購入価格 ¥41,000(トライアスロンショップシロモト様のHPから発注。)
使い方を間違えて膝をブッ壊したので、注意書き的な意味を込めて追加レビューします。
あと、後半で色々クランク長をいじくって分かったことを書き残したいと思います。
【膝をブッ壊した原因】
結論から書くと、勝手にスライドして気が付かないうちにクランク長が伸びていました。そんでもって、下死点で足が無理矢理引っ張られて膝の関節が伸びて破損。私がスライド機構の機械的特性を理解しきれていなかったのが原因です。
では詳しく書きます。
まずスライド部の構造について。
クランク側には位置決め用の細かい穴が1列に開いており、そこに3枚目の写真の一番低くなった段からピョコっと飛び出ているボールプランジャの鋼球が収まる事で位置決めをしています。ボールプランジャとは、イモネジの中に鋼球とバネが仕込まれたパーツで、鋼球を押すと鋼球が引っ込み、離すと飛び出てきます。これ自体に大した固定力はありません。
ここがもし普通のピンだったとすると、最悪スライド部の固定ボルトが緩んでしまった際に、クランク側の穴と穴の間の薄い壁を簡単に突き破ってしまい、クランク本体に深刻なダメージを与えるはずなのでこれはこれで理にかなった構造だと思います。
スライドを固定するのは、あくまでもボルトの締結力によって2枚のプレートがクランクを挟み込む摩擦力という事です。
スライド部を固定する反対側のプレートはというと、ネジの推力に負けて曲がってしまっていました。
固定ネジ穴の付近が一番薄いので、そこから \_/ という形に曲がったようです。プレートが反った結果、プレートとクランク本体との接触面積が減って滑ったものと考えられます。
ここのボルトの指定トルクが妙に低いのはプレートの強度のためだったか...。
出先で手ルクレンチで調整していたのはまずかったようだ。
【注意書き】
気を付ける点について、箇条書きします。
①スライド機構部のボルトの指定トルク厳守
スライド部のストローク確保と少しでもクランクを軽くするためか、そんなに丈夫にはできてないです。
締め過ぎ厳禁。
②ガチ踏み厳禁
下死点付近まで馬鹿力で踏み抜くと勝手にスライドするかも。
特にダンシングと登坂は注意。
平地巡行やローラー台でのポジ出しレベルであれば問題ないと思います。
時々チェックと再調整をお勧めします。
トルクレンチの持参もお忘れなく。
【分かったこと】
クランク長とパワーの出方の傾向についての雑感です。
といっても巷で言われている内容のおさらいみたいな内容ですが、数値自体は何かの役に立つかもしれませんので一度まとめたいと思います。
まず、前提として私のスペックを簡単に記します。
===================
私のスペック
・身長169㎝
・関節は固め
・脚質は低ケイデンスのトルク型
・自称、耐久系ルーラー
===================
172.5mmのクランクを使っていましたが違和感を覚えて短くする事を検討するためにスライドクランクを導入しております。
以降のお話の基準点は、元々私が使っていた172.5mmとします。
参考として、近い身長で同じクランク長を使うプロ選手はナイロ・キンタナ選手や新城幸也選手が挙げられます。
[感覚的な傾向]
クランク長が長くなる程ヒルクライムがどんどん楽になっていき、それと引き換えに膝が壊れていきます。(笑) 私の感覚では、5mm伸ばすとノーマルクランクをコンパクトクランクに換えたぐらいの差がありましたが、基準プラス5mmに当たる、177.5mmのクランク長では確実に膝を壊します。
逆にクランク長を短くするとケイデンスが上がりやすくなるので平地が楽になります。2.5mmマイナスの170.0mmでは、5~6rpmぐらい勝手に上がる感じです。膝にも優しいです。(笑)
でも、更に短くすると5rpmずつケイデンスが上がるのかといえばそんな事はなく、踏み込んだ時の重さが響いて回転が上がりにくくなる。
ざっくりした印象は、
177.5mm 上りが超軽い。確実に膝壊す。
175.0mm 上りが軽い。膝が壊れ始める。
172.5mm 元々のクランク。基準点。トルクフルに巡行出来る。
170.0mm 上りは気持ち重めですが、あまり気にはならない。平地は回しやすい。
167.5mm 平地では更に回しやすいけど重め。負荷が増えると回しにくくなる。
165.0mm 重くて回せない。
でした。
感覚的に一番好印象なのは170.0mmです。
[プロ選手のデータを調べて自分と比較してみた]
下記の表は有名選手の身長とクランク長を調べ、その比率を%で表したもの。
※私の分析用データなので、敬称は省略させて頂いております。
ざっくり眺めると、
TT系の選手は比率で言えば短め。
スプリンター系は中間。
オールラウンダーとクライマーは長めのクランクを好む傾向があるようだ。
上の表から、私の身長での適性クランク長を割り出そうとしてExcelに計算させた表がこちら。
比率を0.1刻みで刻んた時のクランク長が計算結果として出てきます。
プロ選手の身長-クランク長比率の平均値(9.611%)を単純に私に当てはめると、適正クランク長は162.5mm。一応ローラー台で試しました。
うん、予想通り短過ぎ(重過ぎ)て踏めねぇwwww
今まで私が使っていた172.5mmのクランクをこれらの表に当てはめると身長-クランク長比率10.2%なので、長い部類のクランクを使っていた事になります。個人的な好みではなるべくケイデンスを抑えてトルクで回したいので、167.5~170.0mm辺りが妥協点かと予想。
誰かと比較してクランク長を決めるという方法は、あんまりアテにならなさそうです。(汗)
[理論値から計算]
