購入価格 ¥250’000くらい
・サイクルスポーツ誌でも時折取り上げられたりしている、メイドインジャパンなフレームメーカー「東洋フレーム」
名前だけではピンと来ない方も多いと思いますが、東京サンエスのプライベートブランド「テスタッチ」は主に東洋フレーム製だったり、かつてはRitcheyのMTBのOEM先立ったり、最近でもSpecializedのallez復刻版の生産を担ったりと、日本のスポーツ自転車産業を支えた(支えている)フレーム屋さんです。
そんな東洋フレームで、フレームをオーダーして作ってもらうことが出来ます。
……とは言え、フルオーダーではなかなかまとまった金額にもなろうということで、自分が注文したのはセミオーダーフレーム、ジオメトリはサイズごとに予め決まっていて、その中から選んでオプションで好みに仕上げるというものです。
今回はシクロクロス用にレーシングバイクが欲しいということで、まず、東京都中央区勝どきにある、東洋フレームのショールームに相談に行きました。
▲東洋フレーム勝どきショールーム
竹之内悠選手のチャンピオンジャージや、90年のMTB世界選手権で勝った時のポスターやジャージが飾ってあります
東洋フレームはオンワードグループの企業なので、勝どきにあるショールームは同じグループ企業である「チャコット」のバレエスタジオと分け合う形で入っています。
自分が訪問した日は、たまたま代表の石垣氏が居て、彼に直接フレームの相談をすることが出来ました。
検討していたのは、エントリーグレードのCX-2というモデルと、セカンドグレードのCX-Sというモデル。
自分はまだシクロクロスを初めて間もないものの、AJOCCの公式レースも積極的に出ているし、カテゴリ昇格を狙ってガンガン攻めて行きたいなどと、そういう使い方乗り方で相談すると、やはりCX-Sの方が限界が高いし、よりレーシーで絶対損はさせないよということで、CX-Sを注文することに。
自分の場合は、少し前のシクロクロス東京で試乗していたので、試乗はこの日はしませんでしたが、勝どきショールームでは試乗して決めることも出来ます。
カラーリングや、ワイヤールートのオプションなども相談し、一旦どれくらいの金額になるか見積書を作ってもらいました。
ちなみにカラーオプションはアップチャージで、好みの色に塗ってもらうこともでき、ロゴやデカールのポジション、デザインなんかも伝えて作ってもらうことが出来ます。
・ちなみに、FDの直付台座のリクエストはNGでした。
どうしてもというなら、やってやれないこともないけれど、FD直付台座をつけると、シートチューブに溶接することになり強度を確保するために十分な熱を入れて溶接する必要があり、パイプの特性や寸法にズレが出てしまいデメリットしか無いとのこと。
・パイプはカイセイにお願いして作ってもらってる、東洋フレーム特注のもので……さらっと話してくれたけど、色々と失念してしまいました。
(4130(?)ベースの、熱処理をしたUltimaってやつで、処理の仕方だったかバテッドだったかが特注だとか、そういう感じだったけどホントうろ覚え)
他にはColumbusのジーニアスのパイプでもリクエストが有れば作れるそうです。
・フロントフォークはグラファイトデザイン製のもので、その他にもColumbusのフレームメーカーに卸している完成車向けのフォークを、リクエストでインストールすることも出来ます。
が、ジオメトリやフレームとの相性があるので、基本的にはグラファイトデザインのものをチョイスするのが妥当とのこと。
一旦カタログや資料を自宅に持ち帰り、主にフレームの塗装やデザインのスケッチを作成、後日改めてそれらを固めて注文することにしました。
☆ ☆ ☆
・東洋フレームの本社工場は、大阪府の柏原市にあります。
同じ柏原市にはパナソニックサイクルテックの工場もあったり、堺市も近いので、付近には自転車関連の工場が点在しています。
せっかくフレームを作ってもらい、工場も足を運べる場所にあり、見学も受け付けているということで、直接東洋フレームの工場を訪ねてみることにしました。
工場の扉を開くと、すぐ左側にはレーシングバイクのピットがありました。
訪問したのは7月半ばで、シクロクロスのシーズンイン前です。ピットには竹之内悠選手の使うバイクが何台も吊るされており、大量に置いてあったファストフォワードのホイールに、メカニックがチューブラータイヤを黙々と貼り付けていました。
▲フレームの精度を出す作業
治具に嵌め込んで、少しづつ力を加えてフレームを矯正していく
▲溶接作業、直接見ると目がやられるくらい光ります
背後にあるのは送風機?冷房? 7月だったので工場はとても暑かったです
