。
そのため、赤いプラスチックでできたキノコ型の「シム」をベアリングとシャフトの間に差し入れることになっています。これで隙間を埋め、かつ、ベアリング部も保護出来、安価な汎用品である 6805ZZ を使用できる。製品開発側としては素晴らしいアイディアだと思います。
が、問題はこのシムです。ベアリング部の内周と外周両方にまたがっているために、シムそのものが回転抵抗になっています。よって、クランクを左右方向に締め付けるときに玉あたりよろしく「あたり」を出さなければいけません。締めつけ過ぎれば半回転もしないくらいの渋さに、緩め過ぎれば、クランク、アダプターとフレームにダメージを与えかねません。
製品のコストダウンと言う意味では素晴らしいのですが、性能を犠牲にするのはいただけない。(試しに、シムの外周を削って内周にのみかぶさるようにしてみましたが…さほど変化はありませんでした。そしてこのシムは割れやすいので、削るのは一苦労です。)
この「あたり」の調整さえできれば、このアダプターは我々にとっての最高のソリューションになるはずです。なお、Praxisworks のコンバージョン BB に比較すると、あたりが出たとしても回転はかなり渋いと思ってください。
もう一つのデメリットは単純に価格比です。Shimano のデュラエースな BB でも3,500円程度で入る世の中なのに、こちらは 6,000円程度。…これは、BB30 系なフレームを選んでしまった我々の勉強料と思うしかないのかもしれませんね。
入手性もそれなりに良く、それなりに安く、それなりに耐久性もあり、それなりな性能。優等生ではありますが、レース等々で使おうという人には微妙なモノになるかもしれません。
価格評価→★★★★☆(←Praxisworks よりは安いか)
評 価→★★★★☆(←正解に近いのでは…?)
<オプション>
年 式→ 2013~
カタログ重量→ 実測重量 119g
※ なお、本アダプターのベアリングのみを交換事態はしてみました。実際に自転車に取り付けていないので、それがどんな効果をもたらすかは続報(1年半後くらい?)をお待ちください。