購入価格: ¥6,499
標準価格: 59.99GBP ※2016年9月7日現在のレートでは¥6,093
『チタンレールのRaceのほうがEliteよりも快適。ただ、アップライトな姿勢でもポジションの調整は難しい』
■ クロスバイクにもfabricのサドルを装着
私はGIANT DEFY1 DISCというロードバイクに乗っており、これにfabric Scoop Radius Eliteというサドルを取り付けている。調整の難しいサドルだったが、最終的にロングライドでも快適なポジションを出すことができた。見た目もシンプルで気に入ったので、私のクロスバイク GIANT SEEK R3にも取り付けることにした。
今回、私が選んだのは、チタンレールのfabric Scoop Radius Raceだ。このモデルは日本ではまだ販売されていない。本当はEliteのホワイトが欲しかったのだが、海外通販サイトには在庫がなかったのでこれを選んだ。消極的な理由での購入だったが、結果的にEliteより乗り心地もルックスも満足できた。
fabric Scoop Radius Race(左)、fabric Scoop Radius Elite(右)
■ カバーとベースが同色でシンプルなルックス
Scoop Radius Raceは、カラーバリエーションがブラックとホワイトの2色しかラインアップされていない。Eliteのほうがカラーコーディネートしやすいが、Raceはカバーとベースが同色なので、Eliteよりもシンプルに見える。なお、ホワイトのカバーとベースは、Scoopのラインアップの中ではRaceにしか存在しない組み合わせだ。
このサドルの視覚効果は高く、カスタムを進めるにつれて失われたSEEK本来のシンプルさを取り戻すことができた。また、ブラックのパーツが多いせいでSEEKの見た目が重たくなっていたが、ベースまで真っ白なおかげで明るい印象に仕上げることができた。汚れが目立たないようにブラックにするか迷ったが、ホワイトにしたのは大正解だった。
fabric Scoop Radius RaceとSilicone Gripを取り付けたSEEK(左)、Raceのホワイトはベースまで真っ白(右)
■ アップライトな姿勢でも調整がシビア
Scoop Radius Eliteは、ポジションの調整が非常に難しいサドルだった。このサドルにこれほど手こずったのは、本来アップライトな姿勢に用いるサドルを、前傾姿勢をとるロードバイクに取り付けたからだと私は考えていた。ところが、同じ形状のScoop Radius Raceをアップライトな姿勢のクロスバイクに取り付けても、シビアな調整は相変わらず。結局、満足できるポジションを出すのに約2週間かかった。
このサドルの調整を難しくするのは、S字の座面と厚みのあるクッションだ。アップライトな姿勢の場合、サドルを前上りにセットすると、サドル後部の溝の左右の盛り上がっている部分が坐骨を圧迫して痛くなる。これはロードバイクの前傾姿勢よりも骨盤が立っていることが影響しているのかもしれない。しかも、同時にサドル先端が尿道まで圧迫されてしまうからやっかいだ。
一方、サドルを前下がりにセットすると、尻がはまる位置を把握しやすくなり、サドル後部の溝の左右の盛り上がりも坐骨を圧迫しなくなる。ただ、前下がりが大きくなるとサドルから滑り落ちたり、グリップに体重がかかりすぎて手が痛くなったりする。だから、最初はサドルを前下がりにセットしておき、徐々にサドルの角度を上向きにすれば、最適なポジションが見つかりやすい。
角度の調整はかなり重要で、ほんのわずかな角度の違いが、坐骨や尿道の痛みや圧迫感につながるだけでなく、座る位置が後ろにずれて内腿がサドルに干渉することもある。おそらく、サドルの角度を無段階に調整できるサドルクランプ(シートポスト)を使わないと、このサドルのポジションを出すことは難しくなるはずだ。
サドルが高すぎるとクッションがつぶれて硬くなり、尻全体を圧迫して痛みやしびれの原因になる。サドルを下げれば足にも体重がかかって尻への負担も減るが、下げすぎると大腿四頭筋が疲れやすくなる上、スムーズなペダリングも難しくなる。サドルを下げても痛みが出る場合は、サドルの角度が合っていない可能性もある。
前上りにすると赤丸の部分が坐骨を圧迫する(左)、やや前下がりにセットしたら快適になった(右)
