購入価格: 完成車付属品
標準価格: ¥6,000 (税込)
『DEFY1 DISCの高い快適性に貢献。サドルの角度の微調整ができないことだけが残念』
■ GIANTの独自規格「D-FUSE シートポスト」
先月、私は「GIANT DEFY1 DISC」というロードバイクを手に入れた。DEFY1 DISCは振動吸収性に優れた自転車であり、走行中の路面からの不快な振動を軽減する。そして、この自転車の振動吸収性に貢献するのが、GIANTの独自規格「D-FUSE シートポスト」だ。DEFY1 DISCに付属する「GIANT D-FUSE COMPOSITE SEATPOST」は、デメリットや独自規格ゆえの使いにくさもあるが、それ以上にこのシートポストのもたらす快適性は大きい。
GIANT D-FUSE COMPOSITE SEATPOST (左)
D-FUSE シートポストが採用された「GIANT DEFY1 DISC」(右)
■ D型断面と素材のカーボンが特徴
D-FUSE シートポストは、断面がD型になっているのが大きな特徴だ。シートポスト後部が平らになっており、前後方向のしなりで路面からの衝撃を緩和し、横方向には剛性を高める仕組みだ。
GIANTのカタログを見るかぎりでは、D-FUSE シートポストは、シクロクロスバイクTCXの2014年モデルに採用され、その実績から2015年モデルではDEFYやFASTROADなどにも導入。2016年モデルでは、クロスバイクESCAPE RXにも採用されるようになった。また、D-FUSEの振動吸収性は、2016年モデルのTCR ADVANCED PROの新型シートポストにも反映されている。
D-FUSE シートポストは、グレードによって以下の3種類がある。
① D-FUSE ISP: シートポスト一体型。DEFY ADVANCED PRO SLに採用
② D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOST: 軽量かつ角度の微調整が可能。ADVANCED PROグレードに採用
③ D-FUSE COMPOSITE SEATPOST: 主にADVANCEDグレード以下に採用
②③はフレームがD-FUSE シートポスト専用設計になる。素材には振動減衰効果の高いカーボンが使われており、オフセット量を12mmと23mmに変更できる。350mmというサイズや調整のための目盛りが付いている点も共通だ。
■ 快適さに大きく貢献
D-FUSE シートピラーは、DEFY1 DISCの乗り心地の良さ、快適性の高さに大きく貢献する。荒れた路面ではリアホイールがガタガタ動いているのに、この振動がサドルにはほとんど伝わらないといった印象。クロスバイクやシングルスピードではサドルから腰を浮かせていた路面でも、座ったまま走破することができる。
また、私の場合は、シッティングのままで強く踏み込んでも、シートポストの前後のしなりによる大きなロスは感じられなかった。丸断面のシートポストほどの剛性感がないような気がしないでもないが、ごく短時間の踏み込みなら特に問題ないと思う。
このような石畳を走ると、手にはガガガ!と強い振動を受けるが、尻に届く振動はわずかであるのが驚き
■ サドルの角度を微調整できないのが残念
D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTの最大の弱点は、サドルの角度を微調整できないことだ。サドルクランプ(やぐら)の下部にはギザギザが刻まれており、確実にサドルの角度を維持してくれるが、角度の調整はギザギザの間隔に合わせてしか行うことができない。つまり、無段階に角度の調整ができないということだ。
シビアな角度調整が必要なサドルや追い込んだポジション調整には、D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTは不向き。細かく角度を調整したいなら、D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTを選ぶしかない。
D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTに使われているサドルクランプは、私が以前レビューした「GIANT CONNECT SL SEAT POST」と同じものだ。このサドルクランプは無段階に角度調整が可能であり、目盛りもついているので、サドルを外した後の角度も再現しやすい。ただ、14,000円という価格は悩ましいところだ。
(参考) GIANT CONNECT SL SEAT POST:
https://cbnanashi.net/cycle/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=11229&forum=16 角度調整しにくいサドルクランプ (左)
D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTならこれと同様のサドルクランプになる (右)
■ サドルやシートポストの固定力は問題ない
D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTは、1本のボルトでサドルを固定する方式だが、サドルの固定力は全く問題ない。固定の際にサドルの上下の角度がずれるようなこともない。ただ、低価格のクロスバイクなどと同じ固定方法は、見た目に少し残念。
対応するシートクランプはボルトを2本締めるタイプで、こちらも固定力には問題なし。アルミフレームとの組み合わせでも、サドルがずり下がることはなかった。尚、サドルの位置を変更する際には、トルクレンチを使ってシートポストを固定した。
また、D型断面により、シートポストをシートチューブに挿入すれば、自ずとサドルの横方向の向きは決まる。ただし、サドルクランプの溝からサドルレールがずれると、サドル先端が正面を向かないので注意が必要だ。
シートクランプはボルト2本で固定する方式 (左)
サドルの向きは自動的に決まる (右)
■ 独自規格による注意点
D-FUSE シートポストはGIANTの独自規格であり、フレームも専用設計になるため、好みのシートポストを選べない。シートポストのアップグレードしたいなら、「D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOST」しか選択肢は存在しない。シートクランプも専用品だが、リアマウントラックを備えた「INTEGRATED RACK MOUNT D-FUSE SEAT CLAMP」と交換することは可能だ。
また、リアライトなどをこのシートポストのD型断面に取り付けられるかどうかは、ライトマウントの形状にもよる。実際に取り付けられるかどうかは、現物で確認するしかない。尚、一部のGIANTのライトは、G-MOUNT PADという別売りのライトマウントで適合するようだ。
D型断面には、fi'z:k シリコンシートポストリングやKNOG Blinder MOBなどが適合する
■ サドルクランプ以外は満足
D-FUSE シートポストと専用設計のフレームは、丸断面のシートポストに交換できなくなるが、この問題点を補って余りある快適な乗り心地を実現する。D型断面による前後のしなりと素材のカーボンによって得られる振動減衰効果は非常に高く、GIANTがこのシートポストを様々な自転車に搭載したのは、単に独自性を打ち出すためではないということがよくわかる。
D-FUSE COMPOSITE SEATPOSTを単体で評価すると、サドルの角度の微調整ができないのがとても残念。上位の D-FUSE SL COMPOSITE SEATPOSTと同じサドルクランプなら、見た目にも満足感が高くなったはずだ。現在はサドルのいいポジションが出ているが、今後は微調整や外観のために変更するかもしれない。
価格評価→★★★★★ (完成車付属品のためこの評価。購入するなら星3つ)
評 価→★★★★☆ (振動減衰効果は大変素晴らしい。サドル角度の微調整ができない点でマイナス評価)
<オプション>
年 式→2015年
カタログ重量→285g