工場内では数人のスタッフが、溶接や治具による矯正の作業をしてましたが、あまり忙しそうな感じではなく、どうも話によると「最近はOEMの仕事もめっきりなくなってしまって……今は、自社ブランドのフレームしかほとんど作ってないよ」とのこと。
東洋フレームはハンドメイドで生産しているフレーム工場ですが、個人のフレームビルダーではなく、あくまでも「大量生産が可能な工場」です。
なので、工場においてある機械や治具も、個人ビルダーでは扱えないような大掛かりでスペシャルなものが多く、ハンドメイドなので注文に対して柔軟であり、小ロットからでも作れ、かつ高精度で、大量生産が出来る、というのが強みだとか。
そうなんですね、東洋フレームはあくまでも工房ではなく工場です。
事務所ではフレームに貼るステッカーのサンプルを手にとって大きさや色を確認することが出来、ロゴの大きさや配置的にこの場所がいいなとか、そういった込み入った内容を相談しました。
オプションで、フレームカラーを特注色にしてもらおうと思っていたので、そのカラーチャートのサンプルも確認。
☆ ☆ ☆
・改めて地元に帰り、スケッチの決定稿を持って勝どきショールームを訪ね、本注文です。
支払いは、前払いでも後払いでも、現金でもカードでも、分割でも一括でもOK、その都度担当に相談ということでした。
(自分の場合現金とカードを併用した上に、分割というすごい面倒な支払い方をしました……)
▲フレームの塗装仕様書
ロゴはカッティングシートでやってもらいましたが、アップチャージで塗装にも出来ます。
注文をして数日でメールアドレスに連絡が来て、フレームの仕様書が送られてきました。
かなり入念に相談したので、このへんは問題なし、注文の時期が7月の後半だったので、お盆休みをはさみ、完成は9月半ば以降になるとのこと。
それまでに、フレーム以外のパーツを集めて準備を進めました。
待つこと1ヶ月半ほど、9月の第2週にお渡しの準備ができたとの連絡が来て、勝どきショールームにお伺いします。
一応、自宅に無料配送(配送代金はフレームの代金に入ってるとのこと)もしてくれるそうですが、自分の場合、受け取り時のお支払いにしていたのと、BBを入れる工具を持っていないので、それだけ入れてもらおうと思い直接店頭にお伺いし、フレームを持ち帰りました。
という感じで、無事お迎えしたフレームです。
カラーリングは、70年台のル・マンで活躍したマトラ・シムカ、それを駆ったフランスの英雄アンリ・ペスカローロをモチーフに仕上げました。
イタリック体の東洋フレームのロゴも、こう見ると「ジタン・ブロンド」のロゴに見えてきませんか?(無理がある)
▲シートステー上部のブリッジの三角形から、TFエンブレムが見えるように、ロゴの配置をリクエストした
■総括して
さすがメイドインジャパン、というか、日本の企業で、日本で生産し販売完結しているものなので、全てがストレスなくスムーズです。
連絡も密にできるし、雑談も気楽にできる、見ようと思えば工場も見れるし、アイデア次第で色々相談できて、それに対して素早くレスポンスがある。
ただ、ガイドラインがないので「こういうことがしたい」っていうアイデアを伝えるのは、こちらで整理して、わかるように伝える必要があります(当たり前ですが)
更に、万が一レースで壊したり、ダメージを受けてもパイプの差し替えが可能ということで、納車後の相談、修繕もフォローしています。
そう言った部分もガンガン走る人、レースユースの人にはありがたいバックアップではないでしょうか。
もちろん、シクロクロスのノウハウはピカイチで、レースの込み入った相談やアドバイスも受けることが出来ます。
東洋フレームのバイクは派手さがなく、どうしてもマッシブなカーボンフレームのマスプロ品が主役の現代では、注目をあびることはなかなか無いですが、スペシャルな逸品を作りたい人にはいい選択肢じゃないかなと思います。
クロモリ中心のメーカーですが、今でも日本や世界のトップレースシーンで走っているわけで、走りは近代的です。 竹之内悠選手含め、彼等からのフィードバックを受けての開発を進めており、クロモリとはいえ、それはクラシックバイクではないわけですね。
厳つい台湾生産のブランドモノのエアロフレームも魅力的ですが、こういうメイドインジャパンの醤油味なフレームもいいものですよ。
▲興味のある方は、この扉を開いてみては?
価格評価→★★★☆☆(高くはないけど、アメリカのビルダーフレームと比べると、やや高価な印象は受けなくもない……)
評 価→★★★★★(全部見れるし、細かい相談もできる、ピットサービスも受けられる)
<オプション>
年 式→2017