アルプス地方の舗装道路で最も標高が高い峠として名前が挙げられる「イズラン峠」は、
フランス・サヴォワ県グライアン・アルプスに位置し、標高は2770mあります。
実際に最も標高が高い舗装道はボネット峠(Col de la Bonette, 2802m)ですが、
この峠は2678mのレストフォン峠から強引に作られた一方通行の回り道であり、1961年までは軍事的な理由から一般に開放されていませんでした。
これはイズラン峠がいまだに最も標高が高い峠として挙げられる理由でもあります。
またボネット峠に対抗するようにレッテンバッハ・フェルナー(Rettenbachferner)には行き止まりの駐車場が標高2803m地点に作られているようです。
さて、イズラン峠の話に戻しますが、この峠はヴァル・ディゼールとボヌヴァル・シュール・アルクを南北として結ぶ道となっており、大フランス・アルプス縦断ルートの主要ポイントでもあります。
峠の北側に位置する標高815mのブール・サン・モーリス(Bourg-Saint-Maurice)を起点とした場合、
水平距離で48kmの地点にあたり、平均斜度は4.1%、標高差は1955m。
スキーリゾート地として知られるヴァル・ディゼール(Val-d'Isère)から起算すると水平距離にして15kmの地点にあたり、
平均斜度6%、標高差は895mあります。
また、峠の南側に位置する標高1399mのランスブール・モン・スニ(Lanslebourg-Mont-Cenis)を起点とした場合、
水平距離で32.9kmの地点にあたり、平均斜度は4.2%、標高差は1371m。
ボヌヴァル・シュール・アルク(Bonneval-sur-Arc)から起算すると水平距離にして13.4kmの地点にあたり、
平均斜度7.3%、標高差は977mであり、最大斜度は10%を超えます。
ツール・ド・フランスでは1938年に初めて登場して以来、2010年までに8回コースに設定されています。
しかし、実際に通過したのは7回。
残りの一回は、1996年。7月にもかかわらずレース前日に豪雪に襲われたため、当日急遽コースの変更が行われた結果、ガリビエ峠とともにイズラン峠はコースから除外され、たった46kmという短いコース設定となりました。
この年は今中大介さんが日本人として初めて近代ツールに出場した大会でもあります。
今回は南側からアルプス最高峰の峠を走ってきました。
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出発の地はモダーヌ(Modane)、町の標高は1100mあまり。
峠までは58km程の道のりがあります。
いくつかの小さな町を通過、L'Arc川沿いの緩い登り基調の道を走ること25kmでランスブール・モン・スニに着きました。
ここから南への分岐へ進むと、フランスとイタリアの国境でもあり、綺麗な湖のあるモン・スニ峠(Col du Mont Cenis, 2081m)があります。
今回は最も高い峠を目指すという目的があったため、ここは素通り。
先へと進みます。
イズラン峠まであと33km。
ランスブール・モン・スニからは勾配10%を超える急坂が待っていましたが、それもおよそ2km程。
この坂を過ぎると再び緩傾斜の道となります。
広大なアルプスの谷間を走ります。
真っ直ぐな道は気持ち良かったですが、あまりの殺風景さにちょっと心細くなったりしました。
この日は日曜ということもあり、立ち寄る町には活気が無く静まりかえっていました。
店もまともに開いていない様子なので、補給もせずにひたすら走りました。
峠まで残り14km地点のボヌヴァル・シュール・アルクに到着。
町並みには統一感があり、花が飾られた可愛い家の造りなど美しい町でした。
ほぼ水没している眼鏡橋も印象にも残りました。
すでに昼の12時。やっと補給できるかと思えば、町のインフォメーションは無人、
近くに見つけたショップにもまともな食料は置いておらず、仕方なくリンゴを昼食としました。
ここから峠までがいよいよ一番きつく、一気に1000mの標高差を登る道となります。
ボヌヴァル・シュール・アルクの町を見下ろしながら8~10%の坂を4kmちょっと登ります。
背後には山頂に雪を積もらせている山々が見えていました。
すでに森林限界も超えているため、あたりに高い木は無く、短い草ばかり。
町が見えなくなると、一端傾斜は緩やかになりますが、またすぐに急勾配の坂となります。
勾配がきついせいか、標高が上がり空気が薄いせいか、しっかりと補給を取らなかったせいか、
1km走っては立ち止まり、荒れた呼吸を落ち着かせては少しずつ進むという繰り返し。
峠の歴史を感じさせる廃墟が佇む、荒涼とした山道でした。
石の荒れ野はあまりに変化に乏しく、この道を走るのは精神的にもつらいものがあります。
この辺一帯はヴァノワーズ国立公園。
フランス最初の国立公園だそうです。
14時ちょっと前にやっとの事でイズラン峠に登頂。
9月中旬といえどそこは標高2770m、雪も残っていてさすがに寒かったです。
頂上にある礼拝堂Notre-Dame-de-l'Iseranのマリア像が、雄大な峠を見守っています。
しばらく休憩していると、北側から自転車仲間だろう集団がぞくぞくと登ってきました。
防寒をして峠の北側の町、ヴァル・ディゼール方面へと下りました。
道にガードレールが無いのはヨーロッパでは当たり前の風景のようです。
ただもし落ちたらずっと下まで転げ落ちてしまいますね。
峠から50kmを下り続けてブール・サン・モーリスに到着。
ロータリーには自転車のモニュメントが飾ってありました。
この町からはプチ・サン・ベルナール峠を越えてイタリアへと行くことが出来ます。
初めてのイタリアに備えてこの町で宿を探すことにしました。
景観→★★★☆☆
登坂距離→★★★★★
平均勾配→★★★★☆