机上計算上のパワーとトルクの関係はは下記の通り。
パターン①
200W一定のパワーで巡行している選手のケイデンスを90rpm固定として、クランク長を2.5mm刻みで変えていったときに必要となるペダル踏力を表にしました。実際にはありえないですが、モーターのように常に一定トルクをかけられた時の計算値としています。
計算上はクランク長1サイズダウンに伴う出力低下は、0.2kgぐらいの踏力増でカバー可能です。一見楽そうですが、実際にはペダリングロスが加算されるので、最低でもざっくり0.6kg以上の踏力増になります。
ペットボトル1本強のウェイトを足に付けてペダリング...地味に嫌ですね。これを1分間に90回ですか...普通に嫌です。
パターン②
200W一定のパワーで巡行している選手のペダル踏力を12.75kg固定として、クランク長を2.5mm刻みで変えていったときに必要となるケイデンスを表にしました。
クランク長1サイズダウンに伴う出力低下はケイデンスを1.5~2rpm程度上げればカバーできるという事になります。
なんてイージーなんだwwww
という訳で、ワット数を稼ぎたいだけなら、ガシガシ踏んでペダル踏力を増やすよりケイデンスをちょびっとだけ上げるほうがどう考えても楽そうです。
[総合的に判断すると]
なるべくシンプルに説明したいので、クランク長を1サイズ上げると、てこの原理によって得られる戦闘力を『戦闘力1』、ケイデンスを2rpm上げると得られる戦闘力を同じく『戦闘力1』とします。
私の感覚で、
「クランク長を172.5mmから170.0mmにすると、ケイデンスが5~6rpmぐらい勝手に上がる」
という結果を理論計算結果を使って考察すると、クランク長1サイズダウンで失った戦闘力1を、得られた回転数(戦闘力2.5~3.0)でカバー出来ている事になります。つまり、トータルで戦闘力が1.5~2.0上がります。170.0mmクランクへのサイズダウンは非常に魅力的です。
167.5mmまでサイズダウンすると、クランク長2サイズダウンで失った戦闘力2を、回転数6~7rpm(戦闘力2.5ぐらい)でカバーするのがやっとという感覚。トータルで戦闘力0.5アップ。あまり意味は無さそうです。これ以上クランク長を短くしても戦闘力は上がらないでしょう。
私の練習環境(というか日本の国土全体)は山だらけなので、坂でケイデンスが落ちてもトルクでカバーできるようクランクは長めが良いように思います。
という訳で、結論は170.0mm がベスト。という結論に達しました。
私はこんな感じでクランク長を決めましたが、前回レビューでちらっと書いたように、ローダー台でポジション出ししながら最高速アタックを繰り返すのもアリだと思います。
ちなみに、前回のレビューで少し書いた最高速アタックから導き出されたクランク長は
『167.5~170.0mmの間にベストがある気がする』
なので、実走&机上計算でもローラー台で最速アタックでも、どちらの方法でも大ハズレは無いかと思います。
もし、2サイズの候補で迷ったら、自分の得意分野(ハイケイデンス型 or トルク型)や、自分の周りの環境(平地 or 坂)で選べばいいと思います。
[その他 膝が痛くなった時の対処法]
クランク長が長いクランクに交換後、それが原因で膝が痛くなってきてしまった時は、ダンシングすると脚が引っ張られなくなるので痛みが少しマシになります。
といっても、動けなくなるまでの距離と時間を少し稼げる程度なので、無理はしない方がいいです。輪行可能な交通機関やマイカー、イベント中であればピットエリアやチェックポイント、山の中であればケータイの電波がある所まで何とか辿り着くための最後の脚。ぐらいにお考え下さい。
こんな情報役に立たない方が良いですが、もしもの為に。
【雑感】
最近巷で短いクランク長が流行っていますが、私が試してみた感覚では欧州人の身長-クランク長比率を日本人にそのまま当てはめるのは少し違う気がしました。
そもそも欧州人は身長に見合うだけの強力な筋力があるので、てこの原理的に不利な身長比で短めのクランクでも踏み抜けてしまうのではないでしょうか。そして回転数を上乗せして出力を稼いでくる。
なにそれ強そう。
小柄で筋肉量が少ない日本人がそれに対抗するには、ケイデンスを同じとしながらちょっとクランク長を長めとするのも一つの案ではあります。
日本国内で走るにしても、山だらけの日本では大多数の自転車乗りがクライマースタイルの長めのクランク(身長-クランク長比率10%前後)を使うほうが自然な気もします。
昔から言われている身長の1/10がクランク長というのは日本の地形まで考慮に入れて(経験則から導き出されてそなった)のかなと思いました。
【まとめ&今後の予定】
以上がスライドクランクから得られたことです。
クランクの小規模(?)な破損や膝の損傷など色々トラブルもありましたが、クランク長を変えながら走ることで色々な事が分かって面白かったです。
なお、破損したパーツはちょびっと設計寸法を変えてテキトーに自作するか、どこかの加工業者様に制作依頼をする予定。私の独断による保証外の勝手な設計変更のせいでスライド量が何mmか減るかもですが、その領域は使わないのでどーでもいいです。(ヲイ
あと、ぶっ壊した膝が治るまでしばらく自転車には乗れません。(1ヶ月ぐらい)
丁度梅雨だし、レビューが捗りそうだ。
価格評価→★★★★☆(変わらず。長さ違いのクランクを7本(私が試したクランク長のパターン数)買うよりは間違いなく安いですw)
評 価→★★★☆☆(スライド機構の取り扱いは結構シビア。破損に注意。でもクランク長変更から得られる情報量はとても多いので確実に走りの糧になる。)
<オプション>
カタログ重量→1280g(FC/BB等含む)