購入価格: $50~73 (@ universal cycles他、送料別)
左から28.6mm用・31.8mm用・34.9mm用。価格は3個セットではなく1個あたりの値段です。
シートチューブにFD取付用タブのいないフレームに直付FD(Braze-on)を装着するためのクランプバンドです。本来Parlee Cyclesが自社のフレームに純正装着しているパーツなのですが、単品で購入することも可能。シートチューブのパイプ径に合わせて3種類のサイズがあり、細い方から28.6mm、31.8mm、34.9mmと一般的な丸断面パイプの径を大体カバーする展開になっています。パイプ径のコンマ数mmの差異を調整するためのシムテープが1枚、FD取付用のM5クロモリボルト1本、ボルト用座金1枚が付属。
カーボンファイバーの加工に関して一線級の実力を持つParlee Cyclesらしく完全なカーボンのワンピース成型品で、仕上げの丁寧さと類似品の追随を許さない精度の高さが特徴といえるでしょう。超マニアックなスモールパーツながら割と息は長く、初期型はトラブルも散見したと聞いていますが何度かのマイナーチェンジを経て最新型は機械式FDなら全く問題なく使えるレベルにまで来ています。一応現行モデルはDi2やEPSとの組み合わせも考慮し強度をあげてあるそうです。eBayなどで古い在庫品が投売りされていることもありますが、買うなら返品交換の利く正規ディーラーから現行モデルを買うのが吉でしょう。
・ヒンジが見当たらないけれど、どうやってシートチューブに取付ける?
さて、FD装着状態でこのクランプを見てもどこをどうやって取り付けたのか一見分からないと思います。カーボン製FDクランプには、FDを取付ける方とは反対側にヒンジを設けバレルナットとボルトを使って締め付けるタイプ(Mcfk等)と、直付FDと接するタブの部分に割を入れて固定ボルトと一緒に締め付けるタイプの2種(Carbonice等)が出回っていますが、Parleeのものは後者のタイプです。ただし、他社製の類似品とは割り部分の加工精度に天と地程の差があります。Parleeのものは完璧な精度で仕上げられていて、FDを取付けるとどこで割れているのかパッと見良く分からないほど。割りは一箇所のみ、FD固定ボルトが接触する面のすぐ下が割れていて、フレームに装着する際はそこを指で広げてパチンとスナップさせるタイプです。部分的には1mmを切る薄さまで加工されているので背中が嘘寒くなるお話なのですが、対応パイプ径さえあっているものなら何の問題もなく装着できます。
・ハンドメイドなので、チリなどに極僅かな個体差がある
おそらく、太巻きをつくるようにパイプ状のマンドレルへカーボンシートを巻きつけ、端をレーザーかウォータージェットで切って仕上げているのだと思うのですが、切り出す時ごく僅かズレることがあるのか天地方向のチリ合わせに0.1mm以内のギャップがある個体もあるにはある(上のFD写真でも極僅かなズレが確認できると思います)ものの、シートチューブと接触する面・タブの分割面ではいびつなすき間は皆無で、しっかり締め付けトルク(推奨5~7Nm、上限9~12Nm。バージョンによってまちまちなのでパッケージで確認を)をかければガタツキが一切無くなります。パイプ径が規格より細い場合に備えシムテープも標準で付属しているので、ある程度の調整が利くのも親切。
・軽量さよりも重要なポイント
カーボン製で軽量(実測7g。28.6mm/31.8mg/34.9mm。ボルト・座金別で差は確認できず)なことにまず目が行くと思いますが、このクランプ最大の利点は高弾性カーボンやチタンなどアグレッシブに軽量化したフレームの肉厚の薄いパイプでも安心して使えることにあると思います。分割式でパイプをクランプする構造は通常割り部分に応力が集中しやすいのですが、このクランプは極薄に加工できるカーボンの特性を生かしてバンド面がパイプとほぼ100%密着し締付の応力をパイプ円周全面に分散させるため、シートチューブを割ってしまうリスクが格段に低くなっています。さらに必要以上の力でクランプボルトを締め付ければシートチューブよりバンドが先に壊れる強度に設計してあるという徹底ぶり。保険的にバンド部分の引張り強度をあえて制限してあるとはいえ、FD本体の規定締付トルクは十分にクリア出来るようになっていますからフレームへのダメージを心配して締付を遠慮する必要はありません。このあたりはさすが超軽量カーボンフレームをハンドメイドで作っているメーカーならではのノウハウと気配りが投入されています。
・変速性能への影響は?
その華奢な見た目から変速性能への影響が心配になると思いますが、少なくとも機械式のFDを使う限り私は不満をおぼえる事はありませんでした。同じFDを直付けとクランプ一体式で入れ替えて比較してみました(カンパスーパーレコードRS)が、体感上では差異は認められません。電動FDのようにパワーと変速スピードが上がれば弱点が現れてくる可能性は否定できませんが、機械式の場合はハイスピードカメラででも撮影しなければ反応速度の差は分からないんじゃないかと思います。ただ、構造上クランプするボルトがFD取付剛性をほぼ決定するといえるので、それなりの剛性を持つボルトを併用するのが有利でしょう。付属のクロモリボルトは頑丈そうなのですが若干短いので、チェーンウォッチャーを併用したい私はカンパ純正のFDクランプバンド用チタン合金ボルトを流用しました。とりあえずこれで不満はないですが、アルミやカーボンボルト、短すぎるボルトなどを使うと剛性不足になる気がします。
・まとめ
こんなスモールパーツが単品で定価$100近くするなんてもはや正気を疑うレベルなのですが、本品はカーボンクランプの中にあって性能・安全性・仕上げの美しさなどどれをとっても最高レベルだと断言できます。価格と見た目の個人的好みを除外すれば他にする理由は全くないので、どうせ酔狂な出費をするならこれにしておきましょう。
価格評価→★★★☆☆ (競合と比べると高いですが、性能が見合っています)
評 価→★★★★☆ (繊細なフレームとではアルミクランプより安心して使えて、性能は十分)
年 式→ 2012~2014
カタログ重量→-g (実測重量 7g)