■ チタンレールのRaceのほうがEliteよりも快適
セッティングがうまくいくと、Scoop Radius Eliteと同様に快適な乗り心地を味わえる。座った瞬間はふわっと柔らかく、尻全体をやさしく包み込むような感触で、尻の荷重をサドルに広く分散できる。連続で走ったのは50km程度だが、この程度の距離なら全く問題なし。これなら100kmでも尻に痛みや圧迫感が出ることなく走り切れると思う。
DEFY1 DISCに取り付けたEliteに座った感じは似ているが、SEEKのほうがアップライトな姿勢なので、サドル先端による尿道の圧迫を感じにくい。どちらかといえば、アップライトな姿勢に適しているが、ポジションが出ているなら、両者の乗車姿勢で快適性はほぼ変わらない。
サドル全体のしなりはEliteよりも大きく、地面からの突き上げや振動をいなしてくれるのがはっきりとわかる。カバーとベースの材質はEliteと同じだが、Raceのほうが快適性が高いのは、チタンレールのおかげだと思う。レールのしなりにベースが追従した結果、クロモリレールのEliteよりベースのしなりも大きくなるのかもしれない。
fizikのサドルと比べると、ARIONEよりも快適だが、ALIANTE R3にはわずかに及ばないといった印象。だが、クロスバイクに付けていたマンガネーゼレールのTUNDRA2よりはずっと快適だ。fizikはサドルのしなりで快適さを生み出しているのに対し、Scoop Radiusでは乗り心地を高めており、好みの差は生じるかもしれないが、100km以内ならタイプの異なるサドルから乗り換えても快適さを得られると思う。
チタンレールが快適性に貢献
■ 形状やクッションがペダリングの邪魔にならない
このサドルのクッションは快適性の高さに貢献するが、柔らかすぎないのでペダリングを邪魔しない。サドルの先端も後部も細いわけではないが、形状も同様にペダリングの邪魔にはならず、太ももの内側に干渉しないようにできている。ただ、サドルの両端のしなりは小さいので、ペダリングのスムーズさは、fizikのALIANTE R3やARIONEには及ばない。
ペダリングしやすい形状だが、サドルの側面のしなりは小さめ
■ カラーがホワイトでも汚れが目立ちにくい
Scoop Radius Eliteにも使われているマイクロファイバー製のカバーは、汚れがつきにくく、クリーニングもかんたんなのが特長だ。カラーがホワイトでも同様で、サドルの白さを保つことができ、頻繁にクリーニングをする必要はない。汚れたとしても、スポンジと洗剤でこすり洗いすればきれいになる。
濃い色のジーンズならサドル全体が青くなるかもしれないが、ある程度色落ちしたジーンズなら、数時間乗り回してもデニムの染料が側面にほんの少し付くだけで済む。この汚れもぱっと見では目立たないので、今のところはサドルカバーを併用していない。他のホワイトのサドルよりは汚れがつきにくい印象で、これなら汚れを気にして仕方なく他の色を選ばなくてもいいだろう。
ジーンズで走っても、目立つ汚れは見当たらない
■ ルックスも乗り心地も満足
fabric Scoop Radius Raceをクロスバイクにも導入したのは当たりだった。シンプルなデザインとベースまで真っ白なカラーのおかげで、SEEKの雰囲気をすっきりと軽く仕上げることができた。クッションの柔らかさとチタンレールのしなりによる快適性は高く、長時間クロスバイクに乗ることが苦にならない。これから秋の味覚を求めて、クロスバイクで走り回るのが楽しみだ。
ただ、このサドルの導入を検討する際は、シビアな調整を強いられることは頭に入れておいてほしい。サドル先端の盛り上がりが尿道を圧迫しない分、アップライトな姿勢のほうが快適なポジションを出しやすいが、サドルの角度を無段階に調整できるシートポストを使わなければ難しい。柔らかいからといってかんたんに快適になるサドルではないが、うまくいけば極上の乗り心地になるので苦労する価値はあると思う。
SEEKに付属するサドルにそっくりだが、すべてにおいてScoop Radius Raceが上回る
価格評価→★★★★★ (コストパフォーマンスが高く、6千円台のサドルとは思えない出来)
評 価→★★★★☆ (ルックスも乗り心地も満足。調整が難しい分だけマイナス)
<オプション>
年 式→2015年
カタログ重量→250g