購入価格: ¥4,104 (税込)
標準価格: ¥4,104 (税込)
『QR仕様のディスクロードなら、ディスクブレーキとペダリングの両方で良い結果を得られる』
■ GIANT RWS OFF ROADとは
GIANT RWS OFF ROADは、135mmのリアエンドに対応したスキュワーだ。クイックリリースレバーと交換して使う。MTBのフロントフォークがスルーアクスルを使うことを前提にしているためか、RWS OFF ROADのフロント用はリリースされていない。ロード用のRWS ROAD SETは前後セットになっており、RWS OFF ROADとはレバーの形状も異なる。
一般的なスキュワーはアーレンキーや専用工具で着脱するが、RWSはシャフトとレバーが一体化しているため工具が不要で、固定後や作業中にレバーを任意の向きに変えられるのが特徴だ。DT SWISSとの共同開発で生まれたパーツであり、マニュアルもDT SWISSのものが付属する。DT SWISSも色違いのRWSをリリースしているが、GIANTのRWSにはナットに回り止めが付いているという違いがある。
GIANT RWS OFF ROAD。ナットには回り止めが付く
■ 購入のきっかけ
私が所有するGIANT DEFY1 DISCは、前後クイックリリース仕様のディスクロードだ。制動時のハブのねじれの力を受け止めるという点ではスルーアクスルよりも不利とされるが、クイックリリースレバーをしっかりと締め付ければ、油圧式ディスクブレーキの急制動でも問題はない。ただ、レバーの締め付けが弱くて、ダンシングなどでパッドがローターに当たってカツンと音が生じたことはあった。
クイックリリースレバーは、締め付けの加減でパッドに対してローターの位置が変わることがあり、ローターとパッドの接触やブレーキタッチの悪化につながる。クイックリリースレバーを強めに締め込めば、ローターがほぼ毎回同じ位置に来るが手が痛くなる。上記の異音が生じたのは、レバーの締め付けの強さを調整する際に、ナットをゆるめる加減を間違えたからだろう。
そこで私はRWSを導入することを思いついた。RWSなら比較的小さな力でレバーを回すことができ、強固な締め付けで確実にディスクブレーキ対応のホイールを固定できると考えたからだ。キャリパーにローターをスムーズにセットできれば、クイックリリースレバーよりもホイールを取り付けるのが早くなるかもしれないという期待もあった。なお、フロントにはRWS ROAD SETを使用した。
FulcrumのクイックリリースレバーをRWSに交換
■ 取り付け
ホイールナットをエンドの切り欠きにはめて、レバーを手で回して締め付ける。マニュアルには15Nmで締め付けるように指示されているが、感覚的にはちょっとわかりにくい。RWS ROAD SETのマニュアルによると、「ナットとレバー部がドロップアウト部に接触してから、3/4回転すると正しく固定されます」とある。手に跡がつくほど強く締めると、3/4回転かそれ以下といったところだ。
手に跡がつくほど…といっても、クイックリリースレバーを強めに締め込むよりもはるかに楽だ。その気になればいくらでも締め込むことができそうだが、より高い締め付け力を求めて体重をかけたりすると破断しそう。そんなに無理をしないでも、高い締め付け力は得られる。
また、DEFY1 DISCのディスクブレーキ台座周辺は補強のために外に張り出しているが、RWS OFF ROADのレバーの形状ならフレームに干渉せずに作業できる。レバーの向きを変えるのは、力をかけたり好みの位置にレバーを固定するときだけ。これならクイックリリースレバーに比べても、それほど面倒ではない。なお、RWS ROAD SETは途中でレバーの向きを変える必要があり、作業性ではRWS OFF ROADに劣る。
レバーは作業中や固定後に任意の向きに変えられる
RWS OFF ROADはレバーがフレームに干渉しにくい形状(左)、RWS ROAD SETはレバーがフロントフォークに干渉する(右)
■ ローターの位置の出しやすさ
RWSでホイールを固定したところ、一発でローターがパッドの中央の位置に来た。これは出先で着脱を繰り返し練習した際も同様だった。RWSはほぼ毎回同じ締め付け力で固定でき、ローターの位置が決まりやすい。クイックリリースレバーでもコツをつかめばローターの位置をちゃんと出せるが、締め付け力がバラつきやすいため、何度もホイールを取り付け直す場合がある。RWSの方がミスが少ない分、クイックリリースレバーよりも早くホイールを取り付けられることも多い。
ただし、ホイールがわずかに斜めに傾くと、ローターも同時に斜めに傾いてパッドに接触しやすくなる点は変わらないので、自転車をまっすぐに立てるなどの工夫が必要になる。また、私はクイックリリースレバーを強く締め込んだ状態で、キャリパーの取り付け角度をセッティングしたが、RWSに交換後もキャリパーのセッティングをやり直す必要はなかった。
ほぼ毎回同じ締め付け力で固定できるので、ローターの位置を出しやすい
■ ディスクブレーキへの影響
RWSの強固な締め付けはさすがといったところで、自転車をダンシングで横に振ったりコーナリングで大きく傾けたりしても、パッドとローターが接触しない。もちろん、高いスピードからの急制動でもホイールの位置がずれない。これはクイックリリースレバーでも同じだが、RWSの方がガッチリとホイールを固定できる分だけ安心だ。
