購入価格: ¥3,758 (税込) ※中古品
標準価格: ¥15,120 (税込)
『 上位グレードらしい質感と作業性の高さ。快適性だけでなく剛性も感じられる』
■ D-FUSE シートポストの上位グレード
GIANTのエンデュランス系ロードバイクやシクロクロスバイクには、独自規格であるD-FUSE シートピラーが採用されている。その名のとおり断面形状がD型になっているのが特徴で、平らになっているシートポスト後部が前後にしなって路面からの振動を吸収し、横方向は剛性を高める仕組みだ。D-FUSE シートポストには幾つかグレードがあるが、市販されているものは以下の2つだ。
① GIANT D-FUSE COMPOSITE SEATPOST
② GIANT D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOST
私が乗るGIANT DEFY1 DISCには①が付属しており、②は上位グレードにあたる。いずれも材質はカーボンであるが、サドルクランプ、重量、表面仕上げなどが異なる。今回は②のGIANT D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTに交換したのでレビューしたい。
■ 幸運にもきれいな中古品を入手
DEFY1 DISCに付属するD-FUSE COMPOSITE SEATPOSTは、この自転車の快適性に大きく貢献し、性能面での満足感は高い。だが、サドルクランプのサドルの角度が無段階で調整できないタイプで、サドルの形状によってはポジション調整が難しくなる。また、つや消しの塗装は若干チープな感じだ。そこで、D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTに交換することに決めた。
とはいえ、導入のネックになるのが価格の高さだ。すぐにでも交換したかったが、このままでもなんとかポジションは出せたので、シートポストの交換はDEFY1 DISCのカスタムの最終段階で行うことにした。そんなある日のこと。私は幸運にも某中古パーツ店で、使用感の少ないものを格安で手に入れることができた。美品にもかかわらず安かったのは、独自規格のパーツゆえに価格が設定しにくかったからかもしれない。
GIANT D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOST。小キズはコンパウンドで消した
■ シートチューブにスムーズに挿入可能
D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTは加工精度が高いのか、D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTよりもわずかに細く、DEFY1 DISCのシートチューブにスムーズに着脱できる。だが、少なからず着脱の際にキズは生じるので、サドルの高さは慎重に合わせた方がいいだろう。また、DEFY1 DISCはシートクランプが臼型ではないため、シートチューブの切り欠きがシートポストに食い込みやすい。
D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTをシートチューブに挿入する際には、カーボン用の摩擦増強剤(FINISH LINEのファイバーグリップ)を塗っておく。このことにより、シートポストのずり下がりを防ぐことができる。摩擦増強剤を使った場合、DEFY1 DISCのシートクランプなら、締め付けトルクの最大値5Nmに対し、4Nm前後でも十分な固定力が得られる。ちなみにDEFYとESCAPE RXも同じシートクランプだ。
なお、D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTは、D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTよりも短くできており、目盛りの位置の基準も異なっているので、シートポストの交換の際には高さも調整する必要がある。
FINISH LINEのファイバーグリップを塗布(左)、両者は長さも目盛りの基準も異なる(右)
■ サドルの角度調整が容易
このシートポストには、CONTACT COMPOSITE SEATPOSTやCONTACT SLR SEATPOSTなどと同じサドルクランプが採用されている。私がクロスバイクに取り付けているCONNECT SL SEATPOSTのサドルクランプもこの形状だ。
サドルの角度を無段階で調整できるので、fi’zi:k ALIANTE R3やfabric Scoop Radius ELITEのような、座面がS字のポジション調整がシビアなサドルでも、快適なポジションを出すことができる。アーレンキー1本で角度調整と固定を同時に行うことができるので、作業性も非常に良い。また、シートクランプの左右を入れ替えれば、オフセット量を23mmから12mmに変えられる。
完成車付属品だったのか、サドルクランプは9mmレール用だった(左)、7mmレール用のサドルクランプを移植した(右)
■ 快適性と剛性のバランスがよい
D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTによる快適性の高さは、さすがD-FUSE シートポストといったところ。不快な細かい振動を吸収してくれるだけでなく、荒れた路面を走っても尻を浮かす必要がない。丸断面のシートポストを採用したGIANT SEEK R3、FIXER Rに比べると、地面からの突き上げや長距離走行での疲労感には顕著な差がある。
サドルのモデルとポジション(特に高さ)が同じなら、D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTのほうが、D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTよりも剛性感が高く、シッティングで強く踏み込んでもしなりによるロスが少ない。乗り心地を悪化させない範囲で剛性感を高めたという感じだ。
なお、サドルの位置を下げるとシートポストの出代が小さくなるが、数ミリ程度ではしなりによる快適性に大きな違いはない。DEFY1 DISCはシートチューブもD型断面になっており、シートステーの接合部も下方にオフセットされているので、実際にしなる部分は出代よりも大きい。とはいえ、出代が極端に小さいとしなりのメリットを生かせないはず。快適性が得られる出代にするためには、やはりサイズ選びが重要になる。
厚みのあるサドルに交換したので高さを下げたが、しなりによる快適性は変わらない
■ 質感が高く、軽量化にも貢献
D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTは、カーボンの積層の上に光沢のクリアーの塗装で仕上げてあり、サドルクランプの機能美と相まって質感が非常に高い。このシートポストの視覚効果は期待どおりで、DEFY1 DISCのルックスを高めることができた。
側面にはつなぎ目が見られるが、これは前後で接着して貼り合わせた跡なのか、カーボンシートを一周巻いた際のつなぎ目なのかは分からなかった。側面のつなぎ目が快適性や重量の差に現れると思っていたのだが、実際には快適性よりも剛性感が際立ち、重量の差もシートポストそのものではなく、主にシートクランプよるものだった。
光沢感の美しいシートポスト。ブルーのサドルクランプとスコッチカルで個性を出した
■ ライトなどの取り付けも可能
D型の断面形状のシートポストでも、fi’zi:kのシリコンシートポストリング(27.2mm)やKnogのライト、GARMIN VARIA Jを取り付けることができた。ライトは丸断面のシートポストのように密着しないが、固定力は十分に高いので、走行中の振動では意外にもズレない。
fi’zi:k シリコンシートポストリングとGARMIN VARIA Jを装着
■ D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTの不満は全て解消
上位グレードの車種に採用されるだけあって、D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTは非常に満足感の高いパーツだった。質感と作業性の高さは期待どおりで、DEFY1 DISCのルックスを向上させ、サドルの角度の微調整で最適なポジションを出すことができた。快適性と剛性のバランスもよく、シートポストのしなりがスポーティーな乗り味を損ないにくい。軽量化に貢献するのもポイントだ。
ただ、D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTやアルミ製のD-FUSE シートポストでポジションと高い快適性が出ているなら、無理に交換する必要はないかもしれない。交換するならサドルの微調整やルックスの向上が目的になるが、高価な上に互換性のあるシートポストが他にないのが悩みどころだ。それだけに、私が中古品を手に入れられたのは本当にラッキーだった。
価格評価→★★★★★ (幸運にも安く手に入った。定価なら星2つ)
評 価→★★★★★ (性能・質感・作業性などほぼ全てにおいて満足)
<オプション>
年 式→2014年
カタログ重量→205g