このBL-R600、握りは適切な感触があり、使った感じはなかなか良いものです。また、昔のブレーキ・ブラケットのゴム部は着々と劣化していきましたが、BL-R600は本当にタフです(最近のヤツは皆それなりにタフらしいですが)。長期使用では、化学的に劣化する前に、掌と摺れることによる摩耗の方が目立ちはじめます(画像ご参照…かなり摩耗していますがまだまだ大丈夫)。大した進化です。
また、先日ワイヤーケーブルを10年ぶり(26000km走行)に交換しましたが、雨天でも容赦なく走行した割には、ケーブル性能の大きな劣化はなく、これまた驚くしかありません。昔の製品では考えられません。
しかしこのBL-R600。かつてのSHIMANO600 ULTEGRAをやや平凡にしたような形状で発売されて以来、風貌が一切変わりません。地味です。十年一日の如しとはまさにこのことです。絶滅危惧種のランドナーなどに使われているのは時々見かけますが、ノーマルブレーキレバーとしてひっそりと君臨しているようです。また、最近は固定ロードや街乗りピストなどのためのブレーキレバーとしても、時々見かけるようになりました。
しかし、ランス・アームストロングが左手用として使ったことがあるものの、新しくロードを入手するときにノーマルブレーキレバーを選択する人は極めて少数(0.01%位かな!?)でしょうから、結局、数は出ないでしょう。こんな儲からないものにシマノがあまり力を入れたがらないのはわからないでもありません。競技としてのロードで勝負に徹するなら基本的に選択肢とはなりえないですが、しかし、だからといって、なくなると非常に困る製品です。近年のロードパーツの性能や信頼性の向上は目を見張るものがあって、それは結構な事なのですが、もう少し、選択肢が多様で、面白みのあるブレーキレバーを作ってくれてもよいのではないかと思います。まるで、「コイツで我慢しとけ」とシマノに言われているかのようです。
今の自転車の世界は、アジアや欧米から数え切れないほどのロード・ブランドが流入し、活況を呈していますが、何か、がんじがらめになって身動きが取れないような閉塞感を感じてしまうのです。気のせいでしょうか?
シマノは1980年にエアロダイナミクスをパーツの側から攻略しようと、デュラエースAXを市場に投入しました。AXはDDペダルなど、今見ても驚いてしまう発想が現実に投入された大変興味深いコンポーネントでしたが、世に出るのが早すぎたのか、種々のクレームを抱え、失敗作となってしまいました。このAXで投入されたブレーキレバーはまったく問題ありませんでしたが、ブレーキワイヤが内蔵された最も初期の製品になると思います。私は1983年から5年ほど、600AXのブレーキレバーを使っていました。使い勝手はデュラAXと全く同じです。今振り返るとこのレバー、特徴的な形状をしていたと思います。
最早、シマノにはデュラAXのような失敗は許されないのでしょうが、racing equipmentの製造メーカーとしてゆるぎない地位を獲得したシマノにはそろそろ、いや初心に戻って、世評を恐れない、大胆で多様な製品づくりをお願いしたいところです。(脱線気味ご容赦)
価格評価→★★★★☆
評 価→★★★★☆