また、ブレーキタッチも良くなったような気もする。ホイールをしっかりと固定できたことによってローターが振れにくくなり、ローターのゆがみによるフニャッとしたブレーキタッチが出にくくなったような感じだ。もちろん、事前にホイールとキャリパーの取り付け角度を念入りにセッティングしておく必要がある。ただ、制動力やコントロール性などのブレーキ性能に関しては、変化はほとんど体感できない。
RWSの強固な締め付けにより、ローターが横にブレなくなる
■ 乗り心地
最初に感じた変化は、明らかな乗り心地の硬さだ。以前とタイヤの空気圧が同じであるにもかかわらず、タイヤの空気がパンパンになったような感じがした。実際に走ってみても空気圧を高めたような硬い乗り心地で、地面からの振動を拾いやすくなっただけでなく、ホイールが跳ねやすくなった。これでは乗り心地が悪くなるだけでなく、グリップ力も下がってしまう。
この乗り心地の硬さは、DEFY1 DISCに付属するホイールをFulcrum Racing 5 DBに交換したときの感覚に似ている。このときもタイヤが跳ねやすくなったが、空気圧を下げることで乗り心地の良さを確保できた。RWSの場合は3〜5psi程度下げるだけで済み、以前のような快適な乗り心地になった。太めのタイヤなら比較的乗り心地を調整しやすいと思う。
Fulcrum Racing 5 DBをRWSで固定すると硬い乗り心地になるが、タイヤの空気圧で調整可能
■ ペダリング
私の体感では、ホイール周りの剛性が明らかに高くなった。加速やダンシングでの強い踏み込みでの反応がよくなり、軽快な走りができるようになった。また、ペダリングのロスも少なくなり、以前よりも一定のスピードで巡航するのが楽だ。ダンシングではパリッとした硬さがあって力を伝えやすい。しかも、タイヤの空気圧を調整して乗り心地を確保しても、これらの恩恵は享受できる。
そもそも、DEFY1 DISCは快適性と直進安定性を重視しており、チェーンステーも420mmと長めなので、どちらかといえば鋭い反応や加速はあまり得意ではない。だが、これはホイールをFulcrum Racing 5 DBに交換することで改善され、RWSでさらに改善された。特にシッティングでの踏み込みでは、リアバックやD-FUSEシートポストのしなりがパワーロスにつながる感じがしたが、RWSの装着で進みやすくなった。
■ 脚への負担
初めてRWSを装着して走行した際には、調子に乗って踏み込み過ぎて疲れてしまった。その後、72kmほどいつもどおりに走行してみたところ、急加速を抑えて一定のペースで走行したこともあり、以前よりも脚の負担が増したような感じはしなかった。むしろ、少ない労力で早く目的地に到着できた。ホイール周りが硬いので脚の負担になりやすいのは確かだが、実際に疲労するかどうかは走り方次第だと思う。
■ 締め付け力の強さ
試しにクイックリリースレバーを弱く締め付けた状態でリムを指で横に押してみると、ホイールがたわむと同時にローターもパッドに近づくことがわかった。ローター自体がたわむというよりも、ホイール全体が動いているような感じ。一方、ホイールをしっかりと固定すると、リムを押してもローターの横の動きが非常に小さい。あくまで目視によるチェックだが、少なくとも弱い締め付けではダメなようだ。
クイックリリースレバーはレバーを奥まで押し込むと締め付け力が下がる仕様だが、レバーを回した分だけ締め付け力が高まるRWSの方が強くホイールを固定でき、ダンシングなどでローターとパッドの衝突を防いだり、ホイール周りの剛性を高めたりするのに有利だと感じた。締め付け力が強くなると、ハブとフレームの接触面、もしくは、ハブ内部のガタが取れるのかもしれない。
ただ、ちょっと心配なのが、走行の振動によるレバーのゆるみだ。RWSはほどほどの力でレバーを回しても高い締め付け力が得られるが、振動でゆるまない程度にはしっかりと締め付ける必要がある。レバーがゆるむとパッドとローターが接触するだけでなく、最悪の場合はホイールがずれることも考えられる。これまでレバーがゆるんだことはないが、頻繁にレバーのゆるみをチェックするよう心がけたいところだ。
出発前に走行の振動でレバーがゆるんでいないかチェック
■ 総評
GIANT RWS OFF ROADは、ディスクブレーキと相性が良いパーツだ。ホイールを確実に強く固定できるので、ダンシングなどによるパッドとローターの接触や制動力によるホイールのズレを防げる。また、クイックリリースレバーよりも締め付け力がバラつきにくいため、ホイールの装着の際にほぼ毎回ローターをパッドの中央の位置に持ってこれる。ディスクブレーキ台座周辺のフレームの張り出しにもレバーが干渉せず、レバーの向きも変えられるので作業しやすい。
また、RWSでホイールを固定すると、明らかにホイール周りの剛性は高くなる。硬い乗り心地やホイールの跳ねやすさはデメリットだが、これらは空気圧を下げることで対応可能。乗り心地の良さを確保したままペダリングのロスを抑えられ、以前よりも軽快な走りを楽しめる。
クイックリリース仕様のディスクロードなら、ディスクブレーキとペダリングの両方で良い結果を得られるのでオススメ。ただ、RWS OFF ROADはフロント用がないのが残念。フロントにもRWSを導入するには、RWS ROAD SETかDT SWISSのRWSを使うしかない。
RWS OFF ROADのアルマイトのブルーがDEFY1 DISCによく似合う。見た目にも満足感が高い
価格評価→★★★☆☆ (価格の分の効果はしっかりと感じられる)
評 価→★★★★★ (ディスクブレーキとペダリングの両方で効果を感じた)
<オプション>
年 式→ ー
カタログ重量→55g(実測重量も同じ)