購入価格 ¥8800くらい
Grip Shift社(現 スラム)の発売したツイスターシフト.ラピッドファイヤに代表されるトリガーシフトの対抗馬でした.
僕がこれを使ったのは見た目のかっこよさもさることながら、機構や動作法が単純、それ故にポジションの自由度も高く軽かったからです.
1990年代初等に大ブレーク.他のレビューでも触れましたがバネとラチェットの入ったシマノのSTI(ラピッドファイヤ)に比べると、これさえ使えば組み合わせるブレーキレバー次第で100g程度は軽量化できました.また、DHやスラロームに専用バイクを用意するのが当たり前になった頃でもあるので、リアシフターだけをつけたい人にも好評だった様に思います.またなぜか逆パタンで、リアはシマノ・フロントはグリップシフトという方も居ました.
今も昔もシマノのパーツは信頼性に重きをおいている感があり、重量はないがしろにされがちなことやコンポーネントセットでの使用が前提になることへのアンチテーゼみたいな意味合いで個人の支持もあり、また完成車メーカーへのOEMも積極的に実施したこともあり、グリップシフトは大変普及しました.原理的にもとても単純なので安価なことも個人・完成車メーカーに受けた原因かもしれません.
X-Rayと呼ばれるSRT-800はこうしたスラム社のシフターでは初期、商業的に一番成功したモデルだと思います.筐体がクリアのABS樹脂になり、以前のモデルよりシフター部のゴムのエリアがひろがり力が入り易くなりました.記憶の範囲ではこれが出る3-4年ほど前から同社はこの手のシフターの販売をしていましたが、なにより画期的だったのは(機能と関係ないのですが)、単純な構造を視覚化する透明な筐体にあったのだと思います.このインパクトはすごくて、ブラックボックスのシマノ/トランスルーセントなグリップシフトという抜群の対比でした。前年までのものと実はそんなに大きな差はないのですが、その表現方法を変えることで社会の認知度が変わる好例の様に思えます.
また、ポピュラーなシフターになってくると、いろいろなアフターマーケットパーツもでてきます。
主なパーツはすぐ摩耗するグリップ部用の交換パーツ、ODI/SPECIALIZED/YETI等から続々とシフター部のグリップや短めのハンドルグリップは市販されていました.グリップシフト社からも純正(は黒)以外の様々な色のパーツが市販されました.これって今にして思うとiPod用のキャリングケースがモデルチェンジの度に様々なサードパーティから市販されることに似ています.シマノのコンポはその互換性を削ぐ戦略からか、当時、SRP社のチタンボルト程度しか互換パーツに覚えが無く、あったとしてもアクションテック社のスプロケやRINGLEやホワイトインダストリ、キングといったメーカーによる高額な軽量ハブ程度しかなかった訳で、気軽に自分らしさを演出できる小道具の様な補助部品が市販されることはあまりなかった様です.こう考えると、グリップシフトの存在は偉大で、、、MTBはもちろん機能面の変化もある訳ですが、その反作用みたく楽しむこと、自分のスタイルを表現することの媒体として、かなり重要なパーツだったと思えてきます.
さて、肝心のシフト性能は実はすこし中途半端、泥のレースなどの場合バネの様なアシストの機構をもたないグリップシフトはシマノに比べるとシフティングの正確さにかけました。しかし、そこはスイスターの良さでオーバーシフト気味にスロットル(?)を回し、望んだ歯にチェーンが乗った状態でグリップに加える力を弱める等いう様な操作をだれもが直感的に行ってました.このあたりのユーザビリティの高さはいたずらに機構を複雑化することとはまったく正反対ですが良いデザインだと思います.また、趣味性の高いパーツとはいえ、グリップシフト社は当時NORBAでレース活動もしていましたから、ウェットコンディションへの対応としてバズワームと呼ばれるシリコンゴムヒモでワイヤーの戻しの力をアシストするスモールパーツ・手の力をかける面を増やすためにスロットル部を長くしたもの(ハーフパイプと呼ばれていた様な、、、)等、それなりにR&Dもしていました.
今や大きなブランドになったスラムですが、そのものづくりを見てみると、今はどちらかというと、単純化よりはシマノ同等の凝った機構と新素材による軽さを売りにしている様です.こうなってくるとコストや機能性といった定量可能な部分の単純比較で勝負がついてしまいそうで、なんだか複雑な気持ちです.
サードパーティがカスタマイズパーツをたっくさん出していたころがある意味懐かしいですね。
価格評価→★★★★☆(軽い割には安価でした)
評 価→★★★★☆(単純な構造で軽く信頼性もそれなり)
年 式→1993くらい
カタログ重量→150g程度だったと記憶